みんないっしょに。   作:matsuri

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まず最初に、2日も遅れてすいませんでした。待ってくださっている方がいらっしゃるかわかりませんが、いたら嬉しいと思うのですが、すいません、うだうだやめます。とりあえず自分の決めた締め切りを守れないとは…次回からきちんとやっていけるよう努力いたしますので、これからも宜しくお願い致しますm(._.)m


山姥切さまと本音の話

堀川さまが興奮のあまり固まって動けなくなったのは、この日の夕方の特筆すべき出来事の一つだ。なぜなら山姥切さまに続き和泉守さまがいらっしゃったからだ。これは堀川さまにお知らせしなければと二人の元へ呼んだところ、どちらを先に喜べばいいかと固まり、動かなくなってしまった。結局、二人まとめて抱きしめた堀川さまの目には涙が浮かんでいたと思う。抱きしめられた二人がムスッと頬を染めたのは記憶に新しい。

 

それが一昨日のこと。今日の和泉守さまは歌仙さまと堀川さまに任せて遠征に行ってもらっている。無事に帰ってきてくれるといいのだけど。そして山姥切さまは、学校から帰ってきたわたしと畑に向かっている。

 

 

「じゃあ、頑張りましょ〜」

 

「ふん、写しには土いじりがお似合いか…」

 

「もう…」

 

 

言いながらもしゃがんで雑草を抜いていく。因みにその背に白い布はない。引っぺがして代わりに麦わら帽子をかぶせてある。基本は好きにすればいいから、せめて部屋に汚れを散らす可能性を減らしてくれと頼んだのだ。問題は頭と顔を隠したいということだから、渋々ながらも了承してくれた。綺麗な顔なのに、というのが禁句なのも理解した。

 

 

「山姥切さま、少しは人の体に慣れましたか〜?」

 

「…写しに何を期待しているのやら」

 

「確認事項です」

 

 

はい、とゴミ袋を差し出す。片手を突き出すようにして抜いた草をそれに放るとまた下を向いて作業を再開した。

 

 

「…悪くない。箸はまだ使えないが…よく文字など書こうと思うものだ」

 

「ああ、歌仙さまですね〜?でもそれも慣れですよ。文字は読めるようですし、時間の問題でしょう」

 

 

そういうあなたも書こうとはしてみたのですね。左手に墨の跡。先に鉛筆をお貸しした方がよかったかしら?

 

特に会話もなく黙々と作業を続ける。合間に見た横顔は土に汚れながらもまんざらでもないようだった。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

黙々と作業を続けること一時間。まだ体に慣れていないからなのか、山姥切さまが足を煩わしそうにさすり始めた。痺れたのかしら?

 

 

「少し休憩しましょう。あそこで手を洗って、縁側で待っていてくださ〜い」

 

 

頷くのを見て背を向ける。あ、蛇口のひねり方って誰か教えてただろうか。

 

大福とお茶を持って縁側に戻ると、白いお化けのようなシルエットが座っていた。

 

 

「お待たせしました。やっぱりそっちの方が落ち着きますか?」

 

「ああ…。やはり一番しっくりくる」

 

「衛生面だけ考慮していただければまあ構いませんから」

 

 

間にお盆を置いて座る。湯呑みを手渡すと、恐る恐るというように両手で受け取った。わたしが口をつけると真似をする。どうやら熱かったようで、慌てて口を離した。

 

 

「お部屋は窮屈ではありませんか〜?」

 

「別に。元々広めの部屋ではあるし、兄弟たちも持ち物が少ない。布団を敷いて寝るだけなら支障はない」

 

 

ただ、とぎゅっと湯呑みを持つ手に力が入る。

 

 

「俺なんかが同じ部屋でいいのか…と、思ってしまう。所詮俺は写し、彼らが気まずくないかと、そう…」

 

「うーん、この本丸の彼らに限って言えば、ないでしょうね〜」

 

「なぜ言い切れる」

 

 

