魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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零点

---何だ、この感覚は。

 

目が見えない、何も聞こえない、あらゆる五感に何も感じられない。手足の、いや肉体そのものの感覚が無い。これはどういう状況だ?

 

死んだ? 植物状態にでもなったのか? それとも夢か何かなのか?

 

 

『うん、僕は最初の解が正しいと思うよ』

 

唐突に俺の無くしたあらゆる知覚の外、つまり内側から歪な声が聞こえてきた。フィルターを掛けたような、老若男女の沢山の声を混ぜたような声---。

 

…誰だ?

 

『私は、まあいわゆる神様何だけれどまあ良いわ。そのままじゃあなたがやりにくいだろうから少し待ちなさい』

 

不意に五感と体の感覚が戻って来た。しかし目の前には暗闇しか広がっておらず、何を知覚できる訳でもない。言うなれば『無』だろうか。

 

「だれだよお前」

 

発声に問題は無い。

 

『だから神だって。つーかさぁ、お前とりあえず死んだ瞬間を思い出せや。話はそれからだ』

 

死んだ?そうだ、あの時電車の中でアイツと戦って---。

 

「…あの車両にいた乗客はどうなった」

 

『死んだヨーン』

 

急に周りの『無』が晴れて膨大な情報が五感を貫いた。目は光に焼かれ、耳鳴りが頭を突き刺すが、それら全ての痛みを俺は忘却することが出来た。

天井は吹っ飛び、陽光が差し込んでいる。その陽光に照らされる人々は皆、完璧な平等の下にあった。

 

 

死。

 

 

彼らはもう、家族や友人に見せる顔すら持たない。次に遺族が見る彼らの姿は、死体より冷たいただの遺影だろう。

 

『見なよ、みんな君達のせいで死んだんだよ。君達が引き起こした戦いの犠牲者だ』

 

一人の少年と目が合った。頭蓋は半分になり、全身が炭化していた。

 

吹っ飛んだ窓に引っかかっている女学生。自動ドアの手動制御レバーに手をかけた青年は、腕しか残っていなかった。母親に庇われた双子は、鋭い金属片に貫かれて生涯を終えた。両端の連結部分に殺到して隣の車両に逃げようとした人々は、消火器に偽装されていた爆弾によって絶命した。

 

戦友の裏切りに合い、彼と殺し合ったとある私鉄の車内だった。

 

全ての犠牲者は俺に訴える「お前達のせいだ」

 

『ああ、心配ない。君が彼らの叫びを聞く事はないよ。あの場から回収した魂は、僕の知る限り君だけだから』

 

…え?

 

『いやあ、君意外に楽しそうな魂はあそこに無くてねぇ。回収する気が起きなかったんだよ。他のゴミは全部処分しちゃった』

 

何を…言っているんだ?

 

『あなたにはこれから転生をしてもらいまーす。今度はある程度アドバンテージをあげるからもうちょっと長生きしてね。君のダイッキライなテロリストもたーくさんいるから、手を抜いたら…どうなっちゃうんだろうね♪』

 

彼らは、消された?散々罪を犯した俺だけ残って?

 

『そう、君は大罪人だ。だが如何なる罪も、善行も、正義も悪も僕は計らない。どれだけ強い魂を持って死ぬか、どれだけ僕らの前で踊り狂って見せるかが重要なんだよ』

 

そして再び、何もない『無』に呑み込まれた。更に意識が遠のいていく。これが『転生』とかいうやつなんだろう。俺という意識が別のところに移動されるのが判る。

 

『あ、そうだ。お前にあげるアドバンテージを何にするか、聞いてなかった。何でもいいか。とりあえず健闘くらいは祈っといてやるよ。お前が例え望まなくとも、戦いの炎は直ぐに迎えに来るぜ』

 

そして『■■■■』は『無』から姿を消した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

この世界に生まれ落ちてから十年が経つ。栗原葉木という名を新たに付けられ、小学生として暮らしながら、体を鍛え、武器を揃えにかかった。

 

四年前から親は居ない。そして彼らが音信不通所在不明なのを良いことに、俺の家は俺の集めた刀剣、銃器、弾薬が隠されていてとんでもない状態になった。例えばその辺の壁を規則的に叩くとベレッタが出てくる。

 

こんな事をしているのは、あの神サマの言葉が原因だ。

 

"テロリスト" "戦いの炎は迎えに来る"

 

そして神サマも俺に得物を寄越してきた。『デバイス』という奴で、どうやら近い将来に必ず必要になるらしい。だが実際に使ってみたらダサいデザインの杖が出てきたので徹底分解して(二年くらい掛けて)一から作り直してやった。今は銃や剣に変形する、ナビゲートAIみたいな『知性』を持つ機体になった。あと中に入っていた『魔法』とやらも再構成されて原型を留めていない。

 

他には本を参考に剣術と拳術を始めた。恐ろしく下手な字で書かれた日本語の武術書…というか開発日記と、英語のに酷似した、何処の言葉かも解らない文字で書かれた剣術書だった。どちらも6歳のある朝にデバイスと共に送られてきたもので、苦労して解読しながら技を学んでいる。

 

 

これらを使いこなす為に俺の生活は朝起きて剣術の鍛錬、学校へランニング登校、帰って魔法を練習して最後に拳術というふざけたくらい濃いサイクルで回っている。これで俺が腕相撲で負ける相手が同級生に居る小学校はやはり異常なんだろう。ボクシング部なんて小学校にあっていいのか?

 

その恐ろしい小学校の、個人的に余り好きではない真っ白な制服に腕を通してこの日、4月24日を迎えた。

 

この日俺は、敵を見つける。

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