魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第12話

『助けてください!』

 

 鍛錬中に突如頭に響く声

 

「何言ってんだこいつは?」

 

「いえ、紅莉。コレは念話ですよ」

 

 いや、分かっているよそんなこと。流石にお前の授業を聞いているわけじゃないからな?

 

「俺が言いたいのは、何を言っているかだ。唐突に助けてくれといわれても何をということだ」

 

「ああ、そういう意味ですか…」

 

 リニスも納得して頷く。助けるというのは別に構わないんだけどさ、何をどう助けて欲しいんだって思うんだよね。

 

『ボクの声が聞こえる方!ボクの場所まで!』

 

「んなこと言われても何処から言われているかまるで分からん」

 

「紅莉は……気配……でしたか?を探るのはとても上手なのに魔力探知になるとどうしてそこまで……」

 

 まぁ、そこは剣士と魔導師の違いと思って欲しいかな?てか、俺なんてまだまだだぞー…兄さんに比べればね。

 

 兄さんなんて、普通に12mくらい読めるから怖いわ。気配探知は緋凰流においても重要だからがんばっているがね。

 

「まぁ、取り合えず向かうか。リニスの目的を達成できるかもだし」

 

「そうですね」

 

「とりあえず、リニスは当分の間もネコのままだがな」

 

「何故ですか!?」

 

 わりとショックなのかかなり驚きの表情をしている。

 

「一つは、リニスのことを…プレシアのことを知っている人でなかったとき説明がかなりめんどくさい」

 

「めんどくさいって…」

 

「まぁ、正確にはプレシアは結構あれなんだろ?」

 

「あれ、扱いはやめてください…概ねあってますが」

 

 ここでのあれとは犯罪者予備軍ということである。ロストロギアを求めてなにやら企てているそうで、それが犯罪となるということだ。

 

「もう一つは聞いた話ではプレシアは元は管理局の人物なんだろ?しかも、何かやってしまったという」

 

「はい」

 

「しかもだ、そのごたごたが終わらないうちに消えてしまったというならば場合によっては管理局に身柄を拘束されて目的を達成できない可能性があるという」

 

「そう、ですね…」

 

 顔を俯かせ消え入りそうな声で俺の言葉を肯定するリニスに俺は頭をクシャリと撫でてやる。

 

「忘れたなら何度でもいうぞ。俺の言ったことに嘘はつかない。つかせない。だから、お前は俺を信じろ」

 

「……はい、そうでした。ならば私も紅莉が進むのに足りないものを補いましょう」

 

 かつて誓い合った言葉を胸に呼ばれたという場所にリニスの案内に従い向かっていく。

 

「これは」

 

 突如ただの夜空が薄紅色の空へと変わった。

 

「封時結界ですね。恐らくは魔法の秘匿のために誰かが張ったのでしょう」

 

「……つまりは魔法のトラブルか。嫌な予感はしないが急いだほうがいいな」

 

「はい」

 

 そう、嫌な予感はしないが…何故か知らないが急いだほうがいいような気がして足に力を込めて走りぬくとそこには…

 

「レイジングハート、セェェェット・アァァァァップ!」

 

 赤い宝石を手に握りながら手を天に向かって突き出しているなのはの姿がそこにあった。

 

 そこからなのははなにやら制服に似たようなバリアジャケットに身を包みその手には魔法使いが使うような杖をやや機械的にしたようなものを握っていた。

 

 突如姿が変わってしまったためか、予備知識がなかったなのはは当然驚いてあわあわとしていた…ああ、なんだ姿が変わってもなのははなのはかと思っているとなにやら近くから猛烈に嫌な気配を感じ目を向けるとそこにはなにやら黒い塊が今にもなのはに襲い掛かろうとしており、俺は無我夢中でとびだしていた。

 

「なのはっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのはっ!」

 

「え?」

 

 突如聞こえた声になのはは現実に引き戻され顔を前に向けると先ほど襲ってきた化け物がなのはの前に躍り出てきていたのである。

 

――緋凰流・奥義【葬刃】

 

 しかし、その化け物は突如横からの暴威にその身を切り裂かれてしまう。

 

「え?」

 

 再びなのはの口より呆けた声が漏れる。なにが起こったのか今一分からなかったからである。

 

 あの化け物が自分を襲おうとしていたのは助けたフェレットのせいだというのは分かった。

 

 では、何が分からなかったかといえば…此方に襲い掛かってこようとした化け物が何者かにやられたということである。

 

 この場には自分とこのフェレットしかいなかったはずだ…では、誰?

