勝敗は決した。
どんな攻撃も通用せず、一振りで戦線を壊滅させる攻撃力を持つ
しかし、女神化の維持すらギリギリの状態で尚、ネプギアは勇者へと立ち向かっていた。
唯一の
「――――――愚かな」
高速で飛翔するネプギアを必殺の一閃が捕らえる。
かろうじて受け流すことに成功するも、全ての衝撃を逃がすことは出来ず、大きく後退する。
「愚かだな、プラネテューヌの女神候補生よ。
貴様ほどの実力があれば、逃げ帰ることもできただろう。
よもや、それほどの智謀を持ちながら、思い浮かばなかったわけではあるまい」
そう、機動力で勝るネプギアならば、勇者の追撃を振り切り、リーンボックスへの帰還は決して難しいことではない。 そして、生還することができれば、全てのゲイムキャラが集い、悠理と共に囚われた守護女神を救出し、回復した
無論、それは女神候補生の中でも頭一つ飛びぬけたネプギアだからこそ出来ることであり、代償に他の三人は見殺しにすること。
しかし、三人の命と引き換えに女神を救出し、世界を救うことができるのであれば、無謀な戦いに身を投じるよりもベターな選択。
「――――――仲間を置き去りにすることなんてできません!」
迫る大剣を抜け、一閃を浴びせるも、光熱剣ですら弾く堅牢な鎧は火花を散らすだけで、少しのダメージも負わせることは出来ない。
「――――――それが愚かだというのだ。全てを求め、全てを失うなど愚者の所業に他ならん!」
満身創痍でありながら、紙一重で攻撃をかわし続けるネプギアに、勇者は戦略を変える。
魔力を剣に乗せ、死の旋風を放つ。
いくら高速の機動力を持つネプギアとはいえ、広範囲における攻撃を前に、回避することは叶わず、剣を前に防御の構えをとる。
しかし、その旋風はロムとラムの障壁を一撃のもとに吹き飛ばす、弱者にとっては必殺にもなりうる威力を持つ。
大剣の直撃に比べれば威力は低いが、満身創痍のネプギアにとって、その旋風は致命的となり、地に墜ちる。
「―――――――――くっ……あぁぁああああああ!」
女神化は解け、剣を支えにしなければ立つことさえままならい状態でさえ、未だ瞳からは戦意は消えない。
覚束ない足腰で、剣を構えるが、誰が見ても決着はついている。
それでも、負けらられない理由がある。
譲れない想いを支えに、その命が尽きるまで、ネプギアは戦い続ける。
「――――――それでもなお退かぬか……ならば、理想を抱き溺死するがいい!」
女神化が解けたネプギアは、普通の人間の強度と大差はない。
女神ですら一刀のもとに斬殺する、勇者の一閃がネプギアを引き裂かんと迫る。
「あたしを忘れてんじゃないわよ!」
ネプギアが時間を稼いでいる間、収束した魔力が極大の光線となり、勇者を捕らえる。
だが、その決死の一撃ですら勇者を倒すには至たらない。
ネプギアを死滅させる攻撃を中断させることが精一杯であり、ほんの数秒の命を生き永らえさせるが限界。
全ての魔力を使い果たしたユニも、女神化が解け、膝をつく。
二人の前にはいまだに底を見せず不動にて立ち塞がる勇者。
「死に急ぐか。 よかろう、我が必殺の剣技により、四人まとめて葬ってやる」
大剣を上段に構える。
その剣に纏う魔力は絶大、放たれれば最期。 ネプギア達は塵も残さず、この地で消え去るだろう。
迫る死へのカウントダウン、その僅かな時間に、ユニは想いを言葉にした。
「――――――ねぇ、ネプギア、どうして、戦うことを選んだの?」
「そんなの、ユニちゃん達を見捨てられるわけないからだよ!」
最期の最期まで、剣を降ろさないネプギアは、ユニを背に庇い、勇者へと対峙する。
だが、ネプギアの勘違いに、ユニは再度聞き返した。
