魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第37話

 レンちゃんが倒れてしまった。聞けば元々レンちゃんは心臓が悪く、長時間の運動なんかも出来なかったようだ。

 

 思い当たる節は結構あった。鍛錬しているなぁと見ていたら直ぐにやめてしまったり、時折顔色が悪かったりなど。

 

 それに桃かーさんやとーさんがわりとレンちゃんのことをさりげなく気遣っていた場面など度々目にしていたはずだ。

 

 兄さんや美由希なんかからも話を聞いたのだが、小さい頃はレンちゃんは病弱で病院に入院していることが多かったようだ。

 

 手術すれば治るかもしれないと先生は言っていたのだが、レンちゃんはそれを拒否しているようである。

 

 俺の本音としては受けて欲しい。大切な家族がそんなリスキーな状態でいるなんて耐えられない。

 

 それは、皆も同じなのだがレンちゃんは頑なに受けてくれるとは言ってくれない。

 

 そんな状態が続くのかと思ったら突如晶が俺達の鍛錬場所までやってきて、土下座をしだした。

 

「俺を鍛えてくれ!」

 

 最初、晶がそんなことを言ってきて止まってしまった俺と美由希。兄さんは通常運転だったのか腕を組んで理由を尋ねた。

 

「もう、昔見たく御神流を教えてくれと言ってる訳じゃないんだ。ただ、俺はあいつを、あいつがあんな状態でいるなんて……

 それに、あいつがあんな弱っている状態なんて見たくないんだ!」

 

 何でも売り言葉に買い言葉みたいないつもの感じで喧嘩をふっかけたらしい。しかもだ、勝ったほうが負けたほうの言うことを聞くという。

 後は、何だかんだと言い合いながらもお互いのことが気になるんだろうな……家族だし当たり前か。

 

「時間が勝負なんだ。頼む俺に稽古を付けてくれ!」

 

 再び頭を下げる晶。その姿に兄さんはため息を一つ吐いた。

 

「美由希、紅莉。お前等も手伝ってもらうぞ」

 

「師匠!」

 

 晶の顔に喜びが浮かぶ、本来ならばどちらかに肩入れっていうのは避けたいところだけど、でも今回は話は別だな。

 

「んじゃ、まず俺がやりますか……晶構えて」

 

 刀を美由希に預けて構える。晶は最初に俺が出てくるとは思ってなかったのかやや驚いてる。

 

 てか、美由希!お前は刀抜いて恍惚とした表情をするな!この刀マニアが!

 

「晶……嘗めていたら痛いじゃすまないよ」

 

「おう!」

 

 どうやら俺の気迫が伝わったのか晶も確りと構える。

 

「レンちゃんは棍により中距離、八卦掌に似た拳法による近距離。果てはゼロ距離からの関節技と全ての距離を高次元で対応を出来る」

 

 まぁ、関節技はネタだろうけど、極め方がとても上手い。そういった、細かい力の使い方は恐らくうちの中でもトップだ。

 

「兄さん、合図」

 

「ああ。始め!」

 

「でりゃぁぁっ!」

 

 兄さんが合図をしたと同時に晶が向かってくる。射程まで近づき右腕を振ってきた。

 

 それを絡め取るように左手を突き出しところで弾かれてしまった。

 

「今のは……」

 

「流石に行き成りは難しいな」

 

 弾かれた手を振りながら再び構える。晶はどうやらさっきの一連の動きに警戒しているようだ。

 

「来ないなら……こっちから行くよ!」

 

「っ!」

 

 体勢を低くして一気に間合いに近づいていく。晶も流石はセンスの塊だけあってすぐさま足で攻撃をしてきたが、それを避けつつ拳を胸元に放つ。

 

「――緋凰流・奥義【螺衝】」

 

「があっ!?」

 

 胸元に触れた瞬間に思いっきり腕を捻ると晶は苦悶の声を上げながらその場に蹲る。

 

「がはっ、ごほっ!」

 

 酷くむせている晶の背中を摩っていると兄さんがやってきた。

 

「紅莉、今のは?」

 

「あの技?緋凰陽明流の技だよ」

 

 尋ねられたので素直に教えてあげる。

 

「そういえば、紅莉が使う流派って二種類あったっけ」

 

「そうだよ。つってもこっちは普段使いできないし、使う気も無いからそこそこの練習しかしてなかったけど」

 

 手技が主流なために、刀を持っていたら使えない。まぁ、色々参考にできそうな技は一杯あるんだけどね。

 

「どういった技なんだ?」

 

「徹みたいなもんかなぁ?ただ、裏側に徹すんじゃなくて真ん中で炸裂させるといった感じかな?

