魔法少女リリカルなのは The Annihilation Swords and Fists   作:zwart

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オーストリアにて 2

MPBを攻略するのは簡単ではない。彼等はこの国の国内では確実に最強クラスの兵であり、軍隊だ。航空能力を持たないだけで、陸軍として見るに申し分ない兵器も所有する。鬼に金棒というヤツだ。

 

故に借りているアパートで朝食を採った葉木は直ぐに行動を開始した。

 

何をするにしても先ず食糧が無ければ話にならない。ついでにアサルトライフルの弾丸も調達しよう。

 

街に繰り出した葉木は軽い足取りで店の合間を通過する。時折いい品を見つけては手に取り代金を払う。

 

やがて道を外れ武器の闇売りが横行する区画に出た。間もなく独りの白人男性に声を掛けられた。アサルトライフルの弾も割と良心的な値段で売られていたが、葉木はスルーする。

 

そしてそのまま何も買わずに区画を出てしまった。

 

「誰が弾丸なんかに金を払うかよ」

 

彼はケチだが、こと食品に関しては無駄金も使う。自らの糧になる物には寛容なようだ。逆に弾丸などについては信用する武器商人以外とは取引しない。だから彼は普段勝手に調達している。

 

大通りに出て、更に別の道へ。効率的な土地使用と歴史的風景の尊重ね両方を求められた街並みはなかなかに混沌としていた。それもやがて途切れて長大なフェンスが現れる。その向こうは林だった。フェンスを飛び越えて林を抜けると、一番奥に灰色の構造物がそびえ立っている。

 

「…デカいな」

 

足を止めた場所はオーストリア軍基地。その高い塀を葉木は面倒くさそうに乗り越えた。

 

そして10分後、同じところから背負い袋を弾薬で膨らませて悠々と出て行くのだった。

 

弾薬庫の見回りを担当していた兵士は間違いなく始末書ものだが、葉木は全く気にしない。悪いのは侵入をゆるしたその兵士だ。

 

拠点として使っている宿の部屋に戻り、弾薬をそれぞれのマガジンに装填する。

 

ちなみに今回氷風は最低限使わない。プリンチップ社にはキャラバンと呼ばれる部署(或いは下部組織)が確認されており、常識外な科学力をもって彼等の使用する武装を製造している。その組織がもし魔法の存在を知り、解析されるのを回避する為だ。デバイス自体はこの世界の物で作れるし、彼等が魔法を行使するときに自他を問わず安全を確認する道理もない。

 

生前の葉木達はキャラバンの存在故に負け、日本への侵攻を許したとも言える。(葉木が知っているのは日本への侵攻(・・)までだ)

 

「よし」

 

葉木は比較的射撃が下手だ。流石にそこらの警察官や兵隊に劣ることはないが、所詮二流。今回のように多対一の状況を切り抜ける技量はない。だから彼が使うのは軽量でひたすら弾をばらまき続けるサブマシンガンで、用途も精々が突撃時の制圧射撃か牽制、拷問に使うくらいで決定打は全てナイフと拳だ。

 

……本当に、オーストリア軍基地の警備兵は浮かばれない。やっぱり葉木は気にしないが。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

高町なのはは決して優等生ではないが、授業中にこれほど集中していないのは稀だ。

 

最近、葉木君が学校に来ていない。木山先生の話だと風邪で寝込んでいるらしいが、彼の家に行ってみてももぬけの殻だった。

 

この町にいるもう一人のとても強い魔導師の子はフェイトちゃんという名前だとわかった。彼女もジュエルシードを集めていて、いつの間にか石を奪い合うようになってしまった。仲良くしたいのに。顔を合わせる度に戦いになってしまう。

 

「…はあ」

 

あーそういえばテスト近いなーと思いながらノートの上の鉛筆は全く動いていない。時折さらさらと意味のない曲線を描くだけだ。

 

さらさら。

 

先生の板書もとっくに黒板を一周してしまい、写していない部分もすーと消されてしまった。

 

友達思いな令嬢と吸血姫がそれに気づかない筈もなく、休み時間のなのはの運命はこの時点で確定した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

さて、大陸と海を一つずつ挟んだ土地で誰かさんの授業に多大な悪影響を与えているこの男は、今欠伸をかみ殺しながら出勤前のMPBビルから出てきていた。

 

「案外楽勝だった…」

 

警備体制には目を見張る物があったが、担当の人員が余りに無能だった。それはもう、通った通路にいた見張りを殆ど素通りしたくらいに。

 

しかし同時に得られた情報も大したこと無かった。MPBの持つ世界最高峰のメインサーバーによる情報収集能力でも見つからない。『リヒャルト』の組織は予想外に強敵かもしれない。

 

そろそろ学校を休むのも限界になってきた。一度日本に帰国した方が良いかもしれない。

 

『マスター』

 

拠点にしている部屋の中の弾薬などの処分を考え始めた時、氷風が俺を呼んだ。

 

『甲から連絡です』

 

甲。日本に置いてきた常駐型自立情報処理システムだ。葉木がオーストリアにいる今もネットワーク上で痕跡が残らない程度に"トラクルおじさん"の情報を漁っている。

 

「繋いでくれ」

 

『了解しました』

 

『マスター。"トラクル"関係ではないが日本でのテロ関連に当たりが出た』

 

「内容を」

 

『申し訳程度に設立された"諜報部"が「近く日本を襲撃する武装集団あり」といった報告書を提出した。詳細は不明。報告書が受理されたのに前後して何人かの自衛隊員が消息を断った』

 

「理解した。引き続き情報を漁ってくれ。但し警戒を怠るな」

 

『了解。より警戒して事態に当たる』

 

通信が切れた。

 

『マスター、これはトラクルでしょうか』

 

「解らないが、帰国する必要は出て来たな。次のスケジュールを終えたら日本に戻ろう。それまでお前はここで待ってろ」

 

言って取り出したのはP90。拳銃によく使われる9ミリ弾を使うサブマシンガンだ。

 

『あの、マスター?航空チケットを取っておけというのは解りますがそんな武装を必要にするのなら私も行った方が』

 

「ああ、いや。予定外に余った弾を処分するだけだあんなゴミクズに本来銃器はいらない」

 

つまり予定ではMPBで銃撃戦をするつもりだったようだが、仮にも警察機関相手に何する気だったんだろうかと氷風は内心つっこんだ。

 

「相手はただの下請けテロ屋だ」

 

鞄にP90と弾倉を詰め込んだ葉木はオーストリアの街に出る。

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