「あいつらからの伝言だ、あの廃ビルで待つ。止めるなら来いだとさ」
あの人たちを追う兄さんについていくと何故かとーさんがおり、有無を言わさずに家に連れ帰られた。
そして、居間で母さんや晶たちに部屋に戻るように伝えて俺らだけになると口を開き告げてくる。
「一週間…」
あそこで待つということは、コンサート当日に襲撃をかけると宣言したことだ。あの人たちとはあれが初見ではあるが、恐らくはその間は行動に移さないと何故か確信できる。
つまり、全然足りない俺たちが少しでも可能性を延ばせる期間は一週間ということだ…
「紅莉いいかい?」
立ち上がり部屋に戻ろうとしたらとーさんに呼び止められた。兄さんはやられた怪我もあるし先に部屋に戻ってもらいもう一度座りなおす。
「どうしたんだとーさん?」
「紅莉があった彼女のことだ」
彼女といわれ脳裏には母さんに似たあの女性が思い浮かぶ。
「彼女の名前は緋凰水樹………橙璃の妹だ」
「だから、あんなに似ていたのか」
とーさんの言葉に納得してしまう。あれほど似ているんだ、他人の空似とは到底思えない。
「双子に見えるが、彼女のが年下だよ」
「あ、そうなんだ」
あれだけ似て双子じゃないとか。緋凰の針のせいで大体の見た目は同じになるのか?
「緋凰の化け物姉妹とは当時では有名だったよ」
懐かしむように言うとーさんだけど、化け物姉妹とか…
俺が渋い顔をしているのを見たとーさんは苦笑いしながら理由を教えてくれる。
「橙璃にいたっては月陰の奥義を12で全て完璧に習得したんだよ。水樹は14だったかな?」
「………化け物だね」
12って後に2年で全て習得?無理だ。それにあの人も14で習得とか……確かに化け物姉妹だわ。
「それで、紅莉にお願いがあるんだ」
「とーさんが頼みって珍しいね。また女性関係?」
「断じて違う!」
声を張り上げて言うが、そんな風に言われたくなければ来る女性全てに愛想よくしすぎるのを控えたほうがいいよ?
だから、勘違いする女性が増えるんだよ。まぁ、その都度、桃かーさんの折檻食らった後にラブラブになっているからいいんだろうけど。
「真面目な話だ」
「ごめん」
流石に空気的にもおちゃらける場面じゃなかったな。
「頼みというのは簡単だ。一時的でも良いから俺を当時の様に動けるようにしてくれ」
「?? とーさんは5分なら可能だろう? それに何で?」
今回のことでとーさんは出張らないと俺たちに告げたのだが、一体どういうことなんだろうか?
「今回の件はお前たちに任せた。だから、どういう結果になっても俺は出張らないが……その前段階は手伝える。
恭也たちにはまだ伝えられることが残っているからな」
なるほど。一度は完成された御神の剣士だ、今の兄さんたちに伝えられることもあるということか。
「あと、5分間動けはするが、限界を超えるような動きは出来ない。だからこそ、緋凰の針……天命流の活性術て一時的に動けるようになりたんだ」
「とーさん、自殺行為に近いよ?」
「分かっている。だが、このことは既に桃子にも了承を得たし、子が親を超えてくれるのならばそれは嬉しいことだ。
恭也は……直接は言わないが……俺を超えられる奴だと思っている。だからこそ……」
とーさんの真剣な表情で見つめてくる。これは何を言っても聞かないな。
「分かった。だけど、3日後だ。俺もまだ完璧ではない……だから、3日かけて負担がかからないようにするから」
「ありがとう紅莉」
頭を下げるとーさんに俺のやるべきことを考える。
あの人は何故あそこにいたのだろうか?
