魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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垣間見える日常

「答えろ!お前は何の目的があってこの世界にいた!! 何故我々の行動を妨害した!!」

 

……もう5分くらい続いているクロノの尋問は全く成果を出していなかった。唯一聞き出せたのはサイゾー・サルトビンスキーという名前だけだ。(当然偽名だ。更に葉木が地球の人間だということにも気づいていない)

 

「ああ、うるせェ。良いぜ、良いですよ白状してやりますよ!!」

 

いい加減に葉木も下手な尋問に付き合ってられなくなったので降参して語ることにした。

 

葉木どこか投げやりに、それでいて自分の話は重要だと、まるでそんな風に訴えるような長い溜め息を付いた。

 

「長話になる。しっかり記憶しろよ執務官」

 

「言われるまでもない」

 

クロノはデバイスの録音機能を起動して────部屋自体に録画機能があるのだが────葉木の言葉に耳を傾ける。

 

 

 

 

「───俺はSANADAと呼ばれる特定の世界に定住しない武装集団に所属する王の臣下だ。王の名前はユキ・サナーダン。偉大なる15代SANADA王にして世界を手に入れる御方だ」

 

「待て。そんな組織は聞いたことがない」

 

「それもその筈だ。我々は管理局にその存在を悟らないように構成員の強化と物資の収集にのみ専念していたのだから。………実に長い、長い間待った。だが二月前に先代の王が死に、今代のユキ様が言ったんだよ。『時は満ちた』と!ついに我が王が世界に手をかけるとおっしゃった。戦えと!世界に我らの名を知らしめて来いと!!」

 

葉木は時に厳かに告げ、時に荒々しく吠える。

 

「つまり貴様等は2カ月前に行動を開始したんだな?」

 

「そうだ!そしてユキ様の命で我々10人の臣下はロストロギアの収集に時空へ散ったのだ!! 絶望するがいい執務官よ、私は所詮第七勇士。そして第五勇士から上と下では圧倒的力量差が存在する。彼等の集めたロストロギアは既にユキ様の手に渡っている。そう────既に我らが侵略は始まっているのだ」

 

「……フ、フン。そんな話が信じられるものか」

 

ホラ話に決まっているとクロノは思った。この場しのぎのただの嘘だと。

 

「私がジュエルシードを求めて地球(ここ)にいるのが何よりの証拠の筈だが」

 

「………」

 

自分の手で捕らえた筈のサイゾーの勝ち誇った言葉が、表情がクロノの判断に待ったをかける。本当に嘘だろうか。万が一これが虚構でなかったとしたら?そんな思考が頭の中で積もっていった。

 

「まあ、いい。ジュエルシードを弾頭に使用した魔導砲『レクイエム』が管理局本部を沈めるまでそうして現実から逃避していろ」

 

「な、そんなことがッ!!直ぐに艦長に伝えないと!!」

 

「遅いと言った。貴様も俺も」

 

直後、語り手の体が大きく痙攣し、力を失う。

 

「な!? まさか毒を、」

 

「ク、ハハッ……。さなだ、と……じゅう、勇士、に………栄えあ…れ………」

 

SANADAに仕えた第七勇士は最後、血と共に仲間を称える言葉を吐き出し、逝った。

 

「クソッ!!」

 

たまらずに尋問室を飛び出したクロノ・ハラオウンは一刻も早く艦長に管理世界の危機を伝えるべく駆けていく。

 

 

後には椅子に固定された死体が一つ残るだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………ブッハハハハハハハハクハハハハゲラゲラゲフッ!? ありえねェ!! マジで信じたのか!? アレを!?」

 

当然全てでっち上げ、というか名前を名乗った時点でからかっていたのに怒る素振りも見せなかったのでつまらなくなり、本格的にふざけ始めたのだが……何の間違いか本気で信じられてしまった。

 

まさか、まさかこんな馬鹿話で一人になれるとは思っていなかったが、兎に角脱出するいい機会だ。真面目に日本で起きるかもしれないテロか何かがプリンチップ社の手引きによるものだったならば先手を打っておきたい。そのためにもこんなところで油を売ってはいられない。

 

試しにガチャガチャと四肢を繋ぐ拘束具を弄る。金属製だが、壊せなくはなさそうだ。

 

「……天童式戦闘術、一の型三番。轆轤鹿伏鬼ッ」

 

繰り出された右拳は拘束を引きちぎって椅子を大きく凹ませた。

 

バチッ。

 

椅子の拘束は電子制御だったようで、回路のショートする異音と共に残りの拘束も外れてしまった。

 

これ幸いと椅子から立ち上がる。

 

「氷風」

 

生憎拳銃やらナイフやらの分かりやすい兵器は没収されたが、氷風は金属探知にも引っかからない隠蔽性能を存分に発揮してずっと主のポケットに入っていた。

 

『位置情報確認しました。転移可能です』

 

「よし。転移開始」

 

魔法陣が展開され、行き先隠蔽の追加機能で普通より若干遅くなった転移魔法が葉木をアースラから消した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

転移して出た先は、栗原邸だった。荷物を丸ごとアースラに置いてきたため甲に内側から開けてもらい室内に入る。

 

