「いけね、読書感想文忘れてた」
夏休みの終わりも間近に迫ったある日に宿題のやり残しがないかを確認していたら、原稿用紙がするりと落ちて思い出した。
家に来ていた久遠が原稿用紙を足でぺしぺし叩いているけどやめさせる。破れたらどうするんだ。
若干久遠の不満そうな声を聞き流しながら部屋を出て美由希の部屋へと行く。
「美由希いるか?」
「どうしたの紅莉?」
扉をノックしながら尋ねると美由希が出てくる。
「いや、ちょっと本を借りに」
「ああ、読書感想文?」
本という単語で美由希は直ぐに思いついたようになるほどと頷く。
うちの中で美由希はかなり本の虫で乱読家なので色々な本を持っているためにこういう時には便利だと思ったのだが……
「見事に続き物ばかりだな」
「短編なんかはこの前友達に貸しちゃったからねー」
どうするかなぁ、流石に長編の続き物の感想文は……いっそのこと中途半端にして先生の意欲を燃やすか?
「なんだったら図書館でも行って見て来れば?」
下らない野望を企んでいたら美由希が苦笑い気味に言って来る。
「そうだな……行く機会はないと思っていたんだがまぁありか」
「紅莉って読書とか普通にするのに何で行こうとしないんだろうね」
この家だと美由希やフィアッセさん(現在フィアッセさんはティオレさんについて世界を回っているからいないけど)などが本を買ってきて読み終わったのを読ませて貰ったりするけど、自分からすすんでは読まない。
根本的に好きとかではないんだろうな。
「私も行こうかな?恭ちゃんも忍さんのところに行っちゃって暇だし」
何か多少憂いを帯びた顔をする美由希だがまだ諦めてなかったか貴様は。
「宿題は?」
「うん、紅莉のおかげで全部終わりました」
「自分で出来るようになれ」
「紅莉がおかしいんだからね?」
けど、なのはもわりとやり方がわかれば解けるあたりあいつも理数系に強いよな……
「あ、そうだ。序といっちゃなんだけど、帰りにテーピングやシップとかも買って帰りたいんだけど付き合ってもらえる?」
「いいよー」
美由希の提案を受けて出かける支度をした俺達は図書館へと向かった。
「う~ん、何があるかな?」
図書館についてぶらぶらと物色を開始したのだが、逆に沢山あるとどれを選べばいいのか分からなくなる。
いっそのこと聖書あたりの感想文でもかいてやろうかとも思ったのだが、面白くもへったくれもないからやめておこう。
「もうちょい。がんばれ私」
これでもないあれでもないと見ながらぶらぶらと歩いていたら前の本棚の裏側から声が聞こえてきたので見に行ってみると車椅子に座った少女が懸命に手を伸ばして本棚から本を取ろうとしている。
取ろうとしているが、悲しいかな身長が足らずに何とか目的の棚の下側に指が触れる程度だ。
年齢的には同年代くらいか?そんな子が車椅子に乗っているというのも怪訝には思うがそこは触れないのが紳士だ。
とりあえず、取ってやろうとして近づき指の向きから考えてこれかなと思ったやつを取ってやる。
「あ」
その声には幾分かの落胆の色が見える。恐らくはとられたと思ったのだろう。
「これか?」
「へ?」
手に取った本を車椅子の少女に差し出してやるとなにやら間抜けな声を出す少女。
「これが、欲しかったんだろ?」
「え、あ、おおきに…」
独特のイントネーション。関西方面の方言を使う少女を改めてみた瞬間に衝撃が走った。
「レンちゃん!いつの間に2Pキャラという能力を手に入れた!?」
目の前にいる少女はレンちゃんの髪の色を茶髪に変えただけの少女である。
「誰が青白巫女やねん!」
ズビシとツッコミが入る。
「だったら、うっかり赤い悪m……」
「それは中の人や!」
再びツッコミが入る。てか、ネタが分かるのか!
