剣の丘を目指す者   作:未来

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新たな決意を胸に平行世界の狭間を潜り抜け、新世界へと降り立った悠理は―――――――――――――死にかけていた。

 

「これが……士郎さんの言っていた……凛さんのうっかりか……」

 

初等の呪いであるガンドだが、使い手である遠坂凛は《魔法》に指を掛ける程の天才。

 

フィンの一撃にまで昇華したその呪いは物理的なダメージと共に、行動不可能下手をすれば死ぬレベルの体調不良を齎す。

 

あの場でこそ気合で立ち上がったが、今では立つこともできず、高熱と吐き気、全身の関節が悲鳴をあげ、視界は霞むだけではなく、ぐるぐると回り、貧血に似た症状も併発している。

 

魔術師ならば、魔術回路に魔力を流し、異物である呪いを押し流すであろうが、悠理は魔術師ではなく、その特異能力である《観測者の書(アーカイブ)》も神秘を再現することしかできない。

 

過去に、解呪の魔術を見ていれば解呪できたのだが、衛宮士郎と共に行動していた悠理が見てきた魔術は、相手に害を齎すものばかり。

 

さらに言えば、病気によって薬や治療法を変えるように、呪いにも解呪の方法は多岐にわたる。

 

悠理が知覚した解呪法が、その呪いに適応していなければ当然意味がない。

 

万能に見える《観測者の書》は、戦闘でこそその真価を発揮するが、それ以外では融通が利かず、むしろ役に立た無ないことが多々なのである。

 

「こんなところで、死ねるか……!」

 

交わした誓い、辿り着く場所云々の前に、こんな間抜けな死に方は、何があろうと許容できるものではない。

 

いくら威力が高いとはいえ、所詮はガンドの呪い。

 

数日も立てば、呪いの効果も薄れるであろうが、その数日間、動けない体で放置されていれば、いくら鍛えられているとはいえ衰弱死の可能性も出てくる。

 

熱に魘され、意識すら霞む傍ら、どん詰まりの状況を抜け出す方法を考えるが、新世界において、知人も金も常識すらない状況は、百戦錬磨の悠理ですらどうしようもなかった。

 

―――――――――まずい、意識、が……

 

薄れゆく意識を、歯を食いしばって留めようとするが、それも限界。

 

最早これまでかと、意識を手放そうとした時、人の声が聞こえた。

 

「はわわ! アイちゃん、人が倒れてるですぅ!」

 

「はぁ? こんなところに人なんているわけ、って、ちょっと、あんた生きてる!?」

 

「す、すごい熱ですぅ、とりあえず、手持ちのお薬を……」

 

「待って、コンパ! あんた、何打ち込もうとしてんのよ!?」

 

「え? 元気なるお薬ですよ?」

 

「それは、〆切前の作家が、徹夜するときに使う薬でしょうが!

死にそうなときに、ハイになる薬使ってどうするのよ!」

 

――――――――――助かった……? 助かったのか……?

 

倒れている悠理の目の前でぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる、二人の少女の声を確認すると、今度こそ、意識は闇に堕ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――夢を見ている

 

何も見えない、底のない闇を堕ち続けている、その感覚を、何故だか懐かしいと感じていた。

 

ふわふわと、定まらない思考。

 

断片的な情報の欠片が、脳に直接刻まれては、次々に、関連性も連続性もなく、断片的が故に、意味が分からない知識が脳に刻まれていく。

 

例えば、深海に棲む魚の生態。

 

例えば、幻想の中に生きる一角獣へ至る進化の工程。

 

例えば、地球とは違う、異なる世界で、人間が刻んだ歴史。

 

詰め込まれる情報量に、脳が処理しきれずに頭痛という悲鳴をあげる。

 

底のない闇を堕ちている感覚の中、指ひとつ自由がきかないその場所で、拷問のように頭痛が肥大化していく。

 

あまりの激痛に叫び声をあげるが、叫んだはずの声は耳に届かず、いっぱいになった袋に、無理矢理お菓子を詰め込むように、悲鳴をあげている脳に情報を詰め込んでいく。

 

夢であるが故に意識を失うことを許さないその空間で、何故だが辿り着いたとという感覚があった。

 

そこで初めて視界が晴れる。

 

何もない永遠に続く闇、堕ち続けている感覚は残っているにも拘らず、終点だという感覚がある矛盾。

 

――――――――俺は、この場所を知っている……?