 さっき放ったのは簡単に言えば衝撃を心臓に与え、心臓をパーンと弾けさせる技だよ。ちなみに、理論上は衝撃を内部に徹す技だから鎧を着てようが何をつけてようが関係ないものだね」

 

 俺の説明に青い顔をする美由希。まぁ、大して練習もしてなければ、子供の力のため威力はおして知るべしと言ったところだ。

 ところで晶はというとなにやらぷるぷるとしているのが背中を摩っているから伝わってきた。

 

「紅莉てめえ!俺にそんな危険な技を使ったのか!」

 

「言っただろ?油断していると怪我じゃすまないって」

 

 激怒している晶をいなして、立ち上がる。ここまで元気ならもう大丈夫だろ。

 

「さっきやったのは、レンちゃんが普段寸掌を打つまでの流れを参考にしたものだよ」

 

「確かに、最初の突進以外はカメの動きに似ていたな」

 

「元々緋凰はそこまで動き回らないからね。動き方自体が似ているんだよ」

 

「そういえば、紅莉って私達みたく動き回ったりしないでどっしりと待ち構えるよね」

 

「御神は圧倒的な速度で銃を避けれるけど、緋凰は幻武のおかげで素通りだしね」

 

 神速と幻武と違う二つの歩法術により戦闘スタイルも変わる。

 

 御神は搦め手を含めた連撃で、緋凰は一撃必殺を旨とした必殺剣で戦う。

 

 とはいっても、俺だって水樹さんだって高速戦闘できるし、御神だって一撃必殺だってある。

 

 どれを使ってどれを使わないではなく、必要な状況で一手一手最善な手を選ぶ。

 

「幻武?」

 

「見せたこと無かったっけ?」

 

 幻武という言葉に首を傾げる晶に俺も尋ねるが首を縦に振られた。

 

「んじゃ、適当に攻撃してきて」

 

「あ、ああ」

 

 戸惑いつつ正拳を放つも俺を素通りする。

 

「はっ?」

 

「今のが幻武だよ。基本的に初見じゃまずは見破れないね」

 

「これに対処するのにどれだけ時間がかかったか……」

 

「最近はその上を混ぜられるからたまったものじゃないな」

 

 よく言うよ。神速に対応できてないからあっさり見破るくせに。そのうちキチンと対応できるようにならないとなぁ。

 

「それじゃ、どんどんいってみよー!」

 

 なにやら変な空気になりだしたのでわざと明るく言って晶の修行を手伝った。

 

 

 

†――――†

 

 

 

 庭で何かが壊れる音と共に何かが倒れた音が聞こえる。

 

「……吼破・改」

 

 あの日から数日後、ついに晶とレンちゃんの戦いが始まった。終始レンちゃんが優勢で進めていたけど、鍛えているときに頭で考えるなって口を酸っぱくして言いまくったためかダメージ覚悟で棍の上からレンちゃんを吹っ飛ばした。

 

 晶の拳から血が滴り落ちる。本当はこんな戦い方を教えてはいけないし、兄さんからも注意されたのだが、一回限りのこと+今のレンちゃんに正面から倒す方法はこれ以外は考えられなく、納得してもらった。

 

 晶自身は自分に合っていると言っていたけど、拳が壊れる可能性があるから二度と使わないように注意しとかないとな。

 

「ありえへん……うちが晶に負けた?」

 

「ああ。てめーが迷ってるなんて似合わねーことしている間にも俺は前に進んだんだよ!

