魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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裂く

微かなパスからフェイトが死んでいないことは分かった。それは今にも消えそうで、治癒魔法を掛けてやりたいが、彼女と彼女の主の直線上に厄介な邪魔者がいる。───上等だ。叩き潰してやる。

 

魔力を両手両足に載せ、突撃。

 

「フェイトから、離れろおおおッ!!」

 

怒りに任せた後頭部への不意打ち。後でフェイトが知ったら怒るだろうけれど、殺す気で殴った。

 

「───うるさいわ、駄犬」

 

視線を向けられた。それだけでバリアが展開され、

 

「バリアじゃ、ない!?」

 

打ちつけた拳を起点に雷撃が全身を貫き、床に叩きつけられる。べちゃりという音はアルフの血か、それともフェイトの血か。

 

───まだだ。

 

立ち上がり、鉤爪にした両手に魔力を集める。殴ってダメなら引き裂いてやると。

 

「ハアアアアアッ!!」

 

再びシールドに突貫。雷撃が来るならと接触部分のみに防御を集中して刹那の拮抗を得る。それだけあれば十分だった。シールドを上下に引き裂いた、その下側にある右手を握りしめてフックを放つ。

 

「弱いわね」

 

「そんな!?」

 

空振った。訳も分からないまま無様につんのめって転倒する。いつの間にか右足首にバインドが掛けられていた。

 

強い。不治の病を患っていると聞いていたが、まるでそんなのお構いなしかのような魔力、そして魔法戦の技術。

 

更に雷鳴。四条の光の奔流を撃ち込まれた。

 

「が、あああああああッ!!」

 

四肢を焼き尽くされるような痛みに転げるアルフにプレシアが歩み寄る。その手に赤がこびりついた鉄鞭をぶら下げて。

 

「フェイトももっとマシな使い魔を作ればいいのに。やはりダメね、あの子は」

 

ふざけるな。

 

「オマ、エ……。フェイトがどれだけ、頑張ったと思ってるんだ……ッ」

 

最後の抵抗とばかりに睨むアルフにプレシアは冷めた表情でプラズマランサーの鏃を向ける。

 

「興味ないわ、そんなもの」

 

光がはじけた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

午後11時59分、海鳴市海浜公園に黒い影があった。

 

暗いから影しか見えないという訳ではない。海を望む高台ねフェンスに座るその姿は黒の小さなポーチのついた潜水服に黒いヘッドギア、黒いマスクと真っ黒だった。傍らにある酸素ボンベと思われるものまで黒く着色されていた。

 

人影は海を向いたまま微動だにせず不安定な場所で10分程胡座をかいていたが、やがて一つの動きを見せた。

 

「来たか」

 

落下防止柵の上で立ち上がった影は2、3度軽くその場で跳ぶと海へ飛び込んだ。そしてある程度潜ると沖へと泳いぎ進む。

 

───見つけた。

 

800メートル程進んだ先に在ったのは夜の海水面下ではほぼ目視は不可能な、しかし巨大な楕円形の構造物。潜水艦だ。大分水面に近づいているのは上陸部隊を出撃させるためか。

 

影は腰のポーチから箱状の物体───プラスチック爆弾を取り出し、その艦首底部に勢い良く接近、通り過ぎざまに貼り付けた。そして海面方向に距離をとり起爆する。

 

轟とくぐもった破裂音が一時海の中を支配する。が、携帯型の爆弾程度では外殻に大した傷も付かない。当然影もそのことをよく理解していた。

 

今度は艦上部に張り付き、Princip.Inc.と表記されたハッチ部分で足を何らかの方法で固定した。上の敵に気付いた潜水艦が人では辿り着けない深度へと向かうべくバラストを注水し始めるが、影は一切気にせず刀腰に構える。

 

「(天童式抜刀術六の型三番───無影無蒼ッ)」

 

それは陸においては斬撃を飛ばす技だが、水中では減衰されてなお直撃したハッチを両断し内側のもう一枚に切れ目を入れた。下手に潜れば圧壊する。

 

だが影は止まらず、注水されているバラストの開口部を見つけ、今度は刀を垂直に構えた。既に深度は200メートルに近い。今度は突きだった。より減衰の少ない一撃は外殻に小さな穴を開ける。立て続けに三度穿ち、深度230メートル。いよいよ影は離脱した。

 

潜水病を避ける為ゆっくり海面に向かう影はだが、まだ攻撃を止めない。

 

潜行を辞めた潜水艦との距離が十分になったと同時に手元のスイッチを押し込み、足の固定に使用していた磁石に取り付けたプラスチック爆弾を起爆した。その位置は、ハッチ真上と穴の開いた外殻のすぐ側。

 

 

 

 

岸まで戻った影はヘッドギアを投げ捨ててその場に座り込んだ。

 

「ぜぇっ、はあっ」

 

『お疲れ様です、マスター』

 

ポーチ内から電子音声。インテリジェントデバイス『氷風』のものだ。

 

「ったく……死ぬかと思った。何だアレ、ダイバーってよくあんなのやるな」

 

氷風は『単にアンタが馬鹿なだけで普通のダイバーはあんなことをしない』とは思っても言わなかった。

 

「あー、氷風。バリアジャケット展開頼むわ」

 

バリアジャケットは着替えの代わりだった。Tシャツとジーンズ、スニーカーの姿になった葉木は立ち上がり、ゆっくりした足取りで内陸へ向かう。

 

───とんだ馬鹿マスターです……。

 

氷風は内心で考える。

 

今回葉木がプリンチップ社の上陸を防げたのは完璧な偶然だ。敵の存在を確信した葉木が、先制攻撃や牽制に出来ることを考えて、方法が見つからずにとった方法がこれだ。ピンポイントで待ち伏せして標的が運良く(・・・)現れたら迎撃する。狂っているとしか思えない作戦、いやただの賭けだ。

 

───何故、マスターはここまでプリンチップ社の撃退に固執するのでしょう。

 

葉木の行動はプリンチップ社関係でとりわけ異常だ。子供なのに実銃を集めてたり無駄に剣や拳の扱いが上手かったりと初めからどこか変だが、今回は改造銃を一丁鹵獲してからは自ら敵地に向かい下部組織の人間を拷問し殺したりと余りに攻撃的だ。更に今回の無謀な攻撃。今回葉木は潜水艦にも通常の軍艦、戦闘ヘリにも対応するべく使ったこともない大量の兵器を揃えて来るかも分からない敵に備えた。今向かっている海浜公園には分解されたそれらが大型のトラベルバック三台に分けて置かれている。

 

───これほどの執念、マスターは個人的な怨恨から来ていると言っていますが、本当にそれだけなのでしょうか。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「うう…、あ……?」

 

全身が熱い。

 

「目を覚ましましたか」

 

声は、母のものだ。顔を横に倒すと白衣の背中が見える。私は白い台に寝かされていた。

 

「治療は終わりました。フェイト、残りのジュエルシードも取ってきなさい」

 

「分かりました。……あの、アルフはどこですか?」

 

「あの使い魔は仕事に耐えかね消えました。次はもっといい使い魔を作りなさい」

 

アルフはそんなことしない。でも母さんは何か理由があってそんなことを言うのだろう。

 

「分かりました。行って来ます」

 

母さんの為だ。必ず全ての石を手に入れてみせる。




2652文字…。以外と少ないなあ……。
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