魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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世話をやく暇もない/無くしてるのは自分

中華飯店『金龍』で腹を満たした葉木はその足で古いマンション街に向かった。オーストリアの時程長居するつもりはないが、安全に睡眠をとれる場所は確保しておきたかった。

 

廃墟の一つに適当な部屋を見繕い、簡単な掃除をして寝袋を広げる広さを確保する。次に持ち出してきた武器と工具を並べて点検の準備をしながら衛星端末に繋いだヘッドセットで甲と会話する。───氷風を介しても通信できるが前回の使用で思ったより氷風にかかる負荷が大きいことが分かったので専用の端末を用意した。

 

「何か新しい情報は出たか?」

 

まずはベレッタ───予備パーツを使って二丁組み上げにかかる。

 

『プリンチップ関連に特に目新しい情報はないが、オーストリアの資料に異様な兵科を見つけた』

 

「何だ?」

 

『名称は特殊転送式強襲機甲義肢。通称特甲(トッコー)。機械化された四肢を外部基地からの転送と呼ばれる手順を踏んで兵器の四肢に置換するシステムだ』

 

危うくスプリングを取り落としそうになる。

 

「何だソレは」

 

『隠蔽能力と携帯性も脅威的だが、問題はその搭載される兵器だ。判っているだけで超伝導(レール)式ライフル、杭打ち機(パイルバンカー)連結式爆雷(チェーンマイン)、あと羽だ』

 

「羽……?まさか飛ぶのか?」

 

『詳しくは分からないが、多分そうなんだろう』

 

とんだ超兵器だ。というか人間兵器。使う者を考慮しないどころか使用者が道具に合わせた調整を必要とする非常識はどこから出てきた。

 

「まあ、関係ないか」

 

組み上がった二丁の照準(サイト)を確認。微調整した後はナイフと刀───雪風を取り出して簡単な手入れを済ませる。

 

靴裏に仕込んだ装甲板を新品に入れ替えて準備は終わった。

 

「6時に起こしてくれ」

 

待機状態にした端末越しに甲に起こしてもらうまで葉木は寝袋で休むことにした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「何でフェイトがここにいるンだ?」

 

翌日の朝、葉木は甲の通信ではなく部屋の外の来客により起こされた。

 

「誰だい、アンタ……!!」

 

壁越しに気配と、微かに魔力反応を感じたので管理局の人間かと思い、部屋を飛び出しざまに銃口を向けた先ではフェイトを見知らぬ女性が庇っていた。

 

「あァ……?」

 

「ちょ、二人とも待って、敵じゃないから!!」

 

「フェイト、お前の身内か?」

 

「アタシはフェイトの使い魔さ」

 

「本当か?」

 

「本当だから!! アルフにそれを向けないで!!」

 

あっそ、とセイフティーを戻し脇のホルスターへ戻す。

 

「コイツ誰だい?フェイト」

 

「栗原葉木。管理局に追われている現地の一般人(・・・)だ」

 

「いやどうみても一般人じゃないんだけど」

 

思いっきり銃持ってるし、とアルフの突っ込み。

 

「地球の一般人は拳銃持ってるモンなんだよ」

 

「いや外来だからって流石に騙されないから」

 

「で、何しにここに来たんだ?ジュエルシードでも探してるのか?」

 

フェイトから石の件は聞いたと説明しつつ後ろの金髪を見る。

 

……大分やつれてるな。

 

「そおだよ。今からここの屋上で広域探索をかけるから、解ったら邪魔するんじゃないよ」

 

「へいへい」

 

二人が屋上にいって暫く後、予想通りにアルフがフェイトを抱えて駆け込んできた。

 

「ヨーキ!! 助けてくれ!!」

 

「……やっぱ来たか」

 

部屋に飛び込んできたアルフからフェイトを預かり、寝袋の上に寝かせる。かなりの高熱だった。

 

アルフに手伝ってもらったり、話を聞いて愕然とする。

 

寝不足、疲労、栄養不良、無数の打撲と擦過傷。

 

「オイ、この傷は何だ……?」

 

「鞭だよ。あのクソババアがやったんだッ……!!」

 

「ババア?」

 

「フェイトの……母親だ」

 

意味が解らない。自分の娘に鞭を振るった?

