第33話
「それじゃ、今日のラスト、シュートコントロールやってみるね」
《分かりました》
「シュート!」
まだ、夜も明けてすぐの早朝になのははデバイスを介さないで一人で誘導弾の制御を行っている。
「ラスト!」
空き缶を使ったシュートコントロールは100を越えた後最後とばかりになのははゴミ箱へと狙いを定めて弾いた。
「エア」
《イエス、加速発動》
弾いた空き缶は悲しいことに上手く入らずに淵にあたり落ちようとしてしまうのを加速を使って地面に落ちる前に拾い上げる。
「あう」
「最後の最後で集中力が切れたか?」
缶をゴミ箱に捨てながらなのはに聞いてみる。
「う~ん、あと少しだったのに」
「ま、コントロール自体は問題なかったんじゃないのか?」
《はい。この数ヶ月で前にもましてマスターの誘導弾制御はかなり上達しました》
なのはではなくレイジングハートに聞いてみるとなにやら誇らしく報告してくれる。
「まぁ、あれだけ集中できれば動きながらでもある程度できるだろ」
「紅莉君が言うような感じにはまだまだだよ~」
「それでも流石とーさんの子だよ。センスという部分では恐らく美由希はおろか兄さんに匹敵するぞ」
天才っているんだねぇ。多少コツを教えてやるだけでどんどん吸収していく。
なまじまっさらな状態だったせいか余計に吸収率が高いし。
こと魔法だけの戦闘じゃ確実に勝てないだろうな。
「それじゃ、俺は兄さん達に合流してくるからばれるなよ?」
「はーい」
なのはと分かれて兄さん達の鍛錬に戻っていく。
†――――†
《マスター、結界が発動されました》
夜の鍛錬でエアからの報告が入る。
「見えている」
一体街中で結界なんてなんなんだ?
『なのは聞こえるか?おーい、なのはー?』
俺がいる場所よりうちのほうが近い位置にあるためなのはに確認を取ろうと念話を送ってみるが反応がない。
「もしかしたら、なのはさんはあの中にいるのでは?」
リニスが横から可能性をあげる。
《可能性は大ですね。あれは封鎖結界なので中との通信は出来ないようです》
「そうか」
まぁ、このままここで考えていても仕方ないな。
「エア、セットアップ」
《ゲットレディ》
「久遠も行く」
セットアップして飛び出そうとしたら後ろから久遠が腰に手を回してくる。
「ん、分かった。ただ、リニスについてれ」
「わかった」
リニスに久遠を預けて飛び上がる。現在は夜ということで視認されづらいだろうから一気に結界内まで飛んだ。
「でぇぇぇいっ!」
何とか結果以内に入るとそこではなのはが赤い少女に吹き飛ばされた場面であった。
†――――†
「なんだテメエは!」
突然の出来事だった。突如家を含む広域に結界が展開されて何事かと思って外に出てみたら赤いゴスロリっぽいバリアジャケットを着た子が襲ってきた。
話をしようにも聞いてくれなく、ただ黙ってやられるわけにはいかないと急いでセットアップして反撃したんだけど、ディバインバスターを使った後、彼女のデバイスが変化したと思ったら想像以上の攻撃にレイジングハートを砕かれて吹き飛ばされてしまった。
追撃をするつもりだったのか、体勢が整っていない私に攻撃をしかけてきたのだけど……
「人様の家族に手を出しといてその態度か?」
突如現れた紅莉君に彼女は急停止して紅莉君を睨む。
紅莉君は飄々と答えている感じがするのだけど、その本質は怒っている。しかも、私が見たこと無いくらいに。
「そんなの知るか!」
赤い子が紅莉君に持っていたデバイスで攻撃するけど空を切る。
「へ?」
「動きが直線的過ぎる。避けてくれと言っているのか?」
「なっ!?……がっ!?」
攻撃が空振りしたことに驚いたのか止まってしまったのを紅莉君が見逃すわけ無く、無防備なその体に刀を叩き込んでビル外まで吹き飛ばした。
「リニス、なのはを頼む」
「はい」
気づけばリニスさんが横にまできていて私を守るように立っている。
「遅れて悪かったな。まずはアイツを片付けてくるから待っていてくれ」
少しだけこちらに振り向いて、いつもの紅莉君の顔で外まで飛んでいった。
「痛いところはありますか?」
「えっと、その」
