「わぁ、ここが、ラステイション……!
本当に機械だらけの街なんですね!」
キラキラした目で、辺りを見渡すネプギア。
少し目を離せば、ふらふらとはぐれてしまいそうなほどに興奮しているネプギアを、アイエフが宥める。
我慢すると言いながらも、やはり、そわそわしながら、きょろきょろしているネプギアを、後で観光に連れて行こうと心に決め、話を切り出した。
「さて、とりあえず情報を集めにギルドに行ってみましょうか」
「そっちは、君たちに任せる。
俺は、協会に行くとしよう。
あれの事だ、俺たちがラステイションに来たことくらい、掴んでいるだろう」
「嫌な奴だって噂には聞いてたけど、噂通りの奴みたいね。
それじゃ、そっちは任せるわ」
とんとん拍子で話は進み、ネプギア達はギルドへ、悠理は協会へ、それぞれ、情報を求め別行動をとることになった。
不安の種である犯罪組織による強襲も、悠理の活躍で、その勢力を激減されたラステイションでは、その心配も薄い。
不安定だったネプギアも復調し、アイエフも付いているのならば、目を離しても心配ないと判断し、協会へと向かう。
しかし、それでもトラブルの種は残っていると、この時誰も予想はできなかった。
「やぁ、ユーリ、プラネテューヌでは、ご苦労だったね」
以前合った時と変わらず、シニカルな笑みを浮かべ、悠理が来ることを予測していたかのように、向かいいれる神宮寺。
アイエフは嫌な奴と称したが、悠理にとって、ビジネスライクの関係で繋がりを持とうとする神宮寺は、逆に好感が持てる相手だ。
下手な信頼で繋がっているよりも、対価を支払えば相応の結果で応える関係の方が、後腐れもなければ一定の信用もできる。
「イストワールから話は聞いているな?
ラステイションのゲイムキャラ、その情報を買いたい」
「実にボク好みの対応だよ、悠理。
君は信用に値する人間だ、急いでいるのなら、借一つでいいんだが、どうする?」
「残念だが、君のような人間に、借りを作るほど愚かじゃない」
借用書もない、口約束の借りとは、要するに、半強制的に履行させられる命令権だ。
例え、それが借りた対価に見合わないものだったとしても、借用書もない口約束、その対価の価値は言い値で変わってしまう。
断れば、信用に罅が入り、権力を持った神宮寺のような相手ならば、悠理の行動に障害齎すだろう。
だからこそ、最初に契約の条件を明確化させておき、悠理にも可否の選択権があるうちに交渉しておかなければならない。
「そうかい、では、君たちには、《宝玉》と《血晶》を手に入れて欲しい」
「期限は?」
「明確な期限はないけど、当然、早ければ早い方がいい。
君たちにとっても、それは同じはずだろう?」
この世界に来たばかりの悠理に、その二つの物が、どれほどの価値を持っているのか分からない。
ならば、一度持ち帰り、アイエフに確認を取るべきだろう。
「ちなみに、《宝玉》は、バーチャフォレストの奥地に潜むモンスター。
《血晶》は、セプテントリゾートのモンスターが持っている」
「―――――――――どういう、風の吹き回しだ?」
「なに、一時とはいえ、プラネテューヌには君を貸してもらった借りがあるからね。
そのお返しだと、思ってくれていいよ」
珍しく譲歩する神宮寺、何か裏があると勘ぐってしまうが、態々、場所の情報まで提供したのだ。
弱みを見せないために、プラネテューヌへの借りという建前を利用しているが、その実、どうしても手に入れたいものなのだろう。
「了解した、その条件をのもう」
神宮寺にどんな思惑があろうと、先の見通しが立ったことは悪いことではない。
すぐにでも、動こうかという時、予想外の声が掛かった。
「もう一つ、ネプギアさんと直接話をさせて欲しい」
「後になって、条件を付けくわえるのはフェアじゃないな」
「入手先を教えてたんだ、これくらいはサービスしてくれてもいいんじゃないか?」
「―――――――善処はする、ただし、これは交渉外の話だ。
彼女が、君の提案を拒否したら、この話はなしだ」
ここまで情報が揃えば、彼女が何を望んでいるかぼんやりとその全貌が見えてくる。
悠理という、彼女が持つ手札の中でも最強の切り札を持って、手に入れたいもの。
彼女らしくもない、後だしの条件。
ネプギアに直接話を聞きたいということは、要するに、囚われていた時の状況を詳しく聞きたいから。
それはつまり、ラステイション独自で、女神救出への計画を練るため。
怜悧な彼女でも、焦る気持ちはあるのだと思うと、やはり、彼女も人間なのだと思う。
「まったく、君は本当に有能だね。
是が非でも、手元に置いておきたい限りだ」
