魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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無印編
第10話


「でやっ!」

 

「はぁっ!」

 

 川の水が流れる場所にて鋼がぶつかり合い高い金属音が鳴り響く。

 

「ふっ!」

 

「くぅっ!」

 

 紅莉の抜刀から流れる連撃に美由希は苦言を吐きながらも冷静に対処する。

 

――緋凰流【双】

 

「ふっ!」

 

「!?」

 

 左からの斬撃を紙一重で避け反撃しようとした美由希だったが突如襲い来る嫌な感じにとっさにバックステップを踏んだ。

 

「ちっ」

 

 舌打ち一つした紅莉は再び刀を鞘に戻す。対する美由希は紅莉の硬直状態をみて自分の勘は正しかったと思う。

 

 死角からの鞘での殴打。

 

 紅莉がやったのはそれであったのだ。もし、あの時勘に従わなければ恐らく鞘で自分のアバラを撃たれ大きな隙を作っていただろう。

 

「はぁぁっ!」

 

「やぁぁっ!」

 

 数瞬の間にらみ合っていた両者だったが、すぐに雄たけびを上げながら激突をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

「はぁ…はぁ…」

 

 両者汗をかきながら地に倒れ伏している。

 

「くっそぉ…勝率が下がる一方だ」

 

「危なかった…」

 

 清流近くに張ったテントの傍で先ほどの結果について話している紅莉たち。

 

「…紅莉は少し攻撃を急ぎすぎる節があるな…お前の初動は俺達より出が早いから少し待ちにしてみろ。

 美由希は逆に慎重すぎる。攻め急ぐ必要は無いが時には積極性が必要だ」

 

「オッス」

 

「はい」

 

 先ほどの戦いを見ていた恭也からの指導に二人は素直に頷く。御神流の師範代として、自分達より上にいるものの言葉として教訓を得ているのである。

 

「兎に角二人共着替えろ。それでその後少し休め」

 

 恭也の指示に美由希はテントに、紅莉はその場で着替えを始めていると美由希の携帯が鳴り響く。

 

「む…寝てしまったか…もしもし」

 

 美由希だと思った恭也だったが出れない状況だったので失礼かも知れないが出ることにした。

 

「…なに?」

 

 電話で何かを言われたのか、恭也は慌てて自分の時計を確認しだした。

 

「4月…7日」

 

「いいっ!?」

 

 恭也の呟きに思わずボーっとしていた紅莉の声が上がる。

 

「急いで撤収するぞ」

 

「分かっている!美由希起きろ!」

 

 恭也が指示出す前に既に紅莉は動いており、テントで寝ている美由希を起こしにかかる。恭也もまた回りにあった私物を片付けていく。

 

「行くぞ!」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

 急ぎテントなどを片付けた紅莉たちはすぐさまに山を降りる。現在の時刻は7時少し過ぎのため、急いで戻れば学校に間に合うということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、恭也。紅莉もいるんだからもう少ししっかりしなきゃ」

 

「すまない」

 

「いや、桃かーさん。俺がついていくってわがまま言ったんだし…」

 

「それでもです。まだ小学生の紅莉を連れて行くというんだから…」

 

 ちょっとした時間に兄さんが桃かーさんにしかられる。俺が悪いとフォローをいれたのだが、ダメだった。

 

「ゴメン、兄さん」

 

「気にするな。かーさんの言っていることは事実だ」

 

 そう言って俺の頭に手を載せて微笑む兄さん。う~む、イケメンだね。

 

 兄さんは美由希には基本的に厳しいが、俺やなのはには結構甘い部分が多い。

 

 そのことを指摘すると違うというが、傍から見れば甘いと十分思う。

 

「紅莉!貴方も呆けてないで着替えなさい!」

 

「ただちに!」

 

 母さんに叱られて俺も急いで制服に着替える。結局、美由希の入学式ということで先に美由希を送っていって貰ったから俺は遅刻した。

 

 

 

 

 

 

「あんた、始業式から遅刻って何やっているのよ」

 

 始業式が終わり、今年も同じクラスとなったアリサに嫌味を言われたが、その通りなので何も言い返さない。

 

「紅莉君が帰ってこなくてハラハラしちゃったよ」

 

「なのはちゃんから聞いていたけど、大丈夫だった?」

 

「春のキャンプみたいで面白かったぞ?」

 

 すずかの質問にそう返す。俺の場合は兄さん達ほどの体力があるわけじゃないから結構楽しめた。

 

