みんないっしょに。   作:matsuri

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強引に終わらせました。タグに一応過激な表現的なのありますが、今回書いてて私には描写できないことが判明しましたので外してきますねε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘


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新勢力、検非違使。

 

その実態は歴史修正主義者たちを敵とし阻止する部隊。しかしそれは同時に、我々審神者の敵ともなった。当然、審神者の命により戦前に出る男士たちは格好の的となる。

 

他が考えることを放棄して誰一人として男士を連れてこなかったせいで、襲ってきた検非違使を全て相手することになってしまった。

 

護衛として来ていた通信役など、ただ他より霊力の高い人間に過ぎない。たまに人ではない審神者もいるが、今回は呼ばれていない。彼らがいれば、男士には及ばずとも護衛役など目ではないほどの能力があるのに。やはり、捨て駒にするには惜しいということか。

 

目先の利益しか求めぬ政府め。わたしは簡単には屈してやらないから覚悟しなさい。

 

 

「紫黒、わたしを抱えて屋根に登って!あれを引きつけます!通信役よ、審神者を守って本丸へ帰りなさい!」

 

 

わたしを横抱きにした紫黒が窓から飛び出す。引きつける。わたしは全てをかばいながら戦うだなんて能力はない。せいぜい囮になるのが精一杯だろう。

 

紫黒の霊力はただ大きいだけでなく、応用に優れていた。そしてそれは、わたしが操れば囮として最高の役割を果たした。

 

 

「右から来ます、上に避けて!」

 

「あれは、なに?」

 

「詳しくは。さっき更新されたデータでは検非違使という名前だけ!」

 

 

政府のハードにアクセスしても、あんな姿形の敵は見たことがない。いくら資料がなくても、あれほど強ければ噂になってもおかしくないのに。

 

ということは、ここにいる誰も知らなかったということだ。

 

 

「後ろ!」

 

「や、ば…」

 

 

紫黒の体で反応が遅れたせいで、一瞬動きが間に合わない。斬撃を食らうことを覚悟して、結界を張ろうとすると、それより早く軽い衝撃と金属音が響いた。

 

 

「だいじょうぶですか!」

 

「地面、走って…ッ!下に補佐隊が来てるから!」

 

「今剣さま、小夜さま!」

 

 

斬撃を往なす二人に背を向け、すぐさま飛び降りる。着地の衝撃が少ないのはさすがだと思う。そのまま前に走り出すと、すぐに鯰尾さまと骨喰さまが並走した。

 

 

「無事ですね!」

 

「はい!ですが先に、首尾を!」

 

 

紫黒に抱えられたまま少し顔を上げる。正面を走る骨喰さまが、わずかに顔をしかめたのがわかった。

 

近くに薬研さまと倶利伽羅さまの霊力を感じない。正確には、敵か味方か区別のつかない霊力の塊が少し離れたところにいくつもある。きっとみんなが戦闘しているんだろう。

 

会場にいた他の審神者は逃げられたのだろうか。

 

 

「報告、現在重傷者0、中傷者2、軽傷者5。第二部隊が囮になって、その隙第三部隊が他の審神者を逃がしている。…っ、薬研と大倶利伽羅は今手当に向かっている。薬研からの伝言だ、ここにいる四人は護衛につけると。俺たちはどうしたらいい。このかは、どこへ行きたい」

 

 

浅い呼吸を繰り返す紫黒に、どこか怪我をしたのだろうと予想がつく。これ以上わたしを抱えて走らせることはできない。だからと言って、わたしが走って逃げられるかといえば全くそんなことはない。即座に斬られてしまうだろう。

 

 

「薬研さまたちは今どちらへ?」

 

「厚と秋田の元へ」

 

「その二人が中傷なのですね?紫黒、次を右、その先左側に空き地があります、そこで止まって下さい」

 

 

四人にも付いてくるように言うと、紫黒が一気に加速して、跳ぶように目的の空き地にたどり着いた。空き地とは言え、車1台分くらいのスペースしかない。そこに六人が集まると、そこそこの密集になった。大きな霊力に酔いそうだ。

 

地面に降ろしてもらって、すぐさま紫黒の怪我を手当てする。左肩に打撲の跡ができていた。

 

 

「無理しないでください。応急処置はしましたから、なるべく腕を使わないように。式神をつけます、紫黒と骨喰さま、今剣さまはすぐに第三部隊並びに薬研さまと合流し、式神の一つを渡してください」

 

 

