魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第43話

「……きなさい」

 

 誰かが俺を起こそうとしている。

 

「紅莉、起きなさい」

 

 なんだろう、この胸を打つような気持ちは。いつか、無くしたようなものが目の前にあるような。けど、未だに瞼を閉じているからそれが何かが分からない。

 

「紅莉、いい加減に起きなさい!」

 

 今までで、一番大きな声が聞こえ、うっすらと目を明けると。

 

「ぬおぉぉっ!?」

 

 眼前まで迫ってきていた白刃を何とか両の掌で受け止める。いわゆる真剣取りだ。

 

「ぶっなぁ」

 

 受け止めなければ、今頃完全にスプラッタな状態になっていたに違いない。掌に伝わる感触がこれが本物だと完全に教えてくれていた。

 

「危ないじゃないでしょ。いつまで寝ているの。修行の時間よ」

 

 未だに押し込んでくる刃をそのままに、刀を持った人物はそういった。

 

「え?」

 

「何を呆けた顔をしているの?珍しいわね、貴方が寝坊して、かつ寝ぼけているなんて」

 

 目の前には黒く艶やかな髪を腰まで伸ばした女性が立っていた。

 

「ねーさーん、紅莉起きたー?」

 

 襖の奥からなんとものんきな声で入ってきた人物は目の前の人と瓜二つであった。唯一違うとしたら、胸部というよりも胸の大きさだろうか?

 

 未だに俺を切ろうと刀を押し込んできている人は巨乳で、後から入ってきた人は貧乳だ。

 

「姉さん、ちょっとその刀貸してくれる?なんか、無性に紅莉を刀の錆びにしたくなっちゃった」

 

 怖いわ。

 

「バカ言ってないで、支度してきなさい。ほら、紅莉も早く起きて顔を洗ってきなさい。そうすれば、ボケた頭もスッキリするでしょ」

 

 水樹さんが渋々と口を尖らせて部屋を出て行く。あの人が、水樹さんならこの目の前にいる人は……

 

「母、さん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもない」

 

 首を横に振って立ち上がる。本当にどうしたんだろう?さっきから涙腺が緩みっぱなしで気を抜くと泣いてしまいそうになってしまう。

 

「変な子ね。怖い夢でも見たかしら?今夜から一緒に寝る?」

 

「そこまで子供じゃないよ。大丈夫、何か分からないけど混乱していて、大分晴れてきたから」

 

「そう。早く来なさいね。そうしないと、ご飯抜きで鍛錬よ」

 

「うへっ、そりゃ勘弁」

 

 急いで、寝巻きを脱いで胴着に着替えていく。母さんはその間に居間へと向かっていった。

 

 着替え終わった俺は、顔を洗って居間へと行くと、そこには出来立ての朝ごはんが並んでいた。

 

「今日は洋食にしてみました」

 

 どうやら、今日の朝ごはんの担当は水樹さんだったようだ。

 

「洋食は美味しいんだけど、エネルギーが持続しないのがネックなのよね」

 

 パンを食べながら母さんが、不満を洩らす。

 

「そっかぁ、紅莉も姉さんも洋食好きだからと思ったんだけど、失敗だったね」

 

「別にそういうわけじゃないんだけどね。昔ほど仕事をやってないから取る必要も少なくなったし不満は無いわ」

 

「あははー。昔の姉さんと今の私が会ったらどうなるんだろ?」

 

「互いに譲れないものがあったら戦うんじゃないかしら?」

 

「負けました。許してください」

 

 昔の母さんとは一体いつの頃だろうか?興味が尽きない話にもくもくと食事を続けながら話を聞いていた。

 

「たられば、の話をしていてもしょうがないわ。さ、鍛錬に行くわよ」

 

「うっす」

 

「はーい」

 

 食事も終わり、母さんが立ち上がるのに俺と水樹さんも続いて庭にある道場にと向かっていった。

 

 刀を持ち、母さんの対面に立つ。

 

「紅莉、何故右手で刀を持つ」

 

 母さんから俺が右手で刀を持っているということに指摘が入る。

 

「あれ?」

 

 そういえば、何で俺は右手で刀を持っているんだろう?慌てて左手に持ち変える。

 

「左右均等に振るえるようになれば、確かにあらゆる局面で役に立つが、まだ紅莉はそこまで行ってはいない」

 

「うん」

 

 本当に今日の俺はどうしたのだろうか?母さんの顔が懐かしく感じ泣きそうになったり、右手で刀をもったりと。

 

「調子が悪いの?やめとく?」

 