ビルに突っ込んだけど壁に当たる前にレイジングハートがプロテクションを張ってくれたからそこまで酷いダメージじゃない。
むしろ、私よりレイジングハートのほうがダメージはデカイ。
「ごめんね、レイジングハート」
《オー…ライ……マス…ター》
損傷しているからノイズ交じりの声で答えるレイジングハート。また、私はこの子を……
「しかし、まさかベルカ式が相手とは」
「ベルカ式?」
リニスさんの言葉の中に気になる単語があり、その言葉を繰り返すと。
「「なのは!」」
転送魔法陣からユーノ君とそして……
「フェイトちゃん!?」
そう、現れたのはフェイトちゃんだった。どうして彼女がここに……
「うわぁ……」
理由を尋ねようとフェイトちゃんに声をかけようとしたら何かユーノ君のドン引きしているような声が聞こえてきた。
「大丈夫なのは!?」
「うん、なんとか」
とりあえず、リニスさんに手を借りてフェイトちゃんと一緒に外を見てみると……
「「うわぁ……」」
フェイトちゃんも同じ気持ちなのか同じような言葉を口に出していた。
†――――†
「てめえ!」
なのはをリニスに任せて外に出るとさっきのゴスロリ娘が射殺さんとばかりに目を吊り上げて睨んでくる。
「追撃する必要はあったのか?」
「うるせぇ!」
ったく、さっきまでキレそうだったのに、ここまで人の話を聞こうとしない奴がいると逆に冷めてくるな。
再びハンマーを振りかざしてこちらに突撃してくるので
「――緋凰流・奥義【咬牙】」
「がっ!」
その胸部へとカウンターで刺突をぶち込む。あっちは真っ直ぐに突っ込んでくるだけだったのでカウンターが楽に決まり、かつ元々貫通力と一点威力が高い奥義ということと、更に相手の速度が合わさりとんでもない威力になっただろうな。
ビルを何個か貫通したときふと誰かが現れて彼女を受け止めた……援軍か。
まぁ、こっちも援軍が到着したし問題ないだろう。
「なに!?」
「ぬるい。不意打ちしたきゃ殺気を隠せ」
「がっ!?」
横合いから誰かが切りかかってきたが、気配を察知できる俺に取っちゃ不意打ちにならんわけで、幻武で避けた後思いっきり蹴散らす。
よく見てみるとそいつはピンクの髪をポニテにした女性であった。うむ、うちの女性人とは違った美人系だな。
うちの女性人はみな可愛い系だし。桃かーさんなんて今年で3○才なのにいまだに可愛い感じだ。
っと、思考が逸れてしまった。今は戦いに集中しなきゃ。
「くっ、一体何が」
ポニテ剣士がさっきのことに驚いて唸っている。
初見の奴に幻武は効果的でいいな。まぁ、突破方法は腐るほどあるけど。
「さて、お前らの選択肢は俺に倒され連れて行かれるのと自分から投降するかのどちらかだ。それ以外の選択肢は認めない」
「だったら、あたし等でテメエをぶっ飛ばせばいいだろうが!」
赤い少女が俺を囲むようにして言って来る。更にもう一人、マッシブな犬耳の男がいるが使い魔か?
「ほう、出来るのか?」
「ぐっ……」
軽く睨んでやると一歩下がる。どうやら頭に上っていた血は落ち着いたようで直ぐに突っ込んでこなかった。後は、さっきのダメージが効いているのか動きが多少ぎこちない。
てか、咬牙を食らってその程度か。なのは以上に硬いな。
「卑怯だなんだ言うつもりはない。かかってこい、まとめて潰してやる。そして緋凰の名をその身に刻め」
俺の言葉が終わると同時に三方向からの攻撃が始まるが、全員が近接系なのか突っ込んでくる。俺に取っちゃ近接系なんぞカモでしかない。
「消えた!?」
「どこだ!」
「固まるな離れろ!」
青いマッシブなわんころが指示を出すが遅い。
「アキシオン・ブレイカー、デッド・エンド・スラッシュ!」
あいつ等より更に上空から鞘にチャージしていた魔力を刀身に吸わせて葬刃を発動すると全員巻き込んで地上へと叩き付けた。
幻武の三段階目もわりと効果的に使えるようになってきたな。
水樹さんとの戦いからわりとコツを掴み始めて、兄さんというかなりの高位の剣士と遣り合っているおかげで上達が身にしみて分かる。
『誰かあの結界を突破できる方法は分かるか?』
『え、えっと……』
念話で結界の突破方法を尋ねてみたんだがなにやらキョドっているな、一体どうしたんだ?