 普段のお前なら迷わずにやっているだろーが!そんなことしているからあっさり負けるんだよ!」

 

 晶の目には涙が浮かんでいる。勝ったはずなのにその顔は晴れやかではなく悲痛な面持ちだ。

 

「はん、たまたま上手くいった自爆戦法で勝ったくせに偉そうに」

 

「てめえ!」

 

 負け惜しみなのか、それとも本心からなのか、相変わらずレンちゃんは晶をこバカにするような発言をする。

 

「ただ」

 

「む」

 

「このまま負けっぱなしなんてうちには我慢ならん!今回負けたのは、そう!体調と心が弱ってたからや!」

 

「じゃあ……」

 

「手術ぐらい受けたる。そんで、完全に治ったらもう一度リベンジや!」

 

 レンちゃんの言葉に今までの悲痛の顔からいつもの晶の自信に満ちた顔に戻る。

 

「ぬかせ!返り討ちだ!」

 

「上等や!首洗ってまっておれよ!」

 

 こうして、レンちゃんは手術を受けるために急遽入院する形となり、高町家が若干寂しくなってしまった。

 

 

 

 

 

†――――†

 

 

 

 

 

「たっだたいま~」

 

「ただいまー」

 

 なのはと共に家に帰宅したけど、どうやら皆まだ帰ってきてないようだ。ややむなしいかなと思ったのだが

 

「あ、二人ともお帰り~」

 

 奥からここ数ヶ月、聞きたくても聞けなかった声が聞こえてきた。

 

「ふぃ、フィアッセさん!?」

 

「どうしてここに!?」

 

 そう、居間からひょっこりと現れたのは高町家の長女的存在であるフィアッセさんがあの頃と変わらない笑顔で出迎えてくれたのだ。

 

「まだ、コンサートは続いていますよね?」

 

「うん。でも、年末でしょ?流石にコンサートは来年までお休み。ママはパパに会いにイギリスに帰っちゃったけど、私はこっちに帰ってきたんだ」

 

 俺の質問に柔らかい笑みとともに答えてくれる。

 

「けど、それはフィアッセさんも……」

 

「うん。けどね、ここも私の家なんだよ?それに、皆にも会いたかったんだ」

 

 その言葉がとても嬉しかった。願わくばティオレさんもいてくれたら嬉しかったけど。

 

「桃かーさんとかには?」

 

「うん、帰ってきて翠屋に行って挨拶してきたよ」

 

 そっか。だったら後は兄さんたちが帰ってきて驚く顔をニヤニヤと見つめればいいわけか。

 

「紅莉君。悪い顔しているよ」

 

 知るか。

 

 その後帰ってきた兄さん達はやはり驚いた顔をしており、俺はそれを面白そうに眺めていた。

 

「ふぇ、フェイト・テスタロッサです」

 

「そっか、なのはから電話で聞いていたけど、貴女が新しい友達なんだね」

 

 その日の夜。ついでだからとフェイトをうちにまねきフィアッセさんを紹介したのだが、何故かガチガチに緊張しているフェイト。

 

「大丈夫だって、晶や美由希みたいな乱暴者とは縁遠い人だから」

 

「こ、紅莉……」

 

 緊張を解いてやろうと背中を叩きながらフェイトに言ってやったのだが、その後何故か両肩をつかまれたので振り返ってみると。

 

「誰が」

 

「乱暴物なのかな?」

 

 なにかとってもいい笑顔の二人が俺の肩をこれでもかと言わんばかりの力で掴んでいる。

 

「とりあえず、美由希は右肩を掴むな」

 

「あ、ごめん」

 

 右肩を掴んでいた美由希に言って離してもらう。

 

「美由希ちゃん!」

 

「へ?……あっ!」

 

 美由希の手が離れた瞬間に体を捻り、晶の手も離して居間を出て行く。

 

「修行に行ってくんね~」

 

「あ、コラ!待てー!!」

 

 まだまだ、美由希も甘いな!その程度で俺を捕まえられると思うなよ?幻武を駆使して美由希や晶からの追っ手を振り切り修行場所までやって来た。

 

「まぁ、いつもここでやっているのは知っているしね」

 

「覚悟しろ!」

 

「しまった!?」

 

 結局、その日の夜は晶と美由希相手に2対1と不利な状況での修行ができた事によりいつもよりも充実した内容であった。

 

「脳筋」

 

「くっ……」

 

 なにやら後ろで酷いことを言っているが、流石に二人相手だとまだまだだと自覚できた。

 

 ここ最近は生身での修行もがっつりやっていたんだけど、いまだに勝てないなぁ。

 

「その歳で美由希とほぼ同格なら問題ないだろ?」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさぁ……」

 

「美由希も実践を経験した。ならば、お前だけが伸びているわけではないだろ?」

 

 帰りの道、兄さんと喋りながら歩く。何だかんだで、兄さん達も最近はリニスの結界にお世話になることもあるために、修行時間を早めて俺と一緒に行ったりする。

 

「ん?兄さん……」

 

「ああ」

 

「どうしたの?」

 

 美由希はどうやら気づいていないらしいが、うちの周りに誰かがいる。つっても、ここは住宅地だから珍しいことじゃないんだが、こんな夜に?