「気分はすこぶるいいよ」

 

 本当に調子はいいんだ。ただ、何故か体と心がちぐはぐに動いてしまう。

 

「恐らく、鍛錬が始まれば元に戻ると思う」

 

「そうか、ならばかかってこい」

 

 そういって、母さんは刀も抜かずにそういって、鍛錬が始まった。

 

 ジリジリと距離を測りながら、攻撃のタイミングを図る。母さん相手に虚をつけるわけではないので、自分の呼吸が噛み合った瞬間に仕掛けるしかない。

 

「ふっ!」

 

 タイミングが決まり、一気に抜刀の奥義の葬刃を使い、母さんに攻撃を仕掛けるもあっさりと幻武で避けられてしまうがそんなのを気にもせずに返しの刃で切りかかろうとしたら、納刀状態の刀の柄で攻撃され体を仰け反らせ回避するが

 

「馬鹿者!今ぐらいの攻撃は幻武で避けてみろ!」

 

 更に一歩詰め寄られ鞘に入ったままの刀身で体を強打され、肺から空気が漏れ、息が詰まる。しかし、相手は待ってくれずに再び攻撃されるのを幻武で避けつつ、息を整え、再び切りかかる。

 

「しっ!」

 

「まだぬるい!目を見れば、何処を狙っているか一発で分かる!」

 

 狙いがバレバレで攻撃が外れてしまうが、これでいい。母さんはが再び攻撃を仕掛けてきたのを

 

「緋凰流・奥義【参瞬】」

 

 二回高い金属音が聞こえ、そこに更に大きな一撃を叩き込もうとしたのだが、そこには母さんの姿は無かった。いや、幻武の三段階目を発動され、見失ってしまった。

 

「くっ!」

 

 突如首筋にいやな予感がよぎり、慌てて前面に向かって飛び転がるとそこには姿を現した母さんが葬刃で俺の首を狙っていた。

 

「今のは合格点だ。狙いが分かっているのを知っていて、それを囮に参瞬を使ってくるとは……いつ覚えた?」

 

「えっと……あれ?」

 

 葬刃と断空、咬牙は覚えていたけど、参瞬はいつならったっけ?

 

「あれじゃない?私と姉さんがやっているときに出てたのを見て覚えたんじゃない?紅莉って見ただけで大体の技の把握ができるぐらい聡いし」

 

「確かに、私と水樹がやれば出ていても可笑しくないし、紅莉ならそれで出来るようになるのも納得だ」

 

 二人ともあまりもてはやさないでくれ。今のはたまたま上手く決まったけど、参瞬ってタイミング取るの難しいんだから。

 

「よ~し、次は私だよ。私は姉さん見たく待っているの苦手だから頑張ってね」

 

「間違って大怪我させるなよ」

 

 どっちもぶっそうですねぇっ!?いや、知っているけどさ……

 

 

 

 

 

 

 

「ひゅー、ひゅー……」

 

「だらしないなぁ」

 

 あれからみっちり3時間も続いた俺の鍛錬は、完全に体力が切れてしまい終わりとなった。

 

 今日は休日ということもあって、兎に角詰め込まれた感が拭えない。普段の平日ならもう少しまとものはずなんだが、母さんも水樹さんもなにやら張り切っていたような気がする。

 

「こんにちわー」

 

「おじゃまします」

 

「あら、なのはちゃん達が来たみたいね」

 

 俺に針を刺し終わった母さんは、そのままその場を離れてやってきたなのは達を迎えにいったようだ。

 

「紅莉君、やっほー…って!紅莉君がハリネズミになっている!?」

 

「だ、大丈夫!?」

 

 あれー?二人は見たこと無かったか?ないかも。普段は鍛錬後に会うこともないし。

 

「なんで、あんたまで来ているのよ」

 

「子供の引率でね」

 

「だったら、恭也君だけでいいでしょうが」

 

 母さんと士郎さんが口喧嘩しているのをBGMにしながら動かないでいると、二人が俺の近くまでやって来た。

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「ああ、平気平気。一応は体の疲れを癒すための孔衝いているだけだから……実際の量は2~3本程度だけど」

 

「そ、それじゃあ、これは?」

 

「それは、どこにどのツボがあって、効果があるかを教えるために刺したのよ。ほら、紅莉せっかく二人がきたのだからさっさと起きなさい」

 

「うぇ~い」

 

 とりあえず、動けないのでなのはとフェイトにお願いして肩に刺さっているのを抜いてもらう。

 

「ぬぎっ!?」

 

「ご、ごめんね!」

 

