魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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思えばこの世界での実戦ははじめてだった。

登校して教室に入ると、まだ7、8人くらいしか登校していなかった。まだHRまで30分はあるから当然か。

 

「おはよう」

「ああ、おはよう」

 

窓際でボケッとしていた男子生徒が俺に気づいて歩み寄ってくる。彼は俺の友人で名前を桐原真人という。たまに竹刀をぶつけ合う仲だが、俺も真人も剣道部やクラブに入っている訳ではない。流派も全然違う。

 

真人とジャンプの新刊について語り合ったり馬鹿話をしている内に他の生徒も集まってきて、段々と教室が賑やかになってきた。真人と俺がそれぞれの席につくとちょうど担任が入ってきた。

 

「さっさと席につけ。日直、号令を。」

 

退屈な学校生活が始まった。

 

 

 

 

 

そして学校が終わり、特に部活に入っていない俺は普段ならサッサと家に帰るのだが、偶々牛乳を切らしていたので近所のスーパーに寄った。ついでに 野菜も少し買い足して店舗を出る。

 

脳裏に微かな刺激と、どこか覚えのある違和感に襲われた。

 

そこは暗い屋内駐車場。自分の出て来た自動ドア側からでは見えない死角は二カ所、内一カ所は駐車された大型車が邪魔でどの方向からも内側が見えなそうだ。

 

大型車のエンジンが点火して、眩いヘッドライトで屋内駐車場の暗がりを照らしながら外へ出て行く。中は曇りガラスに阻まれて確認できなかった。

 

「………」

 

何の確証もなく、何となく今の車が違和感の発現元な気がしてあの大型車が止まっていたブースに足を向けた。

 

そのブースには女子向けの柄がプリントされたシャープペンが一本落ちていた。拾い上げてクルリと回してみたら、律儀に名前が書いてあるのに気が付いた

 

『月村すずか』

 

ブースの隅のほうに転がっていた靴にも同じ名前が書かれていた。

 

「………」

 

シャープペンと靴を拾い上げてレジ袋に突っ込み、それを左手に、牛乳の入ったもう片方の袋を右手に下げて葉木は駆け出す。

 

違和感の正体も無事に分かった。

 

───ああ、これは硝煙の匂いだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

月村すずかは近所に買い物に行った帰り、スーパーの駐車場で顔を隠した男に車に載せられて誘拐された。目隠し、猿轡をされて移動すること一時間、最終的に人気のない建物に監禁された。

 

剥き出しのコンクリートの柱に縛り付けられ、猿轡をはめられていたが目隠しは先ほど外されたので自分を誘拐した男の姿を確認することはできた。

 

大して体格の良くない、気弱そうな顔をした青年だった。ただしその眼には確かな狂気に染まっている。男はひたすらとある金属の塊を磨き続けていた。すずかもテレビで見たことはあったが、たしかあれ程大きくは無かったような…。

 

鏡のように磨かれた表面を見て青年は満足したらしく、グリップを握り目の高さまで持ち上げた。

 

銃身だけで30センチはありそうな、巨大なリボルバー拳銃。それを片手で掲げてすずかの方に向き直った。

 

「うらぎった…裏切ったんだ。君は、僕を…僕は堕ちこぼれてなんかいない…!そう、そうさ。僕は有用なんだ!偉大なる一撃の為に……!!」

 

狂ったように訳の分からない妄想(?)を叫ぶ男の持つ拳銃は元々怯えていたすずかを震え上がらせるには十分だった。男は計七発の大人の親指よりも太い銃弾を装填した銃口をゆっくりとすずかの右の太股に向けられる。

 

「ひっ…んんんっ!?」

 

銃口の狙う先に気づいて必死に身をよじり銃口から逃れようとするが、当然のようにそれは何の抵抗にもならない。

 

「しね……死ねェ………!!」

 

そしてゆっくりと引き金が引き絞られて、すずかが恐怖に目を瞑った瞬間に炸裂音と共に弾丸が飛び出した。

 

|カランコロン、と空薬莢がコンクリート剥き出しの床を転がる音が響く《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。

 

それは最もポピュラーな9mm弾の空薬莢。

 

自分の体に何の痛みも無い事に気づき、少しずつ目を開ける。すずかが最初に見たのは銃口。その巨大な穴が未だに自分に向けられているのを直視してしまい再び目を閉じかけたが、男の背中越しに別の人影を遠くに見つけて、今度は驚きに目を見開いた。

 

「ま、頭のおかしくなったオッサンと大して話したこともねェし、お前が今殺そうとしたソイツも精々がクラスメイトって事以外は接点もないんだけどよォ…。」

 

制服の前を開き、内側に取り付けられたホルスターが見え隠れする少年は足元にビニール袋を2つ 置いて右手にオートマチック拳銃を構えて此方を見据えている。目が合うと視線を移し、巨大なリボルバー拳銃を手にする男に笑いかけた。

 

栗原葉木()の前で知り合いを拉致るとか、死にたいなら喜んで殺してやるが」

 

嘲笑。しかしその目は獲物を見据える猟犬のものだ。

 

「邪魔を、するなあぁぁッ!」

 

拳銃男は振り返りざまにリボルバーを葉木に向ける。だがその動作の間に葉木の手元では2回引き金が引かれていた。

 

バシンバシンと、何れも振り返った男の腕の関節と手の甲に直撃した。急所を狙わなかったのはすずかに殺人現場を見せて怖がらせない配慮だ。しかし右腕の関節は完全に破壊したからもう撃てな

 

ズッゴォォォォン……!!

