「何故こうなったし……」
《自業自得ですね》
空中で何故今、この状況になったか頭を悩ませる。
俺の前にはセットアップをしたクロノが構えており、周りにはなのはを始めジュエルシード捜索隊の面々が見つめている。
ことの起こりはジュエルシードを順調に集めているときにふとエイミィさんが告げてきた一言だ。
「紅莉君ってあまり戦わないよね?っていうか、そこにいるだけ?」
封印作業のときなんかも基本的になのはとユーノに任せていて見ているだけの状況の俺にエイミィさんがそんな風に言ってきた。
確かに俺はめったなことがない限りは見ているだけに徹しているからそんなことを言われるのも仕方のないことだ。
「できれば紅莉君のデータも欲しいんだよね」
「( ´゚д゚`)エー」
「いやなんでそんな嫌がるのさ」
エイミィさんが笑いながら嫌がる俺に言ってくる。力ってのは別に見せ付けるためのものじゃないんだけど。
「それに、あの時みたいな力は普段は出ませんよ?」
「う~ん…あの時の力のデータも欲しいけど、それ以外のデータも欲しいわけさ」
どうやらきちんとしたランクを調べたいらしい。まぁ、変動するから参考程度にしたいようなのだが。
「つっても、封印作業とかはなのはに任せて問題ないでしょう?あいつ自身が積極的にやっているんだし」
「そうなんだよね~、いっそ誰かと戦う?」
物騒なことを仰ることで…まぁ、魔法には便利な非殺傷なんていう設定があるからいいんだろうけど。
「紅莉君が戦う姿見てみたいかも」
「私もちょっと興味がある」
「任せとけ」
「んじゃ、決まりだね」
「ハッ!?」
なのはとフェイトが興味があるとかいってきてついノリでOK出してしまった。
「んじゃ、場所は海上でやるよ~」
あれよあれよと流されて現状に至ると。
なのはとフェイトはジュエルシードの封印実行部隊ということで外されて最終的にある程度の実力者がアースラにはクロノしかいないみたいで相手はクロノとなった。
《ノリで生きているからそうなるんですよ》
エアがあきれながら告げてくる。しょうがないじゃん、つまらないよりは楽しいほうが人生色々と面白いんだからさ。
「さあ、やろうか」
「なんでお前までやる気だし」
クロノが何故かノリノリなのでため息つきながら聞いてみる。
「君がやろうとしていることは、僕だって理解は出来なくはない。けど、局員として、執務官としてもただ了承するだけというわけにはいかないんだ」
「立場もあるってことか……そうだな、そうだよな」
ただ、人助けのためだという理由だけでいいという訳ではないよな。クロノにはクロノの立場が、俺には俺の立場があるからな。
「だから!」
「ああ!」
クロノが構えたので俺も刀に手をかける。
『準備はいいみたいだね?んじゃ、レディー…ゴー!』
エイミィさんの合図で戦闘が始まった。
近場の陸でクロノ対紅莉の試合を見ているなのはたち。なにやら話していたようだがお互いが構えたのを見たエイミィが開始の合図をあげる。最初に動いたのはクロノであった。
《スティンガースナイプ》
クロノのデバイスS2Uの管制音と共に杖から魔力弾が紅莉へと向かい発射されるも紅莉は避ける動作もしていなかったが
「なっ!?幻影!?」
スティンガースナイプが紅莉の体を素通りしたことによりクロノは驚きの声を上げている。
驚きは別にクロノだけではなく見ていたなのはたちもそうであった。
「本当になんなんだいあれは!」
かつて同じように攻撃を無効化されたことのあるアルフが忌々しげに叫ぶ。隣にいるフェイトも同様なのか頷いていた。
「あれは紅莉の扱う流派の奥義の幻武。あれを使う紅莉を捕らえることは難しいですね」
そこにリニスからの説明が入る、彼女は淡々と述べるだけで対処法などは一切口にしない。
「紅莉君がお兄ちゃんたちと一緒にやっているのは知っていたけど…改めてみるとデタラメなの」
「あれはどうやって…」
なのははなのはで紅莉が剣術をやっているのは知っているのだが、だがどういったものなのか知らなかったのである。
ユーノもまたどういった原理でそうなっているのかは分からないようだ。
「だったら!」
《ブレイズキャノン》
先ほどの魔力弾とは違い今度は直射型の砲撃を紅莉に向かって放つがこれは距離があったためか簡単に避ける紅莉。
「えっと、リニスさん。リニスさんは紅莉君とこういった模擬戦みたいのってしたことあるんですか?」
「今まで通り、リニスで構いませんよ。それで質問の答えはイエスです」
