みんないっしょに。   作:matsuri

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今回、人間がでしゃばります。刀剣ドコ!って感じです。一章に一度の審神者の話です。それでも良い方はこのま下へお進みください。ちなみに普段より若干短い仕様となっております。


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もう無茶はしないと約束したのに、すぐ『未来のことはわからんな』だなんて。結局約束を守る気はあるのだろうか。

 

そんな矢先に出した遠征。薬研さまは約束通り、怪我一つ負わず、しかも仲間の誰も傷つかずに帰ってきた。刀装すら溶かしていない。

 

 

「約束は守るって言ったろ?」

 

「ふふ。ありがとうございます〜」

 

 

それから、と薬研さまが身をずらす。影から遠征には出ていない人影が現れた。

 

 

「お客人。丁度会ったんで一緒に来たんだ」

 

「紫黒。ありがとうございます薬研さま」

 

 

ひらひらと振られる手に挨拶をして別れる。薬研さまはこれから自室か薬室にこもるんだろう。少しくらい休んだらいいのに、そうしないのが彼だ。あとでお茶でも誘ってみよう。

 

背中が消えた頃、わたしたちは連れ立って歩き始めた。

 

 

「薬研さまと厚さまはほんと、兄弟ですね〜」

 

「兄弟刀だろうけど…なにかあった?」

 

「ふふっ、二人ともね、約束って言ったら『男に二言はない』ですって。本当に守ってくれるんですからかっこよくて」

 

 

畑の方から呼ばれる声に手を振って応える。そろそろ収穫できるものもあるかもしれない。清光さまはどう調理してくれるのか、と思案し始めた頃、部屋の前についてしまった。

 

カタンと障子を引き、黙って部屋に入る。私が文机の前に腰を下ろすと、戸を閉めた紫黒も部屋の真ん中に座った。音を遮断した部屋は気温も下がった気がした。

 

 

「さて、要件を聞きましょう」

 

「審神者会議を行う」

 

 

手ぶらで来ていたし、今日は支給品の届く日ではないから、通信役としての仕事できたことはわかっていた。けれど口頭で伝えられるとは。

 

 

「会議、ですか。定例の?確か二ヶ月に一度でしたね。けど、なぜそれを通信役を使ってまでわざわざ知らせに来たのでしょ〜?」

 

「今回に限り、審神者は近侍を伴わずに来いということらしい。代わりに護衛を通信役がする」

 

 

続けて、と促す。

 

 

「…けど、今回、政府は嵌めようとしてる。こうして近侍なしで呼ばれる審神者は数えるくらいだ。だから、俺は来なかったことにして。時空で不具合が起きてたどり着かなかったと。そして通常通り、近侍を連れて出席して」

 

「…あなたは、危険を知らせるために?」

 

「そう。…大丈夫、気にしないで。どうせ俺には誰も近づけない。精々謹慎くらいで済むよ」

 

 

こういう時、本丸への入退記録が残らなくてよかったと思う。口を噤めば政府に露見することも無い。けれど、確かに誰も紫黒には近づかないだろうけど、近づかなくとも罰を与える手段はいくらでもあるのだ。私のために、彼が責任を負う必要があるのか?

 

そもそも何故政府はわたしたちを嵌めようとするのか。審神者を減らすほうが得策でないことはわかりきっている。それとも、刀が近づいてはいけない理由があるのか。

 

近侍を連れて行くことは審神者を守ることにある。審神者会議で霊力を持つものが集まれば、自然と歴史修正主義者も集まるだろう。そうなれば会場もろとも破壊されかねない。

 

さて、ここから導き出される答えとは?

 

 

「…わたしたちを囮に敵をおびき出し、生け捕り、もしくは捕獲からの解析が目的ですかねぇ」

 

「俺がいくら頭の出来が悪くてもそれくらいわかった。本当は逃げてほしい。でも、縹はほかの審神者を見捨てられないから」

 

 

思わず苦笑する。よくわかっている。わたしは元来他を見捨てられないのだ。多分、紫黒が一番理解している。

 

 

「…では、紫黒。護衛をお願いします」

 

「どうして」

 

「近侍は連れて行きません」

 

 

紫黒の膝に乗せられた手がぐっと握られる。しかしそれを制して言葉を続けた。

 

 

「政府の文言は近侍を連れず、通信役を護衛とする、だけですね?」

 

 

頷く。

 

 

「なら、第二から第四までの三部隊を隠して会場の近くまで連れて行きましょう。何かあればすぐに呼べるように。決して命令には逆らっていません、言い逃れなど、いくらでもできる。始末書くらい何百枚でも書いてやりますよ」

 

 

それどころか、思惑通り敵を、わたしたちの部隊が生け捕りにすればお釣りがくるだろう。今現在他に私たちを囮にする理由が無いから、多分それでここに戻ってこれる。

 

そうと決まれば色々準備が必要ですねぇ。

 

 

「会議は一週間後ですよね〜?なら、今から取り掛からないと。とりあえず紫黒は何かあれば呼びますのでのんびりしていてくださいね〜」

 

「…わかった。縹がそういうなら」

 

 

どちらからともなく立ち上がり、部屋を出る。前で逆に分かれ、わたしは広間に全員を集めた。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

「…ということです。なにか質問はありますか〜?」

 

 

手をあげるものはいない。もちろん反論するものもいない。理解が早くて助かる。わたしは幸せ者ね。

 

では、と続ける。

 

 

「これより五日間の出陣は、日に一度とします。体調を万全に整え、万が一が無いように。これから編成を決めますので、みなさんは内番に戻り、また遠征に行っている第二部隊が帰還次第事を伝えてください。…ではそういうことで、解散」

 

 

さあ、大仕事の準備に取り掛かるといたしましょう。

 




ここまで閲覧ありがとうございました。今回は前編、次回は後編(もしかしたら中編)、という形になっております。しばらくこのブラック政府にお付き合いくださいませ。やっと刀剣たちの戦闘シーンが書けるかな?でもうまく書けない気がするな?って感じですが、愛で補います!愛で!

次回の更新は10/26を予定しております。

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