 特に兄さんが趣味にしている釣りを教えてもらったがアレは確かに嵌る。集中力をつける意味でもいいし、どこぞの槍兵みたいにじっと腕を固定してやっていると結構時間がたっていた。

 

「まぁ、俺の場合は結構やりすぎた感じがするから当分は休養するがな」

 

「じゃあ、当分は一緒にいられるね」

 

 ニッコリと微笑みながら言うなのは…意味は…分かってないんだろうなぁ。

 

 贔屓目に見てもなのははかわいいからそういわれると嬉しいんだが…兄さん同様無自覚だろうな。

 

 そういう意味ではすずかもそうだが。

 

 逆にアリサは自分の容姿のことをきちんと自覚している。

 

「それはそうと…眠い」

 

 実は始業式後のHRで軽く落ちそうになっていたんだよね。

 

「そういえば紅莉君、HRのとき凄く眠そうにしていたね」

 

 気づかれていたか…

 

「家に帰れば兄さんと美由希もそろそろ帰っているんじゃないか?」

 

「ホント!」

 

 なのはが嬉しそうにする。元々物心つく頃には一人でいたためか親、兄弟などに甘えられる時は甘えているからな。

 

 

 

 

 

 

 

「あー!おにーちゃん!おねーちゃん!」

 

 スクールバスから降りると丁度兄さんと美由希が家の前にいたのだ。なのはは見つけると嬉しそうに走って近づいていった。

 

「あー!なのはただいまー!」

 

 美由希は近づいてきたなのはをそのまま抱き上げる。

 

「えへへ、お帰り。おにーちゃんもお帰り」

 

「ただいま。心配かけたな」

 

 兄さんも穏やかな笑顔でなのはの頭を撫でる。

 

「なのちゃんも紅莉も帰ってきたしこのまま翠屋に行こうよ。桃子さんがお昼はそっちでって」

 

「了解~」

 

「はーい」

 

 晶の言葉に頷いて家を後にしてそのまま歩き出す。…なのははいつまで抱っこされているつもりだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うに…………は?」

 

 家に帰って寝たのは寝たんだが、起きてみるとあたりは真っ暗だった…と言うことは…

 

「エア、今って何時だ?」

 

《おはようございますマスター。現在は夜の0時過ぎです》

 

 おおふ、8時間以上寝込んだと言うことか…

 

「あ、兄さん、美由希」

 

「あー、紅莉も?」

 

 居間に下りてくるとそこには兄さんと美由希がいた。そして俺もということは…

 

「兄さん達も寝ていて起きたらこの時間だったのか」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 兄妹3人揃って何をやっているんだか…

 

「紅莉もご飯食べる?レンが残してくれてたみたいなんだよ」

 

「食べる食べる。久々のレンちゃんのご飯だ」

 

 修行中は魚とかそういったのしか食べなかったからまともに調理されている料理は恋しい。なにより、料理上手なレンちゃんのご飯を食べないという選択肢は無い。

 

「紅莉、今回の修行はよくついてきた…」

 

「兄さんが褒めた!?」

 

 ご飯を食べ終わり、まったりと縁側でボーっとしていたら突如兄さんがポツリと零す。兄さんは褒めるの苦手だから滅多に人を褒めないのに…。

 

「…俺をなんだと思っている?」

 

「ごめんなさい」

 

 イラッとしている兄さんに素直に謝る。

 

「まぁ…なんだ、気をつけろ。お前も俺のようになりたくはないだろう…」

 

「兄さん…」

 

 兄さんが膝を触りながらそんなことを言う。兄さんの膝は正直回復しきってない。針を打っているがそれ以上に酷使されてしまっているので回復とダメージがほぼとんとんになってしまっている。

 

 俺も兄さんも止まるわけには行かないので仕方ないといえばそれで終わってしまうのだが…

 

 それでも、治すと宣言したからにはやらなくては…

 

 改めて決心した後に俺は自分の部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、リニスはどうした?」

 

 部屋に戻って普段リニスが使っている布団の所にあいつが寝ている姿が見えないのでエアに尋ねる。

 

《リニス様でしたらなにやらおかしな反応があると仰られ町を見回っております》

 

「そうか」

 

 11日間もの間魔法に関しての講義をしなかったので頭が冴えている今受けようと考えていたんだがな…

 

「紅莉、起きていたのですか」

 

