剣の丘を目指す者   作:未来

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止まった時間

「上手くいってよかったですね」

 

「はい、ユーリさんも無事だといいんですけど」

 

「負けるイメージなんてわかないくらい強いんだから、大丈夫でしょ」

 

プラネテューヌにて無事、《宝玉》を手に入れたネプギア一行。

 

既に悠理が《血晶》を手に入れ待っていると思い、急ぎ足でラステイションへと戻ってきていた。

 

悠理の元へ急ぐ、その先に、喧嘩別れをしたユニの姿を捕えた。

 

「アイエフさん、先にユーリさんと合流しててください!」

 

「はぁ!? ちょ、ちょっと、どこ行くのよ!?」

 

静止の声も聞かず、肩を落して一人歩く、ユニへと駆けよっていく。

 

何故、ユニに拒絶されたか、ネプギアには分からない。

 

だが、一緒に戦うことはできなくとも、せめて、このもやもやとした関係だけは解消したかった。

 

深いことは何も考えず、その勢いだけで、ユニの肩を叩いた。

 

「ユニちゃん!」

 

「―――――――ぁ、ネプ、ギア……」

 

しかし、肩を叩かれ、振り返ったユニは、会った時のように自信に満ちた勝気な態度ではなく、全てを奪われ絶望し、虚ろな目をしていた。

 

その姿は、ユニと喧嘩別れした時に感じた時と同じ、少し前の、女神の重責に潰されかけていた自身の姿に重なってしまう。

 

「ユニちゃん……何があったの……?」

 

そう尋ねると、一瞬だけ怒りの表情を見せるが、すぐにそれは悔恨に変わった。

 

体を震わせ、瞳に涙を溜め、ぽつりとつぶやいた。

 

「負けちゃった……ううん、戦いにすらならなかった……」

 

涙をこらえる為に上を向くが、武器を取らせることもなく、悠理の言葉に反論すら出来ず、立ち上がることのできなかった惨めな自分を思い出し、涙腺はその悔しさを支えきれず、涙が頬を伝う。

 

「アタシなりに、三年間、努力したつもりだった……

お姉ちゃんに追いつこうって、頑張ってきたつもりだったのに……言い返せなかった……!」

 

ユニ自身、未熟だという自覚はある。

 

それ故に、悠理に負けてしまったのは悔しいが、ユニが許せないのは、その後の事。

 

悠理が言った辛辣な言葉に、何一つ言い返すこともできず、立ち去っていく悠理を止めることすらできなかった、自身の弱さが許せない。

 

だが、許せないと、そう想っているのに、何もできず負けてしまうことを恐れている。

 

「―――――――ユニちゃんは、すごいね」

 

全てを聞いたネプギアは、断片的な情報で、自身と同じく悠理に敗れたことを理解した。

 

その上で、そう評した。

 

「なにそれ、嫌味のつもり……」

 

「ううん……だって、私も同じだったから。

三年前、何もできなくて、お姉ちゃん達もいないのに、私になにが出来るんだろうって。

いっそ、助けて欲しくなかったって、思ってたから」

 

今でこそ、弱さを克服しようと、強く立っている。

 

だが、やはり、不安は尽きないのだ。

 

この旅の果てに、本当にゲイムギョウ界を救うことが出来るのか、本当に、悠理に追いつくことが出来るのかと。

 

「逃げ出したいのに、女神だから逃げ出すこともできなくて、その責任を負いきれなくて、私は一度、ユーリさんに全て任せちゃったんだ。

私がやらなくちゃいけないことなのに、ユーリさんは当たり前のように、世界を救ってくれるって言ってくれた」

 

悠理の名前が出た途端、あからさまに顔をしかめるユニ。

 

だが、ユニも、ネプギアと同じ境遇で、あれほど強い悠理がいたなら、そう考えると、口を挟むこともできない。

 

「涙が出るくらい嬉しかった、もう、戦わなくていい、女神じゃなくてもいいって、そう言ってくれた。

ユーリさんに任せていれば、何も心配しなくていい、これまで通りの日常が返ってくる。

私は、そのことに何の疑問も、持てなかったよ」

 

ゲイムキャラから拒絶され、あの剣の丘を見るまでは。

 

「だからね、三年間も一人で頑張ってきた、ユニちゃんは凄いよ。

私だったら、たぶん、負けてたと思う」

 

そう言い締めると、心にはあの剣の丘が浮かぶ。

 

辛くて、悲しい、孤独と無だけがある、悠理の理想の場所。

 

「だったら、どうして、ネプギアは立つことが出来たの?」

 

「剣の丘をみたんだ」

 

「剣の丘?」

 

あの場所が、どういう場所なのか、ネプギアには分からない。

 

しかし、あの場所を目指す、悠理に負けたくないと、そう強く想った感情は嘘じゃない。

 

「うん、私にもよくわからないけど、ただ、負けたくないって思った。

それは、ユニちゃんも同じだよね?」

 

負けたくない、だが、何もできず負けてしまうことが怖い。

 

あの強い瞳に、再び弱さを言い当てられ、言い返すこともできずに負けてしまい、三年間の全てを失ってしまうことが、何よりも怖い。

 

「私一人じゃ、届かない、ユニちゃん一人でも届かないのは当たり前だよ。

だって、あの人は、三年前、お姉ちゃん達全員でも、勝てなかった死神(マジック・ザ・ハード)を打ち倒した英雄だから」

 

 

「―――――うそ、でしょ……」

 

強かった姉、その同等の存在が四人も集まって負けてしまった死神を打ち倒した、そんなこと信じられるはずがない。

 

それは、ネプギアも同じだったが、今では、それは本当の事だと思っている。

 

剣の丘を目指し、一人歩く悠理が、死神程度に負けるはずがないと。

 

「だから、一緒に戦おう。

一人じゃ届かなくても、二人なら届くかもしれない。

今の私たちじゃ、勝てないけど、何もできないまま、負けたくないから」

 

女神四人を倒した死神、その死神を倒した悠理に、例え一人が二人になったところで敵うはずがない。

 

それは、悠理と直接戦った、二人なら身に染みてわかっている事だ。

 

それでも、弱い自分を乗り越えるために、越えなければならない試練。

 

「――――――――ネプギア……ッ、足を引っ張るんじゃないわよ!」

 

同じ境遇で、乗り越えたネプギアがいる、そのネプギアに嫉妬する気持ちはある。

 

だが、悠理に言われた通り、いつまでも自身が作りだした偶像を相手にしていては、先に進めない。

 

だから、差しのべられた手を取る。

 

三年前、否、それ以上前から止まってしまった時を進める為に、ユニは再び手に武器を取った。

 

 




ユニの決闘フラグ、ネプギアとではありません。

ユニ・ネプギアvs悠理のリベンジマッチ

ワレチュー? 何のことか分かりませんね。
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