 

 先ほど、襲われる前に聞こえた声…その声が誰かを確認する前になのはの眼の前に白きコートを翻しなのはを守るよう眼前に少年が現れた。

 

「こう…り…君?」

 

 恐る恐ると言った風な感じで目の前の少年の名を呼ぶなのはだったが、少年は答えずにいた。

 

「人の家族を襲おうとした報いを受けてもらうぞ」

 

 手にもつ剣…刀の切っ先を化け物に突きつけながら紅莉は睨む。

 

 なのはは目の前の少年が本当に紅莉か少し不安になっていた。

 

 否、確かに紅莉だろう。声にその身に守っている白いコートは彼が外の鍛錬に行く時は必ず身に纏っているからである。

 

 では、何が分からないか…それは、彼が纏っている雰囲気である。

 

 彼はややノリが良く、兄同様いじめっ子な感じでそれでいてノンビリとした子だったはずだ。

 

 剣術をやっているのも知っているし、家の道場で鍛錬している時はノンビリした感じがなかったのも確かである。

 

 しかしだ、今目の前にいる紅莉の雰囲気はそのどれでもなかった。

 

「ちっ、再生するとかどこのファンタジーだ」

 

 忌々しく呟く彼の言葉になのはは再び紅莉の目の前の怪物を見るとそこには紅莉に切り裂かれた箇所が修復していたのである。

 

「む、無茶だ!」

 

 近くにいたフェレットが彼の行動に声を上げるが紅莉はそれが聞こえないのかはたまた無視しているのか再び怪物に向かっていった。

 

「しっ!」

 

 放たれる一閃。それにより怪物は再び切り裂かれるが、直ぐに体を元の状態にもどして体の一部を触手のように伸ばして紅莉を貫こうとするが…

 

「「え?」」

 

 なのはとフェレットの声が重なる。

 

 触手は確かに紅莉を貫いたがそれだけであった。貫かれたはずの紅莉はいつのまにか触手の直ぐ横で再び刀を振りかぶっていたのである。

 

「シアッ!」

 

 今度は一撃でなく二撃。それで回復するなら更にと続けていく。

 

「す、すごい…」

 

 なのは思わずぽつりと呟く。自分と変わらない歳の紅莉が怪物相手に圧倒しているのであるから。

 

 しかしだ、幾ら攻撃しようが回復され反撃されるのを繰り返しているためか紅莉の額には汗が浮かび始めていた。

 

《マスター》

 

 

「ふ、ふえっ!?な、なに?」

 

 突如自分がもっている杖から声が放たれたことにより驚きながらもなんとか返した。

 

《今のうちに封印準備を》

 

 杖から提案されるがなのはどうやってと思ったときにふと何をすればいいかが浮かんできた。

 

「こ、紅莉君!」

 

「よっと」

 

 なのはの声を聞いた紅莉はそのまま大きく後ろへと下がった。

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード封印!」

 

 紅莉が離れるとなのはの手にもつ杖から光の帯が伸び、怪物を拘束する。拘束された怪物の額には【ⅩⅩⅠ】という文字が浮かび上がった。

 

「リリカルマジカル、シリアル21封印!」

 

 なのはの呪文が唱え終わると、怪物はもがき苦しみながら光の粒子となって消えていった。

 

「あれが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

 フェレットからの指示に従いなのははジュエルシードに近づくとジュエルシードは浮かび上がりやがてレイジングハートに取り込まれたのであった。

 