「そんなこと、短い付き合いのあたしにだって分かってるわよ! あたしが聞きたいのは、どうして、自分を犠牲にしてあたしたちに逃げろって言わなかったってことよ!」
確かにネプギア単身ならば勇者を振り切ることは出来ただろう。
だが、その逆、ネプギア一人が囮となり、他の三人を逃がすという選択も、無謀な戦いに身を投じるよりもベターな選択の一つ。
そして、仲間を見捨てることができない、ネプギアが取りそうな選択だが、ネプギアは、最後の最期まで戦うことを選んでいた。
「もちろん、そんなこと言ったら引っ叩いてたけど……あんたらしくないじゃない。
変に頭なんか使って……あんたはもっと馬鹿正直で、猪突猛進の正直者のはずでしょうが!」
「―――――それじゃあ、駄目だったんだよ! 理想を追い求めるだけじゃ、ただ信じるだけじゃ、何も変えられなかったんだよ!」
人間の醜さを知り、世界の残酷さを知った。
何物にも負けないと抱いていた想いも、現実の前では無力だった。
そして、伝えるべき想いも、言葉も失い、戦う理由も失った。
「だったら! どうして、あんたは今、戦ってんのよ!」
人間の醜さを知り、世界の残酷さを知った。
何物にも負けないと抱いていた想いも、現実の前では無力だった。
そして、伝えるべき想いも、言葉も失い、戦う理由も失った。
ならば、悠理の為に剣を取るネプギアは、ユニ達を犠牲にしようとも、生還し、リーンボックスを奪還しなければならない。
だが、ネプギアは最も勝率の薄い戦いに身を投じている。
「なに諦めてんのよ! あんたは、あいつを変えたかったんでしょ!? 馬鹿みたいに強くて、正しいあいつを!だから、あんたは戦ってるんでしょうが! あいつを変えるために、あいつと同じ道を辿るわけにはいかないから、あんたは、こんな馬鹿な真似してんのよ!」
親友の叫びに、ドクンと心臓が跳ねる。
消えかけていた灯が、再び燃え上がり、大きな光を灯す。
「だったら、最後まで馬鹿正直に、理想を貫きなさいよ! 愚者だって笑われても! 間違ってるて否定されても! あたしが知ってるネプギアは、そんな
「―――――ユニちゃん……」
戦場にあるまじき、敵に背を向けて、背後で膝をつくユニに目を向ける。
手も足も出ず、絶望のさなかにあれど、その瞳は前だけを向いている。
優秀な姉や悠理に劣等感を抱き、歪んでいたあの頃のユニは、もうどこにもいない。
悔しさをバネにどこまでも強くなろとする、強い女の子だ。
だからこそ、ネプギアに託すしかないこの状況は、ユニにとってこれ以上ないほど屈辱的な状況だ。
それでも、自らの弱さからは逃げない。
その姿は、あまりに眩しく、ネプギアに強い勇気を与えてくれた。
「―――――終わりだ」
ついに放たれる、終末の一撃。
剣圧ですら、致命傷となる勇者の剣技に、魔力が載せられたその一撃はまさに必殺。
魔力合わさった旋風は、ネプギア達を葬るに留まらず、この一帯を更地に変えるだろう。
その死の旋風を前に、ネプギアは剣を構え、呪文を呟いた。
「―――――体は剣で出来ている」
無慈悲な死の旋風が轟音と共に蹂躙する。
足場であった岩盤を破壊し、眠っていた溶岩が姿を現す。
生き残る術のない空間。 しかし、ネプギア達がいたその一角は、未だ岩盤が残っていた。
土煙が晴れ、あらわになるその姿は、先に見たものとは違っていた。
白の衣装は黒く染まり、その手には死の旋風をも切り開く、輝きを増したM.P.B.L。
「―――――私は、負けられないんです……!
どんな敵が立ち塞がろうと、どんな試練が訪れようと!」
譲れない理想の為に、溢れる力を燃え盛る想いの元、静かに力を籠める。
「私の理想を阻むモノはすべて切り伏せます!」
ピンチに覚醒は王道には外せない要素ですね。
リーンボックス編もクライマックス。
覚醒したネプギアvs勇者にて続きます。