「ごめん……」

 

 抜き方が真っ直ぐではなく、斜めになっていたために痛みが走りつい口から出てしまった。

 

「気にしなくていいよ。本当なら俺自身で抜かなきゃいけないのを手伝ってもらっているし」

 

 緋凰ならば、身体操作の関係上、腕が折れていても動かせるはずだからこの程度で動かせないのはダメなんだろう。

 

「いよっと」

 

「うぅ、見ているほうが痛い」

 

「同じく」

 

 ドン引きの二人である。仕方ないかもしれないが、言わないでくれ。気にしないようにしているんだからさ。

 

「ふぅ」

 

「紅莉は天命までやっているから偉いよねぇ」

 

 そんな俺達に水樹さんが近寄って笑いながら言って来る。

 

「何言っているのよ。水樹だって陽明を使えるでしょ?」

 

「私は姉さん見たく、懐に入られても切り付けられないの!だから、陽明の近接技法が必要なの!」

 

「失礼な。私だって懐に入られたら切り付けられないわよ」

 

「嘘をつくな嘘を!昔、神速で近づいて薙旋を撃とうとしたらそれより早く迎撃してきただろうが!」

 

「あんたがノロマだっただけでしょ」

 

「ざけんな!俺がノロマだったら御神は全員カメ以下だろうが!」

 

「そうよ?さっきからそう言っているじゃない」

 

「おし、その喧嘩買った!」

 

 そういって、母さんと士郎さんは二人して居間を出て行ってしまった。

 

「何をやっているんだ、父さんは」

 

「あはは、母さんもあれで楽しんでいるので気にしないでくださいよ兄さん」

 

「そうだな……ん?兄さん?」

 

「あれ?そんなこと言いましたか俺?」

 

「今日の紅莉なんかおかしいね」

 

 本当にどうしたんだろうか?確かに今日の俺はなんかずれているな。

 

「くたばれ!」

 

「はっ!何年も寝込んでいた貧弱剣が私に当たるものか!」

 

 色々と悩んでいたのだが、外からの母さん達の声にそちらを向けば、完全に子供には見せられないよな戦いを繰り広げている二人がいた。

 

「なんで、母さんのマジで生き抜けるんだ?水樹さんできる?」

 

「無茶言わないで!」

 

「父さんもなんで俺との鍛錬より力を発揮しているんだ」

 

 兄さ……じゃなくて、恭也さんも士郎さんの動きに疑問を感じているようだ。

 

「あー、とりあえず、二人ともあまり見るな。あれは、お前等が見るようなものじゃない」

 

「何が起こっているの?」

 

「なんか、いつも二人で言い合っているのはわかるんだけど、何をしているかまでは……」

 

 ああ、なるほど見切れないのね。それなら安心……出来ないな、ところどころ二人とも肌とか裂けて血が流れているし。

 

「まぁ、兎に角あっちに行こう」

 

 二人を連れ添って、完全に見えない位置まで移動してお茶を開始したのであった。

 

 

 

 

「相変わらず、桃子さんのお菓子は美味しいわ」

 

「そういってくれると、桃子も喜ぶが……食いすぎだお前!俺の分が減るだろうが!」

 

「いいじゃない、あんたなんて頼めば作ってくれるでしょうが」

 

 再び喧嘩をしだす二人。てか、子供の喧嘩だな本当に。

 

「それで、恭也君は幻武を見切れるようになったのかしら?」

 

「はぁ、まぁ」

 

「母さん。なのはやフェイトがいるんだ。あまり、武術のことばかり話してもついていけないって」

 

「そうだったわね」

 

 母さんは何でも出来る(金勘定除く)人なんだけど、やっぱり緋凰なのか脳筋的に戦いに話がいきがちだなぁ……いや、士郎さんがいるからかな?

 

「二人とも、紅莉はモテるだろうから早めに食べておかないと出し抜かれるわよ?」

 

「ぬぐっ!?」

 

「にゃ?」

 

「食べる?」

 

 母さんの爆弾発言に食べていたケーキが喉に詰まりそうになる。二人は逆に意味が分からなかったようで首を傾げている。

 

 胸を必死で叩いていたら、誰かがお茶を差し出してくれたのでそれを一気に飲み込んだ。

 

「はぁはぁ……ありが」

 

「ふっふ~ん」

 

 お礼を言おうとしたら、そこにはすっげぇニヤついた顔をしている水樹さんがいた。

 

「紅莉は意味が分かったんだ~。ませているとは思ったけどここまでとはね~」

 