兄さんと対峙していた人は明確な目的があると気配と目を見て分かったけど、水樹さん?はあの場にいたが、まるで序の感じがした。
「とーさん。あの、水樹さん?あの人はどうしてあそこにいたのか分かる?」
「ああ、水樹は美沙斗……俺の妹で美由希の本当の母親だな……美沙斗の護衛と言っていた。あいつらは昔から仲が良かったからな」
衝撃の事実をポロっと言わないでくれ。
美由希がまさかの従妹に当たるとは思わなかったぞ。
それに、とーさんの妹ということは兄さんの叔母か……だからあの時兄さんは動揺したのか。
「それじゃ、打つよ」
「ああ」
色々と情報が揃い、俺のやるべきことが分かった後、俺はとーさんに針を打ち体を活性化させるようにした。
「というわけで、当分は魔法の鍛錬は出来ないし、お前に付き合えない……悪いな」
次の日の夕方、いつもの場所にやって来た俺となのは達に今後の予定を伝える。
「紅莉君……」
「私も何かしたいというならば、俺たちが無事であることを祈っていてくれ」
「ッ!?」
なのはが何かを言う前に言葉を封じる。俺の言葉に息を呑むのを見るとやっぱりそう言おうとしたな。
「悪いが今回のことは魔法は関係ないし関わらせない。これは確かにフィアッセさんたちを守るという最優先でやることがあるが……
それでも、俺たちは誓ったんだ。必ず守ると。だから、なのはは今回は黙って待っていてくれ」
「……気をつけてね」
「ああ」
精一杯の笑顔でなのはの頭を撫でた後、兄さんたちが待つ場所へと向かった。
「恭也、これが俺が教えられる最後のことだ。後は、お前が辿り着け」
とーさんとの約束の3日後、残り4日と焦りが募りつつも必死に努力している俺たちの下にとーさんがやって来た。
最初とーさんが来たことには驚きは無かったが、とーさんの纏う空気と手に持つ小太刀を見て驚きを示す。
兄さんたちの認識ではとーさんは戦えないままということになっていたために、とーさんが無理して付き合おうとしたと思ったようだ。
しかし、とーさんの空気はそんなものではない。あの時、兄さんと対峙していた美沙斗さんという女性に勝る殺気を俺たちにぶつけてきた。
武から離れて長い人が出せる殺気ではないとようやく兄さんたちも理解したようだ。
俺はとーさんに近づき最後の針を打つ。これにより都合5分間は当時と同等の力が出せるようになった。
そして、時間から考えても今回は美由希は外して兄さんのみに伝えるようである。
俺と美由希は二人から離れて見学をしているととーさんが兄さんに向かって言い放った。
「行くぞ!」
「ッ!」
とーさんが掛け声と同時に消える。御神流奥義の神速を使ったようだ。
本来ならば魔法を使うことはしたくないのだが、まだ俺は神速を見切るまでには至らない。
この対決は見逃したら後に後悔しそうなので自分で課したルールを破って身体強化を限界までかけると視界の中では兄さんととーさんが神速の中で戦っている。
ほんの一瞬のときなのに、神速の中で戦っている二人はもう何十と刃を交わしている。
「ッ!?」
「ッ!」
とーさんの動きが一瞬鈍る。いくら針で補助しているとはいえ、神速はやはり体の負担がでかいようで直ぐに限界を迎えてしまったようだ。
兄さんは好機と思ったのか一瞬で刀を鞘にしまい、抜刀の構えを取る。
薙旋か……これで、終わりと思ったその時、とーさんの口端が上がったように思えた。
兄さんの薙旋が決まったと思った瞬間にとーさんの姿が掻き消えた。
馬鹿な、今の俺の身体能力は兄さんを優に超えるはずなのにそれですら捕らえきれなかっただと?
神速が終わったのか現れる兄さんとその背後に立つとーさんの姿を美由希が捉えて駆け寄る。
「ぐ……今のは……」
「俺が……当時……橙璃に対抗すべく作った奴だ……俺は奥義の極みに至れなかったが近づくことは出来た。
その成果がさっきのだ。これを使えとも使うなとも言わん。だが、俺が伝えられるのは全て伝えたぞ」
息も絶え絶えに兄さんに伝えたとーさんはその場に崩れるように倒れるのを必死に支える。
「無茶しすぎだよとーさん」
「すまないな。これを使うには当時の力がどうしても必要でな」
針を打ちながら文句を言うと苦笑いしながら言い訳をしてくる。
後に聞いた話だと神速中に更に神速を発動するという無茶苦茶なものであった。
