「んじゃ、ロードワーク行ってくるね」
「気をつけるのよ。間違っても車に轢かれそうになって壊さないように」
「母さんと一緒にしないで!?」
母さんのボケとも素ともつかない注意にツッコミを返してから家をでる。海鳴に帰ってきてからというもの、ロードワークは既に日課となっている
母さん曰く、まだ体が小さい俺にあまり負担はかけられないので主に足腰の鍛錬と武器の振り方が主となっている
といっても、刀の振り方なんて千差万別だとかいってもっぱら母さんに打ち込みしているだけだけど…
「ハッハッ…ん?」
「グス」
短く息を吐きながら町内をランニングをしているとなにやらすすり泣くような声が聞こえてきた
「どこだ?」
辺りを見回しても公園などもないし、民家に囲まれているからわからん…
「ひっく…」
「ここか?」
「ひぅっ!?だ、だれ…」
家で一人でいたら急に寂しくなってないちゃっていたら突如誰かの声が聞こえたので顔を上げてみるとそこにはわたしと変わらないくらいの男の子がいた
「勝手に上がりこんでごめんな。それより、何で泣いているんだ?」
男の子は私に謝りながらこっちによってきた
「……」
「喋りたくない、か」
私の隣まで来て座り込む
「まぁ、行き成り表れた知らん奴に言いたくは無いか」
「そうじゃないの…」
「ん?」
「なんで、泣いていたか良くわかんないの…」
「んん?」
なんか、男の子が不思議そうな顔でこっちを見つめてきた
なんで泣いているかわかんない、か
「両親に怒られたわけじゃないんだよな?」
とりあえず確認かな?縁側で泣いているっていうのに両親が近くにいないし
「ちがうの…」
「んじゃ、どうした?言ったほうが楽になったりするぞ?」
「…おかーさんは仕事…」
「んじゃ、親父さんは?」
「…お父さんは病院」
「病気かなんかか?」
「ううん…」
ふむ、何となくだけど思い出しそうな…
「ひとりなんだなって思ったら…」
「兄弟は?」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんもなんかしゅぎょーとか言っていた…」
修行ねぇ、こんな小さい子を放っておいて?
「とりあえず、誰か帰ってくるまでいてやるから泣くなよ。な?」
「どうして…?」
「う~む、どうしてって言われてもねぇ…」
ぶっちゃけ理由らしい理由なんて無いんだよね。一ついえるなら修行をサボれるからかな?けど、それはこの子に言っても意味無いし
「それにしてもでっかい家だな。あっちにあるのは道場か?」
うちにもあるが、それに負けず劣らずって感じだ。うちの場合は若干非合法に部屋増やしているらしいけど
「ありがと…」
小さな消え入りそうな声でこの子がお礼を言うので頭を撫でてそこから庭を眺める
いやぁ、母さんに連れられて世界をあちこち歩き回ったり、こっちに帰ってきてからは修行漬けだったからこんな風にノンビリするのは久々な気がするな
陽気もよくてぽかぽかと体に当たる日光が気持ちいい…
「おい、おい起きろ」
「う、うに?」
なんか呼ばれてるような声が聞こえ閉じていた目を開ける。ありゃりゃ、いつの間にか眠っちゃったか
ここ最近ずっと動いていたせいで疲れが溜まっていたのかな?
「おい、お前は誰だ?」
改めて起き上がりまわりを見てみると俺の目の前には木刀を構えている黒髪の少年と少女
少女のほうはやや少年の影に隠れるような場所にいるが此方をしっかりと捉えている
「てか、ここどこだ?」
寝起きの頭でまだすっきりとしない。寝てしまったのはなんでだっけ?理由は分かるが…
「人の家に勝手に上がりこんで図々しいな」
「人の家?」
………はっ!思い出した
「すいませんでした。って、やけに右肩が重いな」
さっきから右肩に重さがあってみてみるとそこには
「うにゃ…」
すやすやと眠り込んでいる少女が服の袖を掴んでいた…って、そういやそうだったな
「それで、お前はなんでこんな所にいるんだ?こんなに暗くなるまで」
「暗く?」
視線を外して外を見てみればすっかり外は真っ暗になっていた
「まずっ!?」
「おい!質問に答えろ!」
「ちょっと、ごめんなさい!いずれきちんとお話するんで少し待ってください!」
こんな時間まで寝ているなんてっ!?何時間寝ていたんだ俺は!?