「何がどうなったのかはわからんが、よかったな」

 

「あう」

 

 ぽふっと頭に衝撃があり漏れた声と共に振り向けば、そこには紅莉の姿があった。

 

「そ、そうだ紅莉君!」

 

「うっ…」

 

 なのはが紅莉に話しかけようとしたが、しかし次に聞こえた声に両者は視線を下におとすとそこには倒れたフェレットがいたのである。

 

「だ、大丈夫!?」

 

 なのはは慌ててフェレットを抱き寄せるが、意識がないために聞こえてくるのは呼吸音だけである。

 

「まぁ、とりあえず逃げるぞ」

 

「ふぇ?」

 

「回り見てみろ」

 

 紅莉に言われるままに周りを見渡すなのはの表情は次第に引き攣っていく。

 

 地面は抉れ、電信柱は折れ家の壁は砕けているのだ。今まで騒ぎにならなかったほうが可笑しいのだが、今はそんなことを言っていられない。

 

「ご、ごめんなさ~い~~!」

 

「はぁ…」

 

 なのは謝りつつ逃げ、紅莉はそんななのはを見つつ溜め息を吐きながら追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

「だらしのない」

 

「すいません…」

 

 このフェレットを助けた公園までやってきて漸く腰を落ち着けるとなのはは息を切らせつつ此方を睨んできた。

 

「なんであんなに走ったのに息が切れてないの」

 

「んなもん鍛えていたからだろうに。それに、息が切れにくいように走ったし」

 

 ナンバ走りってね。漫画の知識だったんだが試したら思いのほか体に負担が掛からなくて長距離を走ったりするときには重宝している。

 

「そんで、なのははこんな夜になんであんなヘンテコな格好していたんだ?」

 

 あくまで魔法などしりませんといった様相で尋ねる。別に教えてもいいんだが、こういったのは出来るだけ秘密にしておいたほうが後々いいんじゃないかと思う。

 

「ヘンテコ!?あ、あれはその!」

 

「すいません、ボクが呼んでそれで彼女が…」

 

「ああ、なんか頭に響いたのはお前の声か」

 

「紅莉君も聞こえたの!?」

 

「何となくな」

 

 俺の言葉に驚きを示すなのはとフェレット。

 

「じゃ、じゃああそこにきたのは…」

 

「兄さんに電話貰ったからだな」

 

「おにいちゃん?」

 

 俺も仲間かと思うなのはの喜んだ顔。実際そうなのだが…兄さんからの電話もまた事実だ。

 

「ああ、なのはが急に家を飛び出したから見つけて連れ帰ってくれって……兄さんも無茶言うよ」

 

 やれやれと言った感じで頭を振る。心当たりがなかったしどうしたもんかと考えていたんだが、トラブルの場所になのはがいてホント助かった。

 

 ちなみになのははというと俺の言葉に顔を青くしだす。とーさんはあまり怒らないのだがその分兄さんは怒るときにはきちんと怒る。

 

 へんな話だが、なのはにとっては兄さんは兄であると同時にもう一人の父親的存在だな。

 

 むしろ兄さんのほうが父親っぽくとーさんは親戚のおじさんと言った感じだ………前にとーさんにそのこといったら叩きのめされたけど。

 

「あ、あう。ど、どーしよ!?」

 

 なのははあわあわと右往左往に慌てだす。まぁ、兄さんのことだからあまりがみがみ言わないだろうけど、いけないことしたのだからそこは諦めるしかないな。

 

「てか、なんでフェレットが喋れるんだ?まるで魔法使いだな」

 

「魔法と言うのはあっています」

 

「マジか」

 

 あっさりとばらしたし…まぁ、あんなことに巻き込んでおいて隠すってのは間違っているからな。

 

「あ、そうだ自己紹介しよ」

 

「おい、お前は兄さんへの言い訳を考えておけよ」

 

「うぅ…現実逃避くらいさせてよー」

 

 ああ、現実逃避していたのか。

 

「私、なのは、高町なのは」

 

「緋凰紅莉だ」

 