更にあの時言っていた奥義の極み……それは、どういったものなのかも尋ねたがとーさんは辿り着けなかった故に分からないといわれてしまった。
「兄さん。今度の戦い………俺は負けない戦いをする」
「………そうか」
その後、最後の鍛錬の日、美由希はとーさんの指導の下、神速に入るきっかけを教わっている間に俺は兄さんに今度の戦いの目的を話す。
「聞いたよ、理由を」
「そうか、美由希には……」
「安心して、俺は喋らないから」
美由希に伝えることなんかはしない。彼女には彼女の理由があり、美由希をとーさんに預けたのだから。
もし、また美由希の前に姿を現すのならばそれは兄さんがきっかけを作ってくれると信じている。
「そして、あの時いたもう一人……あの人は、兄さんが戦う女性が止まればおのずと止まる。だから、俺は負けない戦いをするよ」
「分かった」
「頼むよ兄さん。兄さんが長引かせれば長引かせるほど確率は下がるんだから」
いくら負けないように戦うといっても限界はある。俺が限界を迎えればあの人は兄さんたちの戦いに割り込むかもしれない。
もしかしたら美沙斗さんが依頼をするかもしれない。だから俺は兄さんに託すしかない。
「……ああ、任せろ」
静かに、けど力強く頷く兄さんに頼もしさを感じて俺はそのまま兄さんと鍛錬に明け暮れた。
「紅莉、やっぱり私も」
「美由希じゃ無理だ。幻武を感じ取れない美由希じゃいいようにあしらわれて終わる。美由希はフィアッセさんたちについていてあげて。あの人たちだけじゃないかもしれないから」
決戦当日、廃ビルに向かう俺に美由希がついて来ると言ってきたのを断る。
兄さんですらまだ幻武を完全に把握し切れていないのに美由希ではまだ無理だ。
神速を使えば見えなくはないだろうけど、4日間の間で美由希は一度しか神速に辿り着けなかった。
ぶっつけ本番でそれにかけるには分が悪すぎる。
「頼むよ美由希。俺は、ティオレさんとフィアッセさんの歌を聴きたいんだから」
「……うん、分かった。頑張ってね二人とも」
「ああ」
「任せてよ」
美由希に笑顔で答えて俺と兄さんは水樹さんたちが待つビルへと向かった。
「………来たんだね」
静かにされど力強い言葉で俺たちを出迎える美沙斗さん。
「出てきたら?」
「うん、合格」
何も無い空間に向かって語りかけると笑顔で水樹さんが現れる。それを見た兄さんは驚きの顔をしているけど。
「ここじゃ、邪魔になるから隣の部屋に行くよ」
「兄さん」
「ああ、分かっている。頼むぞ」
入り口から出て行く水樹さんを見ながら兄さんに声をかけると頷き声をかけられたので手を上げて付いて出て行く。
「ここなら邪魔は入らないかな」
「ええ」
言葉や表情はとてもフランクなのだが、纏っている空気は剣士の気配だ。一瞬でも油断したらやられるな。
「さて、士郎さんから聞いているとは思うけど自己紹介しようか。私は緋凰水樹、緋凰月陰流の剣士よ」
「緋凰紅莉。母橙璃から月陰を受け継ぐものです」
自己紹介が終わると水樹さんは刀を鞘から抜き構えるが俺は柄に手をかけるだけ。
「ん?そっか」
一瞬疑問に思った水樹さんだったが俺の狙いが分かったのか朗らかに笑いながら納得した。
やり辛いな。こっちの狙いが全て筒抜けになりそうだ。
「士郎さんのところにいたなら抜刀系になっても可笑しくないもんね」
別にそういう訳ではないが、確かとーさんは兄さんと同じように抜刀系を得意としていたからな。
「関係ないですよ。俺は俺です……行きます!」
掛け声から一気に近づこうとして途中で止まる。
止まった目の前に高速で刀が通り過ぎた。
「よく気が付いたね」
純粋に驚いたのか目を開いて賛辞を送ってきた。危なかった、もしあのまま突っ込んで行ったら斬られていたな。
「ふっ!」
一旦息を吐き出し今度は止まることなく近づき刀を抜き放つ。
「――緋凰流・奥義【葬刃】」
「っと」
高速の抜刀術を放つも水樹さんには避けられる。
「はやぁ…」
「はあぁぁぁっ!」
驚いている水樹さんを他所に俺は一気に攻め立てる。薙ぎ、袈裟懸け、切り上げ、唐竹、突きを繰り出すもその全ては悉く凌がれる。
「はっ!」
「くっ!?」
水樹さんの左手の鞘での殴打を何とか避けるも距離を取られる。
