みんないっしょに。   作:matsuri

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今回から数回、ちょっとシリアスです。第1章もこの話が終わったら終わりかな〜?って感じです。前回申し上げたとおり新しいオリキャラ(今回は名前すら出ませんが)が出てきますので、あらかじめご了承ください。日本号楽しみですね!


7

夕暮れ、歌仙さまと洗濯物を取り込む。あんなに嫌がっていた畑仕事だけれど、どうやら性にあっていたらしく、今日は当番でもないのに秋田さまを手伝っていたようだ。やっぱり、第一印象で決めるのはよくないな。

 

昨日帰ったあと、国俊さまはいつも通りだった。ほっとした反面、やはり早く全員を揃えたい。

 

それに、実はそろそろ限界なのだ。

 

 

「今日は五虎退さまも鯰尾さまもいらっしゃってまた賑やかになりましたね〜」

 

「そうだね。そろそろ料理番の人数を増やすべきかもしれないな」

 

「二人で作るのは結構大変ですよね〜。歌仙さま、明日は挑戦してみます?」

 

「君に手ほどきして貰えるなら、喜んで受けよう」

 

 

クスクスと笑いあう。だってこの方には、わたしが実は包丁に慣れていないことがバレてしまったのだ。

 

調理実習に早さは求められなかったからいいんですよーっと。

 

 

「あるじ〜っ」

 

「あら、清光さま。どうかしましたか〜?」

 

 

清光さまが慌ててわたしを呼ぶ理由なんて限られているから、どうせまた遠征帰りの正国さまが重傷にでもなったのだろうと思ったら。

 

 

「お客人だよ!洋装だから、この時空の人間じゃないと思うんだけど…」

 

「ああ、通信役の方ですかね〜。入れて差し上げてください。それから…」

 

「まって、違う。そのお客人、大怪我してんの!」

 

 

その言葉で、わたしが次取るべき行動は決まっていた。

 

 

「歌仙さまは全員を客間の前に集めて待機、清光さまはわたしと一緒に来てください!」

 

 

これが最善の策。

 

することが決まってしまえば行動は早い。全員が走り出す。わたしは追いつけない。後についていく。

 

 

「あっ、鯰尾さま!来てください、緊急事態です!」

 

 

今日顕現したばかりの鯰尾さまも、私の言葉から異常を感じとったのか、手に持っていた木の枝を放って走り寄って来てくれた。

 

本丸の中は何事もない。歌仙さまの迅速な行動によってすでに召集は終えているように見える。

 

門に着くと、先についていた清光さまと、多分清光さまが命じたのだろう、鳴狐さまが見張りに立っていた。門の外に見える影。服装や持ち物からして通信役で間違いない。

 

 

「怪我人は!」

 

「主殿!それが来てみればなんということか、怪我をしている人間が門の前に…もがっ」

 

「外に出る許可を」

 

 

語りに入ったお狐さまの口を塞いだ鳴狐さまがわたしに訴える。

 

呼吸の乱れを無視して、一も二もなく大声を出す。

 

 

「許可します!清光さまは警戒、鳴狐さまは彼を引き入れて!鯰尾さまは隣に落ちているあの荷物を全て回収して下さい!」

 

 

言い終えたと同時に素早く三人が動く。倒れていたのを清光さまが抱き起こし、そのまま支えられる彼を鳴狐さまが背負った。

 

鯰尾さまが回収し終えたと門の中に入って来たので、その中から応急道具を探し出す。荷物は地面に置くよう言って、取り出した方を押し付けた。

 

 

「鯰尾さま、先にこれを持って客間へ。布団を敷いておいて下さい。鳴狐さま、客間へお連れしてください!清光さまは鳴狐さまについて!」

 

「わかった!」

 

「鳴狐さま、あまり揺らさず、ゆっくりと戻ってください。わたしは後から行きます」

 

 

頷きが返ってくる。わたしも頷き返し、急いで自室に戻った。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

部屋に入って左側、背丈ほどの本棚。そこから急いで必要とする本を数冊抱き、駆け出した。一目見ただけだけれど、一刻を争う状態だというのはわかっている。

 

客間の近くまで来れば、呻き声と慌てた様子がわかりやすく耳に入った。

 

 

「お待たせしました!」

 

 

障子を開け放っている客間に駆け込む。通信役がうつ伏せに寝かされていた。怪我は多々あるようだが、背中の傷が一番ひどい。

 

深呼吸をして審神者の顔を作る。今から少しの間だけ、反論を許さぬ絶対的な存在になるのだ。

 

 

「…これから指示を出します。国俊さまを中心に短刀全員は本丸の周囲の偵察を。敵がいれば応戦せず報告に戻ってください。何もなくとも五分で戻ってください。四人全員に外出の許可を与えます」

 

 

いつものあどけない笑顔を消し、今は戦う者の顔になっている四人が、国俊さまを先頭にこの場から離れていく。

 

それを見送り、顔を残った全員に戻した。

 

 

「次、青江さまと清光さまは通常通りの夕食と、簡単な粥の準備をしておいて下さい。歌仙さまはその二人の手伝いを。太郎さまと正国さまは門を張っていてください。誰か訪ねる者があれば片方がその場で留め、片方が報告に来てください。また、短刀が万が一にでも戦闘になった場合には乱入して連れ逃げてください。そしてすぐに報告。その為の外出許可を与えます」

 

 

頷きのみで了承した五人がそれぞれ自らの持ち場へ行く。

 

そうしてその場に残ったのは、わたしと鳴狐さま、鯰尾さま、それから通信役だけだ。

 

 

「お二人にはわたしの手助けをしていただきます。お狐さまは縁側で誰かが来る気配を真っ先に察知してわたしに教えてください」

 

「かしこまりました!」

 

 

部屋の中に四人だけになる。邪魔な袖をタスキで括りあげ、本と救急箱を部屋の半分に広げた。

 

 

 

 

*** *** ***

 

 

 

 

 

それからのことは死闘と言っても過言ではない。慣れない作業をする三人と、怪我の痛みや薬に耐える彼。

 

途中報告に来た国俊さまや太郎さまの話では、この辺りに敵がいる気配はないらしい。ただ、戦闘の痕跡はあったようだから、襲われたのは間違いない。荷物に損傷がなかったことから、彼は荷物を庇いながら逃げていたのだろうと推測される。

 

どうにか全ての怪我を処置し終えた頃には、日が半分ほど向こうの山に隠れていた。




ここまで閲覧ありがとうございました!今回より暫くシリアスな上、刀剣の登場が少なくなるかもしれません!ですが、これがないと先に進めないので、しばしお付き合いくださいm(__)m

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