益州を離れた俺たちは、一路荊州の江陵へと・・・・向かおうとしたのだが、とある人物からの書状により進路を変更して擁州、涼州方面へと抜けるように移動をしていた。
『劉荊州様は応諾なされたが蔡瑁一派が貴殿らよそ者を通行させる事を快く思っていない、何かがあってからでは遅いゆえ・・・・誠に申し訳ないが荊州を迂回する事を勧める』
この書状を寄越したのは江夏の太守黄祖、友里が懇意にしていた荊州の将軍だった。
「黄祖将軍の助言に従いましょう・・・・面倒事はゴメンです」
確かにこれ以上の面倒事はゴメンだ、が・・・・どこへ向かおうか。
「・・・・擁州に、行こ」
全員が思わず視線を向けたその先に、椿がいた。普段はこういう話には絶対に加わらない椿が口出しをした、その事実に付き合いの短い友里と新人五十人を除いた全員が絶句していた。
「・・・・椿、お前・・・・風邪でもひいてんのか?」
「椿ちゃん・・・・だ、誰か医者を!名医をー!!」
蒼真、楓・・・・お前ら動揺しすぎだろうがよ。ったく・・・・
「椿、理由を聞かせろ」
「んと、友達が擁州で偉くなった。いつか皆を連れて、遊びに行くって約束してた」
成程、椿らしい理由だ。友達、と言うのは時々手紙を書いていたのを見た事があるからその相手の事だろう。理由はどうあれ着眼点は悪くない、擁州は羌族の侵攻が涼州に継いで多い地域だ。そのそれなりに偉いと言う椿の友人に口利きしてもらえればうまく仕事も回してもらえるだろう。
「良し、椿の提案通りに擁州に向かうぞ。友里、斥候を放ってくれ」
「はい、お任せを」
「蒼真、百連れて適当な野営地探して準備しとけ」
「うっす」
「椿は五十連れて猪か熊狩ってこい」
「行く・・・・」
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蒼真が陣取っていたのは陳倉の地、険しい山岳地帯ではあるが夜風は当たりづらく寝るには思ったよりも良い場所であると言えるだろう。
「おーしお前ら、手ぇ止めるなよ?今の速度のまま回し続けろぃ」
『オーッス!!』
妙に張り切った椿たちが猪を十頭捕まえてきた、ので在庫の米や野菜を使った野戦料理を作る事にした。毛を丁寧に処理してから内蔵を引き抜き、水で血を洗い流してから笹で包んだ米と野菜を抜いた内蔵の代わりに突っ込む。で、それをジックリと焚き火で均一に火を通しながら塩をふりつつ焼く。豪快で適当にも見えるが、これが美味いのだ。中で蒸してる米や野菜に肉汁が染み込み、それらと焼いた肉を一緒に食べる・・・・餞別にと桔梗さんからもらった酒もある、パーっとやろう。
「ご主人様」
「どうした、友里」
「最終の斥候が・・・・お客を連れて戻って参りました」
「・・・・客?」
客、ねぇ。こんなところでどんな客がいるもんだろうか、賊とかそう言う奴じゃないのは確かなんだろうが。
「人数は?」
「三人、女の子が二人に男が一人ですね」
「連れてきな・・・・何かの縁だ、あちらさんさえ良けりゃ飯に誘え」
ペコリ、と友里が一礼しその場を離れると直ぐに蒼真が寄ってくる。
「どこの誰とも知れない奴を招き入れるんで?」
「少なくとも賊の類じゃあるまい、そう言う連中だったら友里なら始末するさ。友里がやらなかったとしても手空きだった楓がやる、二人が何もしてない以上は問題ない・・・・そういうこった」
「ま・・・・筋は一応、通ってますがね」
―――――――――
「なんやスマンなぁ」
「誠に申し訳ない」
「・・・・(ぎゅるるるるる)ごはん・・・・」
「まぁ聞きたい事もいくつかあるが、今は飯だ・・・・全員盃は持ったか!」
『応っ!!』
「んじゃま乾杯っ!!」
『乾杯っ!!』
俺、蒼真、楓、椿、友里に客人三人が一緒に一つの火を囲んでいるのだが・・・・
『ガツガツもぐもぐパクパクむしゃむしゃ』