 

情報の嵐は止み、周りを見渡す余裕が出来た悠理は、その足元に《渦》を見た。

 

何故だかわからない、理由なんてない、だが、危険かもしれないその《渦》に飛び込みたくなる。

 

堕ち続けているだけの状況で、初めて自分の意志でその闇を堕ちていく。

 

次第に近づいてくる《渦》、強まる鼓動は、歓喜だ。

 

もう少しで手が届く、そう思った時《赤い影》を見た。

 

赤いマントにフードをかぶり、全身を隠したそれは男か女か、果てには人間かすら分からない。

 

だが、それが、衛宮悠理という■■■■■に死を運ぶ死神だと、一目で理解した。

 

ゆっくりと足音もなく、近づいてくる《赤い影》。

 

―――――――――逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ! あれはッ!

 

本能が警鐘(レッドアラーム)を鳴らし続けるが、まるで魅入られたかのように動けない。

 

そんな悠理に、《赤い影》が、触れた。

 

―――――――――ヤットミツケタ

 

それは、憎しみより生まれた歓喜の言葉だった。

 

衛宮悠理ではない■■■■■の知識が、目の前の存在はただの法則(システム)だと言っている。

 

ただの法則が、狂笑するほどに、待ち焦がれていたのだ。

 

この瞬間を、■■■■■■を殺す瞬間を。

 

赤いマントから出た青白く骨のように細い腕が、悠理の首を締め上げる。

 

――――――――死ぬ、殺される、ここで、俺は……死ぬ?

 

萎んだ戦意、秒単位で失われていく生命力、近づいてくる死の中、胸に灯ったものを思い出した。

 

衛宮士郎から救われた命、背負った理想、初恋の女性と交わした新たな誓い。

 

訪れる死を前に、剣の丘を幻視()

 

――――――――死なない……!  あの丘に辿り着くまで、俺は、死ねないんだ!

 

手も足もまだ動く、やれることをやらないで、簡単に死んでいい程、背負ったものは軽くない。

 

削り取られる生命力、だが、萎んだ戦意は再燃し、驚異的な力で締め上げるその手を振りほどく。

 

浮上する意識と共に、《渦》から離れ行く。

 

《赤い影》は憎しみと殺意を振りまき、悠理を殺めんと迫る。

 

追いすがる《赤い影》、法則を狂わせるほどに強い憎しみは、触れていなくとも悠理の命を削っていく。

 

だが、その憎しみにも負けない、背負った想いは、間一髪でその凶手から逃げ果せることが出来た。

 

《渦》へと引き換えしていく《赤い影》、狂気ともいえる憎しみを向けられ、殺されかけたその相手に対し、何故だが、憐れみを覚えるのだった。

 

 

 




ラノベがダメならゲームがあるじゃない! 

というわけで、ネプテューヌの世界に決まりました。

え? マイナー? そんなことは知りません……嘘ですごめんなさい!

流行のだんまちとかハイスクールD×Dとかにしようと考えたんですが、原作を読むのがめんど……時間がないので断念。

とはいえ、こっちもリバース1・2しかやってない上に、クリアしたのが1年前くらいと思出しながら、書くので時間は掛かるうえに、リアルも忙しいと、更新は週一くらいの予定。

ちなみにリバース2の方で書いていくつもりです。

締めるところは締めて、軽いところは緩くかけたらいいと思っていますが、主人公が堅物なのでどうなることやら……

では、またお会いしましょう
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