剣の丘を目指す者   作:未来

15 / 50
選んだ道

無事ゲイムキャラの協力を取り付けた悠理たちは、全力を使い果たし気を失ったネプギアをコンパに任せ、次なる行動の為に、シェアクリスタルの間に集まっていた。

 

「そうですか、犯罪組織もゲイムキャラを……」

 

「今回は下っ端が相手だったが、こちらが本気である以上、向こうもそれなりの手を打ってくるだろう」

 

「手分けして、各国のゲイムキャラの捜索に行きたい所だけど、今の状況で戦力を分断するのは危険よね」

 

ラステイション・ルウィーならば、女神候補生が残っている。

 

信仰(シェア)もその働きによれば、僅かながらでも維持できるだろう。

 

だが、それすらもいないリーンボックスは、犯罪組織の信仰が高く、女神の身では相応の制約の元での戦いとなる。

 

復帰したばかりのネプギアには、厳しいと言わざるを得ない。

 

「ならば、次は、ラステイションだな。

あそこならば、信仰の問題はないだろう」

 

信仰の方向こそ、ラステイションに向いているが、少なくとも犯罪組織を信仰する人間は一気に減っている。

 

それに、曲者とはいえ、神宮寺ならば、ゲイムキャラの所在を知っている公算も高い。

 

「そうですね、ネプギアさんが目を覚ましたら、ラステイションへと向かってください。

あちらの、教祖にも話は通しておきます」

 

次なる目的地は決まった、後はネプギアが目を覚ますまで、体を休め英気を養うだけ。

 

その為に、部屋へと戻ろうとした悠理を、イストワールが呼び止めた。

 

「アイエフさんから、話は聞きました。

ネプギアさんが、女神であることに重責を感じていると、そう分かっていても、私は、あの子を戦いへと赴かせることしかできません」

 

古き女神から作りだされたイストワールは、人間らしい感情は持っていても、やはり、ゲイムギョウ界の存続が一番にきてしまう。

 

イストワールに出来ることは、ネプギアが戦いに集中できるように、サポートするくらいだ。

 

「どうか、あの子をよろしくお願いします。

あの子が立ち止まり、道に迷うことがあれば、導いてあげてください」

 

「善処しよう、と言いたいが、それは杞憂だ、イストワール。

今はまだ、彼女に、目的はない。

しかし、ただ、使命に動かされる人形であることを抜け出そうとしているんだ。

彼女は、俺たちが思っている以上に、強かなのかもしれないぞ」

 

ネプギアは、その道が苦難に満ちていると知って立ち上がり、剣を執ったのだ。

 

今はまだ弱い、しかし、強くなろうとする意志があれば、必ず強くなれる。

 

「――――――――――そうなのかもしれませんね。

ユーリさん、改めて、あの子をよろしくお願いします。

自分の羽根で、飛び立とうとしているあの子を、見守ってあげてください」

 

「あぁ、任されよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――あれ、ここは……?」

 

「あっ、ギアちゃん、目を覚ましたですか」

 

見覚えのある部屋、声を掛けたコンパの声で、寝起きの頭は現状を認識し始める。

 

「ユーリさんは、~~~~~ッ!」

 

認識した途端、全力を振り絞り、それでもなお届かない光を思い出し、飛びあがるネプギア。

 

だが、三年間動かさなかった体を、無理に動かし悠理と戦った反動は、体の節々を痛めていた。

 

「だめですよ、ギアちゃん。

怪我は大したことありませんけど、無理をしすぎです。

女神さんとはいえ、今日は安静にしていてくださいね」

 

痛みに悶える、ネプギアを再び寝かしつけるコンパ。

 

意識した途端に、どっと痛みが押し寄せてくるが、そんなものが気にならない程、悔恨の念が胸を占めていた。

 

「私、負けちゃったんですね……」

 

「仕方ないですよ、ギアちゃんは、体が万全ではないですし、相手は、ユーリさんです」

 

そう仕方ない、相手は、姉を含めた、女神全員が戦っても勝てなかった死神(マジック・ザ・ハード)を打ち負かした英雄だ。

 

例え、万全であったとしても、悠理には届かないだろう。

 

それでも、絶対に負けたくないと、これ以上ない程に強く願った想いが、あっけなく打ち負かされた事実は、悔しさに、涙が溢れてくる。

 

その涙を隠すように、腕で目を塞ぐが、目を塞げば浮かび上がる、最後の攻防。

 

