「ミスったなぁ」
『はぁ…貴方を信じた私が馬鹿だったのでしょうか』
《マスターはうっかり属性も持っているのですね》
うちの使い魔の小言がひどい。いやまぁ、確かに俺が悪いんだけどさ。てか、エアよ『も』ってなんだ『も』って。
「なのはに構いすぎていたのは認めるが、仕方ないじゃないか、誰だってミスはある」
『貴方が言ったのでしょう、発信機をつけてフェイトの拠点を見つけようと。それなのに、前回の接触の時に忘れるなんて』
「いやまぁ、そうなんだけどさ…」
「くぅん」
おお、俺の味方は久遠お前だけだよ。
肩にぶら下がっている久遠の頭をなでつつ商店街を散策していると。
「お」
「あ」
目の前に目的の人物を発見した。
「どうしよ…」
アルフからいつも無理しているんだから、昼間の散策は自分に任せてゆっくりとしていてって言われてアルフはジュエルシードを探しに行ってしまった。
やることもなく家の中にいるのは退屈だったので出てきたのはいいのだけど、この世界の常識で知っていることなんて魔法が一般的でないってことぐらいだ。
アーケード街に来てみたのはいいのだけど………お店に書いてある文字が読めない…
言葉は魔法の翻訳機能が効いているから問題ないのだろうけど…意味もなく入ってしまっては…
そんな風にとりあえず歩いていたら。
「お」
「あ」
あの白い子を助けるために表れた男の子が頭にネコを肩に狐をぶら下げて私の目の前に現れた。
「!」
「ああ、警戒するなとは言わないが、こんなど真ん中でやりあう訳じゃないから落ち着け」
自分の格好を見てみれば、彼を警戒してなのか左手にバルディッシュを持ちながら構えている格好であった。
「いや、よかった。お前とはちょっと話したいと思っていたところだったんだ」
「……私には話すことはない」
「まぁ、そうつれないことを言うな。別にジュエルシードのことに関してじゃないから」
彼は何を言っているんだろう?ジュエルシード以外のことで私と話をしたいとは一体…
「まぁ、こっちには戦闘の意思はない。それに関して言えばなのはに一任したからな」
なのはとはこの人の隣にいたあの白い女の子のことだろうか?
少し冷静に彼を見てみれば、確かに彼からは私に対しての敵意も、彼女のような私に関わろうとする気配が見れない。
……というか、彼の姿を見ると毒気を抜かれてしまう。
本人は真面目に話しているのだろうけど、頭のネコと肩の狐のせいで台無しだ。いや、かわいいのだけど…
そういえば、さっきからあのネコはこっちをずっと見つめてきているがどうしたのだろうか?
【グゥ~】
「っ!?」
「くぅ?」
しばらく彼と私の間で沈黙が訪れる…そういえば、ご飯食べていなかった…それがこの結果だ。
私は思わず俯いてしまい、必死に言い訳を探していると。
「ちょいちょい」
変な感じがして顔をソロソロと上げてみると彼が手招きして呼んでいた。
このまま逃げてもいいのだろうけど、何故か私はそのままついていってしまった…
しばらく彼についていくとなにやらのお店の前までやって来た。
「悪いな久遠たちはここで待っていてくれ」
「くぅ」
「はいはい、お土産持ってくるから我慢してくれ」
彼は頭と肩からネコと狐を下ろして会話をしている…そういえばこの前アルフから彼は使い魔を持っているという報告が入ったけど、あの狐がそうなのだろうか?
私と同じで雷の魔法を使うといっていたけど。
「お~い、そんなところで突っ立ってないでこっち来いって」
店の前で彼に呼ばれてそのまま一緒に入っていくと…
「あ、紅莉いらっしゃ~い」
出迎えてくれたのは金髪のウェーブの髪を持った綺麗な女性であった。
彼女はどうやら彼のことを知っているようでこのお店にきた彼を笑顔で出迎えていた。
「あれ?そっちの子はどうしたの?」
「ちょっとした友達だよ」
「何っ!?紅莉、お前はすずかちゃん達以外に友達がいたのか!?」
「どういう意味だとーさん!」
私を友達と紹介して驚いたのは目の前の女性ではなくて奥のカウンターに立っている男性だった。しかし、彼はこの店と何故かマッチしているのに、どこか違う感じがするのはなんでだろう?