「悪いが、その話は前にも断っただろう。
だが、女神の救出と、犯罪組織の壊滅は、必ずやり遂げる。
それにな、君は、彼女に期待はしていないだろうが、あれは中々、やるぞ?」
「そうかい、君たちには期待しているよ」
場面は変わり、そこは、ラステイションにある遊楽地である、リビートリゾート。
しかし、近年は女神の不在による、モンスターの増加により、頭を悩ませていた。
そこで、腕に自信のある者たちに報酬を用意し、モンスター退治を依頼していた。
ギルドで、ゲイムキャラの情報が手に入らなかったネプギア達は、シェア回復の為、その依頼を受け、そこで出会ったユニと名乗る、黒髪の少女と共に、リビートリゾートへと訪れていた。
「なーんだ、そっちは一人でクエストしてるわけじゃなかったのね
まぁ、しょうがないか、あんた超弱そうだし」
余程腕に自信があるのか、ネプギアを下に見る発言をするも、その実力は確かのようで、湧いて出るモンスターたちを的確に打ち抜いていく。
「――――――――うん、私はまだ弱いけど、強くなるって決めたから」
もう、後悔だけはしない。
あの夜に誓った想いの強さを現すように、黄金の軌跡は、多くのモンスターを絶命させていく。
「ふーん、思ったよりやるじゃない」
まだまだ、荒削りの動きだが、才能感じさせる剣裁きに、ユニは認識を改める。
自分が劣るとは思わないが、まだまだ幼い少女にしては、十分すぎる力だと、そう見誤っていた。
その誤認は、百は下らないモンスターの群れに遭遇した時、解消されることになる。
「んー、ちょっと数が多いわね。
ちょっと、待ってなさい、少し本気を――――――――――――」
黒髪の少女が力を溜めようとした時、吹き抜ける風を見た。
百を超えるモンスターの群れに突撃していく、ネプギアとアイエフ。
その動きは、今までがまるで本気ではないことを、思い知らされた。
超常の神秘を持つ、
そのスペックを十全に引き出した切れ味を頼りに、手数と死角を作らない動きで、瞬く間にその数を減らしていく。
追従するアイエフは、素早い身のこなしで、確実に急所を貫き絶命させていく傍ら、広い視野を保ち、ネプギアをフォローする。
まるで、暴風にさらされる木の葉のように、散り散りにされていく、モンスターの群れが壊滅するまで5分を要さなかった。
乱れた息を整える二人に、駆け寄るコンパだが、疲労こそあれど怪我らしい怪我はない。
「――――――やるじゃない……」
思い出すは、少し前にいた男。
強かった姉がいなくなってからの三年間、ひたすらに強くなることだけを考えて、戦い続けた。
しかし、少しは自分の力に自信を持ち始めたときに現れた男は、その努力を嘲笑うかのよう、たったの数日でラステイションの危機を救ったのだ。
抱く思いは嫉妬、その強さに、たった数日で、自分では出来なかったことをやり遂げ、教祖からの信頼を集めた男への憎しみにも近いそれだ。
「こんなのたいしたことないわよ」
思いだすは、時に剣を持ち、時には弓を持つ悠理の姿。
人間でありながら、女神を超える強さを持つ、悠理は、アイエフにとって目標だ。
人間だから、そんな理由で女神に頼るだけの弱い自分は要らない。
同じ人間で、女神を超える男がいるのだ、ならば、いつまでも女神に甘えていられない。
抱く思いは尊敬、同じ人間でありながら、女神を超える強さを手に入れた悠理は目標であると同じく尊敬の対象だ。
「うん、だって、あの人はもっともっと強いから」
思い出すは、全力を出してなお届かない光を放つ悠理の姿。
強い意志の元、自らの想いこそが正しいのだと、一人強く歩き続ける悠理は、言われるがまま歩いてきたネプギアにとって強い憧れだ。
しかし、それと同時に、剣の丘へと向かおうとする悠理に納得が出来ない。
抱く思いは、超えるべき壁、悠理を止めるのならば、悠理を超える想いの強さと、力が必要だ。
三者共に脳裏浮かぶ悠理の姿。
しかし、抱く思いはばらばらだ。
そして、もう一人、悠理に強い恐怖を植え付けられた女が一人、影から忍び寄るのだった。
第二章、開幕です。
精神的には強くなったネプギアですが、自力はさほど変わらず、カリバーンのおかげで、原作よりちょっと強いくらいです。
次回は、再び下っ端さん登場の巻。
ちなみに、原作で登場するゲストキャラは、ほとんど登場はなしです。
物語の進行上、どうしても必要な場面のみ登場させる形。
女神と候補生+教祖+アイエフ・コンパの一四人、敵キャラも含めると二十人近くを動かすだけでも、厳しい。
作家を本業としている人たちは凄いですね。
ではまた次回、さようなら