剣の丘を目指す者   作:未来

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奇跡の会合

これは、本来交わることのない世界との交信。

 

死神が強い憎しみによって、《赤い影》と同調したことがにより、その瞬間だけ、交わるはずのない世界が急接近し、異世界の英雄と縁を持つネプギアにの元にも、現れたものがあった

 

これまで三度、悠理に関する過去を明晰夢として見てきたネプギアは、今ある状況が夢であることをすぐに理解したが、その風景はこれまでとは全く異なるものだった。

 

流れゆく景色は、一人の少女が王となり、そしてその終末の歴史。

 

王として完全であったが故に、軋轢を生み、そして、己の息子の叛逆により、瀕死の重傷を負った。

 

滅びゆく国を前に、彼女が願ったのは、選定のやり直し。

 

――――――――少女が王にならなければ、国は滅びなかったのではないか?

 

その願いを叶えるために、世界との契約を交わした。

 

聖杯を求め、幾つもの時間や世界を渡り歩き、そして、一人の少年と出会った。

 

その歴史を見るネプギアは、その少年が、悠理の師である錬鉄の英雄であることは一目で理解した。

 

例え、姿形は似ていなくとも、英雄と称されるにはあまりに弱くとも、その胸に抱く理想は変わらない。

 

―――――誰もが傷つかず、幸福な世界を求める少年

 

―――――滅びの未来を覆すために、やり直しを求める少女

 

だからこそ、見ていられなかっただろう。

 

理不尽な災害に全てを奪われ、心さえも欠けた。 そして、再び、理不尽な戦いに巻き込まれその命を失おうとしているにも関わらず、少年はやり直しを否定したのだから。

 

全てをなかったことにして、やり直したとしても、救われるのは己だけだから。

 

理不尽な不幸を嘆き、親しき者の死に涙した過去をなかったことにできないと、今にも尽きそうな命で叫ぶ。

 

それは、悠理とである前のネプギアならば、きっと認められなかった慟哭。

 

やり直してしまえば、誰も少年を責めるものはいない。

 

失ったものを取り戻し、辛く苦しい未来を避けることができるのだ。

 

ならば、迷う余地などないはずだ。全てをなかったことにして、全てを忘れて、一からやり直せばいいのだから。

 

――――――――その愚かで、愚直なまでの強さを、きっと、直視することもできなかっただろう。

 

己の救いよりも、己の願いを選んだ少年の選択は、少女の願いを思い出させる。

 

選定の剣を前に、老人と交わした言葉がすべての答え

 

――――――――多くの人が笑っていました。それはきっと……

 

その言葉を最後に、歴史が途切れる。

 

風景が森に囲まれた泉に切り替わり、騎士王と称された少女、アルトリア・ペンドラゴンがその姿を現した。

 

アルトリアは、真っすぐにネプギアを見つめ、静かに言葉を待つ。

 

「――――――――その選択に、後悔はありませんでしたか?」

 

その歴史を見たネプギアだが、国の為に生きたアーサー王の苦悩は計り知れない。

 

侵略や飢えから民を護るために戦い、国を守るために小さな村を干上がらせることもあった。

 

多くの民を護り国を治めた王は、多くの民を殺してきた。

 

その在り方は、エミヤとして生きる悠理と、あまりにも近い。

 

「―――――――後悔はありません」

 

ネプギアの問いに静かに答える、その厳かな姿は王としての姿。

 

人の心が分からないと、側近の騎士たちにすらそう言われるほどに公平で、忠実なまでに王として生きてきた、その過去に後悔などあるはずがない。

 

「―――――――そう言い切ることができれば、私は、あのような過ちを起こさなかったでしょう」

 

柔らかく微笑み、そう答えるのは、多くの人が笑っている未来を叶えるために、その人生を捧げたアルトリアという、一人の少女。

 

「私が私でいる限り、あの結末を後悔しない日はないでしょう」

 

叶えたい理想の為に、全てを投げ打った。 しかし、その結末は理想とは真逆。

 

叛逆をを起こした息子を、護るべき民たちをその手にかけ、裏切りの果てに、滅びた結末をどうして納得できようか。

 

「―――――――しかし、間違いではなかったのです。

私が望む結末には至れなくとも、その過程に多くの理想を果たしてきました」

 

脳裏に浮かぶのは、栄華を極めたブリテン王国で見た、多くの笑顔。

 

それは、紛れもなくアルトリアが成した功績の証であり、夢見た理想の一欠けら。

 

「後悔はあります。私が王にならなければ国は滅びなかったのかもしれない。

ですが、身勝手と思われようとも、誇れる人生でした。

だから、私はあの結末を受け入れたのです」

 

余人から見れば、決して報われたとは言い難い結末。

 

だが、己の人生を誇る、その姿は、ネプギアが憧れた姿そのもの。

 

これほどの傑物ですら、理想は叶わなかった。

 

それは、女神の体を持つネプギアも、現実の前には無力であることを示唆しているだろう。

 

単純な戦力、大局を見極める智謀、命を捧げる決意、どれもネプギアを上回るモノをもってしても、国一つ護ることは叶わなかったのだ。

 

ならば、世界平和よりも難しいとも言える、ネプギアの願いはやはり、叶わないかもしれない。

 

「ネプギア、貴女の願いは、私以上に報われないものになるかもしれない。

それでも、その決意は変わりませんか」

 

アルトリアの言う通り、その願いの先に、望む結末は待ってない可能性のほうが高い。

 

ここですべてを投げ出し、女神として生きても、誰も責めることはなく、むしろ歓迎されるだろう。

 

だが、あの夜に、黄金の剣に誓ったことがあった。

 

「―――――それでも、私は進みます。 その最期に自分の人生を誇れるように、私は私の理想を裏切りません」

 

きっと、この選択を後悔する時が来る。

 

その手を血に染め、護りたいものを失い、失意に沈む時、何度も後悔するだろう。

 

それでも、諦めたくない想いがある。

 

例え、その人生が報われないものだったとしても、望む結末が訪れないとしても、この想いに背を向けた未来に、誇れるものはないと、そう想うが故に。

 

「ネプギア、貴女にこれを。 貴女には、その資格がある」

 

アルトリアが渡したそれは、ネプギアの手に渡った途端その姿を消した。

 

困惑するネプギアを前に、アルトリアはその姿が薄くなり、この場所がから消えようとしていた。

 

「どうやら、時間のようですね……」

 

この会合は、幾重にも重なった奇跡。

 

その仕組みは理解できずとも、二度と再現することはないだろうと、ネプギアもアルトリアも理解していた。

 

「ネプギア、その理想の果てで、また会いましょう。

貴女の征く道に、幸多からんことを」

 

「はい、必ず会いに来ます」

 

薄れゆく景色と共に、浮上する意識。

 

それは黄金の剣に連なるもう一つの誓い。

 

騎士王との誓いの証をその身に宿し、最期の戦いへ向け、その瞼を開いた。

 




このアルトリアは、セイバールート後のアルトリアです。

悠理は、凛ルート後ですが、並行世界が有りな世界観なので、極端な矛盾はないということで登場してもらいました。

完結までももう一息。

どうか、最期までお付きあいください。
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