光を収束していたネプギアは無防備であり、撃ち落とそうと思えば、すぐにでも撃ち落せただろう。

 

ネプギアにとっては生涯最強の一撃でも、悠理にとっては、ネプギアを試す試練でしかなかったのだ。

 

「―――――ギアちゃん……今日は、もう、暴れたりしちゃだめですよ」

 

そう言い残し、退出するコンパ、その気遣いが今はとてもありがたかった。

 

あまりにも遠い背中、それは今この時も、あの剣の丘へ向けて進んでいるのだ。

 

弱さの一切を排除した強さの極致、その場所を目指している悠理に、無様に泣いているだけのネプギアが追い付けるはずがない。

 

―――――――――――――――だから?

 

冷静な思考が、悠理との差を告げる。

 

立ち上がっただけで十分だ、これなら、訪れる苦難にも立ち向かえる。

 

女神として必要とされるだけの意志と覚悟は手に入れた、ならば、もう、あの背中を追いかける必要なんてない。

 

――――――――――――――だから?

 

ネプギアが目指す場所は、人間を導く指導者だ。

 

一つの国を治める者として、これから多くの者と戦うことになる。

 

ならば、孤独と無が待ち受けている、あの場所へ向かう悠理とは正反対の方向だ。

 

―――――――――――――だから、諦めろと言うの?

 

ネプギアの冷静な部分は、力の差・使命・立場、その全てを論理立て諦めろと言う。

 

あぁ、正しい、それは、女神が行くべき正道だろう。

 

だが、剣の丘を見たときに感じた、癇癪じみた怒りの炎は、今もまだネプギアの胸にある。

 

「――――――――――私は、人形なんかじゃない……!」

 

女神が行く正道? そんなもの知ったことかと、感情に任せて振り払う。

 

それは、かつてネプギアが求めていたもの、己が力を奮い、求め、求められる安息の地だ。

 

だが、自らの意志で、果てへと向かう背中を知った。

 

誰しもが間違っていると口を合わせて言う場所へ、己が抱いた想いこそが正しいと、世界の全てを敵に回して、傷つきながらも歩む背中を知ったのだ。

 

滾る激情、それは、羞恥と憧憬だ。

 

与えられた力で、与えられた役割だけを全うする、それで得た居場所に何の価値がある。

 

そんな場所を心の底から、求めていた過去は、埋めてしまいたいほどの黒歴史だ。

 

与えられたのではなく、自分自身の意志で、あんなに悲しくて苦しい場所へ向かおうとしている悠理の背中は、あまりにも眩しい。

 

だから、悔しかったのだ。

 

剣の丘を目指す、悠理に憧れていると認められなくて。

 

憧れている悠理に、本気を出させるどころか、戦いにすらならず負けてしまった事実が。

 

「――――――――――私は、人形なんかじゃない……!」

 

力の差がどうした、そんなもの、これから強くなればいい。

 

女神の使命なんて知ったことか、悠理を目指す傍らに果たしてやる。

 

女神の立場? 自分が目指すモノを諦めて、自ら生み出た感情を否定して、どうして、他の者を導けようか。

 

だから、追うと決めた。

 

不安も恐怖も絶望も、全て、自ら望んで手に入れたもの、誰にも奪わせはしない。

 

もう、見ているだけの、待っているだけの人生なんて飽きた。

 

もう、十分、休んだだろう、これからは、自らの足で歩く時だ。

 

もう、後悔だけはしない。

 

「これは、私が選んだ道なんだから!」

 

鳴き声混じりに、一人、悠理から与えられた黄金に輝く剣に誓う。

 

いつか、悠理を倒し、力づくで、あんな場所から引き離す。

 

それが、ネプギアが初めて選んだ、進むべき道。

 

弱い自分にサヨナラを、苦難よ、こんにちは。

 

どんな絶望でも押し寄せてくるがいい、全て乗り越え、いつの日か必ず




というわけで、第一章完結です。

精神的に、原作より恐ろしい程にタフになったネプギア。

女神を救うと言ったアイエフは涙目です。

でも、まぁ、ようやく型月ヒロインらしくなってきたなと思います。

喧嘩上等、護られるだけなんてまっぴらごめん、主人公(おまえ)が私についてこい。

そんな、型月ヒロインが大好きです。

それでも、ネプギアの天然で可愛い部分や、ちょっと残念なところも織り交ぜ、第二章へと突入していきます。

それでは、また次回、さようなら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。