 そんなことを思っているとリニスが帰ってきた。

 

「ああ、どうやら熟睡してしまったようだ」

 

「まだ小さいのですからあまり無理していると再び怪我をしますよ?」

 

「そうだな。限界は見極めているつもりだが気をつけるよ。それで変な反応というのは?」

 

「はい、何かしらかが落ちてきたと思ったのですが気のせいだったようです」

 

「そか」

 

 しかし、魔法に関してはエアをもってしても凄いと言わしめるリニスの感じたことだ何かしらあると思っていたほうがいいかもしれないな…

 

 そんなことを考えながらベッドで横になっていたらいつの間にか俺の意識は闇へと落ちていっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅莉君紅莉君!」

 

 新学期が始まった数日後になにやらなのはが興奮しながら詰め寄ってきた。

 

「ちょっと一緒に神社行こう!」

 

「お、おい!?」

 

 なのはに引っ張られる形で俺は神社まで引っ張られていった…

 

「一体何が?」

 

「しっ!」

 

 人差し指を口に当てていつも以上に真剣な顔をするなのは…マジでなんなんだ?

 

「くーちゃーん!」

 

 そして、俺に静かにしろといっておきながら自分は何か叫びだした。くーちゃん?

 

「あ、いた」

 

 なのはの視線を追ってみるとそこには首にすずをつけた狐…久遠がいた。ああ、だからくーちゃんなのか。

 

「あ、おいでおいでー」

 

 なのははカバンから油揚げを取り出して久遠を呼ぶが久遠はこちらを窺っているだけであったが。

 

「くぅ!」

 

 ぱっと目が見開くととことことこっちにやってくる。

 

「あーきたー!」

 

 なのはが嬉しそうに両手を広げているが久遠はそのままなのはの横を通り過ぎる。

 

「へ?」

 

「くぅん!」

 

 なのはは横を通り過ぎられ呆けた声を上げるが久遠は気にせずに俺の足元までやってくると胸目掛けて飛びついてきた。

 

「っとと。久々だな久遠。これなくて悪かったな」

 

「くぅ~ん」

 

 よしよしと撫でてやると気持ちよさそうに喉を鳴らしながら目を細める。

 

「え?ええ?」

 

 なのはは俺が久遠と仲良くしている理由が分からないのか戸惑っている。

 

「久遠、なのはと知り合いだったのか?」

 

「くぅ~ん…」

 

「なるほど…」

 

 久遠曰く、兄さんが久遠を見つけてなのはに教えたところなのははそれ以来ご執心みたいだ。

 

「紅莉君はくーちゃんの言葉分かるの!?」

 

「くぅ!?」

 

 なのはの言葉に久遠もそういえばと言った感じで驚きを示した。

 

「………なんでだ?」

 

「…わからないんだ……」

 

「くぅ~ん」

 

 なのはと久遠が呆れるが俺もなんで分かったのか分からん。

 

(《マスター》)

 

 色々と考えているとエアから念話が入ってきた。どうした?

 

(《久遠ですが、若干魔力らしき力を持っております。恐らくそれが同調して脳に直接作用したと思いますよ》)

 

 魔力って…妖力か何かか?

 

(《詳しいことは解析仕切れてないのでなんとも…》)

 

 まぁいいや。言葉が何となく分かるだけでも楽だからな。

 

 それに、久遠は喋れない事無いが拙いし、言われている言葉は分かるのだが自分の意思を言葉に現すのが苦手だそうだ。

 

「そうだ、それより紅莉君ってくーちゃんのこと知っていたの!?」

 

「ん?ああ。去年に知り合ってそれ以来だな」

 

 鍛錬にあの丘を使っていれば大抵やってくるようになったので俺の鍛錬を見たり、一緒に遊んだりしているうちに大の仲良しになった。

 

「ぶー。何で秘密にしていたの?」

 

「……ごめ、忘れていた」

 

「なのはのことなんてどうでもいいんだ…」

 

「いや、別にそうじゃなくてだなっ!?」

 

 拗ねだしたなのはに言い訳をするがどうやっても機嫌が直らない。

 

「くぅ~ん」

 

「ひゃっ!?」

 

 見かねた久遠が俺の手をよじ登りなのはの頬を舐めるとなのはは突如のことで驚きの声を上げる。

 

「くーちゃん?」

 

「くぅん」

 

「あまり虐めちゃだめだってさ」

 

