みんないっしょに。   作:matsuri

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一週間ぶりな上にギリギリ月曜日です。骨喰は我が本丸の誉ゲッターで一番レベルが高いです。カンストも一番早いかな〜?


骨喰さまと初めての錬結

無事学校が始まる前に体調は改善し、久しぶりに学校へきた。審神者業とは全く違う、あの教育機関とも違う、和気藹々とした普通の学校。少し話のできるクラスメイトくらいはいる。とはいえ、今日は始業式とホームルームだけなので、何事もなく帰路に着いた。もちろん、政府の車でだ。

 

昨夜は前々から言っていたこととはいえ、朝から数時間わたしが不在ということでちょっとした混乱が生じていた。

 

ただ午前の出陣がなく、内番だけになるだけなのに。

 

もういっそその状況を突然作ってしまえと、前日に今日の近侍である骨喰さまに色々と任せ、朝早くに出てきてしまったから、顔をあわせるのは昨夜ぶりだ。みんなはどんな反応をするだろうか。

 

クスと笑いをこぼしそうになるが、政府の人間の前だ。表情を普段の愛想笑いで誤魔化す。

 

 

「では、これで失礼いたします」

 

「ありがとうございました」

 

 

運転手と挨拶を交わし、わたしの本丸へとつながるゲートをくぐる。ふわふわとした感覚の中、見覚えのある木の門が見えた。

 

これは、本丸の門だ。

 

両手で門の左側を押すと、足が地に着き、いつも眺めている庭が見えた。

 

 

「…あ、お、お帰りなさい!主帰ってきた!」

 

 

門から玄関までの道を箒で掃いていた清光さまが、溜めた落ち葉を蹴散らしながら走り寄ってくる。後ろですごい目で睨んでいる正国さまは…見なかったことにしよう。

 

 

「ただいま帰りました。えーと」

 

「って、あの、あるじ、その格好…」

 

「…?あ、そういえば洋装を見せるのは初めてでしたっけ。これは学校の制服で、セーラー服といいます」

 

 

ちょいとカバンを持っていない方の手でスカートの裾をつまんで見せる。現在本丸にいる半数は洋装だから、そんなに物珍しいものでもないと思うのだけど。

 

 

「似合いませんか〜?」

 

「似合うってか、それ、スカート短くない?!足ほとんど出てるよ!腕も、髪型違うから首も、うわわ、こんな男所帯でそんな格好しちゃだめ!」

 

 

怒られた。もう、というかずっと暑かったから、これを機に本丸でも普段は洋装でいようかと思ったのに。でも、露出がだめというならまだ余地はあるのかな。

 

 

「おい加州…そろそろ戻って散らかしたモンなんとかしやがれ!」

 

「ぎゃっ、正国?!うわっ、なんでこんなに散らかってんの!」

 

 

あなたが蹴散らしたのです、とは言わずに、あとは両人にお任せする。玄関で靴を脱ぎ、部屋へ戻る間に畑を見たけど、水撒きはもう終わって、草むしりをしているところのようだった。やっぱり、わたしがいなくともなんとかなっている。

 

この分なら、これから通うと言ってもなんとかしてくれるかな〜?その前に黙っていたことを何か言われそうだけど。

 

 

「このか」

 

「…は〜い?」

 

 

骨喰さまは、多分無意識で言霊に霊力を乗せている。縛りはしないけれど、それでもなにかピリッとくるものがある。

 

 

「言われた通り、書類の整理と指示出しはしておいた。加州清光があんたの不在を喚いていたが、それ以外は特に問題なかった。それから今日の出陣だが、兄弟が歌仙兼定を怒らせてバツ掃除をしているから誰か代わりを決めてくれ」

 

「あらあら、鯰尾さまったら。じゃあ、骨喰さま出ますか〜?」

 

「構わない」

 

 

任せた仕事はほぼ完璧、指示出しも的確、報告にも無駄がなく、ほかと干渉しすぎず客観的に必要事項だけをまとめている。結果、わたしは大分楽なのだけど…

 

 

「ほかに何かすることはあるか?」

 