「驚いた……その歳で葬刃を使えるのもそうだし、その速度は私よりも早いなんて」
「小さい頃、刀を上段まで上げることができない故に横への薙ぎ払いばっかりやっていたのでね」
今より小さいころ、片手で刀を上段まで持っていくことは出来なかったからの弊害だった。
力ではなく身体操作で刀を振るうといっても必要最低限の力は必要とされているからもっぱら刀は横への攻撃しか出来なかった。
だからこそ、只管に横へと振り続けて鋭くしていった。
「そう、だったら私も見せてあげる。総合的な能力も錬度も姉さんに敵わなかったけど、一つだけ超えられたものを」
鞘を持ち替えて刀の先端を鞘の真ん中ら辺に添える水樹さん。
「その構えは!?」
独特な構えから鞘に刀を走らせる緋凰の奥義その名は……
「――緋凰流・奥義【
鞘走りから一気に加速する緋凰の中でも射程と威力を持つ奥義が放たれる。
「ぐぁっ……」
肩口にあたり血を出しながら吹き飛ばされる。
「これが姉さんにすら敵わないといわれた私を支えてきた奥義だよ。まさか、それを一瞬で察してかつ、当たる瞬間にずらして直撃を避けられるとは思わなかったけど」
「ぐっ……」
よろよろと痛む体を無視して起き上がる。
放たれた瞬間、閃光がこちらに向かってくるのしか分からなかった。水樹さんは賞賛してくれるけど、今のはここ数日で兄さんの神速を受けていたからこそ無意識に体が動いてくれたおかげだ。
もう一度同じことをと言われても出来ない。
そもそも咬牙は威力と射程はあるけど、その分隙が大きいのが特徴なのに水樹さんのそれは全く無い。
俺に合わせてゆっくりと準備をしたのだろうけど、本気ならば一瞬で発動できるんだろう。
「もうやめときなよ。君が凄い才能を持ってかつ、今まで弛まぬ努力をしていたのも認めるけど、それでも私には届かない」
「最初からそんなのは分かっている。けど、何かを成したいと言っている人がいる。夢だといって諦めたくないといっている人がいるんだ。
だから、俺はそれの人のために道を切り開く」
首筋に触れた後、再び構えを取る。
「そう……君もまた緋凰なんだね……いいよ、決めよう」
水樹さんが再び咬牙の構えを取る。
「「………」」
お互いに相手を睨みつつタイミングを計る。
「シッ!」
「ハッ!」
地面を蹴り一気に駆け出す俺と水樹さん。射程では彼女が上だから…
「――緋凰流・奥義【咬牙】」
先に放たれた奥義を俺は何とか右半身をずらすことにより何とか避ける。
「避けた!?けど、咬牙は撃って終わりじゃないよ!――追の太刀【絶咬】」
突きの勢いを止めて横へと薙いでくる攻撃に予想通りで俺は口端が上がった感覚が起こる。
「消えっ!?」
俺の姿を見失った水樹さんを尻目に俺は左手に持っていた刀を右手に持ち変える。
「――緋凰流・奥義【葬刃】」
「がっ!?」
無防備な水樹さんのわき腹へと刀を走らせると肺の空気が漏れるような声が聞こえながらその場に崩れた。
「ぐぁっ……」
崩れ落ちた水樹さんを目の端でみつつ右肩を抑えて蹲る。
いくら治ってきたといっても魔法の補助が無く右手を使うのは早すぎたか。
「ぐぅ……今のは……いくら手加減しているとは言え私の咬牙を交わすなんて……それに右手?」
「……避けれた理由は簡単ですよ」
その場で倒れながら水樹さんは先ほどの動きについて考えていたようなので答えを教えるために首筋を見せる。
「それは!?なるほど、開放孔を打ったのね」
「ええ、あれを避けるには今の俺以上の動きがどうしても必要だったんで……」
天命流の中でも禁止されている開放孔。体の全リミッターを外す代わりに副作用が強すぎるために禁止されている秘孔だ。
まぁ、俺の場合は副作用など一日もあれば回復するからいいんだが。
「それに、あの場面で幻武を使われるとも思わなかったな」
「水樹さんのおかげですよ」
「私の?」
未だに倒れている水樹さんに理由を告げると不思議そうにする。
「ええ、今まで幻武の2段階目は出来ていたのですが、3段階目……奥義となる部分が出来なかったんですが、2度水樹さんの奥義を見たことにより理解できたので」
「参ったなぁ。まさか、姉さんと同じ理由でそこに辿り着けるなんて」
そうか、母さんも見て覚えたのか。それはそれで嬉しいな。
「あとは、持ち替えたのは驚いたよ」