と、いうよりもよくよくこのお店を見回してみると、ショーケースにはケーキが並んでいる。どうやらカフェか何かなのだろう。
「い、いやな、紅莉はどう見ても恭也に似て友達をたくさん作るように見えなくてな」
身振り手振りで必死に言い訳をしているつもりなんだろうけど、私から見ても止めを刺しているだけに見える。
「もういいや。奥の席空いている?」
「うん、今日は空いているよ」
「んじゃ、座らせてもらうね」
そういうと彼は私に視線を合わせてから歩き出したので再び後をつけてひとつの席に座った。
「時間も中途半端だしがっつりしたものよりかはこういったものの方がいいだろ」
そういってメニューを渡してくるけど…
「金なら気にするな。ここは実家が経営している店だし小遣いなら有り余っているからな」
彼は笑いながら好きなものを頼めばいいと言ってくるのだけど…
「そうじゃなくて…字が読めない…」
私が理由を話すと彼はきょとんとした顔になる。戦いのときのあの視線の鋭さを知っている私としては今の彼の顔はちょっと間抜けに見える。
「ああ、そういえばそうか…だったら、注文は任せろ。こう見えても俺は注文の達人だ」
「そうなの?」
ビシッと親指で自分を指す彼に聞いてしまった。何かを注文するのにも鍛え方などがあるのだろうか。
「ぐわぁぁぁぁっ!」
「ひぅっ!?」
急に頭を抱えて叫びだされて思わず変な声を上げてしまった。
「素直だとは聞いていたけどここまでとは…」
なにやらぶつぶつと言っているのだけどあまりに小さくて聞き取れなかった。
「ま、まあいいや。とにかくこの【翠屋】に来てもらったのならぜひ食べてもらいたいものがある。ちょっと注文してくるから待っていてくれ」
そういって、彼は席を立っていってしまった。5分くらい待つと彼の手にはトレーとなにやらお菓子とカップが乗ったのを持ってきた。
「翠屋特製シュークリームだ、ぜひ食べてくれ」
ミルクティーとともに置かれたのは確かにシュークリームであった。
「うちの名物はと聞かれたら真っ先に答えるのがこのシュークリームだ」
なにやら誇らしげに彼は告げてくる。
「まぁ、とにかくご賞味あれ」
そういって、彼もまた私と同じようにシュークリームにかぶりついた。
私のシュークリームのお皿の前にはフォークが置かれているのに彼にはないのだろうか?
お腹が減ってしまっていた私は誘惑に勝てずにそのままフォークを使って適量を切り取り口に運んだ。
「!?」
「ふふん」
彼の勝ち誇った顔など今はどうでもいい。なんだ。なんなんだ、これは…
今まで食べてきたケーキなどもおいしいと思ったのだが、これは別格だ。口いっぱいに広がるクリームの濃厚さ。けど、決してそれが重いというわけではない。
それに周りの生地の部分もさくさくとしておりクリームとのバランスもいい。
ためしにミルクティーを口に含んでみるとこちらもまた甘くておいしい…ミルクと砂糖で紅茶本来の風味が壊れることなく口の中がとても幸せになる…
「ご馳走様でした」
「おかわりはいるかい?」
「け、結構です!」
意地の悪い笑みを浮かべて彼が言ってきたのでつい大声で答えてしまった……うぅ、周りの人の視線が…それもこれも彼が…
「いや睨まれても…好意で聞いただけだぞ」
嘘だ。真面目な顔をしているはずなのに彼の口元がにやけている。
「んで、真面目な話に戻すとして」
そういうと懐からなにやら封筒を取り出した。
「これを君の母親に渡してほしい」
「どこでそれを!?」
「言っただろう?個人的に話があると。つまりはこの手紙を渡してほしいということなんだ」
「私が言っているのは」
「ああ、その理由は秘密だ。もし、知りたかったらこの手紙を渡した後に母親にでも聞いてくれ」
そういうと彼はそれ以来なにも語らずにコーヒーを飲んでいた。
「んじゃ、またな~」
フェイトにお土産(シュークリーム数個)を持たせて店の前で見送る。
「紅莉、あの子は紅莉の彼女かい?紅莉も隅に置けないね」
「ぶはっ!?」
突如後ろからとーさんの声を聞いて思わずむせてしまう。
「いや、この歳で彼女とかないだろ?」
「いやいや、俺も紅莉くらいのころから…」
「桃かーさーん!とーさんがー!」
「や、やめろ!悪かった!からかって悪かった!謝るからやめてくれ!」
人を呪わば穴二つだ!
