吼ゆる狼の見る世界   作:烏兎

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第一話『出陣』

かつて夢を語り合った友がいた

 

俺も友も親の顔すら知らぬ孤児だった

 

本来親から授かるべき真名すら持たず

 

落ちていた書物から文字を学び

 

お互いの真名を考えあった

 

俺は『吼狼』と

 

アイツは『柑菜』と

 

独学で兵法を学び

 

武術を鍛え

 

いつかはどこかに仕官して

 

俺が将軍になりアイツが軍師になって

 

共に戦場を駆け抜けて

 

出自など関係無いと

 

努力さえすればここまでやれるのだと

 

いつか証明したいと語り合った

 

だが・・・・そんな日々も長くは続かなかった

 

『柑菜』が死んだ

 

流行病だった

 

医者に見せる金もなければ

 

見せるべき医者もいなくて

 

最後に『柑菜』は

 

死の間際であるにも関わらず笑顔で言った

 

『大丈夫、君はボクよりずっと頭が良いし腕っ節もある。いつか必ず、君とボクの夢を理解してくれる主君もみつかる・・・・だから』

 

『生きて、ボクの分まで』

 

だから

 

俺は・・・・・・・・

 

―――――――――

 

「・・・・っ、また夢か・・・・」

 

何時もの夢、あの頃の事が走馬灯のように巡り最後にはあの日の光景で夢が終わる。一体、何が言いたいんだアイツは。アレで言いたい事は終わりじゃないのか?だが夢の中では、最後に僅かに口が動いていた。だが声を発しない、そこで俺の夢の方が醒めてしまうのだ。

 

「ホントは俺より頭がイイくせに・・・・いつもいつも言葉足らずなんだよ、アイツぁ」

 

ボリボリと頭を掻きながら、傍らに置いていた大矛を手に取って、それを支えにして立ち上がる。アイツを失ってから十年、どこに仕官するにも家柄や財力が重視される今の時代で俺みたいな貧民がまともに相手にされるわけが無い。試行錯誤を重ねた結果、俺と同じで・・・・仕官したくとも出来なかった奴らを集めて傭兵として動く事にした。

 

「李厳様」

 

李厳、字を正方。それは俺が傭兵稼業を始めた時に世話になった恩人から『名無しが頭目ではカッコがつかんだろう?ならばワシが名をつけてやろう』とつけてもらった名。正直気に入っている、と言うか妙にしっくり来ている。

 

「どうした?」

「巴の厳顔将軍から出兵要請です、戦場は荊州との境界線。相手は五百の賊、この討伐に魏延殿が宛てがわれるのでその側面援護を求むと」

「分かった、張翼と姜維に準備させとけ」

「はっ!」

 

傭兵部隊『飛雷(ひらい)』、総兵数三百の少数精鋭部隊だ。まぁ言ってしまうと、無所属で自由契約だと意地していくのがこれぐらいで限界なわけだ。大きな戦でもあれば別だが。歩兵しかいないが機動力をウリにしており、益州軍に協力して遊撃任務を主として殿軍、拠点防衛、拠点建造と様々な経験を積み、今では事実上益州軍との専属契約を結ぶような形で働いている。

 

「魏延殿はどれほどの兵を連れて来るんだ楓」

「同数の五百、まず遅れは取らないだろうが脇が甘いからその補填を頼む・・・・と書状には」

 

今俺の傍らで書状の内容を読む腰ほどまである黒髪を風に靡かせている少女が黄権、字を行衡、真名を楓。生真面目だが年相応な少女らしさもある『飛雷』の参謀である。元々は成都で軍師見習いとして仕官したらしいのだが・・・・言ってしまえば才能が、頭のデキが良すぎたのだ。昔からの益州名家出身の文官連中からの陰湿な虐めにあい、出奔を考え始めた頃に厳顔将軍の勧めで『飛雷』へと出向。その後、退官届けを提出し正式に『飛雷』へと入隊し今に至る。

 

「・・・・楓、すぐに魏延殿の進軍路を予測。いつでも援護に入れる距離で進軍する」

「はっ!」

 

―――――――――

楓を伴い隊へと戻ると、既に二人の副長が準備を済ませ待機していた。

 

「いつでも出れますぜ、大将」

 

腰から下げた双剣、狐のような細い目の奥に鋭い光を宿す青年が張翼、字を伯恭、真名を蒼真。飄々とした態度の中に確固たる信念を持つ『飛雷』の切込隊長。元は巴郡で暴れまわっていた馬賊に所属していたのだが、その馬賊が討伐された際に逃亡し仲間の仇を討つ機会を伺っていた。用意周到に準備を済ませ、仇である厳顔将軍を討とうとするも偶然近くにいた俺に制圧され捕縛。説得を幾度も重ね、最初こそ首を縦には振らなかったものの最終的には折れて入隊を決意する。

 

「ああ、ご苦労だ蒼真・・・・椿も準備は済ませたか?」

「うん、済ませた。褒めて、ししょー」

 

小柄だが身の丈よりも大きな大槍を肩に担ぎ、どこか小動物のような雰囲気を纏う少女が姜維、字を伯約、真名を椿。言葉は最小、だが戦果は最大の『飛雷』最強の『矛』。早くに両親を失い、形見でもある双刃槍を片手に故郷擁州を出て放浪。各地で賊を討伐し、村からのお礼などで食いつないでいたのだがそれらも無くなってしまい行き倒れていたところを発見したのが剣閣の城塞建築に来ていた俺だった。その後、食料を与え体調が回復するまで世話を焼いてやったところ妙に懐かれ「弟子にして」との申し出が。どうすべきか迷っていたところ、とある人物に「人を育てる事も修行だ」と諭され申し出を受諾、今に至るわけだ。

 

「良くやった」

 

そう言いながら頭を撫でてやると、眼を細め気持ちよさそうにしている。

 

「さぁ、どうせ魏延殿の事だ。後先考えず全速力で先行しているだろう・・・・こちらも最速で追い付きに行くぞ!!」

『応っ!!!』

 

さて、魏延殿があんまり無茶をしていなければ良いがなぁ・・・・




第一話でした。主に吼狼の率いる『飛雷』のメンバー紹介でしたね、原作キャラが本気で出てくるのは三話からの予定になります。
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