「「同士よ!」」
数瞬見つめあった後、俺達はお互いに手を差し出してがっちりと握手を交わす。
「いやぁ、いい感じでツッコミを入れてくれてありがとう。俺の周りだと乗ってくる奴いなくてねぇ」
大体がネタが分からずに首を傾げるか、スルーするか、ボケ殺しをしてくるかのどれかだし。
「それは私もや。私も基本はボケなんやけど、たまにはツッコミを入れたいんよ。けど、周りは天然ばっかでな~。それに、私がボケても意味が分からずにスルーされんねん」
なるほど、現状は俺と似たような感じなのか。
「あと、一人家族っちゅうわけじゃないけど芸人気質のやつがおんねんけど、そいつはどっちかってゆーと弄られキャラやし」
ああ、芸人タイプでも色々いるからなぁ……特に最後の奴は徹底的に弄ることはあっても漫才は出来ないし。
それにしても2Pキャラでよくそっちに持っていったな。普通は格ゲーにいくんだがなぁ……久遠が猫好きの理由と似たようなもんか。
あと、マジで2Pキャラにしか見えないんだよね。背丈はまだレンちゃんのが高いけどこいつが中学入ったら同じくらいになるんじゃないかな?
それに口調などもそっくりで隣に並べたらさぞ凄そうだ。
「おーい、紅莉。そろそろ行くよー?今日、セールだったの忘れてた」
「今いくー。んじゃ、またな」
「うん、君とはまた話したいわ。あと、これお勧めやで?」
そういって、差し出すのはさっき取ってやった本である。
「いいのか?読みたかったんだろ?」
「いいねん。何度も読んでいるし、またあったから借りようかなって思ったぐらいやしね」
「ん、それじゃこれにするか」
車椅子少女からの本を手にとって受付に持って行き貸し出しの手続きをして美由希と帰る。
家に帰ってからタイトルを確認すると。
「ドキッ☆秘密だらけの人妻魔法少女?」
ツッコミどころが多すぎるタイトルに頭を悩ませつつ読んでみると爆笑ものであり家族に心配されたのは余談である。
そういや、あの子の名前聞き忘れたな……
「9月はまだ暑いなー」
「残暑って言葉があるくらいだからね」
学校も始まり、少したったけどまだまだ暑い日が続く。
読書感想文は案の定と言うかなんというか、兎に角再提出を食らった。あれ面白かったんだけどなぁ……
なんか、どっかの国のホムンクルスだかなんかの一族が外から別の人間をいれて何かをしようとしたときに、どこからかはっちゃけ爺さんがやってきてそのうちの外の人間の妻になにやら変な杖を渡したと言う話から始まった。
秘密はどこに?って感じだがそこから杖に翻弄されながらなにやらノリノリでいろんなことをしでかす人妻とそれを唖然と見上げる夫の心情などが面白い感じに描かれていた。
てか、どっかで聞いた話がごっちゃな内容になっている気がしてならない。
そのあと、美由希が貸してくれた普通の本の感想文を書いて提出をした。
「ん?なのは、お前少し髪伸びたか?」
「ほにゃ?そうかな?」
飯を食いながら色々と雑談しているわけだがふと見てみるとなのはの髪が少し伸びている感じがする。
「あんた、恋人か何か?」
「そうなの紅莉君!?」
アリサの一言によりすずかが食って掛かってくる。あー頼むから襟を持って前後に揺らさんでくれ。飯がうまく食えん。
「とりあーえーず、そうーじゃーないーからぁ……」
弁明しようにも揺らされ続けているために上手く言葉が続かず変な風に間延びしてふざけている感じになってしまう。
「う~ん、どうなんだろ?」
「あんたもマイペースね」
毛先を見ながら呟くなのはに呆れてため息を漏らすアリサ。そんな暇があるなら未だに追求を続けてくるすずかを何とかしてくれ。
「それにしても、アリサ。なんでそんな結論になったし」
「いや、髪の毛の長さが変わったなんて普通気づかないでしょ?」
「そうだよ!」
と、言われてもなぁ……小さい頃から一緒にいるからなんとなく分かるんだよなぁ。
「まぁ、観察力は結構あるほうだと自負している」
相手の動きを行動前に把握しなければ即死に繋がるような鍛錬をずっと続けてきたせいかそういったちょっとした違いってのはわりと分かる。
それにうちは女系一家だから、わりと気遣いが多いのも事実だ。
例えば桃かーさんが髪を切ったのを気づいて欲しいのかとーさんの前でやたらと髪を掻き揚げたりする仕草をするのだが、とーさんは気づかずに不機嫌になったりなど、色々と家に女性が多い高町家では苦労するのだ。