『紅莉いいかい?』
『ユーノか、挨拶は後にするとして、それで?』
『うん、あの結界は侵入もそうなんだけど脱出はもっと難しい』
『つまり?』
『うん、術者が解除するか中から無理やり破壊するしか方法はない』
ユーノの言葉に納得する。確かに入るのも苦労したんだ。しかも外との通信手段を遮断するほどの結界だ、出るのは早々のことでは難しいか。
「紅莉」
横から声がかけられたのでそちらを向くとフェイトがやってきていた。
「ユーノにも言ったが挨拶は後でな。それでどうしてこっちに?」
「うん、なのはがブレイカーで破壊するからこっちを手伝ってあげてって」
「あいつは……」
手で顔を覆って頭を振る。確かにダメージは少ないかもしれないけど、それでも受けているんだ少しは大人しくしていろよな。
「それに紅莉ってバインドできないんだよね?それでどうやってあの人たちを連れて行こうとしたの?」
「意識を完全に刈り取ったあと針打って動けば激痛が襲うようにしようかと」
俺の答えにフェイトが引いている。まぁ、それは最終手段で俺には便利なリニスがいてくれるのでそっちにお願いしただろうけど。
「って、フェイト離れろ!」
「きゃっ!」
一緒に降りていく途中に猛烈に嫌な感じがしてフェイトを突き飛ばすと同時になにかがこちらに迫ってきたのを何とか刀で防ぐ。
「紫電一閃!」
《ファイガ剣》
刀身から薬莢が飛び出たと思ったら剣が炎を纏い威力を増す。
「でりゃぁっ!」
「ぐっ!」
勢いに負けてそのまま吹き飛ばされてしまった。
「紅莉!」
「いかせん」
紅莉と共になのはを襲った人たちを拘束しようとしていたら突如紅莉に突き飛ばされて何事かと思ったら、まだ仲間がいたのか突如現れた人によって紅莉は吹き飛ばされてしまった。
紅莉の元へと向かおうとしたら、剣を手にもつ女性が私の行く道を塞ぐ。
こちらに来る前にリニスに軽く注意として攻撃には気をつけろと言われたのでデバイスを持つ手に力が入る。
「シグナム無事か」
「クロードか。ザフィーラがとっさに庇ってくれたお陰でな。ただ、ヴィータはその前にかなりダメージを受けていたからダメそうだ」
「そうか」
シグナム、クロード。ヴィータ。これはこの人たちの名前だろう。
そして、クロードと呼ばれた人。この人はこの中でも別格だ。
その身から湧き出す魔力もそうなのだけど、あのデバイスから感じる不思議な魔力。そして、不意打ちとはいえ紅莉を吹き飛ばした威力の一撃。
全てを見せてないと分かっているけど、現状の私が二人を相手にするのは厳しい。
「クロード、奴を頼む。こいつは私が相手をする」
「珍しいな、お前がそういうなんて」
「正直に言えば私もあの男と戦いたい。が、現状を考えると可能性が高いのはこっちだ」
「分かった頼むぞ」
「いかせません」
クロードと呼ばれた少年が紅莉も元へと行こうとしたので止めようと動こうとしたけどシグナムと呼ばれた女性が立ちはだかる。
「悪いが、一撃で決めさせてもらう!レヴァンティン、カートリッジロード!」
《エクスプロージョン》
シグナムがデバイスに声をかけると同時に薬莢が飛び出し、刀身に炎が纏われる。
私と同じ変換資質!それも炎熱!