「ユーノ・スクライアって言います」

 

 現実逃避の自己紹介も終えて嫌がるなのはを自宅に引っ張っていくと案の定。

 

「こんな夜にどこに行っていたんだ?」

 

 玄関の前に仁王立ちしている兄さんがいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「心配したんだぞ」

 

「まぁまぁ恭也いいじゃないか」

 

 兄さんの言葉にすかさずとーさんがフォローを入れるがこんなときは決まって…

 

「紅莉も出ているからあまり強くは言わないが、しかしだ。何も言わずに出て行くというのは違うだろう?」

 

「お~い、恭也?俺の話を聞いているか?」

 

 このように完全にとーさんの話を無視して兄さんは戒めとしてなのはの説教を続ける。といってもまぁ兄さんも甘いから話そこそこで終わるだろうけど。

 

「きゃーかわいい!」

 

「桃子、桃子。次は私ね」

 

 そんでもってこっちはこっちで桃かーさんを筆頭につれてきたユーノを可愛がっておられる。

 

 てか、リニスがきた時も似たようなことになってなかったかなぁ。

 

「ほんま、かわいいですねー」

 

「ああ、リニスも大人しいし、こいつも賢そうだ………お手」

 

「あほかおサル。そんな犬じゃあるまいしってなにぃっ!?」

 

 晶がお手といって差し出した手に手をのせるユーノ。あ~あ、桃かーさんとフィアッセさんが暴走しだした。

 

「まぁ、これからは気をつけろ。差別するわけじゃないがお前は女の子なんだ……まぁ、そのなんだ、襲われたらどうする」

 

 若干照れたふうに心配する言葉を最後になのはへの説教は終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで、さっきの青い宝石のジュエルシードだったか?の解析は終わったのか?」

 

《はい。ユーノが言っていた通りあれはいわゆる願望器に近い性質をもっております》

 

「願望器……ですか?」

 

《はい。正確には何かしらの願いなどの思い(・・)に反応して起動するようです》

 

 部屋へと戻りエアに先ほどのものの解析結果をきいたらなんとまぁという感想がでてきてしまった。

 

「なんというか、あれだなとある町で起こる7騎の…」

 

《それとは違いますが概ねそんな感じのものですね》

 

「マジか!?」

 

 シャレでネタに走ったのにまさかあっているとは…

 

《まぁ、歪められたりしませんが出来る範囲など高が知れている感じだと思います》

 

「よくアレだけの情報でそこまで…」

 

 エアの解析能力にリニスが呆れている。ユーノ曰くアレはロストロギアらしいので現代の科学では解明しきれないとか言っていたからな。

 

《私の技術のほうがよっぽどオーバーテクノロジーです。あんな石っころになど負けません》

 

 何と張り合ってんだお前は。リニスもリニスでなんでエアを見ながらやや興奮している。

 

「まぁ、それはおいおい見せてもらうとしてあのロストロギアのことですが…」

 

「ああ、ユーノの話じゃ結構な数がこの海鳴に落ちたって話だな。それになのはが封印したのが21というシリアルと言うことは最低でもあと20個あるということだな」

 

「はい。それに、話を聞いた限りではこんなおあつらえ向きのロストロギアだと…」

 

「プレシアが出てこないはずはない、か」

 

「はい」

 

 まじめな顔で頷くリニスに此方もマジメに頷く。エアの解析とユーノの言葉が事実ならばプレシアが目指すアルハザードという場所に行くのにも適したものだ。

 

 どうなるかは不明だが少し注意しておいたほうがいいだろうな。

 

「さてと、そろそろ時間も時間だから寝るぞー」

 

「はい」

 

《お休みなさいませ》

 

 電気を消してベッドに入る。やることは決まった。それにまだ俺が魔導師だとはばれていないから動きようはどうでも出来る。

 

 今回の怪物も普通に刃は通っていた…まぁ、手ごたえないし直ぐに再生されたが。

 

 そんなことを考えながら俺の意識はそのまま闇へと落ちていった。

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