なのはは戦いを見ながらリニスに疑問をぶつけると、返ってくる答えは自身が望んだものであった。
「それじゃあ、紅莉君の対処法ってわかりますか?」
パッと見が年上ということのためか、今までのような喋り方でいいと言われても丁寧に話しているなのはに微笑みながらリニスは口を開いた。
フェイトやアルフ、ユーノまでもがその答えに興味があるのか耳を傾ける。
「そうですね……」
考え込むリニスに固唾を呑むなのはたちについに考えがまとまったのかリニスが再び口を開いた。
「紅莉への対処法は……戦わないことですね」
リニスが口にした対処法を聞いた4人だったが、その内容に唖然としてしまった。
「正直、私は紅莉の敵に回りたくありません。あの力を使う使わないにかかわらず、ね」
あの力とはディス・レヴのことをさしているというのはなのはたちもなんとなくは察した。
しかしだ、戦わないというのはどういうことだろうか。そんななのはたちに気づいたリニスは微笑みながら再び空を見上げた。それにつられてなのはたちも空を見上げる。
「見ていてください。彼の戦いを」
「スナイプショット!」
「ぬ?」
クロノの掛け声から新たな魔法かと思ったのだが杖からは何も出てこないのを怪しみながら仕掛けようとした瞬間に嫌な感じがして振り返ると
「さっきの魔力弾か」
クロノの魔力光の青い弾丸が加速しながら突っ込んでくるのを再び避けるが
「はっ!」
俺を通っていった魔力弾は再び俺に向かって加速してくる。
「厄介な魔法だな」
《とても効率的な魔法ですね》
誘導弾はリニスも使っていたが、ここまで厄介な魔法ではなかった。特にこんな速度で向かっては来なかったな。威力も申し分ないし、エアも褒めている。
「が、対処できないほどではない…はっ!」
再び迫ってきたのを一刀のもと切り裂きクロノに向き直り一気にクロノに駆け出す。
クロノも俺の獲物を見て近距離は不利だと悟っているのか距離を取りながら攻撃をしてくる。
その悉くを切り捨てながら一気にクロノに近づくが途中で足が何かに捕まれたように動かなくなり止ってしまう。
「バインドか」
足元を見てみると青いわっかが俺の脚を捕らえており、囚人の足かせのようになっていた。
足元に視線を向けている間に体を締め付けるようなバインドをされてしまい、前を向くとクロノがこちらに杖を構えていた。
「僕の勝ちだ」
勝ち誇るクロノだが…
「温いぞ」
体の力を緩めバインドと体の間に一瞬の隙間を作り一気に外へ力を解放し引きちぎる。この程度の拘束なんて兄さんが使う鋼糸より温い。
「俺を捕らえるには足りない」
「なっ!?だがこの距離なら!」
《ブレイズキャノン》
至近距離から直射砲を放たれる。確かにこれは避けれないな…
「――緋凰流・奥義【断空】」
唐竹に一気に刀を振るい迫ってきた魔法を縦に切り裂き、俺の手前から俺を避けるように左右に割れていった。
最近ようやく使えるようになった奥義だったから上手くいくかどうか怪しかったが上手くいってよかった。
「はぁっ!」
自身の魔法を斬られたのがそんなに意外だったのか未だに呆けていたクロノに近づいて刀を振るう。
しかし、クロノも戦いなれているのか直ぐに正気に戻り、防御を展開してきたが関係なく体を動かしシールドごと切り裂きクロノのボディーを完全に捕らえた。
「がっ!」
肺から空気が漏れたのか悲鳴も上げずにすっ飛ぶクロノに警戒を怠らずその場で見つめていると再び空へと上がってくる。
「まさかシールドごと切り裂くなんて…」
先ほどの俺の攻撃に困惑しながら構えなおすクロノ……未だに闘志は消えずか。
《マスター、チャージ完了しました》
クロノに対して認識を改めているとエアからの報告が入る。
「ようやくか」
《レヴの開放をしていないのでこんなもんかと…それにマスターには必要がないでしょう?》
俺がこぼした呟きに律儀に返してくる相棒に苦笑いせざるえない。よく分かっている。俺には基本的になのはが使うような威力重視もフェイトのような速度重視の魔法も必要性は感じない。
俺が持つ一振りの刀で相手を切り伏せる。俺は魔導師の前に一人の剣士だ、そこには魔法は入ってこない。
もちろん、それだけで魔導師に勝てると思わないから剣技に魔法を重ねて使うことで事足りるからな。
まぁ、今はそんなことどうでもいいな。刀を鞘に納めて抜刀の構えを取るとクロノも何かを仕掛けてくるのは感じたのか警戒を強めてきた。