 

「とりあえず、気配を消して」

 

「行くぞ」

 

 そろそろ桃かーさんたちが帰ってくる時間だが、そっちはとーさんがいるはずだから不審者に遅れは取らないだろ。

 

 つーことは無防備なうち?もしかしたら、この前の襲撃してきた奴等か?

 

「誰だ!」

 

「っ!?」

 

 兄さんと一緒に電柱の影に隠れている人の下へと一気に近づくとそこには一人の女性が驚いた感じだが、それでもなにやら直ぐに構えて待ち構えていた。

 

「み、美沙斗さん!?」

 

「え?美沙斗さんって確か……」

 

「かあ、さん?」

 

 ちらりと美由希を見るとぽつりと母という単語を零していた。そうだ、前にフィアッセさんのコンサートを中止させようと現れた人だ。

 

 けど、この人って心を入れ替えて今はどっかの組織に所属して色々やっているんじゃなかったっけ?

 

「ん?この人がいるっていうことは……」

 

「やっほーーっ!」

 

「ぐわっ!?」

 

「紅莉!?」

 

「はぁ」

 

 横合いからなにやらテンションが高い声と共に衝撃で地面に叩きつけられる。それと同時になにやら顔に柔らかいような硬いような感触が……

 

「やったね!ついに紅莉の不意をつけたよ」

 

「この若作りした感じの喋り方……水樹さんか!」

 

「あ、ひっどいな~」

 

 心当たりのある名前を言ってみたらビンゴだった。と、いうことは現在の俺は水樹さんに抱きつかれているってことか?

 

「てか、痛たたたっ!?肩が、肩が変な方向に!」

 

「あ、ごめん」

 

 肩が変な風に捻れて痛くなり叫ぶと水樹さんは漸く離してくれた。

 

「あ~酷い目にあった……」

 

「大丈夫か?」

 

 兄さんが手を差し伸べてくれたのでそれを掴んで立ち上がる。本当に酷い目にあった。

 

「てか、なんでいるのさ?」

 

「あ、久々にあった叔母にその態度は酷いよ」

 

「あーはいはい。お久。そんで?」

 

「うえ~ん。恭也~甥が苛める」

 

「え?いや、俺か?」

 

 水樹さんのターゲットが俺から兄さんに向かい、ようやく一息つけ美沙斗さんのほうを見てみれば、なにやら美由希と向かいあって重苦しい雰囲気を発生させていた。

 

「なにやってんだ?」

 

「カオス?」

 

 そこに丁度帰ってきたとーさんの質問にそうやって返すしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「あはは~。ごめんね~、実は美沙斗や私も大分落ち着いてさ、そんで今お世話になっている隊長さんに休暇がてら報告して来い~って言われてね」

 

「私と水樹自体は別部隊なんだけど、入った時期は一緒でね」

 

 部屋に案内して、事情を聞けばわりと簡単な理由であった。てか、軽いなおい。

 

「まぁ、来てしまったものを追い返すのは流石にできないが、せめて連絡をいれろ」

 

「水樹が皆をびっくりさせようって言って……」

 

「あ、美沙斗酷い!私の責任にしようとするなんて……」

 

 ヨヨヨと泣きまねしながら袖で目元を拭う水樹さんだが、俺達は生暖かい目で見やると流石に空気を読まないのを察したのか黙った。

 

 てか、見た目が母さんとそっくりな分、物凄い違和感があって仕方ない。

 

「はい、どうぞ」

 

 俺達が目的やらなんやらを尋ねていたら、フィアッセさんが気を利かせてくれたのかお茶を出してくれた。

 

「あ、ありがとう……」

 

 フィアッセさんからお茶を受け取る美沙斗さんだが、今度はこっちで気まずくなっているし……

 

「もう、大丈夫です。貴女の思いも、貴女の謝罪も全て受け取りました。気にするなとはいえませんが、必要以上にかしこまらないでください」

 

