みんないっしょに。   作:matsuri

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今回よりメインキャラを決めてのお話になります。一人か二人くらいずつで話を回していきますが、メインになるキャラはランダムですので悪しからず。ちなみに仲間になるみんなは、実際に私がプレイして仲間になった順番です。以外と平野くんが鍛刀の二人目で来ていたという。驚きました。


清光さまときまりごと

「あるじ〜、正国、寝た?」

 

 

こそっと障子の向こうから影が囁いた。そっと床を離れ、障子の外に出る。清光さまが、少し離れて待っていてくれた。

 

あれから数日、わたしの本丸には六振りの刀が揃い、だいぶ賑やかになっていた。新しく来た二人が、わたしのことを認めてくれているのかは別として。

 

 

「眠れるのなら、先に寝ていてくださってよかったのに」

 

 

今日新しく来た青江さまと正国さまが眠って本丸全体が静かになったものだから、もうわたしが最後だと思っていたのに。

 

 

「一応近侍だからね。あるじを守らないと。今日も屋根の上か縁側で明かすよ」

 

「国俊さまは?」

 

「自分の部屋でぐっすり。あいつ意外といびきもかかないし寝相もいいから、あとふたり来てもなんとかなりそうだね」

 

 

ふふっと顔を見合わせて笑う。

 

来派は三人だ。最初に清光さまと国俊さまと全員分の部屋割りを決めたとき、三人は同じ部屋で良いと了承を得ている。だから、今は国俊さま一人で広い部屋に落ち着いている。すごいのだけど皮肉なことに、あとの二人はとてもレアリティが高いから、なかなか部屋は埋まりそうにないけれど。

 

 

「安定さまも、早く来てくれるといいですね」

 

「…まーね」

 

 

口調はささくれているように聞こえるけれど、早く会いたくてウズウズしているのが良くわかる。新撰組、沖田総司のもとで清光さまと時を同じくした大和守安定。早く迎え入れられるよう、今いるみんなを鍛えなければ。

 

 

「明日の予定、清光さまには伝えておきますね〜」

 

 

前置きをして先ほど決めた明日の予定を思い起こしながら口にする。

 

鍛刀のこと、次の出陣のこと、内番を始めること、決まり事を制定すること。

 

清光さまは指折り数えるように聞いていて、最後には頷いたものの、引きつった口元を隠そうともしなかった。

 

 

「畑、かあ…。まあ必要なことだとはわかってんだけどさー。てか、よくそれだけを覚書もなしに決められるよね」

 

「そうですか?でも、ちゃんと大広間に書き起こしておきますよ〜。全員がわからないと意味がありませんからね。それに、決まりごとは定めておかなければ。なるべく失敗のないように、ですよ〜」

 

「そーね。ま、俺も手伝うからさ、とりあえず今日はもう寝なよ。あの二人を呼び起こすんで疲れたでしょ?」

 

 

心配、とは。されるとは思っていなかった。わたしは顔に出さないし、別段疲れているわけでもない。刀だから人の感情は持ち合わせていないとかそんなことを思ったわけではなかったけれど、純粋に心配されるのはくすぐったいものだった。わたしは使える人間なのだから、と見栄を張って生きていた分、そんなこととは無縁だったのだから。

 

くすっと笑った。自分が笑ったというのに、少し驚いた。

 

 

「わたし、そんなに疲れていないんですよ。でも夜更かしは肌によくありませんし、寝ましょうか〜。清光さまももう寝ましょう。大丈夫、わたしが気丈な限り、敵の侵入はさせませんから」

 

「それ、あるじがあんまり寝ないで結界を張り続けるってことでしょ。知ってるんだから。止めてよそんなこと」

 

「清光さま?」

 

「もう俺たちがいるんだよ。あるじは俺たちのことを家族だと言ってくれた。友人として扱ってくれた。人と刀なんて根本から違うのに。あるじは俺たちのことを思って、絶対に無理な出陣はしないでしょ?たった数回しか戦場には出ていないけど、それが心配なんだってわかった。戦場なのだから多少の怪我も仕方がないって割り切っているように見せて、本当は俺たちよりも傷ついてる。もっと頼ってよ。俺たちだって、このかが俺たちを心配するように、このかを心配してんだよ」

 

 

何かが決壊したようにどんどん言葉を紡いでいく。鬼気迫るものを纏いながら、詰め寄ってくる。すでに後ずさるための空間がない。どうどうと両手で制すると、状況に気づいたのか、ぱっと身を引いてくれた。

