魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists 作:zwart
いや、本当に申し分けないです。
新章
桐原真人は風を感じていた。何もない広大な大地を友人から借り受けた自転車に乗って駆け抜けているのだ。
「っ………!!」
道が酷い。移動速度重視で自転車に乗ってはいるが、彼の進む道は大小様々のコンクリート片や炭化した瓦礫で溢れているのだ。もはや道ではない。和人自身の自転車ではまずタイヤがパンクしている。ちなみにその自転車は今真人が乗っている自転車の持ち主に頼んで瓦礫の上を走れるように改造中だ。
そんな瓦礫の山の場所だから人影は無く、真人は思う存分に速度を上げて突っ走る。崩れた建物で出来たジャンプ台があれば使い、自転車で通れない崖や大きな瓦礫を飛び越える。肺の機能不全にひとまずの回復を見てから今日まで何度も同じ道を通っているので今更迷うことも、ハンドルを切り返すタイミングを間違えることもない。
やがて真人は目的地の足元に到達し、自転車を大きなコンクリート片の上に固定した。見上げるのはこの一帯で最も背の高い廃墟。元の名前はスカイツリー。立ち入り禁止の横断幕を潜って入場し、傾いたり欠けたりしている階段を登り上を目指す。
第二展望台の屋根の上が目的地だった。黒く焼け残った大地と蒼穹。中間に立ちぐるりと空を一周して睨む。特に東と北西。
「………」
地上戦力の激しい攻撃の後、あの方角から飛来した爆撃機が東京を焼いてから半年が経った。あの時空は真っ赤に染まったが、今睨む空は澄んだ青をしている。
生憎と心が洗われるようなことはない。
あの日、この身は焼かれ、片親を失い、多くの友人と一人の親友を奪われた。その敗北感と怒りはここに来なくても忘れようがない。
そして真人は二人の人影を眼下に見つけた。いくら瓦礫の山とはいえ元は都心だ。ここで家族を失った人や復興を目指す役人、或いは原爆ドームを見に行くのと同じように戦争の何たるかを学ぶために旅行してきた人、廃品漁り。まばらながらも探せば人はいる。
だが流石に子供二人だけでさまよっているのは不味い。ここは決して治安は良くないし、足元が崩れて地下の旧地下鉄群のどれかに落ちたらまず助からない。いや、こんな危険地帯に立ち入る他人がどうなろうと今更関心はないが、その二人はクラスメートだった。真人は仕方なしにそちらに向かった。
「おい、もうここには来るなって毎度言ってるだろう」
「あ、真人君」
上から掛かった声の主はスカイツリーの格子状の骨格から骨格へ飛び移り、更に崩れて傾いたビルなどを飛び石のように伝ってこちらにやってきた。
「相変わらず凄いの。本当に生身?」
「知らないうちに改造されてなきゃな。お前らこそどうやってここまできたんだよ。まだ朝7時だぞ」
「な、内緒だよ」
言葉に詰まった私の代わりにフェイトちゃんが答えてくれた。いや、フォローになってるかは微妙だけど。まさか足元の地下鉄路線に隠れて魔法で転移してきましたとは言えない。
「それに、一人で来てる真人君には言われたくないよ」
「いや、それはそうなんだけどさ………。それより、何しに来たんだよ。こんな寒い中」
「ちょっと、探し物なの」
アースラはあの日の東京を広域探査して情報を蓄積していた。その時、この近くでB、もしくはAランクの魔力反応を捉えたのだ。それは直ぐに弱体化して反応を捉えられなくなったが、間違いなく魔導師のものだった。そして該当ランクの魔導師でその場に居合わせた可能性のあるのは栗原葉木のみだった。彼は今行方不明だ。十中八九ここで戦闘に参加していたのだろうが、それ以降の足取りが全く掴めていない。
だから二人は探している。
「はあ、まあいいけど。本当にに気をつけろよ。例えば今立ってるここだって実はビルの壁面で下が空洞………」