 

爆弾かなにかみたいな轟音が轟いた。というか普通に撃ちやがった。

 

体を思いっきり逸らして銃撃を避ける。弾本体は避けられたが二次的ダメージは大きかった。主に耳とか、キーンというよりギィィィンという感じだ。

 

たまらずにコンクリートの柱の影に入ろうとして、止めた。

 

先程の弾丸が飛んでいった先、同じくコンクリートの分厚い壁に大穴が空いるのが目に入ったからだ。

 

仕方なしに床にダイビングして2発目から逃れる。そして伏射体勢で立て続けに三発食らわすが、銃と右腕に阻まれてダメージには繋がらなかった。

 

右手、そう右手だ。どう見たってあの巨大リボルバーはショットガン並みの反動があるはず。それをあの男は右腕一本で連射している。さらに同じ腕で9mm弾を弾いた。金属製の、恐らく機械化義手。それも違法改造で出力リミッターを解除した、寝返りをうつだけで自分の体をねじ切る可能性のある大馬鹿の為の腕。

 

普通に無力化することは出来なさそうだ。足を撃ってもいいがそれであの銃を取り落としてくれるとは限らない。クラスメイトの前で人殺しは不味いから頭や胸は撃てない。元より精密射撃に自信は無いからどこかの狙撃科の天才武偵のように銃撃で気絶させるようなことも出来ない。こりゃ銃撃戦無理だわ、と銃をホルスターに閉まった。

 

3発目、銃弾というカテゴリーの外にありそうなその弾を、迎え撃つ。

 

「天童式戦闘術、二の型十六番」

 

靴の裏に仕込んでる装甲は精々が拳銃弾を受け止める程度。あの化け物を受けるには余りに弱い。

 

「隠禅・黒天風!」

 

だから、逸らす。体勢を低くして放つ回転を付けた蹴り上げが俺の頭を狙った弾丸の側面を叩き、軌道を真上にずらした。轟音をたてて天井の鉄筋コンクリートが崩落。上に溜まっていた埃と共に粉塵がこの階層にまき散らされた。

 

大した目眩ましでもないが、どう見ても素人の拳銃男は一瞬思考が停止した。その十分すぎる空白で懐へ踏み込み顎を蹴り上げる。

 

「っと、わりと苦戦したな」

 

実戦は十年ぶりだ。肉体も弱くなったが勘も随分鈍った。

 

すずかの縛られている柱まで行ってまず猿轡を外し、次に手足の縄を解いてやった。

 

「よし…立てるか?」

 

「葉木君…?」

 

「ああ、そうだが?」

 

自由になった彼女が問題なく立ち上がるのを見届けてから、今度は拳銃男の手元に転がった巨大拳銃を手に取った。

 

やはり見たことのない銃だった。最強と名高いあのリボルバーより大きなシリンダー内にはやはり初めて見る規格の弾。だがそこで一つだけ見覚えのあるモノがあった。

 

薬莢の底、長い銃身の側面、グリップ。それら全てに"Princip.Inc."の刻印。前世で戦った最悪のテロリスト集団、宗教や己の要求を世界に通す為に行動する者達をあらゆる面で支援し、時に一から教育する。規模も思想も首謀者も不明な組織の名前だ。

 

サイレン音が遠くから聞こえてくる。今すぐそこに倒れている男を叩き起こし、知っていることを洗いざらい吐かせたい衝動をこらえてリボルバーを握りなおす。

 

「すずか、家まで送ってやるから道を教えてくれ」

 

銃撃戦の中生き残ったレジ袋から靴とシャープペンをすずかに手渡して替わりにセーフティーをかけたリボルバー拳銃を突っ込んだ。

 

「え、でも警察とかに説明した方がいいんじゃ」

 

「嫌だ」

 

「え?」

 

「だって俺も捕まるし。銃刀法違反とその他諸々の罪状で」

 

「え、じゃああの銃本物だったの?」

 

首肯。

 

暫くフリーズして動かなかったすずかだが、10分くらいして再起動を果たした後に若干怖がりながらも逃げ出したりはしないでくれた。

 

その後何事もなく月村邸にすずかを送り届けて家に帰ると、既に辺りは暗くなっていた。

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