「そうですね〜。じゃあ、ついてきてください」

 

 

そういえばまだ服を着替えていないけど、まあいいか。別に、巫女装束だからといってわたしの霊力が上がるわけでもないし。

 

骨喰さまを連れて向かう先は倉庫。主に、整理前の一時保管場所になっている。資材は鍛刀所に併設してある倉庫に保管している。

 

 

「倉庫?ここは入ったことがないな」

 

「ええ、普段は入れないようにしてありますから」

 

 

胸元に忍ばせている鍵の、三つのうちの二つ目を鍵穴に差し込む。開けて入ると、結界が解け、霊力の渦がわたしたちを取り囲んだ。

 

 

「入ってください。扉を閉めますから」

 

「っ…」

 

 

顔をしかめて踏み込んでくる。どうやら気が大きすぎたようだ。

 

完全に体が入ったのを確認して扉を閉め、開かないように封をする。一瞬とはいえ、その間に邪魔が入るとどうなることか。

 

 

「ここは?」

 

「保管場所です」

 

 

溜まっている霊力をやりくりしながら答える。

 

 

「戦に出たら、刀を拾ってくるでしょう。鍛刀して新しい刀ができるでしょう。そうした刀の中で、すでに本丸にいる刀と同じだった場合にここに保管するんです」

 

 

そして、すでに許容量の限界を迎えていた。

 

一振りずつ傷がつかないよう、布で包んで引き出しにしまう。

 

 

「わたしの霊力の足りない分は、ここにある刀からお借りしていました。結界も、ここにある刀と、あなた方の余らせている霊力を使っています。けれど、ついに引き出しが全て埋まってしまいました。ですから、錬結をしようと思います」

 

 

一拍置く。骨喰さまは一言も発さない。

 

 

「最初を骨喰さまにしようと思ったことに理由はありません。失敗することもありません。仕組みとしては、あなたにこちらの刀の能力分を上乗せするだけです。今なら辞退することもできますが、これは誰もが通る道です。力を欲するのであれば、お受けください」

 

 

出来事は一瞬だ。終えてしまえば自分の能力値が上がるだけ。けれど、人の形を持ち、心情というものに惑わされると、形をもらえぬ刀に同情してしまいかねない。

 

 

「ひとつ聞くが、」

 

「はい」

 

 

四方を囲む棚を見回しながら、やっと口を開いた。

 

 

「ここにある刀を顕現することはあり得ないのか?」

 

「そうですね、すでに在る方が折れない限りは。同じ刀の同時顕現は混乱と精神崩壊の原因となりますから」

 

「ならやってくれ」

 

 

唐突にこちらを見つめる目に射抜かれ、動きが鈍くなる。

 

 

「俺たちは折れない。ただひとつのあんたとの約束だ。それに、戦えないのにある刀ほど惨めなものはないだろう。俺の力にして、一緒に戦う」

 

 

普段、常に冷静で執着がなく、ほかと関わらないようにしている骨喰さまが。客観的に、必要なことだけをこなしている骨喰さまが。ほかを思いやる一面を見せてくれた。

 

よかった、ちゃんと優しい。これなら人の形を持っていても安心できる。わたしが顕現に失敗したのかとも思っていたから、ちゃんと感情を見られてほっとした。

 

 

「わかりました。では、」

 

 

選び取った五振りを持ち支えてもらう。

 

ぱん、と一つ手を打って、刀の魂と呼ばれるそれを、骨喰さまの依り代に押し込んだ。

 

形を失った刀たちが、光となって消えてゆく。

 

 

「終わりました〜。実感はないかもしれませんが、少し早く動けるようになったと思います」

 

「そうか。それから一つ、あの辺りから、多分まだこの本丸に顕現していない刀の霊力を感じる」

 

 

…………ん?




ここまで閲覧ありがとうございました。いやあ、本当に遅いとは思っていたんですよ?おかしいなぁと思ってはいたんですよ。そしたらね、受け取りBOXにね…。
次回は14日更新予定です。
追記:題名から間違えていた誤字を訂正致しました。

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