魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists 作:zwart
終点
血のにおいが溶け込んでいる。それは俺の着ている制服であり、この車内の空気であり、この国のすぐ外まで迫っている様々な思惑を抱えた艦隊だ。
ああ、そしてこの腹に開いた銃創もそうだ。
「く、そが」
周りを見回す。そこにはこの列車に偶然乗り合わせてしまった民間人/俺も少し前までそちら側にいた。彼らは隣の車両に逃げ込んだり、端のほうへ後ずさったり。震えて座り込んでるヤツもいた。
絶対に倒れまいと手すりにしがみつき、右手でベルトの内側から拳銃---学生が手探りで作った粗製なリボルバーを抜いた。相対する彼らに悟られないように半身にしたその後ろで静かに撃鉄を下ろす。
「なあ、オイお前ら…いつから狂ったんだ。俺達はただ、平和の為に行動たんじゃないのかよ…世界中で戦争を引き起こすクソッタレのハゲ野郎を潰すんじゃなかったのかよ…!」
どうしても、死ぬ前に問いたかった、今し方芽生えた疑問、叫び。
答えたのは、硝煙を細く吐き出すコルトを弄びながら、気持ちの悪い笑みを浮かべる俺の親友/戦友/裏切った、テロリストに。
「ああ、そうだ。俺達はそのために、鍛えて鍛えて、怪しい科学やオカルトじみた技にだって手を染めた。強かったよ、俺らは」
そして彼は左手を掲げ、軽く頭をさすって見せた。
「けどダメなんだよ。俺達がいくら強くなろうと、手を尽くそうと、彼には、届かない」
視界がぼやける。ああ、くそ。いつも通りにチンタラ喋りやがって、こちとら死にかけてんだよ。
「彼は、世界の真実で、僕等はただの人間なんだから」
「…で、俺達を裏切ったのか。勝てねぇから、ひれ伏したのか」
「君もこっちに来ればいいよ。彼には俺が話してやるからさ」
「ハッ、腹撃っといてよく言うぜ」
「そうか、なら君は殺さなきゃ」
ゆっくりとコルトの照準が俺の額に合わせられる。
「健悟ォォォッ!」
叫ぶ、もう見たくなかった。アイツ等の姿、その頭…。
「俺達のこの体は、もう不要な物なんだ。俺達は死ぬことで、生まれ変わる…だからさ、この体で戦う最後の『敵』絶望しながら引き金引けよ…!」
列車は既に限界まで速度を上げて都内に突っ込もうとしている。二号車と最後尾は爆弾だらけ、恐らく---いや確実にこの列車は外部から停止する方法は全て潰されているだろう。
「おぁぁぁぁ…!」
けれどそんな事は全部どうでもよくて、俺はもうかつての仲間を殺す事だけしか頭に無かった。
腹から血をドクドク流しながら、愛銃を構えて、速射。元は戦友だった肉体が、まず4人終わった。二発外した弾丸は車両の大きな窓を突き破って曇天の景色に消えた。
後は、健悟だけだ。
俺はリボルバーをハンマーのように持ち替え、少し気を抜くだけで力が抜けそうな両足で倒れ込むように走った。
アイツはコルトをを二回撃って俺のリボルバーを弾き飛ばして、頭を狙う。---だがそれも、全て予測済みだ。
銃を弾き飛ばされた右手を勢いに逆らわずに後方へ、逆に左手を体の前に持っていく。コルトの弾丸をうつ伏せになるくらいに体を倒して、最後の踏み込みと共に左手を床に付ける。そしてその場で前転するように踵落としを健悟に放った。
俺の足は比較的小柄なアイツの頭頂部へ易々と届いて、頭蓋の抵抗など無いままに、頭を潰した。
その瞬間に、俺は聞いた。バキバキという骨の砕ける音とは別に、パチンという軽い音。
その方向をみれば、客車の隅で震える母親に抱き抱えられた少年が、ぬいぐるみの尻尾を握り込んで笑っていた。その尻尾の片側には金属製のピンがぶら下がっており、本体は緩やかにバウンドしながら車両の中央へ転がった。
---ぬいぐるみに偽装された、手榴弾。
それは鉄片を撒き散らして爆発し、狭い車内に熱風を吹き荒らした。
そして俺は------。