魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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粉砕

「普通の平和が目的だ」

 

異様に透明な目。何も見ていない目で彼は私を見てそう答えた。

 

目。異様な輝きを放ち、見る者を同じ虚無に引きずり込むような───。

 

「そうですか」

 

反射的に目を逸らし、答える。

 

「分かりました。要求を受理しましょう」

 

思わず早口になってしまったが、一体何が私をそうさせたのだろう。モニターに目を戻すと、そこには外見は少なくとも至って普通な少年がいるだけだ。

 

「感謝します」

 

その声音も普通だ。一体先程のあれは、(恐怖だろうか)何だったのだろう。

 

だが疑念を振り払うよりも深く考えるよりも早く、更なる強い驚愕がリンディの思考を塗りつぶした。

 

 

 

 

無事に交渉が終わった。これで敵との交戦があると国が予測した3日間には管理局の干渉を無くせた。

 

「さて、俺の要件は済んだが……」

 

戦士の必須技能たる瞬時の状況確認を遂行。現在魔法により滞空中。眼下には海とレイヤー建造物。眼前のモニターは消失。クロノ・ハラオウン執務官は五メートル付近の位置にデバイスを展開して滞空。そして高町やフェイトのいる東側には巨大な桃色の太陽が確認するまでもなく存在していた。

 

「なンだアレは」

 

なんか今にも発射しますって感じに拍動してるんだが。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「やった…」

 

最後にスパーク・エンドを投擲し、ファランクスシフトの全てを終えたフェイトは限界まで魔力を吐き出した反動を押さえつけながら思った。

 

───今のは間違いなく撃墜出来るだけの一撃だ。バインドも───今、壊れたみたいだから命中は確実の筈だ。

 

まるで言い訳のような思考。その原因は正面の爆煙の向こう側から洩れてくる桃色の魔力光。しかも徐々に強く大きくなってく。

 

「まさか、収束砲!?」

 

食らえない。どんな状態でもあんな物を撃たれたら一撃で墜ちる。慌てて上へ逃げようとするが、

 

「バインド!? 何時の間に…」

 

拘束を解こうとする間にも桃色の光はグングン成長していく。もう直径20メートル以上はあるだろうか。一際大きく拍動した魔力は、もう撃ち出される直前だ。

 

「スターライトォォ」

 

「ッツ……!!」

 

間に合わないと察してシールド展開、五枚まで展開した、その瞬間についにそれは放たれた。

 

「ブレイカ―――ッ!!」

 

 

 

 

高町なのはが放ったスターライトブレイカーは管理局が用意した模擬戦闘用結界の東から西までを一瞬で横断して、狙われたフェイト・テスタロッサは勿論のことその背後の全てのレイヤー建造物と偶然射線上に居合わせた魔導師二名を飲み込んだ。もしもミッドチルダにギネスブックが存在したら間違いなく個人が放った魔法砲撃最大威力として載せられるだろう。

 

 

 

 

辛うじてシールドの展開が間に合ったクロノと葉木は撃墜こそ免れたが、防御に使った魔力は足場用の陣に立っているのがやっとだった。(足場となる建造物と飛行魔法の翼は全て消し飛んだ。)

 

「あ゛あ゛あ゛~ッ。何だ今の砲撃。対艦砲っつうよりICBM食らった気分だぞオイ」

 

「はあっ、はあっ……。多分収束砲だ。僕もあれだけ巨大なものは初めて見る。まあ、流石にここに来る間に大分減衰したみたいだが」

 

両名は羽を再展開して砲撃元に向かう。

 

「あれ、フェイト死んでるんじゃね?」

 

「……後遺症の可能性くらいは考慮した方がいいかもしれないな」

 

割と本気で心配しながら爆心地に到着すると、ボロボロのフェイトが宙に立っているのが見えた。肩で息をしていてぐらついてるのを高町が支えようとしている。その高町もバリアジャケットがズタズタの状態で死闘の痕が伺える。

 

(…案外大丈夫そうだな)

 

二人とも自力で飛行していて大きな外傷も無さそうなのを確認すると葉木は軽く息を吐いた。クロノも別でため息をついている。

 

一戦終わったと、その場の誰もが安堵した瞬間だった。

 

「え?」

 

轟く轟雷がフェイトの意識にトドメをさした。力を失ったその体が真っ逆様に海面に墜ちる。

 

「まずい!」「フェイトちゃん!!」

 

後を追うようになのはが救出に飛ぶ。未だ降り注ぐ雷撃に邪魔されながらもなんとか間に合った。その頭上へ落ちる攻撃はクロノと葉木の協同作業で防がれる。

 

「直ちにアースラへ退避を!!」

 

その言葉を待たずに魔法陣が展開、エイミィのフォローで全員が転送された。

 