呟くように、半ば懇願のように言う。優しい彼らのことを疑うことすら、彼にとっては苦痛なのかもしれない。優しいが故の脆さ。やはり、山姥切さまを先に内番に回しておいてよかった。

 

 

「堀川さまは、自分を贋作だと言いました。山伏さまはそれには何も口出ししません。言い方が悪いかもしれませんが、彼らにとってどうでも良いことなのです。模造であれ贋作であれ他の写しであれ、同じ堀川派と呼ばれる刀を兄弟と呼ぶ。人間だったらこう簡単にはいきませんが、あなたたちは刀なのですから。それに思いやる気持ちがあるということは、少なからず彼らに好感を持ったということでしょう?」

 

「……」

 

 

あら、黙られてしまった。私の推測は間違っていたかしら?よりうつむいてしまう。

 

風が庭の松を揺らし、池では鯉が顔を出す。鹿おどしの音がやけに大きく響いた。

 

 

「それでは不満か」

 

 

山姥切さまが勢いよく振り返る。手元のお茶が少し土の上に落ちた。

 

 

「主殿は正しい。堀川は真作とも贋作とも言い切れないが、拙僧はそれでいいと思っている。それはさて置き、だ兄弟。拙僧はお主を兄弟と呼びたい。国広の第一の傑作を、兄弟と呼ばせて欲しいのである。拙僧たちの気持ちは言った。後は、お主の気持ちだけなのだが」

 

 

微かに震える手から湯呑みを受け取ると、驚いた顔をした後何とも言えない、叫びたそうな顔になり、それから口を一文字に結んで拳を握りしめた。

 

 

「お、俺は…」

 

 

小さな声。けれどきちんと届く声。わたしたちはおし黙る。

 

 

「俺は…写しだし、彼らのように明るくもないし、…けれど」

 

 

立っている山伏さまを見上げるように顔を上げると、頭に深くかぶっていた布がふわりと落ちた。

 

金色が、波を打った。

 

 

「初めて来たとき、会ったとき、二人に兄弟と呼ばれて嬉しかった…!泣いて喜びながら抱きしめてくれたとき、よく来たと髪をかき混ぜられたとき、温かくて、初めて喜びを感じた。だか、だから、俺も…」

 

 

ぼろっと、涙がこぼれた。それに気づいてか気づかずか言葉が止まった。

 

それはぼろぼろととめどなく溢れ続ける。やっと気がついたのか片手を頬に伸ばし、首の後ろの布を引いた。顔はすっかり隠れてしまったが、嗚咽だけが漏れ聞こえてきた。

 

その白い頭を優しく両腕で包み込む。幼子をあやすように撫でていれば、座る背中側からわたしたちを包むように手が回された。山伏さまの逞しい腕を感じて、山姥切さまは小さく、けれど確かに笑った。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

「疲れてしまったのかな」

 

「ふふ、よく働いてくれましたからね〜」

 

 

蜂須賀さまが持ってきてくれたブランケットを、わたしの膝の上で眠る山姥切さまにかける。布が落ちた頭を撫でると一瞬眉をしかめてまた穏やかな寝息を立て始めた。

 

 

「山姥切は少し考えすぎだろう。国広一の傑作だと自負しているのなら胸を張っていればいいんだ」

 

「そうですね〜。でも、本音が聞けたので結果オーライというやつです」

 

「…兄弟とは、」

 

 

何かを言いかけてやめてしまったが、それ以上追求することはしなかった。

 

彼は虎徹、贋作や写しなどというのに思うところがあるのだろうと勝手に思った。




ここまで閲覧ありがとうございました。解説というわけではないですが、このお話の中ではまだ検非違使の詳しい説明が出てきておりません。つまり贋作の兄ちゃんも竜宮城への行き方がわからない弟くんも登場しておりません。そんでもって山姥切は若干卑屈が軽減された状態でお送りしていきます。だって明るい本丸にしたいんだもの!!(やりたい放題)

追記:すいません、盛大に間違えたあとがきを訂正いたしました。検非違使出てますよ、出てないのは詳細です。

次回の更新は12/28を予定しております。
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