「終わりだ…アキシオン・ブレイカー、デッド・エンド・スラッシュ!」
鞘から刀を一気に走らせ葬刃の要領で横一文字に振るうとその軌跡上に巨大な斬撃が走りクロノを飲み込み海を割った。
前に撃ったような切っ先からの砲撃ではなく、斬撃として使うことによりより威力を出したのである。
『嘘…推定威力…S+!?』
本来の俺の魔力量ならここまでの威力は出ないらしいのだが、それにはもちろん秘密がある。
落ちたクロノを回収してアースラに戻り反省会となった。
「それで最後にクロノ君を倒した時に撃った魔法はどうやってやったの?」
興味津々でエイミィさんが聞いてくる。隣のクロノが若干引きつっているのは見なかったことにしよう。
「俺の才能?」
「ないですね」
ひでぇっ!?ここ最近、リニスが毒舌になってきたんだけど。
「まぁ、そうなんだけどさ」
恐らく自分でやろうとしたらどれだけ時間がかかるか考えたが途中でやめた。どうせ一人じゃ使わないだろうし。
「それで、どうやって使ったんですか?魔力が上がらなかったので何らかの手をうったのは分かりますが」
「簡単に言えば鞘に俺の魔力をチャージし続けただけだな」
「そういえば紅莉君って漫画みたく腰にさしてないよね」
なのはが質問を投げてくるが、こいつの漫画をたとえに出す癖をなんとかすべきか?いや、魔法の世界にどっぷり嵌りだしている俺たちからすれば現実味が出てきているからいいのか?
「俺の場合は鞘はもう一本の刀であり、防具でもあるからな基本的にはもう一本の手に持っているよ」
両手で振ったほうが威力も出るし扱いやすいが、緋凰流には鞘も含めた技が多数存在しているから手に持っていたほうが効率がいいんだよ。
母さんもあんな馬鹿長い刀を片手一本で自由自在に振っていたからな…
「そんで、開始と同時にエアが鞘に魔力を溜めて、溜まりきったら一旦納刀して溜めた魔力を刀身に移して一気に振るうって寸法さ」
至極簡単な方法だと思っているのだが回りは信じられないといった顔をしているんだがどうしてだ?
「同時平行して魔法を行使していたの?」
エイミィが代表して聞いてきた。
「いや、エアがやってくれたが?」
《マスターが使う魔法は足場生成と身体強化ぐらいですからね。処理はひどく簡単です》
優秀で助かるよ、本当に。基本的に俺は魔力をエアに渡してエアが魔法を行使ししているって感じかな?
魔力放出などは自分の意思で出来るけど、俺にできることなんてたかが知れているしな。
「でも、紅莉君の魔力量であの威力ってのは…」
「エア曰く俺の魔力って減らないらしいですよ?」
やり方に納得はいったが今度は威力に納得がいかなかったようで尋ねられたので教える。
一瞬の威力は確かにリニスにも確認を取ってもらったがAランクが限度のようでそれ以上の威力は出なかった。
それなら魔力を溜め込んで一気に放出すればいいじゃんと結論付けてやってみたら思いのほか威力が出ることに驚いていたな。
本来ならばそこまでやろうとする前に魔力が枯渇するそうだが俺は減らないらしいから可能で俺だけのオンリーワンだとか。
俺専用という響きはかっこいいけど、俺よりも魔力が高い人ならばできるという意味だろうから素直に喜べないな。
「魔力が減らないって…」
「リニスも俺の魔力で維持しているようなもんだが、ランクは俺より高いらしいけど?」
エア曰くリニスのランクはAAAクラスだから普通は維持できないそうだ…てか、そこらへんも解析できるエアは何者?
《デバイスです》
心を読むな。
「確かにリニスは母さんが維持が大変だったって…」
ううむ、魔力が減らないってゲームとかで考えれば完全にチートだよなぁ…魔法使いたい放題だし。
でも、ゲームと現実は違うわけで、最強魔法一瞬発動!って訳にはいかないし…いや、レヴを開放すれば問題ないのか。
そういや、開放して普通に攻撃したことないけどどんな風になるんだろ?使える相手がいないから考えても意味ないか。
「そんで、俺のデータは取れた?」
「ああ、うん。それは取れたよ」
よかったよかった。これでもう一回とかなったらめんどくさくてしかたなかったし。
「それで、なのはたちはどうだったよ?」
「うん、かっこよかったよ!」
「参考になりました」
うむうむ。見え張ったかいはあったかな?二度とノリで戦うまいと誓ったけどこんな笑顔を見れれば満足だ。
《フラグですね、分かります》
うるせぇ、黙れ。
なんとも締まらない感じで終わったけど、その後も順調にジュエルシード集めは進んでいった。