 久遠はどうやら俺がなのはに意地悪されていると思ってくれたらしい。…嬉しすぎて涙がでるが男としては情けないやら恥ずかしいやら…。

 

「え、えぇっ!?なのはが悪者なの!?」

 

「まぁ、久遠が心配してくれたのは嬉しいが俺が悪いからな。久遠もありがとな」

 

「くぅーん♪」

 

 お礼をいって頭を撫でてやると嬉しそうに尻尾をパタパタと振る。

 

「なのはもお前の友達になりたんだってさ。こいつはお前に酷いことしないし俺とも仲がいいからお前も仲良くしてやってくれよ」

 

「くぅ~ん…」

 

 おお、悩んでる悩んでる。

 

「えっと、くーちゃん?」

 

「くぅん」

 

 なのはがおずおずと手を出したが、久遠はそのまま撫でられている。どうやら久遠はなのはのことを友達と思ってくれたようだ。

 

「よろしくね、くーちゃん!」

 

「くぅー♪」

 

 なのはの笑顔に久遠も嬉しそうに鳴いた。那美さん曰く久遠は人懐っこい反面人見知りと若干矛盾しているそうだ。

 

 まぁ、かわいいので許す!

 

「あ、紅莉君に確か…なのはちゃんきていたの?」

 

「はい!」

 

「お久しぶりです」

 

 久遠と一緒に遊んでいるとひょこっと那美さんが現れ此方に近づいてくる。

 

「きゃぁっ!」

 

 石畳の小さな隙間に器用に足を取られ小さな悲鳴を上げて倒れそうになる那美さん。

 

「危ない!」

 

 急いで落下地点にたどり着き那美さんを何とか支える。

 

「あがっ!?」

 

「紅莉君!?」

 

 なのはの心配そうな声が聞こえるが、ちょっと待ってくれと左手を突き出して右肩を少しマッサージする。

 

 那美さんには失礼だが人一人を支えるのにこの体だとまだ色々と足りなかったらしく、右肩に負担をかけてしまったようだ。

 

 幸いなことにたいした事なかったようでマッサージをした後は問題はなくなった。

 

「ご、ごめんね!?大丈夫!?」

 

「あ、はい。大丈夫ですよ。ちょっと古傷が痛んだだけなので」

 

 那美さんに心配をかけないように右肩を回してみせる。未だに回復しきってはないがこの程度まで回復できた。

 

 天命流を極めるより前に回復しきると思うんだがどうだろうな?

 

 その後に会話を交わした後に家路についた。…なのはは結局拗ねてらっしゃったが…

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、何かしらかがこの世界にやってきたと見て間違いないようです」

 

 帰ってきた日に報告を聞いたが矢張りその後に気になったのか色々と調べていたリニスが確信した顔で俺に再び報告をしてきた。

 

「そうか…それが何かは?」

 

「すいません…それは分かりませんでした」

 

「責めているわけじゃないから謝らなくていいさ。それよりも、プレシアがいる場所は分かったか?」

 

「そちらもまだです…」

 

 リニスとの約束を守るためにも俺はプレシアがいる場所にいって確認したいことがあるのだが、リニス曰くプレシアがいる時の庭園という場所は時空間を彷徨っているらしく特定の場所に留まっていないそうだ。

 

 そしてリニス自身もそれが今何処に存在するのかが分からなくなってしまっているようでお手上げ状態である。

 

「そうか…そっちはあまり時間をかけるわけにもいかないんだよな?」

 

「はい、プレシアの状態を思い返してみても時間があるとは到底…」

 

 ううむ、兎に角どうにかしないとなぁ…

 

「とりあえず、この世界に落ちてきたというものが分かり次第捜索してみよう。案外魔法関係者が関わっているかもしれない。

 管理局だったか?それを頼るのが嫌だと言っていたが時間がかかりすぎる場合はそれを頼ることも視野に入れておいたほうがいいかもしれないしな」

 

「はい…」

 

 顔を翳らせるリニスに近づいて頭を撫でる。

 

「紅莉?」

 

「心配するな。誓ったことに嘘はつかない、つかせない。必ずやり遂げる。だからお前も俺を信じてくれ」

 

「ふふ、体は小さいの行動は大人ですね」

 

 リニスの顔に笑顔がともる。うっし、とりあえずこれからの目標も改めて確認できたからしっかりと寝よう。




ぶっちゃけ久遠の台詞は楽すぎますwくぅんで成り立つのでw
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