「んじゃ、俺はリニスたちつれて帰るわ」
「うん。僕たちも夕飯までには戻るよ」
とーさんに別れを告げてから店前でおとなしく寝ていたリニスたちを回収して家路に着いた。
『あんた、今日一日何やっていたのよ!』
「怒鳴るなよアリサ。気持ちは分からんでもないが」
夜になり、鍛錬に向かおうとしたときにアリサから電話がかかってきた。
電話の内容はここ最近のなのはの様子がおかしいが何か知らないかということだ。
学校に行っていれば何かしらのフォローが出来たのだが、あいにくと定期検査のために病院へといってそのまま学校には行かずに帰ったことを伝えたら怒鳴られた次第だ。
まぁ、フェイトとお茶をしていたなんて口が裂けてもいえないところがきついのだけどね。
『なんであの子は…』
「アリサはさ、例えばだけど友達にも相談しづらいことがあったとしたらどうするんだ?」
カリカリしている自分となのはの態度にさらにイラついた声を出すアリサに俺は質問をする。
『相談し辛いって…もしかして、今のなのはもってこと?』
聡いアリサのことだから今の質問で俺の言いたいことは分かったのだろう。先ほどまでのイラついた声ではなくなっている。
「そうだ。何もかも相談して一緒に解決してあげるのが友達じゃないだろ?信じてまってやれるのも友達だと俺は思っているけど」
『……分かったわよ。それで解決したら聞き出してやるんだから』
「ああ、それでいいんじゃないか?そんでくだらない理由ならば馬鹿のひとつでもいってやれ」
『あんた時々だけど、本当に容赦ないわね…』
なにやら呆れたような声で言ってくるアリサだが、どうやら怒りは収まったようだな。
「んじゃ、悪いが切るぞ。これから俺は鍛錬なんだからな」
『がんばりなさい』
それだけ言うと通話が切れたので携帯をエアに仕舞いストレッチを開始すると町の中心部からものすごい魔力の流れを感じた。
「えー…ここ最近鍛錬時間になるとこうなんだけど…」
「仕方ないでしょう。昼間に起動されたほうが厄介なんですから」
当分は夜休んで夕方鍛錬するかな。
『紅莉君!』
『分かっている。今から向かう』
『うん、先に行っているね!』
『まて、先走るな!』
なのはに念話を送るも返事が返ってこなかった。
「あの馬鹿が先走りやがって」
ここ最近のフェイトへのことで焦りが生まれたのか?いや、そんな気配はしなかったが…
兎に角急いで向かうとするか。
「一気に行くぞ!」
《イエス。加速発動》
赤い粒子が回りに浮かびジュエルシードが発動した場所まで一気に飛んだ。
現場へと到着して目の前に映ったのはなのはとフェイトのデバイスがジュエルシードを取ろうと突き出した状態で止まっている場面であった。
「きゃあっ!」
「くっ!」
ジュエルシードから一際でかい衝撃が発生してなのはとフェイトは弾き飛ばされたがどうやら二人とも無事だったようで体勢を立て直して綺麗に地面へと着地した。
「紅莉!」
「悪い、遅くなった」
現場へと到着した俺に気づいたユーノが声をかけてきたので謝りつつそちらへと向かおうとしたらとてつもなく嫌な気配を感じ、あたりを見回すとそこは先ほどなのはたちを吹き飛ばしたジュエルシードから青白い光の柱が立っていた。
「あれは…」
「もしかして、暴走!?」
ユーノがあわてた声で可能性を口にする。ちっ、確かに不安定な代物だが、まさかここまでとは…
ユーノたちの話じゃロストロギアが暴走なぞすれば町など一瞬で灰になるなんてことは造作でもないといっていたからまずいなこりゃ。
「ガン・スレイヴ!」
《射出します》
言葉とともに4つの遠隔操作兵器が射出されジュエルシードを囲むように円陣を組むとそれぞれを基点に結界を張った。
「ユーノ、あの状態での封印は?」
「無茶だあの状態までいってしまったら、少なくともあれ以上の魔力であのジュエルシードの保有してる魔力を吹き飛ばしてからじゃないと」
「なのは、いけるか?」
「ご、ごめんね、ごめんねレイジングハート…」
なのはに確認しようとしたらボロボロになったレイジングハートに謝っていた。
「そっちはどうだ?」
「はんっ!そんなの知ったことか!」
アルフがこちらの話を聞こうとせずにジュエルシードのほうへと向かおうとするのを斬撃を飛ばして押しとどめる。
「ロストロギアの危険性を知っての行動か?」
鋭く睨みつけるとアルフは一歩たじろぎ罰の悪そうな顔をした。
「アルフ下がって。こっちも無理」
アルフを下がらせてフェイトが無理だと告げてくる。
「ユーノは?」
「ごめん、サポートは得意だけど攻撃は」
ユーノもどうやら無理のようだ。
「仕方ない。俺がやる」
「出来るの?」
「誰かがやらなきゃいけないだろ?」
ユーノたちを下がらせ、ジュエルシードを空中へとあげる。
「テトラクテュス・グラマトン」
《ディス・レヴ、ドライブ》