「どうする?桃かーさんみたいに伸ばすか?」
「うーん。お母さんの髪型は憧れるけどぉ……」
ツインテを解いて手櫛で軽くすいて髪をみてもやはり少し伸びている。
桃かーさんも割と長く伸ばしていて結構ケアが大変みたいだ。
前に髪質にいい針を打ってやったら、その後にフィアッセさんや美由希、はては何処で聞きつけたのかフィリス先生にも打ったな。
「それじゃ、前ぐらいまで切るか?」
切るというよりは整えるといったほうが正しいか。
このまま伸ばすにしろ何にしろ、そのままってのは避けたほうがいいから毛先は整えてやったほうがいいし。
「切ろうかな」
「んじゃ、今日やっちまうか。塾はなかったよな?」
「うん。お願いします」
なのはの髪を切ることに決まった後再びツインテに戻してやり、再び座ったのだがアリサとすずかの二人がなんか信じられないものを見るような目で見てくる。
「ねえ、なのは」
「どうしたの?」
「あんた、紅莉に髪を切ってもらっているの?」
「へ?あ、うん」
アリサの質問にキョトンとして頷くなのは。
「あんた、なんでそんなこと出来るのよ」
「きっかけは確か……自分の髪が伸びてきたなーと感じて切りに行くのめんどくさくてためしに切ったはずだな」
床屋にしろ美容院にしろ切りにいくと待たされたりしてめんどくさくて仕方がない。
それならいっそ自分で切ろうと思ってやってみたんだよな。
まぁ、刃物の扱い自体はそれなりに心得があるし一緒だろと思ってやってみたら思いのほか上手くいったんだったな。
高町家じゃ自分を始め、とーさんや兄さん、晶なんかも切っている。晶なんかは美容院にでもいかせるかと思わないでもないけどまだ高校生だし見逃している。
逆に桃かーさんやフィアッセさんは髪が長い分、トリートメントとかをやる必要があるために美容院だ。
美由希やレンちゃんも基本は美容院だが、金が底をつきかけるとお願いしてくる程度だ。
なのはの場合はまだまだ若いのでそこらへんの心配はいらない。
「あんた、無駄に才能あるわね」
「無駄言うなし」
無駄な才能だけど。
後必要なのは鏡映りの自分の手をきちんと動かせれば問題はない。
「今日は特に習い事もないし、見に行ってもいい?」
「かまわんが、見ていても面白いもんじゃないぞ?」
「本当にいい腕なら切らせて上げてもいいわよ」
「なにそのツンデレ」
その後、わーぎゃー騒ぐアリサをスルーしながら今日の予定を決めた。
「本当に切っているわね」
「しかも、動きに迷いがないよ」
「紅莉君に切ってもらうと直ぐに終わるから楽なんだー」
美容院だと無駄に30分とかかかるけど、俺の場合は所要時間は15分程度で終わる。
まぁ、がっつり切るなら30分は切るだろうけど。
てか、美容院にしろ、床屋にしろ一々左右のバランスを確認する作業に無駄を感じる。
こんなのパッと見でわかるもんだろ。
「いやいやいや、分からないわよ」
「こんど、お願いしていい?」
その後、なのはの髪を切り終えかつ、風呂に入らせた後翠屋でお茶をして解散となった。
†久遠放送局†
久遠「ハローエブリワン!久遠がやってきたよ!今回はほのぼのをお送りしたよ。あと、最近ネタに走れなかった分、ここでネタを入れてきたんだよ」
アリサ「てか、私の紹介をしなさいよ」
久遠「はいはい、ツンデレ乙」
アリサ「本編と性格変わりすぎでしょ……」
久遠「ここでははっちゃけたもの勝ちだよ。」
アリサ「それにしても、紅莉はなんでああも多才なの?」
久遠「多才というよりも、あれは単純に刀を使っている感覚の延長なんだって。だから多才というわけじゃないよ?」
アリサ「なんでもこじつけね……」
久遠「わりと脳筋だからね。さて、次回からA'sに入るよ」
アリサ「やっと空白期は終了ね」
久遠「本当はもう一話はさむ予定だったんだけど、作者が本編にいれたほうがわりとやりやすいと思ったんだって」
アリサ「ふ~ん。残りのとらハというと……」
久遠「ストップだよ!それはここじゃ語っちゃダメだよ。それじゃ、次回もお楽しみにね!」
アリサ「そういえば。2Pキャラって一体……」
久遠「あれは、あのネタを使うためだけの特別出演キャラだよ」
2Pキャラ「なんやて!?」