「ふざけるな!人の妹の傍に知らない奴がいたら誰だって驚くだろ!」
「恭ちゃん…」
んなこと言われなくてもわかっているけど、そんなことよりも…
「うにゃ…ん、んん…」
俺と少年がやり取りをしていたら、俺の服を掴んでいた少女が目が覚めたようである
「あ、おはよー」
なんともノンビリな挨拶をしてくる少女が俺の前にいる二人に気がついたようで、ついでと言う感じで挨拶をした
「あ、お兄ちゃんとお姉ちゃんお帰りー」
この二人がさっき話しに出ていた修行をしているという兄妹か
「おい、なのは。こいつはなんなんだ?」
なのは…って、まさか…
「えっとね、う~ん、お友達だよ」
「なのは、お友達っていつできたの?」
「さっき」
一緒に寝ただけの奴をお友達とかこの子凄いな
「おい、お前なのはに何を吹き込んだ」
「俺が悪決定!?」
さっきから木刀を突きつけられてあまり動けないからって
そんなことを思っていたら突如空気が重くなった
「うっ!」
「な、なんだ!?」
どうやらこの少年もこの異様な空気に気がついたようだ
「紅莉、こんなところにいたのか」
武人モードの母さん光臨!
「いや、その…」
「修行をサボって何をしているかと思えば…」
ギロリと俺を睨む。隣の子にはどうやら殺気が当たってないのか平然としているが…
「な、なんだあんたは!?」
少年が母さんに食って掛かるが、やめておけ絶対碌なことにならないから
「ま、まって!」
「ん?」
「おまっ!」
母さんがこの子の兄に向かって動こうとしたらこの子が静止をかけた
「な、なのはが泣いていたらこの子が来てくれたの!お兄ちゃんは何もやってないから!」
す、すげぇ…武人モードの母さんに臆することなく向かって言っている
「お兄ちゃんも!この子がなのはを心配してくれて喋っていたら眠くなっちゃっただけなの!」
「うぐっ」
なのは(確定)が兄…恐らく恭ちゃんと言われていることから恭也と思われるに強く言うと恭也が軽くのけぞる
「なにがどうなってんだ?」
「君が原因だと思うよ?」
何となく蚊帳の外の気分で呟いたら――なのは、恭也ときたらこの子は恐らく美由希だと思う――美由希にツッコミを入れられた
「兎に角状況の整理をしましょうか」
いつの間にか母さんの武人モードが切れて普段の母さんに変わった
行き成り雰囲気が変わったもんだから恭也と美由希は驚いているがまぁ、しょうがないよね
「つまり、紅莉はこの子の泣き声が聞こえてそれで行ってみたら案の定と?」
「うん」
「んで、そっちの子は鍛錬から帰ってきたら見知らぬ男の子が妹の傍で寝ていたので真相を確かめようと?」
「はい」
なのはの家に上げられてから、状況整理と言うことになりこうして話しているわけである
「ただいまー。お客さんきているの?」
そして、タイミングいいのか悪いのか玄関から女性の声が聞こえてきた
時計を見てみると19時になっているから当然と言えば当然か
「お邪魔しています」
「えっと…」
居間に入ってきたのはなのはと同じような栗色の髪色の綺麗な女性だ
「おかーさん」
なのはは嬉しそうに母親のほうに駆けていく
「ああ、少しいざこざがありまして勝手ながら上がらせて頂いています」
「あっ、いえ。なんのお構いもしませんで…それで、いざこざとは?」
なのはを脇に抱きながら此方に近寄ってくる
「ええ、なんでもうちの息子がお宅の娘さん…えっと…」
そういや、自己紹介していなかったな
「なのはです」
「ありがとう。なのはちゃんが泣いているところを見たようで、心配になり一緒にいたようで
私は息子が時間になっても帰ってこなく心配になって探していたら、そちらの息子さんとなにやら険悪な雰囲気になっていて真相の究明をしようとしていた所です
あ、申し遅れました。私は緋凰橙璃と申します。こちらが息子の」
母さんからの目配せをみて姿勢を正す
「緋凰紅莉です」
自己紹介をしながら頭を下げる
「あ、私は高町桃子といいます」
「…高町恭也です」
「…高町美由希です」
「高町なのはです」
各々自己紹介を済ませ、改めて席に着く
「それで、なのはが泣いていたというけど…」
桃子さんがなのはをチラリと窺うとなのははばつの悪そうな顔になる
「なんでも、一人ぼっちだというのを改めて思ったら悲しくなってしまったようで」
なのはが何も言わないから俺が説明をする
「そんで、泣き止むまで一緒にいてやると偉いことを言ったんですが…
お昼の陽気と普段の疲れでつい眠ってしまったようで…
恐らくですけど俺が横で眠っているのをみて眠くなったんではないでしょうか?」
「なのは…」
「ち、違うの!いつもは大丈夫だよ!」
桃子さんがなのはに正面から向き合うとなのはは身振り手振りを使いながら必死に強がる
