みんないっしょに。   作:matsuri

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突然の変更ですいません、更新を2週に一度にさせていただきました。最近書く時間が取れないのと、ぶっちゃけネタ切れで…。そろそろキャラ二周目に入ると思いますが、宜しくお願いします。しばらくはまたシリアスというか大筋の話です。
ところで不動くんは手に入りましたでしょうか?わたしは残念ながら…(T ^ T) ですが明日からアプリが配信されますね!楽しみです!


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演練場はとても賑やかだった。

 

まずエントランスに着いたわたしたちは、想像以上の活気に気圧された。まあショッピングモールもある施設だから当たり前といえば当たり前なのだけど。わたしも初めて来たから一瞬言葉が出てこなかった。

 

それから気を取り直し、国俊さまと受付に行く。演練受付には四、五人の審神者とその近侍が並んでいた。ちなみに受け付けは他に入場受付(審神者を含む入場)刀剣入場受付(刀剣のみの入場)があり、つまりは買い物のためでもここを通らねばならない。刀剣だけでも買い物に来れるショッピングモールだから、一度は連れて来たいと思っていたのだ。

 

 

「第一三二支部です」

 

「はい、予約を受けております。本日は五戦のご希望ですね。試合時間はこちらのシートに記載されていますので、五分前には控え室に刀剣を預けてください。また、刀剣の区別をつけるためと入場パスを兼ねたバンドをつけていただく決まりとなっています。これは支部として登録していますので刀剣を変えても有効です。審神者、近侍を含め何本必要ですか?」

 

「八本でお願いします」

 

「かしこまりました。ではこちらを。一日有効ですので、最後に帰還する際返却をお願いします」

 

 

事務的な作業を終えみんなの元へ戻る。言われたことをそのまま伝えてバンドをつけてもらい、入場ゲートをくぐった。

 

まずはじめに、と案内版の前に行く。案の定マップの掲載されたパンフレットが置いてあり、一部貰って空いている場所に移動した。

 

 

「ここは見ての通りショッピングモールが併設されています。普段自分たちで生活に必要なものなどを買うときはいつもの町で十分ですが、ここではいろいろな時代のものが揃っていますからね〜。今日はゆっくりと見て回れませんが、来たければ外出許可を出しますので申し出てくださいね〜」

 

「きらびやかである。しかし少しばかり寂しい」

 

「兄弟は滝や山の方が好きなだけだろう」

 

「うむ、その通りである」

 

 

カッカッカといつものように笑う。ここでそれの大きな笑い声を咎めるものは殆どいない。審神者と刀剣しかいないから、結構自由に振る舞えるのだ。

 

ウインドウショッピングをしながら控え室を目指す。まだ大分時間はあるが、初めてなので控え室や合戦場を一応確認しておきたかった。

 

控え室は六人分の椅子と長机、壁側にロッカーが置いてあるだけの簡素な部屋だった。ロッカーは買い物をした後の荷物を置くための措置だろう。これだけでもだいぶ行き届いた配慮だと言える。これから戦う刀剣は、基本荷物など持たないのだから。

 

 

「皆様の試合は十時四十五分から開始です〜。あと…三十分はありますね、わたし何か買ってきましょうか」

 

「ううん、平気。なんか欲しいのあるやついるー?」

 

「僕は大丈夫だよ。準備もできてる」

 

 

光忠さまの声に数人が頷く。うーん、この部隊は物静かな方を一緒にしすぎたかしら。

 

まあいらないというのならいいだろう。間に合うよう行動することを約束してもらって、わたしと国俊さまは控え室をあとにした。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

向かった先は観戦室。当事の審神者並びに近侍のみが入れる。他の観客はモニターで見れるようになっているようだ。

 

こんなに早く来たのには訳があった。いままで避けていた理由がここにある。しかし来てしまった以上、避けては通れない。

 

途中、隣に並ぶ国俊さまがこちらの顔を覗き込んだ。

 

 

「なあ。その服、俺と出かけた時に買ったやつだよな」

 

「ええ。髪は次郎さまにやってもらいました。…へん、ですか?」

 

「いいや、すっげー似合ってるぜ!」

 

 

でも、と言葉が続く。前を向いて、少し眉を寄せて。

 

 

「周りの連中、お前のことへんに見るから。なんか腹立つ。っつーかムカつく」

 

「まあ…この髪は目立ちますからね〜」

 

 

ちょいちょいとおろしてある髪を引く。一言で言えば水色。いかに他の審神者も髪を染めているからとは言え、ここまで目立つ色にするものは少ない。確かに神に見つけてもらいやすくする意味合いもあるが、理由はそれだけではないのだ。

 

いやに視線を集める理由もそれだけではないだろう。顔には布をかけるのが一般的だが、わたしは面をつけている。赤い化粧の狐の面。面をつける審神者は限られているのだ。

 

他の本丸の刀剣に名や素顔を晒すわけにはいかない。さすがに隠されそうになってもこう周りに大勢がいては対処ができない。だから面をつけるしみんなに名を呼ばぬようにも言った。

 

 

「放っておけばいいんですよ。見ているだけで害はありませんから〜」

 

「…そうだな。んじゃ、とっとと行こーぜ!戦ってるとこ横から見るだけなんてつまんねーけど、オレ清光の戦ってる姿は好きなんだよなー」

 

「へぇ。それは楽しみですね〜」

 

 

やはり最初に二人だけで出陣したこともあったからか、お互いのことをよく知っている。素敵な関係、少しだけ羨ましく思ってしまう。

 

 

「ここが観戦室のようですね」

 

 

ようやく着いた部屋に、先ほどの控え室と同じ番号が振ってある。ロック解除のセンサーにバンドをかざそうとして、途中で止めた。

 

 

「国俊さま。入りますが、今から会う相手に絶対口ごたえをしないでください。それから、ここでの会話などは誰にも言わないでください。わたしのお願いです。約束を」

 

「…わかった。でも、なんかあったらお前の命を最優先にするからな」

 

 

今のわたしは笑えているだろうか。ゆっくり頷いてロックを解除する。自動的に開かれるドアの向こうには、やはりすでに先客がいた。

 

先客は振り返らない。代わりに、側に仕える白髪がゆるりと振り返った。

 

 

「おや、これは懐かしい」




ここまで閲覧ありがとうございました。
この先しばらく審神者が出張ります。国俊くんがたまに口を挟みますが、基本は審神者の過去の話になると思います。あと二、三話です。お付き合い下さると嬉しいです。

次回の更新は3/14を予定しております。

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