 ぐっ、しまった!間違っても見せてはいけない人に弱みを握られた!?こうなったら

 

「殺して口を塞ぐ!」

 

「上等!」

 

「まて、なのはをやるとはまだ俺は認めていない!」

 

 何故か恭也さんを交えて先ほどの母さん達と同じ行動をしてしまった。

 

 

 

 

 

「それじゃあな」

 

「紅莉君、また学校でね」

 

「また明日」

 

「お~う、明日な」

 

 夜になり、なのは達は夕飯になる前に帰っていくのを見送った後、俺は部屋に戻る。

 

「ふぅ」

 

 瞳を閉じて息をゆっくりと吐いて気を落ち着かせる。

 

「よし!」

 

 瞳を開き、気合を入れなおした後、クローゼットにしまわれている愛用のコートを羽織り、同じく中に入っていたエアを首にかける。

 

「待たせたな」

 

《いえ》

 

 俺の言葉に短く答えるエア。どうやら、夢はここまでのようだ。扉から出るとそこには母さんが立っていた。

 

「そんな格好をしてどうしたの?まだ、夕飯前よ」

 

「行くよ」

 

 一言伝えると、少し寂しそうな表情へと変わる。

 

「夢を見続ければ私と一緒に暮らせるのに?」

 

「そうだね。正直に言えば、かなり後を引かれる」

 

 母さんに習い、母さんと共に一緒に生活できるなんてかつてなくした俺の夢だ。

 

「だけど、あそこには俺が守ると誓ったやつ等がいる。あいつらが歩みを止めない限り、俺はあいつらのために道を切り開かなければいけない」

 

 すっと、刀を引き抜き、切っ先を母さんに向ける。

 

「もし、邪魔をするならば、母さんだろうが容赦をしない」

 

「合格よ」

 

 俺が宣言すると、母さんは満足そうに頷く。すると、周りの空間が割れるような音と元に崩れ去る。

 

 俺と母さん、二人だけで後は何もない空間がただそこにあった。

 

「もし、このまま残るというならば、斬ってでも起こそうとしたところよ」

 

 怖いわ!母さんが言うと、冗談ですまないから性質が悪い。

 

「さぁ、紅莉構えなさい。最後の教えよ」

 

 そういうと、母さんの手にもいつの間にか太刀が握られていた。

 

「貴方に残したノート。あれは、緋凰の奥義が記されたものだった」

 

「あれのおかげで俺は今もやっていけている」

 

「けど、全てじゃない」

 

 全てじゃない?そうすると、御神の奥義の極みみたいなものかな?

 

「その顔だと、閃を知っているみたいね。けど、緋凰には6つの奥義のみしかないわ」

 

 んん?とんちか何かなのか?

 

「今から教える技は私が刀を振り続けて編み出したものよ。唯只管に己の心を写す剣を磨き続けた結果の集大成」

 

「一体どういうこと?」

 

「具体例を出せば、水樹なんかは唯一、刺突に特化して磨き続けたわ。まぁ、美沙斗が射抜を得意として真似たのか負けたくなかったのかは分からないけど。

 兎に角、あの子は只管に刺突を磨き、遂には鞘すら必要とせずに咬牙も放てるようになったし、追の太刀なんかも編み出したわ」

 

 絶咬って水樹さんが生み出したのかよ!?それに、鞘なしで咬牙ってそれはもう咬牙じゃないんじゃ……

 

「それに、あの子にはまだもう一つの刺突技があるわ。見たければ戻った後に教えてもらいなさい」

 

 つまり、母さんが鍛え続け、緋凰の技を参考に作ったオリジナルの技ということか。

 

「さぁ、魔法を使いなさい。じゃなければ、今の貴方じゃ耐え切れないわ」

 

「……エア」

 

《いいのですか?》

 

「母さんがこと戦いにおいて冗談なぞ言わん」

 

《イエス。ゲット・レディ》

 

 俺の言葉に確認してきたエア。普段が使わないからこいつも戸惑ったのかもしれんな。

 

「行くぞ……」

 

「っ!?」

 

 母さんの雰囲気が武人のそれに変わると同時に張り詰めた空気となる。感じたこと無いほどの殺気に息が詰まりそうになるが、気合で耐え切り平常心に戻す。

 

「【瞬華終刀】」

 

 母さんが刀を振るった瞬間にいくつもの光の線が現れ瞬く間に俺を斬り刻んだ。

 

「ぐあっ」

 

《マスター!》

 

 エアが心配して声をかけて来るが、返事をするほどの余裕がない。恐らくは俺が見切れる程度に抑え、かつ手加減しただろうその技なのだろうが、ダメージが半端なかった。

 