「元々は右利きだったんですよ。けど、過度の鍛錬で壊して針で治していて、一回くらいは振れるまでは回復していたんですよ」
ただ、開放孔使ったことによるダメージよりも右肩のが酷いな。
「あ~あ、負けちゃった」
「よく言いますよ。まだまだやれるでしょう?」
そう、俺の攻撃は水樹さんを倒すまでには至らない。葬刃が当たってと言っても峰での攻撃だし、俺の威力はまだ足りないからあのまま反撃できたはずだ。
「そうだけどね。けど、私は美沙斗の付き添いだしね、だからもし君が一撃でもまともに入れられたのならば負けを認めようって思っていたんだ」
「そうですか」
すっと立ち上がった水樹さんは俺に近づいてくる。
「ほら、体にきているでしょ?手を貸してあげる」
笑顔で手を差し出してくる水樹さんの手をとり立ち上がり兄さんたちの部屋へと向かう。
「はぁぁぁぁっ!」
ちょうど部屋の入り口に辿り着くと兄さんと美沙斗さんが交差した後であった。
今、兄さんは何をしたんだ?美沙斗さんは突きを繰り出そうとしたと思うんだが兄さんはそれよりも早く動き美沙斗さんは地に倒れ付していた。
「まさか【閃】?あの子は辿り着いたの?」
閃?御神の奥義は色々と聞いているけどその名前は聞いたことないが…
「そうか、私は負けたのか」
美沙斗さんが負けを認めた?ということは、俺たちの以来は達成されたというのか。
「兄さん、大丈夫か?」
「あ、ああ……」
瀕死まではいかないもののボロボロの兄さんに近寄り針を打っていく。
「負けちゃったね」
「そうか、水樹も」
「強かったよ」
「こっちもだ」
美沙斗さんのほうへは水樹さんが近寄って介抱している。
「お前も勝ったか」
「イカサマと切り札全部きって認めてくれたよ」
勝ったとは口が裂けてもいえない。勝たせて貰えたというのが正しいんだろうな。
「っ!?伏せて!」
「「「っ!?」」」
突如響く水樹さんの大声にそちらを向くと黒服の男がこちらに向かって手榴弾を投げていた。
俺はとっさに飛針を投げて手榴弾を入り口のほうへと弾くがボロボロの状態で撃ったから威力が低く完全には弾き飛ばせなかった。
その直後に吹き荒れる爆風。
「兄さん!?」
左手にあった兄さんの感触がなくなっていた。
気づけば兄さんは俺に覆いかぶさる形で爆風から守ってくれたが兄さんは逆にもろに食らう形となり窓から落ちていく。
「エア、セットアップ!」
《ゲットレディ》
「紅莉!?」
窓から落ちていく兄さんを追う形で俺も窓から飛び出す。
「恭也ーーーーっ!」
俺の視線の先には白い翼を生やしたフィアッセさんが兄さんを受け止めていた。
どこと無く嫌がっていたあの黒い翼ではなく、純白の翼を生やして兄さんを受け止めているフィアッセさん。
そういえば、フィリス先生に聞いたことある。HGSは現状治せる方法はないけど、その特性が変質する場合があると。
「とりあえず、地上に降りよう」
「紅莉!?」
近づいて、フィアッセさんに声をかけると驚かれる。まぁ、そうだよね空飛んでいるし。
「色々な説明は全て終わったらするよ」
さっきまで俺がいた場所を見ると窓から身を乗り出してこちらを見ている水樹さん。
美沙斗さんは恐らく体がまだ動かないんだろうな。
地上に降り立つととーさんたちまでやってきていた。
「紅莉!今のは……」
「フィアッセさんたちにも言ったけど全部終わって一息ついたらね」
一々説明するのも億劫なくらい俺たちは疲れきっている。
そのあと、誰もいないはずのステージ立ったフィアッセさんだったけど、何故か皆いて、俺たちだけのために歌を歌ってくれた。
心地よい歌と心に響く歌声を耳に俺は静かに落ちていった。
†久遠放送局†
久遠「紅莉は大丈夫かな?みなさんこんにちわ今日もやってきた久遠だよ」
フェイト「ゲストのフェイト・テスタロッサです」
久遠「ヒロイン候補パート2!」
フェイト「ふぇっ!?」
久遠「うん、女だけどフェイトはかわいいね。さて、今日は話を振り返るんではなくて番宣だよ」
フェイト「えっと……雨期様のやっているチートじゃ済まないでコラボをしてもらいました」
久遠「紅莉の全力と雨期様の描く一条要のガチバトルぜひ見てね」
フェイトは「では、次回もお楽しみにしてください。フェイト・テスタロッサと」
久遠「久遠がお送りしたよ」