剣の丘を目指す者   作:未来

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無限の剣製

「来やがったな」

 

憎々しげに悠理を睨む下っ端(リンダ)

 

その後ろには一目で20を超える殺戮兵器(キラーマシーン)が控え、その隣には犯罪組織の構成員も数を数えることが面倒になるほどにいる。

 

「見やがれ、こいつの戦力は今更、言うまでもねぇだろう。

だが、これだけじゃねぇ。まだ、二百は呼び出せる。

――――――てめぇの命も、これまでだエミヤ」

 

まさしく総力戦、これだけの戦力があれば、守護女神のいない今、四国をまとめて相手にできるほどの戦力。

 

それが、今、たった一人の人間に向けられている。

 

犯罪組織の最高戦力である死神(マジック・ザ・ハード)を倒した英雄。

 

されど、これだけの戦力を相手にいったい何ができるというのか。

 

悠理の力を知っているネプギアでさえも、勝機などないと思うほど。

 

だが、その事実を踏まえた上でも悠理の余裕は消えない。

 

「―――――お前と対峙するのもこれで三度目だ。

一度は見逃し、二度目もネプギアの手前見逃した」

 

「だから、見逃してくれってか!? はっ、今更命乞いしようがてめぇはここ死ぬんだよ!」

 

「―――――これが最後の忠告だ。

せっかく生き延びた命、無駄に捨てることはないだろう。

全戦力を放棄し、投降するならば、その命捨て置こう」

 

悠理にとっては最終勧告、だが、それを聞いた下っ端は、どこまでも侮られていることに堪忍袋の緒が切れた。

 

未だに、優位だと思っている愚か者に死の鉄槌をくれてやる。

 

殺意に目をぎらつかせ、振り上げた手は

 

「全軍、やつを殺せぇ!」

 

怒号とともに振り下ろされた。

 

それはまるで、夜空に浮かぶ星空のよう。

 

破壊の光が一斉に殺戮兵器に灯り、一斉に悠理へと放たれた。

 

その威力は人間ならば即死、女神ですらまともに受ければ死を覚悟しなければならない閃光。

 

前後左右、上下、多少の障害物などものともせずに死を与える閃光は、一切の死角なしに迫りくる。

 

「ユーリさん!」

 

飛び出しかけたネプギアを、ロムが手を引き引き止める。

 

何故と、食って掛かりそうな勢いでロムを睨みつけるが、首を横に振るだけ。

 

「飛び出しそうになったら止めてって」

 

こうなることを予測していてたのなら、こんなどうしようもない事態を想定していたのなら、やはり勝機などなく、その身を犠牲にして、ルウィーを守ろうとした。

 

絶望がネプギアの心を占め、それは激しい怒りとなり、助けたはずの下っ端へと向けられる。

 

―――――よくも……よくも、ユーリさんを!

 

死んでも構わない、せめて、悠理を殺した下っ端だけでも道連れにと、女神の姿へなろうとしたとき、その言葉が空間を揺るがした。

 

「――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

 

誰もが、その言葉に動きを止めた。

 

飽和攻撃により土煙があがりその中を覗き見ることができずとも、あれだけの攻撃を受けて生きていられる道理がないと、誰もがそう信じたかった。

 

「――――Steel is my body, and fire is my blood. (血潮は鉄で、心は硝子)

 

しかし、その呪文は止まらない。

 

道理を覆し、世界を塗りつぶす呪文が世界を震わせる。

 

「―――I have created over a thousand blades. (幾たびの戦場を越えて不敗)

 

土煙が晴れる。 その先には大きな七枚の花弁に護られた悠理の姿。

 

その体には傷一つついておらず、悠理を遮るあの花弁が攻撃を防いだのだと、状況が語っている。

 

花弁の名は、熾天覆う七つの円環(ロー・アイアイス)

 

投擲や飛来物による攻撃に無敵とも呼べる防御力を持つ、概念武装の前に、光学兵器による攻撃は通用しない。

 

だが、それを実際目にしても、この場にいた全ての人間は理解を拒む。

 

「―――Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく) Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)

 

止まった時の中、悠理には多くの敵すら眼中にない。

 

ただただ、憧れ、目指す場所へ。 衛宮士郎が辿り着き、未だ到達できないその場所への渇望を詩に込める。

 

本来、観測者の書(アーカイブ)によって、使用する魔術に詠唱など必要はない。

 

だが、それでもこの呪文を唱えるのは、未だ衛宮士郎へと追いついていないと自戒するため。

 

そして、穢すことのできない尊い理想、その理想を受け継ぐことのできなかった悠理が、同じ世界を顕現させるなど許せるわけがない。

 

「―――Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う)

 

それ故の呪文。

 

己は理想を追い求める愚者ではなく、世界の秩序を守る守護者なのだと。

 

未だ叶える理想を持たず、衛宮士郎の影を被ることでしか生きることのできない己への戒め。

 

「―――Yet, those hands will never hold anything.(故に、この生涯に意味はなく)

 

ここにきて、いち早く現実を受け入れた下っ端。 だが、このままでは負けると、ありえない予感に心臓が軋みを上げる。

 

不吉すぎる呪文は、恐怖を呼び、犯罪組織の人間すべてが呑まれている。

 

悠理が来るまでは、すでに勝った気分でいた。

 

これだけの戦力で負けるはずがない。 死神ですら倒せなかった英雄を倒せる栄光に酔っていたものもいた。

 

だが、現実は傷一つ付けられず、呪文を唱えるその姿に圧倒されている。

 

「てめぇらぁ! 殺せ! なんでもいい! 早くあの呪文を止めろぉ!」

 

恐慌状態に陥ってた構成員たちがその発破に我を取り戻し、殺戮兵器に攻撃を再開させる。

 

雨のように降り注ぐ、破壊の光。

 

いくら無敵とも呼べる武装とはいえ、殺戮兵器も神と崇められる存在が作り出した兵器。

 

その圧倒的数の前に花弁が一枚、また一枚と散っていく。

 

「―――So as I pray(その体はきっと)

 

しかし、その攻撃はついぞ、悠理に届くことはなかった。

 

最後の一節、それは、その世界の名。 それは人間の一つの極点。

 

「―――UNLIMITED BLADE WORKS.(剣で出来ていた)

 

世界が炎に包まれる。 その炎は世界を侵食し世界を塗りつぶす。

 

炎に囲まれた荒野。 光の差し込まぬ曇り空に砂塵が舞う。

 

墓標のように突き刺さる、古今東西の聖剣魔剣。 その数は無限。

 

一度でも見れば、あらゆる剣を複製することができる衛宮士郎の特異魔術。

 

突如変わった景色に、右往左往しているところに、罪人を裁く審判の声が響いた。

 

衛宮士郎がその理想の果てに辿り着いた剣の丘、その丘の上に悠理はいた。

 

「貴様らが挑むは、無限の剣。 剣戟の極地。

退かぬというのなら、その身をもって知るがいい。

行くぞ犯罪組織マジェコンヌ、殺戮兵器(ガラクタ)の残機は十分か」

 

 

 




この展開にしたかったからこそののオリジナル展開。

この当たりで処刑用BGM「EMIYA」が流れ出すと、より雰囲気が高まりますかね。

次回は万を期して、悠理が大暴れします。

ではまた次回。
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