 気まずくなっている美沙斗さんとは逆にフィアッセさんはその優しい瞳でゆっくりと美沙斗さんに言う。

 

「ありがとう」

 

 美沙斗さんもその言葉が届いたのか肩の力が抜けたのを感じる。

 

「そんで、お前等はどれくらいいるんだ?」

 

 今までやり取りを黙ってみていたとーさんは、落ち着いた頃合に二人に尋ねた。

 

「そうだね、確か1ヶ月くらいは大丈夫って言ってたかな?」

 

「ええ。今までが今までだったんで、気を利かせてくれたんだと思います」

 

 1ヶ月か。と、言うことは年明けまでは一緒ということかな。

 

「それじゃ、挨拶もしたし帰ろう」

 

「そういえば、ここにいる間は?」

 

「駅の近くのホテルを取っています」

 

「だったらうちに来てください!」

 

 水樹さんの帰るという言葉に、桃かーさんがどうするのかと尋ねたらやっぱりというかなんと言うかホテル住まいになるようだったのだが、桃かーさんは引き止めてうちに泊まるように勧める。

 

「いや、しかし……」

 

「泊まっていきなよ、母さん」

 

 渋る美沙斗さんだったが、美由希がそっと声をかける。

 

「私も、話したいし……ね?」

 

「いいのか?」

 

「うん」

 

 どうやら、美沙斗さんと美由希の距離は縮まったようだ。

 

「紅莉、紅莉」

 

 二人を微笑ましく眺めていたら水樹さんに袖を引っ張られそちらを見るとなにやら期待した顔をしていた。

 

「それじゃ、また明日にでも」

 

「酷い!?」

 

 にっこりと手を振ってあげたらなにやら涙目になった。うん、いい反応してくれる。

 

「士郎さ~ん!紅莉が苛める~!!」

 

「どわっ!?抱きつくな!なまじあいつと似ているから違和感が酷い!」

 

 抱きつかれたとーさんはなにやら意味深なことを言っている。まぁ、母さんと知り合いだったし、確かに俺もかなりの違和感を覚えたからなぁ……

 

「士郎さん?」

 

「いやいやいや!僕は悪くないだろ!?水樹!いい加減に離れてくれ!」

 

「だ、誰も味方が……美沙斗!美沙斗は私の味方だよね!」

 

 完全に涙目の水樹さんは辺りを見回して美沙斗さんをロックオンすると縋りついた。

 

「え、いや……紅莉が嫌がっているなら……」

 

「うえ~ん……」

 

 どうやら美沙斗さんは俺の味方だったようだ……半分以上は弄るために言っただけだけど。

 

「あ~……紅莉、そろそろ」

 

 とーさんが桃かーさんに首を絞められながら俺を窘めてきた。そうだな、流石に夜中に大声出されても迷惑だし。

 

「わかったよ」

 

「ありがと!」

 

 はやっ!?どんだけの反応速度だよ。

 

「それじゃ、部屋に行っていて。二階のなのはの隣……名札があると思うから」

 

「紅莉は?」

 

「風呂入ってくる」

 

 それだけいって、席を立つ。途中、水樹さんが乱入してこようとしたが、入ってきたらマジで追い出すと脅してゆっくりと浸かった。

 

 

 

 

 

 

 

「えー、学校なんて一日二日行かなくても問題ないでしょ」

 

 次の日、朝起きた俺は鍛錬後に普通に登校しようとしたのだが、これである。

 

 ちなみに、フェイトはなのはとお喋りしていて気が付いたら寝ていたようだ。夜、寝る前に部屋に確認しにいったら仲良く寝ていた。勿論、これもしっかり録画をさせてもらったけど。

 

「いや、それでいいのか大人」

 

「えー。私なんて中学までしか行ってないよ?後、姉さんも。美沙斗は美沙斗で静馬さんと結婚するからって理由で高校中退しているし」

 

「み、水樹!」

 

 なんというカミングアウト。どれにツッコミを入れればいいんだろうか?最終学歴が中卒という母と叔母に突っ込めばいいのか、結婚のためとは言え、高校中退した美沙斗さんか。

 

 しかし、美沙斗さんは結婚のためとはいえ高校中退か。ばらされた美沙斗さんは真っ赤になって珍しく大声を上げて水樹さんを睨んでいる。

 

「いいじゃん、いいじゃん。若い身空で未亡人になっちゃったけど好きな人と一緒になって娘まで産んだし」

 