 

「どういうことだよ」

 

「………フェイトがジュエルシードを集めてるのは、アイツが言いつけたからなんだ。それでこの間集めたジュエルシードを持って行ったんだけど、数か足りないとか言って……。チクショウ、フェイトがあれを集めるのにどれだけ苦労したと思って……!!」

 

葉木は少しの間フェイトの傷を見つめ、

 

「治療する。この程度なら治療したところで大した負担にならねェ。それに熱も少しは下がる筈だ」

 

氷風を構えた。

 

「あ、アタシも」

 

「お前はコンビニか何かで氷でも買ってこい」

 

ほら、と五百円くらいアルフに投げつけ、外に向かわせる。

 

栗原葉木は魔法が得意ではない。資質がないのではなく、あまり訓練に時間を割いていないからだ。彼が優先的に練習し、習得したのは治癒系、肉体強化系、そして移動系くらいだ。今は治癒系に何度もお世話になった経験が幸いした。

 

「氷買ってきたよ!」

 

それなりの数があったが分かる部分は全て治癒したところでアルフが帰ってきた。

 

「傷も大体治した」

 

アルフが買ってきた氷は大袋の中に半分の大きさの袋が2つ入っているような包装をされていた。その一つを取り出し上着でくるみ即席の氷枕にした。もう一つはカセットコンロと一緒に買った安物の保冷バックに詰めておく。

 

「やれることは大体やった筈だ。あとは起きるまで寝かせとけ」

 

「治るのかい?」

 

「大人しくしていれば悪くはなンねェよ」

 

「そっか」

 

アルフはフェイトの側に座り金髪を撫で、葉木は少し離れて甲のヘッドセットを着けて長弾倉に弾を詰め始めた。

 

「アンタ、それで管理局と戦うのかい?」

 

「───違う。戦う相手はこの世界の屑だ」

 

「そ、そう」

 

それきりどちらも一言も話さずに工作道具の音と小さな寝息だけが部屋に残る。朝方に部屋に駆け込んで、そのまま夕方になったがフェイトは起きない。何度か、「寝過ぎじゃない?」「寝不足なんだろ」という問答があったがそれくらい静かにフェイトは寝ていた。一度「あるふー。ふわふわぁ、もふもふ…」という寝言で使い魔を盛大に赤面させたが。

 

「いい加減メシでも作るか」

 

とにかく夕方になり、夕飯を作る為に幾つかの缶詰めや調味料、最後に米を取り出す。ちゃっかりアルフが自分とフェイトの分も頼んだので結構な量だ。コンロを2つ広げ(二つ目はコンロで火を付けた燃料を簡単な結界で囲っただけだ)それぞれに米と野菜系の缶詰めと適当にバラしたコンビーフをバラ撒き、水とダシと根菜類と赤茶のペーストを火にかけてた。

 

「そんなに食べるのかい?」

 

「一応4、5人前のつもりなンだが、感謝しやがれ欠食児童」

 

「ちょ、誰が欠食児童だって!?」

 

「お前の主サマだよもふもふ使い魔」

 

え?とアルフが背を振り返ると、ムクリとフェイトが起きあがっていた。

 

「あ……れ?なんか、いい匂い」

 

「フェイト、ピラフモドキと味噌汁作ってるから少し待ってろ」

 

「分かった」

 

そういや前の時もこんなだったような。……コイツ食い物の匂いで起きるのか?

 

因みにピラフモドキも味噌汁も、食料の備蓄をほぼ全て使ったのでそれなりの量が出来たが、葉木は元々大食らいだし、アルフもそれなりに食べるし(人間時の体格は大人だからか?)フェイトはまさしく欠食児童だから割とあっさり鍋は二つとも空になった。

 

 

その後フェイトはジュエルシードを探す為にアルフとすぐに飛び出して行ってしまったが、葉木もそれを止めずにただ見送った。

 

 

 

 

 

 

 

昼間、フェイトが寝ていた時のことだった。

 

 

 

 

 

 

甲のハッキングにより日本に攻撃を仕掛ける敵の存在が確実だと判断されたことを、それにプリンチップ社が関わっていることが葉木に伝えられた。

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