ネプギアの故郷であるプラネテューヌや、先に訪れたラステイションとは違い、年中雪に覆われた、《夢見る白の大地》と言われるルウィー。
プラネテューヌ・ラステイションとは異なり、機械・電子技術は劣ってはいるものの、それを補う魔法という神秘の研究は四つの国において最も進んでいる国でもある。
「うぅ、寒い……でも、綺麗な街……」
雪が舞い散る幻想的な光景に目を奪われているネプギア。
しかし、いくら美しい光景とはいえ、薄着のままでは体温が低下している中では、悠長に景色に酔うこともできず、寒さに身を震わせているネプギアに、コートが肩に掛けられた。
「それを着ておけ、そのままでは風邪をひく」
「あ、ありがとうございます……」
ほのかに頬を朱に染め、いそいそと、コートを着込む。
雪国であるルウィーに合わせた白を基調とした、シックなコートであり、肌触りも良い。
おしゃれよりも、ラステイションのような工業団地を見て回りたいネプギアでも、決して安くないものだと分かる、贈り物に、体の内側から熱を帯びる。
無意識に緩む頬を、抑え込み、改めてお礼を言おうと悠理の方を振り向いた。
「あ、あら、気が利くじゃない……」
「ええっと、ありがとうございます、です……」
引き攣った顔の二人にも淡々と同じものを配る悠理。
防寒着としてコートを貰い、感謝しなければならない状況だというのに、アイエフとコンパにも全く同じものを配っている悠理を見て、理解しがたい不満が、熱を奪う。
――――――――寒いんだから、服を着込むのは当たり前だよね
――――――――私たちが風邪をひかないように、コートをくれたユーリさんは間違ってない……間違ってない……
悠理の行動の正当性を何度も言い聞かせ、突如湧いた不満を押し込める。
「アイエフさん、情報はギルドで集めるんですか?」
「いや! 今回は、直接教会に向かうわよ! 行きましょう!」
不自然なくらいに強い声で、話を進めるアイエフに、分かりましたと一言で済ませると、教会へと歩き出す。
ついさっきまで、あれほど綺麗だった景色や、降り積もる雪に残る足跡にも、何ら感動を覚えることなく、ただただ、悠理への不満が胸を占めては、悠理の正当性を唱え平常を保つ。
吐き出す白い息を見て、ようやう気温が低いのだと思い出すほどに、心は冷え切っていた。
「―――――――寒いな……」
「寒いなら素直にそう言え」
ぽつりと呟いた言葉に、返ってきたのは呆れたように言う、ぶっきらぼうな優しさと、首に回されたマフラー。
それだけで、喜びに沸き立つ心を、無理矢理抑え込み、同じように渡されているであろう二人を盗み見た。
「―――――――アイエフさん達には渡さないんですか?」
「必要ならば用意するが?」
「いらない、いらない! 私、寒いの強い方だから!」
「わ、私も大丈夫です!」
「だ、そうだ。 それと、流石にマフラーまでは準備していなかったからな、それは投影品だ。
後に買い替えると良い」
「―――――――これがいいです。 その、ありがとうございます」
口元を覆い隠すように深くマフラーを巻きなおし、教会へと足を進める。
ざくざくと、雪を踏みしめる音も、街灯が雪を照らし作りだされる、幻想的な光景も意識に入ってこない。
緩む頬を、どうにもできず、マフラーで隠し、赤くなっている顔を見られたくないがために先頭を歩く。
――――――――ユーリさんはデリカシーというものが足りないんですよ。
――――――――アイエフさんが好きなら、せめて、色を変えるとかしてもいいのに。
すっかり消えてしまった不満。 それが、マフラーを一人与えられたというだけで消えてしまう程、ちょろい女の子だと思いたくないがために、心で悠理へと駄目出しをする。
しかし、マフラーの位置は戻すことが出来ず、無言で先頭を歩く。
冷え切っていた心は、いつの間にか、熱を取り戻し、外気の寒さが気にならない程に暖かい。
損傷してしまえば、魔力へと還ってしまう、投影品のマフラー。
―――――――大切にしよう……
そっとマフラーに手を添えると、今日はマフラーを外せないのではないかと自覚するくらい、浮足立つ心。
しかし、それでも、悠理への気持ちに気付くことが出来ないネプギア。
それを見守る、アイエフとコンパは、ネプギアの立場や大きく開いている年齢差に、気付いて欲しいか、このまま、ただの憧れであって欲しいか、複雑な気持ちで、ため息をつくのであった。
短いですが、切がいいのでここまでに。
悠理が加わったことにより、ルウィー編は原作と大きく変わる予定です。
この小説を書く上でいろいろ調べていたんですが、ロムの方が姉だということに今更ながら知りました。
それくらい原作知識は曖昧のなで、細かいことは気にしない方向でお願いします