「へぇ」

 

 水樹さんのカミングアウトに更に真っ赤になる美沙斗さん。それを感心した風に声を漏らす美由希。まぁ、娘に親の恋の話なんて洩らされても恥ずかしいだけか。

 

「紅莉君に聞いていたけど、こんな人だったんだ……」

 

 完全に空気となっているなのはがぽつりとこぼすのだが、水樹さんは耳ざとく聞きつけたようでなのはをロックオンする。

 

「うわっ!可愛いね君達!」

 

「え、えと……ありがとうございます?」

 

「わ、私もですか?」

 

 仲良く揃ってご飯を食べていたフェイトも含まれていることに驚いている。

 

「んふふ~、どっちが紅莉のこれ?」

 

 そういって小指を立てる水樹さん。

 

「下品だぞ。そして、古いわ」

 

「もう、照れちゃってこのこの~」

 

 そう言って、肘でつついてくる。てか、うるせぇ……

 

「とーさん……」

 

「諦めろ」

 

 とーさんに助けを求めたがバッサリと切られてしまった。とーさんも疲れた顔をしているから恐らくは昔からだったんだろうな……

 

「それに、私がいるんだよ?緋凰の色々なことを教えて上げられるよ?」

 

 っ!?

 

「ぐ……」

 

「ああ、紅莉君が揺らいでる揺らいでる……」

 

「紅莉にとって、緋凰ってのはよっぽど重要なことなんだね……」

 

 な、なんということだ!全くそのことを考えていなかった!そうだ、そうだよ。この人はこんな性格だけど、緋凰を完全に習得している人だったんだ。

 

 それなら、残りの奥義を見せてももらえるし教えてももらえる……

 

「どう?」

 

「ぐ、ぐぬぬ……だ、だが……」

 

 ちらりとなのは達を見る。学校で襲撃されるなんてありえはしないだろうが、帰り道なんかで襲われたらたまったものでは……

 

「ん?ははぁん。そっか」

 

 なぜかニヤつく水樹さん。

 

「ねえ、君達……えっと、お名前教えてもらってもいいかな?」

 

「あ、なのはです。高町なのは」

 

「フェイト・テスタロッサです」

 

 そういえば、二人は水樹さんたちが来ているって朝になって初めて知ったんだったな。

 

「そっか、なのはちゃんとフェイトちゃんだね。私は水樹。紅莉の叔母だよ、よろしくね」

 

 パチンとウインクする水樹さん。チッ、年齢不詳がやるから似合って仕方ない。

 

「それで、二人も良かったら今日は一緒にどう?紅莉一人だけだと渋ってさ」

 

 どうやら俺を説得するよりもなのは達も巻き込んで、外堀を埋める作戦のようだ。

 

「えっと……」

 

「まぁ、今日くらいはいいだろ」

 

 ちらりととーさんを見るなのは。とーさんもとーさんで恐らくは水樹さんが下がらないと悟り諦めたような表情をしながら許可を出した。

 

「わ、私は家の人に聞かないと……」

 

「なんだったら、私が説明しようか?」

 

「大丈夫だと思います」

 

 こうして、フェイトまで巻き込んで学校をサボる形になってしまった。母さんみたいな大和撫子みたいな顔なのにやることがアグレッシブな叔母であった。




†久遠放送局†

久遠「なんか、凄い人が叔母だね紅莉は」

水樹「そんな」

久遠「褒めてない、褒めてない」

水樹「エー」

久遠「さて、今日からは紅莉の設定を少しずつ公開していくよ」

水樹「今日の紹介は緋凰流の【幻武】だよ。私達が使う流派で基礎にして奥義のこの技は、無ければならない技だね」

久遠「凄いよね。腕が素通りしたりするんだよ」

水樹「因みに、銃弾程度なら余裕だよ。流石に手榴弾だと爆発に巻き込まれちゃうけど」

久遠「元ネタとしては、終わりのクロニクルの歩法と愛武の風歩と雷歩の融合って感じだね」

水樹「この技の最大の利点は御神と違って動き回らない分、スタミナの維持が楽だよ……ただ、集中力は御神以上に必要だけどね」

久遠「では、最後に日が跨いでしまったけど、昨日(6/4)は八神はやての誕生日だったんだよ!おめでとう!」
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