俺と言う存在を除けばこの歳の子供がこんなに強がれるはず無いよなぁ
「ごめんね、ごめんね」
優しく抱きとめながらなのはに謝る桃子さんになのはの瞳は次第に潤んでいき遂には大声をあげて泣き出してしまった
「大変お見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした」
「いえいえ。家族は大事にしたほうがいいですよ」
よく言うよ
「なにか?」
「なんでもないです!」
くっ、勘が鋭い母さんに滅多なことは考えられないと言うことか
「何も言わないのをいいことに少し自分の家族のことをないがしろにしていたのかもしれません…」
「耳が痛いですね」
母さんも負けず劣らずなのは自覚しているのか苦笑いしている
「ところでそちらの恭也君でしたっけ?膝怪我していますね」
「何故それをっ!?」
「重心が極端に左よりになっているのと右足の動きが悪いわよ。足首ならもう少し別のバランスになるし
それに、体の動かし方がスポーツじゃなくて武道…それも武術の体ね」
母さんが次々と言っていくのを唖然として聞き入る高町一家。頼むからそのまま黙っていてください
「何かやっているのでしょ?」
「父さんが残した武術を」
「よかったら教えてもらえないかしら?」
恭也さんが少し考えてから何かを決めたように姿勢を正した…ああ、止められなかったか
「小太刀二刀御神流です」
「御神流ですって?」
ゆらりと母さんの雰囲気が変わる
「高町さん」
「あ、桃子でいいですよ。それで、どうしました?」
「では、桃子さんと。私のことは橙璃と呼んで下さい。で、桃子さん。桃子さんは御神の血筋なのですか?高町というのは聞いたことないのですが」
「あ、いえ。主人が元々そちらの方だったのですが、私と結婚する時に婿入りしたもので」
母さんはなにやら考え込んでいるけど、もう俺にできることはない。後は流れに身を任せるさ…はは
「ねえ、恭也君。君の旧姓を教えてもらえる?」
「不破です」
「へ、へぇ、そう」
あ、母さんの口元が引くついている。出来るだけ笑顔を保とうとしているがかなり無理があるのが分かる
てか、恐らく全員気づいているだろうな。皆が皆怪訝な顔をしているし
「お父さんの名前教えてくれる?」
「高町士郎。旧姓は不破士郎です」
「そう…」
俯いた母さんの顔色が見えないのが逆に怖い!
「くそ、あいつがここに住んでいたなんて…いっそここで潰すか?…いやいや、子供や奥さんに罪はない…」
ちょっ!?物騒なことをブツブツと呟かないで!?マジで御神と何があったんだよ!!
「ところで、士郎はどこに?」
「えっと主人は…」
そうして、今度は桃子さん達が俯く
「おとーさんは病院に」
誰も答えなかった中、なのはが代表として答えた
「病院?あいつが病気をするのが想像できないんだけど」
「とーさんを知っているんですか?」
「まぁね。それで、どうして病院に?」
そのあと、恭也さんがぽつりぽつりと事情を説明して行った
「はぁ…相変わらずか。とりあえず、今日は遅いのでお暇させていただきます
明日辺りに病院に案内させてもらえますか?力になれると思いますよ」
「本当ですか!?」
「ええ。それに、こんな所で終わりにしたくないので」
いや、マジで何をやる気ですか母さん?あと、マジで何をやらかした高町父
「こちらです」
桃子さんに案内されて病室にはいるとそこにはベッドで横たわる男性がいた
「士郎」
母さんが士郎さんの名前を呟いて歩いて行く
「あんた、なにやっているのよ。末の娘を泣かせ、奥さんを泣かせ、息子は怪我が治っていなくて無茶させて」
ぐちぐちといいながらさらに近づいて行く
「とっとと目を覚ましなさい」
母さんが腕を振るった瞬間に大量の針が士郎さんに刺さった
「きゃぁっ!?」
桃子さんが悲鳴を上げる。そりゃ、人間サボテンとはこの事か位に刺さっているので悲鳴をあげるよな
「安心して桃子さん。人間にある活性化を施す部分に針を打ち込んだだけよ」
「…母さん、こんなにないだろ?」
「残りは嫌味だけよ」
さらりと言ってのける母さんに痺れる憧れるぅっ!
「うっ…」
「士郎さん!」
士郎さんから突如うめき声に似た声を上げると桃子さんが直ぐに近づいて行く
「といっても、まだ目が覚めるのは先になるわ。一週間おきにうちにくるから」
母さんはもうどうでもいいのか病室を出て行こうとするが
「母さん、せめて針を回収してやってくれ」
「忘れていたわ」
最後の最後でボケないでくれ
それから2ヵ月後に士郎さんは無事に目を覚まし、桃子さんを始め高町家の皆にとても感謝された
「ありがとう紅莉君」
特になのはが俺に対してお礼を言いまくってきたのだが、俺は何もやっちゃいないさ
話の都合上少し時系列を変えております