「疲れた……」

 

尋問ではない。オーストリアから持ち越した疲れが溜まっていたのだ。

 

どかりとソファーに腰を下ろし、氷風を弄びながらぼーとしていると、自然に考えるべきことが頭に浮かんできた。

 

発接触だったが、時空管理局は相当に人材難だとみえる。あのクロノという執務官も自分と大して変わらない年齢だったように思う。

 

続いてアースラに置いてきた高町だが、特に抵抗もしていないから拘束はされていない筈だし、正直に何でも話すだろうから地球に帰ってくるのも時間の問題だろう。

 

問題は、日本に攻撃を仕掛けてくる武装集団のことだ。

 

ひとまずテロか何かが実際に起こるとして、別にどうということは無い。日本にだって警察も自衛隊もいるのだから彼等が対処するのが順当だろう。むしろ一般人(或いは犯罪者)の自分が事に介入するほうがおかしい。国民には武装集団と戦う義務など無いし、誰も求めていない。しかし、万が一その攻撃にプリンチップ社が関わっていた場合、それは■■■■にも栗原葉木にも無関係ではなくなる。

 

栗原葉木はクラスメイトを殺されかけた。■■■■は生前に仲間を殺され、洗脳され、殺させられ、最後に自身も殺された。

 

つまりは私怨。圧倒的憎しみをもって彼等を潰すことだけが栗原葉木の戦う目的だ。

 

 

「…………」

 

しばらくプリンチップ社の情報を頭の中で整理していた葉木だが、やがて疲れとソファーの座り心地に負けて眠ってしまった。

 

「……ぜってえ、つぶす………」

 

寝言を聞いているのは常駐AIの甲と氷風だけだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

かつて、日本には学生達の戦闘部隊が存在した。

 

勿論法的に武装や戦闘行為が許可されていた訳ではない。ある女子高校生が築き上げた小さな地下組織が元だ。

 

彼等について当時の日本に残された記録は現在アメリカに保管されており、内容は大統領や一部の国防に関わる者だけが閲覧を許される。そこには女子高校生の名前と、他に幾つかの単語が残されるだけであとは破損していた。

 

『森沢かなみ』『■ャラ■■』『藤原健吾』『■■■■』『プリ■■■■社』

 

文字だった(・・・)と判別できるのはこの五つの単語のみ。他は解析中か、日本と共に永久に焼失した。

 

2016年現在、日本列島に人は住んでいない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「おーい葉木、帰ってるんだろ?」

 

睡眠を盛大に邪魔する大声に目を覚まされる。というか寝落ちしちまったか……。

 

「いないのかー?」

 

それはそうと、この場にいる筈のない友人に居場所を教える。

 

「こっちだ」

 

「お、いたいた」

 

リビングの扉を開けて入ってくるのは…制服姿の桐原真人だった。

 

「帰ってきたなら連絡くらいくれてもいいだろう?」

 

「たった今帰ってきたンだ。つーか何で俺が外出してると分かってた」

 

「お前の両親はいない、お前は風邪程度で学校を休まない。この二点だな」

 

「そーかよ」

 

何だか妙な感慨を感じると思ったら、一般的な家庭にいる人間と話すのは久し振りだ。

 

コイツ自体が普通とは限らないが。

 

「そういえば、鍵開いていたぞ」

 

「勝手に開けて入ったんじゃないのか」

 

この家の扉はアナログを模した高度な電子錠を使用しているが、桐原は開けられる。コードを知っているとかではなく、崩せるのだ。

 

「そんな事は滅多にしないって」

 

「偶にでもやるなよ」

 

コイツ、桐原真人は剣道の上級者であり、さらにこの歳にしてプログラミングのプロだ。今俺がMPBのサーバーを初見で不正閲覧できるのも真人にプログラムについて師事してもらったからだ。甲の検索エンジンを作る時も手伝ってもらった。ちなみに人格プログラムは氷風のを元にちょっと弄ったものを使っている。

 

「……本当にお前小学生かよ」

 

「葉木には言われたくない」

 

こんなやり取りもよくある。

 

「まあ、葉木が帰ってきたし俺はそろそろ帰るよ」

 

ごく普通の世間話をしている間に時計の針は5時を指していた。小学生的にはそろそろ家に帰らなければならない時間だ。

 

「おう。またな」

 

「ああ。またな」

 

玄関で見送った後、ひとまず夕飯を――――材料がないから外食することにした。

 

「ついでに消えるか(・・・・)

 

先程気がついたが、もし高町がこの家の場所を管理局に教えていたら遅かれ早かれ踏み込んでくるだろう。暫くは外で生活する必要がある。……帰ってきたと思っている真人には悪いが。可能性は低いが空腹の魔導師(フェイト)が訪ねてくるかもしれないし。

 

という訳で財布と(甲とアクセスを確立した)衛星端末と(武器弾薬で一杯になった)スポーツバック、最後に日用品を突っ込んだリュックを背負って家を後にした。

 

最初に向かうのは中華飯店「金龍」。栗原葉木的には五目チャーハンと酢豚、卵スープが最強らしい。




なんかクロノが……。うん、きっと疲れてたんだよ。
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