無事ゲイムキャラの協力を取り付けた悠理たちは、全力を使い果たし気を失ったネプギアをコンパに任せ、次なる行動の為に、シェアクリスタルの間に集まっていた。
「そうですか、犯罪組織もゲイムキャラを……」
「今回は下っ端が相手だったが、こちらが本気である以上、向こうもそれなりの手を打ってくるだろう」
「手分けして、各国のゲイムキャラの捜索に行きたい所だけど、今の状況で戦力を分断するのは危険よね」
ラステイション・ルウィーならば、女神候補生が残っている。
だが、それすらもいないリーンボックスは、犯罪組織の信仰が高く、女神の身では相応の制約の元での戦いとなる。
復帰したばかりのネプギアには、厳しいと言わざるを得ない。
「ならば、次は、ラステイションだな。
あそこならば、信仰の問題はないだろう」
信仰の方向こそ、ラステイションに向いているが、少なくとも犯罪組織を信仰する人間は一気に減っている。
それに、曲者とはいえ、神宮寺ならば、ゲイムキャラの所在を知っている公算も高い。
「そうですね、ネプギアさんが目を覚ましたら、ラステイションへと向かってください。
あちらの、教祖にも話は通しておきます」
次なる目的地は決まった、後はネプギアが目を覚ますまで、体を休め英気を養うだけ。
その為に、部屋へと戻ろうとした悠理を、イストワールが呼び止めた。
「アイエフさんから、話は聞きました。
ネプギアさんが、女神であることに重責を感じていると、そう分かっていても、私は、あの子を戦いへと赴かせることしかできません」
古き女神から作りだされたイストワールは、人間らしい感情は持っていても、やはり、ゲイムギョウ界の存続が一番にきてしまう。
イストワールに出来ることは、ネプギアが戦いに集中できるように、サポートするくらいだ。
「どうか、あの子をよろしくお願いします。
あの子が立ち止まり、道に迷うことがあれば、導いてあげてください」
「善処しよう、と言いたいが、それは杞憂だ、イストワール。
今はまだ、彼女に、目的はない。
しかし、ただ、使命に動かされる人形であることを抜け出そうとしているんだ。
彼女は、俺たちが思っている以上に、強かなのかもしれないぞ」
ネプギアは、その道が苦難に満ちていると知って立ち上がり、剣を執ったのだ。
今はまだ弱い、しかし、強くなろうとする意志があれば、必ず強くなれる。
「――――――――――そうなのかもしれませんね。
ユーリさん、改めて、あの子をよろしくお願いします。
自分の羽根で、飛び立とうとしているあの子を、見守ってあげてください」
「あぁ、任されよう」
「―――――あれ、ここは……?」
「あっ、ギアちゃん、目を覚ましたですか」
見覚えのある部屋、声を掛けたコンパの声で、寝起きの頭は現状を認識し始める。
「ユーリさんは、~~~~~ッ!」
認識した途端、全力を振り絞り、それでもなお届かない光を思い出し、飛びあがるネプギア。
だが、三年間動かさなかった体を、無理に動かし悠理と戦った反動は、体の節々を痛めていた。
「だめですよ、ギアちゃん。
怪我は大したことありませんけど、無理をしすぎです。
女神さんとはいえ、今日は安静にしていてくださいね」
痛みに悶える、ネプギアを再び寝かしつけるコンパ。
意識した途端に、どっと痛みが押し寄せてくるが、そんなものが気にならない程、悔恨の念が胸を占めていた。
「私、負けちゃったんですね……」
「仕方ないですよ、ギアちゃんは、体が万全ではないですし、相手は、ユーリさんです」
そう仕方ない、相手は、姉を含めた、女神全員が戦っても勝てなかった
例え、万全であったとしても、悠理には届かないだろう。
それでも、絶対に負けたくないと、これ以上ない程に強く願った想いが、あっけなく打ち負かされた事実は、悔しさに、涙が溢れてくる。
その涙を隠すように、腕で目を塞ぐが、目を塞げば浮かび上がる、最後の攻防。
光を収束していたネプギアは無防備であり、撃ち落とそうと思えば、すぐにでも撃ち落せただろう。
ネプギアにとっては生涯最強の一撃でも、悠理にとっては、ネプギアを試す試練でしかなかったのだ。
「―――――ギアちゃん……今日は、もう、暴れたりしちゃだめですよ」
そう言い残し、退出するコンパ、その気遣いが今はとてもありがたかった。
あまりにも遠い背中、それは今この時も、あの剣の丘へ向けて進んでいるのだ。
弱さの一切を排除した強さの極致、その場所を目指している悠理に、無様に泣いているだけのネプギアが追い付けるはずがない。
―――――――――――――――だから?