「紫電一閃!」
「くっ!」
咄嗟にシールドを張って防いだけど。
「きゃぁっ!」
シールドごとデバイスもろとも切り裂かれ、私は落ちてしまった。
「おーいってぇ」
《不意打ちとは言え、マスターを吹き飛ばしますか》
ビルの瓦礫を蹴飛ばして起き上がるとエアの言葉を頷いて肯定する。
かなりの質量を持っていたのと、途中から激しい炎が纏われて一気に威力を増した感じだ。
「ここからが本番だ!」
ビルを抜けるとさっき俺を吹っ飛ばしたやつがそんなことを言いながら現れる。
「あ!」
「ぬ?」
俺を襲った男が驚きの声を上げる間にそいつをよく見る。
上下を同じ色で揃え、左肩には肩当をつけ、そして手には身の丈を超え横幅も相当な大剣を携えている。髪はつんつんしている。そいつは………
「エガか」
「ちょーーーーっ!」
右手を突き出し腰を引くそのポーズは間違うことなくお馴染みのあのポーズである。
間違いない、こいつはクラスメートの
「ここで何をやっているエガシラ」
「俺は
どうやら間違いじゃないようだな。
「バカか」
「はっ!?」
昔から何かに似ていると思ったけど、思い出した。こいつ、クラウドににていたんだな。
現在の姿格好を見ればはっきりと分かるが、学校の制服だけじゃそこまでには至らなかった。
「まあいい、お前もいれば話は分かりやすそうだ」
『紅莉君、準備できたよ!』
『分かった、ぶちかませ。それと同時にアイツを確保する』
なのはから報告を聞いてタイミングを計る。
勝負は一瞬、あいつが結界を破壊して注意がそれた瞬間だ。
そして、なのはがスターライトブレイカーを放とうとした瞬間、あいつの胸から手が出てきた。
「シャマルか!」
エガシラの言葉から考えるとまだ仲間がいたようだ。それにしても、あの光は……
《マスター!あれは、リンカーコアです!早急に対処を!》
「何?ちっ!」
エガシラはまだ余所見をしているので一気になのはの元へと向かおうとしたら。
「ぐぁっ!」
《マスター!》
なのはと同様に俺の胸からも手が出てくる。
「なんてな、ふん!」
『あぁぁぁぁぁぁぁっ!』
出てきた腕を思いっきりに握りつぶすと鈍い音を立てる。それと同時にどこかから女性の悲鳴が聞こえてくるが、戦闘時に罪悪感なんざ感じない。
「シャマル腕を戻せ!切り落とされるぞ!」
エガシラがどこかに叫ぶように言うと、落とす前に手を引っ込められてしまった。
「ちっ!」
エガシラが構え直すが
「悪いが、時間切れだ」
「スターライトブレイカー!」
ふらふらになりながらもなのはのブレイカーは発動され空へと一直線へと伸びていきそのまま突き破った。
夏の頃に練習して、チャージを伸ばすことによって威力と付加効果をつけたブレイカーは強固なこの結界すら破壊する。
「あとは、お前を捕らえるだけだ!」
「悪いが、逃げさせてもらう!」
エガシラに一気に近づこうとしたら周りが重くなる。
「グラビガ!」
「ぐっ」
エガシラがその言葉を口にした瞬間、俺は地上まで一気に落とされる。
《私相手に、重力。私相手に、重力………》
なんか、エアがぶつぶつ言っていて凄く怖いんだが……
重力結界から解き放たれると、そこにはさっきのやつ等はいなかった。
「逃したか」
『紅莉、いいか』
「よぉ、クロノ。悪いが回収よろしく」
モニターに映し出される顔に軽く手を上げてお願いすると俺達はアースラへと飛ばされた。
†久遠放送局†
久遠「いえー、出番がちょっとしかなくてディレクターを殴り飛ばしたい久遠だよ」
ユーノ「怖いよ!」
久遠「だって、一言だけだよ?リニスはもっと台詞あったのに」
ユーノ「まぁ、落ち着きなって」
久遠「くぅん……しょうがない。さて、今回は作者ことディレクターがずっと張っていた伏線の回収だよ」
ユーノ「伏線……ってあったっけ?」
久遠「正直、作者は意味無く人の名前は出さないよ?つまり、本編で名前が出る=今後も出番があるんだよ」
ユーノ「うわぁ、一言ていどかつネタだけだったのにね」
久遠「今後もネタキャラにされるかもだけどね。ただ、顔はFF7のクラウドそのものだけど」
ユーノ「あの顔でネタキャラとか」
久遠「それが、紅莉クオリティー。因みに、あだ名が決定してからあのポーズを紅莉が調教して教え込んだんだよ」
ユーノ「ああ、紅莉ってわりとそういうところあるから」
久遠「では、次回もお楽しみに」