足元からミシリと嫌な音が鳴り、続いて轟音と共になのはの立っていた場所が抜け落ちた。
「え!?」
「おい!?」
「なのは!?」
落ちるなのはの手を真人が掴み、開いた穴に上半身を乗り出した真人をフェイトが引っ張る。なのはの肩が脱臼寸前だったがどうにか誰も落ちることはなかった。
「大丈夫か!?」
「う、うん………肩外れそう………」
「だから来るなって言ったんだよっ―――と」
こともなく片腕でなのはを引き上げ、立たせる。
「ひとまず地面まで降りよう。また崩れたらかなわない」
言いながら、安全に降りれそうなコースを探して歩き出す。間もなく横倒しになった階段を見つけて地上に降りていった。
海鳴市にあるなのは達が通う小学校は空襲の被害を受けずに以前のままの姿で立っている。行方不明者や疎開する生徒も多く、生徒数は三割ほど減っていたが。
三年A組は今大いに賑わっていた。生徒数的には普段と変わらずに机の数より少し少ないくらいだが、その分男子がよく騒いでいた。
「………でよ。なんでもそいつはショートの………」
「前の学校が閉鎖になるからこっちに移ってくるらしいよ。それでさ………」
「………みんな何の話をしてるんだ?」
「なんだ真人、知らないのか?今日うちのクラスに転校生が来るんだよ!女子の!!」
「茶葉ボブカット!の女子!!」
「絶対お前には手を出させないからな!!」
「なのはさんアリサさんすずかさん!! さらに転校生してきたばかりのフェイトさんまで!!!」
「誰だよそんな四股疑惑流したの!?」
わーわー、ギャーギャー。
「みっともないわねえ………。発情期じゃあるまいし」
「あ、アリサちゃん?その発言は女の子としてどうかと思うの………」
「すずか。発情期って何?」
「フェイトは知らなくていいと思うよ」
「覚悟ォォォ!!」
「行け!! 『天然キュートフェイトさん派』は『アリサ様に踏まれたい党』に続け!!」
「『麗しのすずか令嬢委員会』突撃せよ!!」
「クラブ『リリカル☆なのはさん』も続け!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「お前ら本当に小学生かよ!? あと他クラスから応援呼ぶなああああああああ!!」
いつの間にか男子は教室の内外で真人一人相手に鬼ごっこを始め、女子は世間話をしながら男子の足を引っかけてみたり。ちなみに転校生は担任の判断で職員室に留められている。
「木原先生。どうしましょうか」
「あれは放っておけば止まります。それより松本先生は懲罰牢の用意をしておいて下さい」
「懲罰牢じゃなくて指導室では………いえ、何でもありません。準備をしてきます」
「直葉ちゃん、上級生の階から凄い音するね」
「多分お兄ちゃんが暴れてるんだと思う」
「剣道部前へ!! 滅多撃ちにしろ!! ラグビー部とボクシング部は退路をふさげ!!」
「その竹刀貰ったッ!! いい加減止まれ馬鹿野郎が!!」
前進してきた剣道部から竹刀二本を奪い取り反撃する。剣道部全員の頭に面を打ち込み返す刀でボクシング部を吹き飛ばして包囲を脱した。
「まだだ!! 今こそ我々本隊が―――」
「アンタらが本隊か将棋部!! ならこれで終わりだ!!」
もうさっさと終わらせるとばかりに真人は空手部の防衛を突破して一直線に将棋部主将を狩りにいく。間合いの外から空手部員を撃破して続く将棋部員も一凪ぎで吹き飛ばし、勢いを一切緩めずに将棋部主将を袈裟斬りにして本隊の陣を突破した。
「馬鹿な………戦術が戦略を凌駕するなど………グハッ」
「討ちたくない、討たせないでくれ………」
「貴様もだ」
ズドンと、爆弾の炸裂に勝るとも劣らない重低音をたてて木原先生の拳が真人の脳天を直撃。真人を一撃で制圧せしめた。
「あ、あの木原先生、体罰は………」
「松本先生、彼らを牢に。私は他クラスの担任に事情を説明してきます。その後は私の代