冷静な思考が、悠理との差を告げる。
立ち上がっただけで十分だ、これなら、訪れる苦難にも立ち向かえる。
女神として必要とされるだけの意志と覚悟は手に入れた、ならば、もう、あの背中を追いかける必要なんてない。
――――――――――――――だから?
ネプギアが目指す場所は、人間を導く指導者だ。
一つの国を治める者として、これから多くの者と戦うことになる。
ならば、孤独と無が待ち受けている、あの場所へ向かう悠理とは正反対の方向だ。
―――――――――――――だから、諦めろと言うの?
ネプギアの冷静な部分は、力の差・使命・立場、その全てを論理立て諦めろと言う。
あぁ、正しい、それは、女神が行くべき正道だろう。
だが、剣の丘を見たときに感じた、癇癪じみた怒りの炎は、今もまだネプギアの胸にある。
「――――――――――私は、人形なんかじゃない……!」
女神が行く正道? そんなもの知ったことかと、感情に任せて振り払う。
それは、かつてネプギアが求めていたもの、己が力を奮い、求め、求められる安息の地だ。
だが、自らの意志で、果てへと向かう背中を知った。
誰しもが間違っていると口を合わせて言う場所へ、己が抱いた想いこそが正しいと、世界の全てを敵に回して、傷つきながらも歩む背中を知ったのだ。
滾る激情、それは、羞恥と憧憬だ。
与えられた力で、与えられた役割だけを全うする、それで得た居場所に何の価値がある。
そんな場所を心の底から、求めていた過去は、埋めてしまいたいほどの黒歴史だ。
与えられたのではなく、自分自身の意志で、あんなに悲しくて苦しい場所へ向かおうとしている悠理の背中は、あまりにも眩しい。
だから、悔しかったのだ。
剣の丘を目指す、悠理に憧れていると認められなくて。
憧れている悠理に、本気を出させるどころか、戦いにすらならず負けてしまった事実が。
「――――――――――私は、人形なんかじゃない……!」
力の差がどうした、そんなもの、これから強くなればいい。
女神の使命なんて知ったことか、悠理を目指す傍らに果たしてやる。
女神の立場? 自分が目指すモノを諦めて、自ら生み出た感情を否定して、どうして、他の者を導けようか。
だから、追うと決めた。
不安も恐怖も絶望も、全て、自ら望んで手に入れたもの、誰にも奪わせはしない。
もう、見ているだけの、待っているだけの人生なんて飽きた。
もう、十分、休んだだろう、これからは、自らの足で歩く時だ。
もう、後悔だけはしない。
「これは、私が選んだ道なんだから!」
鳴き声混じりに、一人、悠理から与えられた黄金に輝く剣に誓う。
いつか、悠理を倒し、力づくで、あんな場所から引き離す。
それが、ネプギアが初めて選んだ、進むべき道。
弱い自分にサヨナラを、苦難よ、こんにちは。
どんな絶望でも押し寄せてくるがいい、全て乗り越え、いつの日か必ず
というわけで、第一章完結です。
精神的に、原作より恐ろしい程にタフになったネプギア。
女神を救うと言ったアイエフは涙目です。
でも、まぁ、ようやく型月ヒロインらしくなってきたなと思います。
喧嘩上等、護られるだけなんてまっぴらごめん、
そんな、型月ヒロインが大好きです。
それでも、ネプギアの天然で可愛い部分や、ちょっと残念なところも織り交ぜ、第二章へと突入していきます。
それでは、また次回、さようなら