剣の丘を目指す者   作:未来

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奇襲

雄大なる緑の大地、リーンボックス。

 

自然との共存を掲げ、古き西洋の町並みを残した、ルウィーとは別の美しい情景を持つ、女神・グリーン・ハート

が納める国。

 

もっとも、女神不在のため、事実上、犯罪組織の支配下となっているわけだが、それでも、活気を失ってはいない理由があった。

 

「なんだか、面倒なことになっちゃったわね」

 

風情ある街並みを歩く、女神候補生の四人。

 

風の噂というには、あまりにも有名なその名が、そこら中から聞こえてくる。

 

これまで、犯罪組織でありながらも信仰を集めていたマジェコンヌ

 

その大きな支持基盤は、マジェコンという、便利なコピーツールの配布にある。

 

人間という生き物は、どうしても安きに流されやすい。

 

ならば、無料でどんなゲームを遊ぶことのできるそれが、絶大な人気を誇ることは仕方のないことだろう。

 

そして、もう一つ、支持を集める理由は、一般市民に対しては、無害だということ。

 

無論、犯罪神が復活してしまえば世界は滅びを避けられないのだが、それを本気で信じているものは、犯罪組織の構成員にすら少数だろう。

 

だからそこ、人々は悪だとしても、堕落を引き起こすと分かっていても、信仰対象を移していったのだ。

 

だが、ここにきて、犯罪組織による武力行使。

 

それも、国の存続が危ぶまれる戦力を持って、実際に被害を齎したのだ。

 

それだけでも、大ニュースだというのに、それを打倒した英雄が現れれば、話題を独占しても、何ら不思議ではない。

 

女神排斥派と呼ばれる集団の後押しもあり、今や、英雄エミヤの名を知らぬものは、ゲイムギョウカイには存在しないだろう。

 

そして、それは、このリーンボックスにおいても例外ではなく、今や、犯罪組織や教会を差し置いて、その信仰の対象は英雄エミヤへと移り替わっている。

 

他の国においても同じ傾向にはあるものの、女神不在のこの国はその傾向が顕著であり、だからこそ、この国における女神排斥派の発言力は強く、実権の殆どを奪われているといっても過言ではなかった。

 

「ごめんなさい。 私が不甲斐ないばかりに……」

 

頭を下げる、リーンボックスの教祖である箱庭チカも、教会の存続すら危ぶまれる事態に、困窮しており、教会の支援もなく、実質、孤立した状況下での戦いを強いられることになっていた。

 

「でも、希望がないわけじゃない」

 

ユニの弱音に力強く答えるネプギア。

 

確かに、教会の支援は受けられなかったが、当初の目的であるゲイムキャラの所在は掴むことができたのだ。

 

ルウィーのゲイムキャラも一時は破壊されたものの、謎の幼女のおかげで修復され、残るリーンボックスのゲイムキャラの力を借りることができれば、女神救出が現実的なものになってくる。

 

女神がいない現状だからこその事態でもあるが故に、女神を奪還できれば、この袋路地も脱却できる。

 

「――――そうよね。 早くお姉ちゃんたちを助けてあげなきゃ」

 

箱庭チカによってもたらされた情報を元に、ゲイムキャラが眠る、火山地帯であるアンダーインヴァースを目指す一行は、リーンボックスに入国してから尾行されていることを気付くことはなかった。

 

「――――――――っ」

 

たった一人、人間の醜さを知り、世界の残酷さを知ったネプギアを除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっくぞー!」

 

「お姉ちゃん直伝」

 

「「Eフォースブリザード」」

 

襲い来る魔物たちを、絶対零度の氷の棺が封じ込め、粉々にしていく。

 

過酷な火山地帯を生き抜く、決して弱くはない魔物たちではあるが、幼くともやはり女神。

 

その余りある魔力を使った魔法に、群がる魔物は一掃されていく。

 

「ネプギア!」

 

「うん!」

 