「あれは誰の攻撃だったンだ!?」

 

「フェイトの母親のプレシア・テスタロッサの仕業だ。現在攻撃元の位置を追跡して武装隊を送り込んでいる!」

 

なのはとフェイトは担当職員に医務室に連れて行かれ、クロノと葉木はブリッジに向かう。

 

「というか何で君もついてくるんだ!!」

 

「状況が把握してェだけだ!! 銃火器は持ち込んでねェから安心して案内しやがれ!!」

 

「そんな頼み方があるか不良めが!!」

 

「いらねェところで本音暴露してンなムッツリ魔導師!!」

 

「貴様も暴露してるだろ!!」

 

だがいかなアースラといえど廊下の長さには限りがあり、低レベルなケンカの決着が付く前にブリッジの扉に到着した。ほぼ同時に飛び込む。

 

「状況は!」

 

「今武装隊がプレシアを見つけたところよ」

 

二分化された大画面に映されるのはデバイスを構えた武装隊に包囲されるプレシアと、内部の探索をしている隊員の一人が送ってくる映像だった。

 

前者のモニターではリンディとプレシアが会話しており、後者の映像は突入した大広間の左右の部屋に突入して脅威になる物を探しているようだが、何も発見しないで最後の扉───プレシアの背後の扉を開いた。

 

「!その部屋に、入るなあああッ!!」

 

その瞬間に雷撃が隊員達を襲う。たったの一撃で広間で彼女を取り囲んでいた分隊も含め全員が床に伏した。

 

血を吐くプレシアが、しかし構わずにその部屋の最奥に向かう。そこには柱と見紛う程大きなシリンダーが一台据えられていた。その中には膝を抱えた金髪の女児が浮いており───

 

そのタイミングでなのはがフェイトを連れて来てしまったのは、何の因果か。

 

「か、あ、さん?」

 

双方向通信が忠実にフェイトの声を拾いプレシアの元に送った。

 

「あら、いたのフェイト。別に構いやしないけど」

 

「あの、その子は誰ですか?」

 

「私の本物の娘、アリシアよ。そしてあなたは偽物。出来損ない。本来ならそうと分かった瞬間に処分する筈だったゴミよ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「あなたはね、元々死んだこの子の新しい魂の器にする為に私が作り出したのよ。最初は成功したとおもったのだけど、全然ダメだったわ。貴女にはアリシアの魂は宿っていない。出来上がったのは人間未満のただの人形。でも勿体ないからジュエルシードを集める道具として今日まで使ってきたのよ。アリシアを蘇らせるために」

 

フェイトが倒れかけ、なんとかなのはが抱き止めた。ショックで力が抜けたのだろうか、呆然としていて反応が薄い。

 

「オイオイ。死んだ人間を生き返らせるってことがどォいうことか解ってンのか?」

 

「私がやることに口出ししないで頂戴。」

 

「そもそも死者蘇生など不可能であることを知っているでしょうプレシア・テスタロッサ。どんな魔法でも人を蘇らせることは不可能なのですよ」

 

これ以上フェイトに言葉を掛けさせないというようにリンディと葉木が割って入る。だがクロノは単純な驚愕に叫んだ。

 

「辿り着く?ジュエルシードを使って……?まさかお前は」

 

「あら、頭がいいのね」

 

良くできましたとばかりにプレシアは解答を口にし、見せつけた。プレシアの腕が振られて、直後に地震がアースラを襲った。

 

「次元震発生!! ジュエルシード5つが暴走しています!!」

 

「私とアリシアは行くわ。次元の狭間の先にある聖地。アルハザードへ。そこで私達はアリシアも何もかも全て取り戻す!!」

 

その場が凍りつく。次元断層を起こすということは複数の世界を破壊するということだ。

 

狂気。元は一人娘への愛情だった筈だが、今のそれは文字通り世界をも滅ぼす最悪の狂愛になってしまった。

 

「やめて……母さん。私…母さんの娘───」

 

やがて母の言葉を飲み込み、フェイトはそれが嘘だった筈だと信じたくて自分の存在を肯定してほしくて口を開く。

 

「黙りなさいガラクタ。私はあなたが失敗作だと分かった時からあなたが目障り目障りで仕方がなかったのよ!二度と私を『母さん』なんて呼ばないで頂戴。次に私の前に現れたら処分(殺す)わ!!」

 

「あ───」「消えなさいフェイト!!」

 

 

頭の中が真っ白になった。母さん、私に何て言ったんですか娘ではない何て言ったん道具目障りですか人形母さガラクタ私は処分私は失敗作人間違うそうだ違うお前は人間ではない母さんかあさんカアさお前は目障りな玩具人形ガラクタだ処分してやる消えてなくなれ―――。

 

 

 

 

 

 

 

パキン。

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