食欲魔人が二人に増えた。元々、『飛雷』には椿と言う大食らいがいる。だがこの客人の一人、赤毛の少女は椿と同等の速度と勢いで口の中にほおばっていく。どっちも詰め込みすぎて頬が膨らんでいる、でそれを見た楓がスゴい和んでいる。
「アンタぁイケる口だねぇ!」
「ウチもやけどアンタもイケるやん!」
蒼真は紫髪の少女と飲み比べになっている、飲み比べってか・・・・二人とも樽を傍らに置いて盃でザバザバと掬って飲んでる。
「重ね重ね、申し訳ない」
俺と差し向かいに座って適度に食し、適度に飲んでいた青年が頭を下げている。
「あー、気にすんな。賑やかなのは嫌いじゃねぇよ、それに飯は皆で食った方が美味ぇだろ?」
「・・・・確かに、既に二人程遠慮なしに食べているようだしな・・・・私も相伴に与ろう」
―――――――――
全く、不思議な連中だ。見ず知らずの俺たちを信用し、共に飯を食い酒を飲む。
「あー、気にすんな。賑やかなのは嫌いじゃねぇよ、それに飯は皆で食った方が美味ぇだろ?」
本当に不思議な感覚だ、話をしていて性格も放つ気も何もかもが違うとハッキリ分かる。なのにどことなく、お嬢と同じ雰囲気がするのだ。それに・・・・
『ごはんはみんなでたべたほうがおいしいよ、だからいっしょにたべよ?』
似たような事を真顔で言う、いつかはお嬢とこの人物を合わせてみたいとも思うのだ。
「そう言えば・・・・自己紹介がまだでしたな、私は高順。天水太守、董卓様にお仕えしております」
「ほう・・・・天水太守、ねぇ」
何やら、含みを持たせたような言い方だが・・・・表情と眼差しに悪意、敵意、それに該当するようなものは感じられない。
「あちらの大食いが呂布、大酒飲みが張遼、二人共私の同僚になります」
「成程、まぁわかりやすい紹介だな・・・・で?なんでアンタらここにいるんだ?」
「・・・・なぜ、とは?」
「陳倉は長安太守の領地だろう?そこになんで、天水軍のアンタらがいるかが気になってな・・・・言いにくい事なら構わんぜ、話したくねー事もあるだろうしな」
「・・・・少女を一人、勧誘しに来たのですよ」
隠す事でも無い、そう判断して私は話す事にしたのだ。
―――――――――
「少女を一人、勧誘しに来たのですよ」
高順の口から語られたのがそれだ。
「にしちゃあ・・・・随分なメンツで行くもんだな」
高順にしろ、椿とまるで姉妹のように寝転がる呂布にしろ、蒼真と二人して飲みすぎで顔を真っ青にしている張遼にしろ、相当な実力者だと思う。焔耶・・・・よりも三人とも上、個の武ならば仁さんにも勝るだろう。
「白波賊をご存知ですか?」
「いや、知らんが・・・・面倒な相手なのか?」
「色んな意味で、盗み殺しは当たり前、誘拐、人身売買、薬のバラマキまでなんでもやる連中です・・・・その少女がいると情報が入ったのがその白玻賊が縄張りとしているあたりなのですよ」
自衛、とも一瞬思ったがこの三人だ。一人だけでも十分だろうし、そこら辺にコイツらより強いのがそうそういるとも思えない。
「最悪、既に拐われている事を仮定しもしもの場合は力づくでも奪い返すため・・・・か?」
「・・・・そういう事になります」
「成程・・・・白波賊の規模は?」
「全体で五千、目的地付近には一千近くが潜伏しているとも」
例えこの三人が強くとも、一千相手では万が一がある。となれば・・・・
「なぁ、提案があるんだ」
「提案、ですか?」
「ああ・・・・」
これは売り込みだ、まぁそれ以上にこいつらを気に入ってしまっていると言うのもある。こいつらをまとめあげていると言う天水太守董卓にも、興味が湧いている。
「俺たちを、雇ってみないか?」
第六話でした。因みに私が好きな恋姫キャラは趙雲、張遼、呂布、董卓、馬超、顔良・・・・友人からなんで一人だけ魏キャラなんだ!とツッコまれた事がありましたが・・・・気にしない!
それと、お気に入り登録数が順調に伸びてきまして正直驚いてます。今後も、引き続きご贔屓に。