「断空、葬刃、乱舞、参瞬、絶咬、幻武。全ての奥義を収め、使いこなしてきた私が辿り着いた一つの答え。それが今放った瞬華終刀だ」

 

 そういいながら倒れている俺を優しく包み込みながら起こしてくれる母さん。

 

「剣士はね、今までやって来た答えをいつか見つけられる可能性があるわ。私や水樹が見つけたように、紅莉にも必ず見つけられると信じている」

 

 未だに抱きながら母さんは優しくそう告げる。

 

「答えに辿り着く方法は千差万別。紅莉は紅莉の方法で見つけて頂戴」

 

「ありがとう、母さん」

 

 母さんにお礼を言うと、すっと離れていく。心なし寂しそうな顔は今まで見たこともないものだった。

 

「紅莉、私はあなたの親でよかったのかしら?教えられたのは剣を振るうという今の時代にあっていないものだった」

 

「違うよ母さん。俺は母さんの子供だったからここにいられるんだ。もし、母さんの子供じゃなかったら俺は何者でもなかったと思う」

 

「そう、ありがとう紅莉」

 

「俺は母さんの子供でよかったと思うよ」

 

 何事も出来ると思う母さんも金の管理ができなかったり、所々で抜けていたりと人間味があって大好きだった。

 

「ああ、そうだ」

 

「まだ何かあるの?」

 

 母さんが何かを思い出したようにぴんと指を立てた。

 

「紅莉の持っている白鳳だけど、それって影打だから戻ったら家の隠し部屋から真打もっていきなさい」

 

「これで、影打だったのかよ!?」

 

 かなりの名刀だと思ったんだけど、まさか影打渡されているとは思わなかった。

 

「行き成り真打渡したら自分を切りそうだったから、ね。いい刀は己の主を選ぶわ。だから、影打から渡したのよ。それと、私が使っていた天凰も持っていきなさい」

 

「分かった……行ってくる!」

 

「行ってらっしゃい」

 

 母さんに別れを告げ、背を向けて歩き出しいくばくか歩いた後、立ち止まる。

 

「知っているか?あれで、人間なんだぜ?」

 

《信じられませんし、信じたくありませんね》

 

 エアが母さんのことを見てそんなことを言う。

 

《マスターや恭也殿を見て人外だ人外だと言っていましたが、あの方はそれすら超越しております》

 

「全くだ」

 

 だからこそ目指す価値がある。

 

「さあ、エア。帰るぞ、俺達が今いるべき場所へ」

 

《イエス》

 

 刀を上げて構える。

 

「断空はその名の如く、空間を断つ技だ。ここから出られぬ道理は無い!テトラ・グラマトン」

 

《ディーヴァ・レヴ、ドライブ》

 

 刀に力が一瞬にして溜まり、一気に振り下ろした。

 

 

 

 

†――――†

 

 

 

 

 

 紅莉が去ったあと、橙璃は未だにその場で佇んでいた。

 

「貴方を見続けられなかったのはとても心残りだったけど、貴方は貴方の道を見つけたのね。それが嬉しくも有り、間近で見られなかったのは寂しい」

 

 瞳をゆっくりと閉じる橙璃。それと同時に、足元からゆっくりと光の粒子となり消えていく。

 

「今はまだでないでしょうけど、いずれまたどこかで会いましょう。その時は成長した貴方と全力で戦ってみたいわ」

 

 それだけ言い残すと、橙璃は完全に消えたのであった。




†久遠放送局†

久遠「皆さん奇跡です!作者がかなりの速さで更新したよ!そして、紅莉が強化されたね」

橙璃「それが今回の目的でしょ」

久遠「あ、紅莉ママ!いつもお世話になってます」

橙璃「いい子ねあなたも」

久遠「くぅん。さて、今回の説明は参瞬かな?」

橙璃「そうね。参瞬は一撃目で敵の行動を止め、二撃目で体勢を崩して、三撃目で相手を確実にしとめる奥義よ」

久遠「一撃が多い緋凰には珍しい連撃奥義だよね」

橙璃「そうね。乱舞は周りの敵を一掃するという目的があるけど、参瞬は珍しい奥義ね。因みに二刀使い相手でも使いやすいわ。ただ、一撃目を当てるタイミングがとても繊細だから使いづらくもあるけどね」

久遠「でも、それをやっちゃう緋凰に痺れる憧れるぅっ!」

橙璃「ありがとう」

久遠「それじゃ、次回もお楽しみに!」
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