この一帯の主と思われる巨竜の両目をユニが正確に打ち抜くと、タイミングを見計らっていたネプギアが、苦痛に叫びをあげる巨竜の首を一刀両断に断ち切り絶命させる。

 

地響きを上げ倒れる巨竜を見ると、残っていた魔物たちは散り散りに逃げていく。

 

ようやく一息を付ける状況になった四人は女神化を解き、目的であるゲイムキャラを探すために、辺りを見渡す。

 

「もーどこにあるのよ!」

 

「見当たらない……」

 

一向に見つからないゲイムキャラに痺れを切らし、騒ぎ立てるラムに同調するように、大きなため息をつくユニ。

 

女神不在のリーンボックス、それも、人里から大きく離れた火山地帯ということもあり、魔物も多く存在し、長居していたい場所ではない。

 

なにより、こうも見つからないと、どうしても最悪の事態が頭をよぎる。

 

「ネプギア、日も暮れてきたし、一度引き返しましょう。

もしかすると、もう、犯罪組織の連中に……」

 

「―――――うん。 そうだね、ユニちゃん。

でも、それだけ(・・・・)はないと思うよ」

 

「それって、どういう――――」

 

「あー! ねぇ、あれじゃない!?」

 

崖下にある、周りを溶岩に囲まれた小さい広間の中心に緑色に光るそれは鎮座していた。

 

ようやく見つけることができた喜びに、崖から飛び降りたラムは、女神の姿となり広間に着地すると、リーンボックスのゲイムキャラを手に取った。

 

喜びはしゃぐラムに、無事ゲイムキャラを見つけることができ肩の力を抜いたその瞬間だった。

 

ネプギア達がいた崖からは死角となっている、崖の上から、ラムへと破滅の閃光が幾重にも向けられた。

 

「――――ラムちゃん!」

 

女神とはいえ致死量に達する閃光の雨に、身を乗り出すロムだが、その行動はあまりにも遅い。

 

完全に油断していた瞬間を狙われたラムは、あまりに突然の出来事に対応できず、迫りくる閃光がその身に到達することを見ていることしかできない。

 

あわや、必殺と思われたその攻撃は、紫色の影によって振り払われた。

 

「ユニちゃん! 2時と10時に3体!」

 

「―――――っ!? 分かった!」

 

全ての光線を切り伏せた直後、反撃とばかりにM.P.B.Lの引き金を引き、広間を取り囲む兵器を破壊。

 

その敵意全てを引き付けると、宙を舞うユニが隠れている兵器を的確に打ち抜く。

 

「ラムちゃん、大丈夫?」

 

「う、うん……ありがと……」

 

「気を付けて、まだ終わりじゃない」

 

ラムに向けて攻撃を放った兵器はすでに殲滅したにもかかわらず、警戒を強めるネプギアの前に、崖の上から飛び降りる影があった。

 

「ほぅ……女神の中にも、少しはできる戦士がいるらしい」

 

3mを超える巨体の機械兵士。

 

その手には、身の丈を超える大剣を持ち、先日戦った殺戮兵器よりも大きさこそ劣るものの、その強さは、比べるまでもない。

 

押しつぶされそうな威圧感を前に、三年前に戦った深紅の死神の姿を思い出した。

 

「我がなは、犯罪組織マジェコンヌ四天王が一人、ブレイブ・ザ・ハード!

ここが、貴様ら目外の墓場だ」

 

 




もはや、誰だよと言いたくなる程、隙のないネプギアですが、原作の支配エンドを迎えたネプギアならばと思います。

仲間を殺め、最愛の姉をその手で殺めながらも、その後狂うこともなく、国を治めることができる冷酷さを持ち合わせているところを、悠理は見抜いているが故に、エミヤの後継者に推しているわけです。

次回から、数話にわたりvs勇者(ブレイブ・ザ・ハード)

mk2フォームへと覚醒していないネプギア達には荷が重い強敵相手にどう立ち向かうのか、早いうちに投降したいと思います。
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