小声で指示を出す。それを受けた三人がクッと頷いてから人間ではありえない速さで背を向けて走り出した。

 

 

「わたしたちは第二部隊に合流します。小夜さまは先導をお願いします。鯰尾さまは…」

 

「主さんを抱えて走ればいいんですよね?」

 

 

任せてください、と簡単に抱き上げられてしまう。

 

ああこの足手まとい。せめて自分で走れる足があればいいものを。

 

空き地を出て走り出す。まっすぐに向かう先には大きな霊力の塊が二つ動かずに睨み合っているようだった。

 

間近までくると、それがより顕著に見えた。睨みあいが続いている。この隙に逃げ帰ることはできないのか。

 

 

「とー…っちゃく!」

 

「ありがとうございます。歌仙さま!」

 

 

横並び一番右端に立っていた歌仙さまに走り寄る。よかった、こちらは目立つ怪我はないようだ。

 

 

「無事だったんだね。悪いけど状況の報告はできそうにないよ」

 

「どういうことです?」

 

「あれらが一切動かなくなったんだ。こちらも下手に手出しができず、身動きが取れないというわけだ」

 

 

何故動かないのか。あいつらは敵で、あれらにとってのこちらは排除すべき対象だというのに。

 

それとも根本から読み違えているのか?けれど新勢力として、歴史修正主義者並びに審神者と対立するものであるというデータを更新したのは政府。

 

不意にわたしの頭上を踊る式神が目の前まで降りてきた。

 

 

『ーー聞こえるか大将。三番隊六名、薬研、大倶利伽羅、骨喰、今剣、紫黒殿、総勢十一名揃った。応急処置済み、けど早く手入れしたほうがいい。あれのあと一撃でも食らえばやられちまう』

 

「薬研さま、身を隠していてください。すぐに指示を出します」

 

 

パッと歌仙さまの方を振り返る。わたしは戦術に長けているわけではない。教科書通りの戦術が通用するわけでないのもわかっている。

 

 

「歌仙さま、指示を任せます。最優先は全員の帰還、わたしと紫黒は門を開くことができます。あれらが動かないとは限りません。それから、もし門に入ってこられたら終わりです」

 

 

どうか、と続けようとした時、検非違使が動いた。なんのために動かずにいたのかわからないが、行動したのも唐突だった。

 

速攻してくる。人の目では負えなかったが、霊力の動きだけはわかった。が、人間の行動が追いつくわけではない。寸前まで迫られた時には、歌仙さまに抱えられ、鯰尾さまが斬撃を受けているところだった。

 

 

「紫黒殿聞こえるか!怪我人と薬研から順に全員本丸へ帰し、貴方も本丸へ帰って待機、襲われそうになったらこちらの方へとにかく逃げるんだ。途中で帰れるなら帰るように。なるべく早く!」

 

『聞こえたか紫黒殿ーー了解した。大将、先に手入れ部屋使ってるぜ』

 

「はい。清光さまに、夕飯の準備をお願いしますとお伝えください!」

 

 

ふわりと式神が浮き上がり、また頭上で踊る。通信が切れたようだ。

 

戦闘を開始して数分。わたしは歌仙さまと鯰尾さまに庇われるようにして門を作り出した。

 

 

「なるべく押すんだ!合図を出したら門に飛び込め!」

 

 

歌仙さまの一声にみんなが反応を返す。傷は与えられずとも、隙のない剣さばきで押して行く。数はこちらが優勢、力だけなら負けてはいない。

 

 

「…今だ!」

 

 

大分の距離を押した先から飛ぶように帰ってくる。機動の高い青江さまから順に門に飛び込んで行く。戦っていた全員が入り、鯰尾さまも飛び込む。最後に歌仙さまが手を入れて、わたしの手を引いた。検非違使はあと数十メートルまで迫っている。

 

 

「帰ろう」

 

「はい!」

 

 

自分の手が虹色の膜に触れた瞬間、大きな音を立てて電気が走る。歌仙さまの手が緩んで全てが門の向こうに行ってしまう。

 

強制的に門は閉じた。わたしは締め出された。

 

 

「貴方にはこちらに来ていただきます」

 

 

暗転。ああ、紫黒は無事にみんなを返せたかしら。




ここまで閲覧ありがとうございました!次回はおまけとさせていただきます。男士もこの本丸にいる半分くらいでましたので、全員ちょっとずつ出す感じで小ネタを。最後には今回の続きというか結末を入れる予定ですので、よろしければ目を通してみてください。

次回の更新は11/9を予定しております。

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