 

顔、赤いかも。ああ、わたしは女だから、こういうことにも気をつけなければいけないのか。

 

 

「だからっ、友達なんだから、少しくらいわがまま言って欲しいし、俺にも守らせてって言ってんの!」

 

 

もう行くから!と勢いよく立ち上がり、わたしに背を向け歩き出す。少しだけ足音が大きく聞こえるのは夜の所為か、彼の心情を表しているのか。

 

 

「もう寝てよね!」

 

 

肩越しに振り返って睨むと、すぐに飛び上がって廂に手をかける。そのまま体を揺すってひょいと屋根の上に上がってしまった。どうやらこのまま本当に屋根の上で夜を明かすらしい。思ったより頑固だな〜。

 

明日、きちんとルールを決めなければ。納得させ、わたしも彼らも無理をせずに行えるルールを。

 

 

「こっちのセリフですよ、まったく」

 

 

いくらわたしが心を痛めたところで、本当に怪我をしているのは彼らの方。確かに手入れをするにも出陣するため時代を飛ぶのもわたしの霊力を使うけれど、そんなのわたしにとったら微々たるものだ。新参のみんなを守って一番霊力を使うのも、気負っているのも、きっと清光さまの方なんだ。

 

まあとりあえず、今日はお言葉に甘えて寝るとしようか。

 

明日こそは、もう何日も睡眠時間を削って夜番をしている清光さまを寝かしつけると心に決めて。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

「では、これからはこの決まりを守っての行動をお願いします。破ったからといって罰があるわけではありませんが、責任はすべて自が負い、果たすように。わたしも、怒りますし、怒られますから」

 

 

翌朝、清光さまが倒れた。原因は言わずもがな、睡眠不足だ。

 

決めたことといえば簡単な制度のみ。たったの十の事柄だけ。念のために書き起こしておこうと思う。

 

一、近侍は一番隊隊長が兼任するものとし、審神者の職務の手伝い、及び代行を行うものとする。なお、近侍は内番と同様に当番制とし、それらの当番は前日の夜掛札により審神者が示した通りにする。

 

二、内番は次の七つである。畑仕事、馬当番、料理番、洗濯掃除番、夜番、近侍。それらの仕事はすべて前日の夜に部隊編成とともに掲示される。また、兼任する場合もある。

 

三、食事は決まった時間に本丸にいる全員が揃って取ること。手入れ中や病気、夜番の後、その他やむおえない事情がある場合はこの限りではない。

 

四、出陣、遠征、遠練、畑仕事、馬当番、手合わせの後、その他汚れるようなことがあればすぐに入浴すること。ただし審神者が入浴中に限り、出てくるのを待つこと。

 

五、手入れは怪我の大きさによらず、帰還次第行うこと。軽傷以上の怪我を負ったものは次の出陣には一切参加してはならない。部隊のうち一人でも重傷を負ったならば、何を置いても本陣に帰還すること。また、手入れ待ちに鍛錬や手合わせすることを禁ず。疲労を感じたものはすぐに申し出ること。

 

六、執務中の審神者の部屋には近侍以外の立ち入りを禁ず。審神者が執務中、出陣中、外出中は、代行(近侍)に本丸のすべてを任すこととする。その場合代行(近侍)の言葉は審神者と同等の価値とする。

 

七、生活費、必要経費以外は給料制とし、個人のものはそれで賄うこととする。金銭の貸し借りは借用書を作成した上で両人の同意と責任のもと行うこととする。

 

八、手合わせや鍛錬による道場の使用は、代表者一人による予約制とする。前日までに審神者に申し出ること、また一度に使用できるのは三時間までとする。誰も使用していない場合は自由に使用してよいが、時間になり次第速やかに退出すること。

 

九、審神者、または代行(近侍)の指示以外のことは、すべて自らの責任のもと行動すること。ただし、本丸の外へ出る場合には審神者の許可を必ず得ること。外出時と帰宅時に必ず報告すること。

 

十、休暇を取る場合は必ず二日前までに申告すること。当日の休暇申し込みをする場合にはその日非番のものに交代を頼み、その旨を審神者に伝えること。

 

清光さまにだけは、なんと言われようと変える気はない。

 




ここまで閲覧ありがとうございました。加州君は初期刀なので、やっぱり一番かな、と。しかし現状、一番レベルが高いのは加州君ではないという。…なんかごめん、加州君(追記8/21:メインキャラの話だけ、題名を差し替えます。見ただけで内容を思い出せるようにしました)

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