執行者の理を唱えると同時に前に使ったディーヴァ・レヴの時と同様に力があがっていく。
「な、なんて魔力なんだ……!?」
「な、なんか紅莉君の雰囲気が変わった?」
後ろから聞こえた声に若干気にかかることがあった。
『リニス、今の俺をみてどう思う?正直に言ってみろ』
『今の紅莉は……前に暴走していた久遠と似たような感じがします…ただ、久遠のときよりは落ち着いているといった感じです』
リニスに聞いてみたらそんな答えが返ってきた。
「はぁ…ディーヴァ・レヴにしろディス・レヴにしろ一筋縄じゃいかないようだ」
おれ自身を変質してしまうなど、まだまだきちんと使いこなせてない状況じゃないか。
《マスターそんなことより》
「分かっているさ」
今はそんなことを気にしている場合じゃないな。
「一気に行くぞ」
《はい》
俺の前に3つのガン・スレイヴが現れそれぞれを基点に魔法陣が現れる。胸部の少し前に魔力の塊が形成され今か今かとその時を求めてあがり続ける。
「虚無へと消えろ、アキシオン・バスター……デッド・エンド・シュート!」
俺の言葉とともに発射されたそれはジュエルシードを飲み込みながら、空の彼方へと消えていった。
しかし、虚無に消えろと言ったけど、実際は大して出力上げてないおかげか傷なしのジュエルシードがそこにあったのであった。
《対物設定を弄って魔力にのみダメージへといくように変換しました。ですので、何かを壊す心配はありませんでしたよ》
エアが補足してくれたが、実際問題としてあれをフルパワーで撃ったらどうなるんだろう?試してみたいが、対象がないからできないな…
「今回は俺が回収させてもらうぞ」
そういって、いまだに宙に浮いているジュエルシードを回収した。
「フェイト行くよ!」
「……うん」
アルフに言われ、フェイトはなにやらこちらを見たと思ったらすぐに前を向いて行ってしまった。
「紅莉すごいよ!」
「うん!」
回収して地上に降りるとユーノとなのはが笑顔で俺を出迎えてくれる。こんな顔をしてくれるならがんばったかいがあったというものだ。
ディス・レヴもすでに切ったから先ほどまでの禍々しさはないだろうし。
「んじゃ、帰るか。ユーノこいつは最後に渡すって形でいいか?」
「うん、かまわないけどどうして?」
「なに、こいつは俺が持っているというだけであいつらは早々俺から奪おうとは考えないだろ?」
あれほどの力を見たんだ、そうそう突っかかってくることはないだろう。
「なるほど…うん、それなら紅莉が持っていて」
「あいよ。さ、帰ろうぜ…俺は鍛錬に行くけど迷うなよ?」
「迷わないよ!」
なのはの方もショックから回復したのか元の状態に戻っていたのをみて俺は鍛錬場まで飛んでいった。
「なんだいあいつは!」
「アルフ、もう終わったことだよ」
フェイトたちはあの後自分たちが使っている拠点まで戻ると同時にアルフが吐き捨てるように先ほどのことに苛立つ。
「分かっているよ。でも、フェイトも見ただろ?いきなり魔力が上がったと思ったらとんでもない威力の砲撃を撃つなんて」
「そう、だね」
フェイトもアルフに言われ先ほどの光景を思い出していた。初めてあったとき、只者ではないと思っていたが、先ほどの彼は前に対峙したとき以上の迫力があった、それがどういう理由でかは分からないが。
「兎に角私は一旦、母さんのところに戻るよ。まさか、現地に別の魔道師がいるとは母さんも分からなかっただろうから」
「フェイトぉ…」
「大丈夫だから、ね?」
アルフがフェイトの名前を情けないような声で呼ぶがフェイトは微笑みながらアルフの頭をなでる。
「今日はもう遅いから明日の朝に行ってくるね」
「………分かったよ。そういや、これは?」
アルフは机の上においてある箱を見ながらフェイトに尋ねる。若干鼻がひくひくと動かしながら。
「これはね、昼間に出かけたところで買ってきたシュークリームだよ。アルフも食べる?」
「いいのかい!」
耳をピンの立てて喜びの表情をして目を輝かせる。そんなアルフを見つめながらフェイトは紅莉のことを思い浮かべる。
(そういえば、彼の名前を結局昼間に聞かなかったな、それにあの白い子の名前も…)
そこまで考えてフェイトは頭を振る。そんなのは必要ないと。自分はただ、母親に命じられてそれを遂行すればいいのだ。
「どうしたんだいフェイト?」
そんなフェイトの様子に気づいたアルフが問いかける。
「ううん、なんでもないよ。ああ、ほらそんな風に食べるからクリームがついちゃっているよ」
フェイトは布巾をもってアルフの口元についていたクリームをぬぐったのであった。
PCを買い換えたので変換ミス、誤字(こちらはいつもですが)があると思われます。
気づいたら教えていただけると助かります。
フェイトの絡みはテンプレな展開ですが楽だったので。
そして、なのはの一人称ないのにフェイトの一人称が最初とはw