魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第49話

 覚悟を示すのは年末の大晦日と決まり、わりと時間的余裕がないのだが、今の俺は時空管理局の本局にやってきていた。

 

 来た理由は別に管理局に世話になるからという挨拶回り何かではない。ある人物に会うためである。

 

「貴方とは、ティオレさんの歌が好きという同志だと思ったんですがね」

 

 殺風景な部屋の中で、俺の目の前に座る一人の人物。入って数分の間は会話が無く、相手が喋るまで待とうとも考えたが、喋る気配がなかったので、こちらから話しかけた。

 

「今でも彼女は好きだよ。クロノ経由から音楽のデータを貰い聴いたが、あの時に聴いた衝撃がまた駆け抜けたよ」

 

 俺の問いかけに静かに返すグレアム元提督。短い数日をどう過ごすかを考えていたら、クロノから通信でグレアム氏が呼んでいると聞いてやってきたのだ。

 

「なら、何故あんなことを?ティオレさんの歌を理解していればそんなことをするはずはありませんが?」

 

「どういうことかね?」

 

「ティオレさんの歌に込められている思いを知ればおのずと分かるはずですがね」

 

 あの人の歌には数え切れないほどの感謝と、そして生きるという思いがつめられている。たかだか、10しか生きていない俺が言うのもおこがましいが、それでも感じるものはある。

 

 聞いた話では、あの人は戦乱の中東で生まれたとのことだ。そして、コンサートで護衛すると決めたときに語った言葉と、日本を離れるときに話してくれたあの言葉は俺の心に深く染み込んだ。

 

「あの人は、ただ歌うだけではありません。争いはいつか終わる、けど人の心は疲労したままだ。自分の歌が少しでも前に進むために、自分を支えてきてくれた全ての人に感謝を。ティオレさんはその想いを歌に乗せ歌うんです。だから、あの人の歌は心に響く」

 

「そうか、私はくだらない復讐心に囚われてしまい、そんな簡単なことも忘れていたのだな」

 

「知りません。興味もありません」

 

「お前!父様になんて口を!自分で振った話題だろ!」

 

 今まで部屋の隅っこで黙ってこちらを睨んでいた猫の使い魔が声を荒げて抗議してくる。

 

「人の心なぞ、その人のものだ。他人がとやかく言うものではない。それが、表にあらわれているならば、注意もしよう。だが、お前等はそれに賛同したのだろう?俺はグレアム氏にあったのは一度だけだぞ?どうしろというんだ」

 

 同情はグレアム氏を苦しめるだけだ。したことにより相手の心が軽くなる、というのはただ逃げているだけだ。本当に後悔しているならば、自分でなんとかしてくれ。

 

「と、言うよりも、俺はグレアム氏は兎も角として、お前等を許した覚えはないが?散々邪魔されたのは、最後にぶちのめしたからちゃらだが、俺の大事なものに手を出したツケはどうするつもりだ?」

 

 睨んでやると、押されたのかたじろぐ強気な目をした使い魔。

 

「まっ、ここで手をだしたらクロノに何を言われるか分かったものじゃないからな。よかったな」

 

 忌々しげに見てくる猫二匹。正直、動物は大好きなのだが、ね。

 

「まぁ、そんなどうでもいい話はゴミ箱にでも捨てて、貴方には散々やられましたよ」

 

「ふっ、クロノから君のことは聞いていたからね。頭が切れ、戦闘力もランクに見合わず、戦闘方法も通常の魔導師とは全く違うとね」

 

 やれやれ。クロノの評価のおかげで、今回の事件はややこしくなったということか。

 

 この人は、俺に情報が回らないように細工していたのだ。ユーノに色々と調べてもらっていたのだが、最後の最後に手遅れになる場面まで一切情報が回ってこなかった。

 

 理由は単純で封鎖していたから。ユーノがその事実を知ったのもこの人が裏で手を引いていたというのが分かってからというのもやり手だと感じた。

 

 守護騎士やリインフォースに話を聞いたら、闇の書のときでも管制人格として表に出てこれるようであった。その条件もいくつかあるが。

 

 それを聞ければ結末はまた変わったかもしれないが、それをうまい具合に封鎖してくれたもんだからなぁ。ここら辺は流石というべきか。

 

「さて、君はさっきツケをどうするかと言っていたね?」

 

「ん?別にどうでもいいですけど?」

 

 それ自体は俺の自己満足と、独善的な考え方から来ているものだし。

 

「もし、払うとすればどうすればいいのだ?」

 

「いや、簡単ですよ?首を刎ねて終わりですから」

 

 俺の言葉に、室内にいる三人の顔色が変わる。グレアム氏も俺がそんなことを言うとは思わなかったのか驚愕に満ちている。

 

「因みに比喩や例えではなく、本気で刎ねますからね」

 

 念を押すように言うと、更に顔色が悪くなる。

 

「つっても、流石に出来ませんけどね。クロノも心配すんな、やりはせんよ」

 

 扉に向かって言うと、どこかほっと息を吐いた気配を感じる。

 

「俺は魔導師でもなければ、騎士でもない。一人の剣士だ。ただ、この時代において、何に剣を掲げているかは……貴方もわかるでしょう?」

 

「そういうことか……」

 

 俺が言いたかったことが分かったのか、元通りの顔色に戻ったグレアム氏が静かに頷く。ここら辺は同じである。ただ、俺の場合は怒りや恨みは持ち越さない。その場で何とかできなかったらそれまでだ。2度目3度目の接触があれば別だが。

 

「では、俺はこれで」

 

「ああ」

 

「そうそう。ティオレさんは今年で引退するでしょうが、その娘のフィアッセさんがその意思を継いでいます。機会があればきいてみるといいでしょう」

 

 それだけ言い残し、部屋を出るとクロノが呆れ顔で壁に寄りかかっていた。

 

「君が一瞬だけど、剣呑な気配を出したときはどうするべきか非常に悩んだぞ」

 

「悪い悪い」

 

 文句を言ってくるクロノに軽く謝りつつ廊下を歩く。

 

「しかし、悪かったな。君にしても時間が足りないときに」

 

「かまわんよ。あの人とは一度会いたいと思っていたからね」

 

 あれだけの恨みを持っていたから、もしかしたら懲りずにって思ったが、実際会ってみれば、憑き物が落ちたような顔をしていたから大丈夫だろ。

 

 まっ、はやてやあいつらに関してはクロードがいるし、あいつがやらなきゃな。

 

「しかし、君の考えは聊か危険だな」

 

「悪いが、これだけは譲れなくてなぁ……」

 

 クロノの言いたいことも分かる。俺の倫理観という枷はかなり緩い。いや、もしかしたら存在しないかもしれない。それが分かるから今のうちから釘を刺しているんだろうな。

 

「まぁ、心配するな。命の危機に直面しない限りは大丈夫だ」

 

 進んで人を斬りたいわけでも、殺したいわけでもない。ただ、必要ならばやるだけだ。

 

「君の心配はしてないが、君の周りがね」

 

「あぁ……むしろ、あいつらには確り釘を刺してくれ」

 

 喜んで飛び込むわけではないだろうが、事情を知れば、危険だろうが何だろうが飛び込むだろうし。

 

「んじゃ、目的も終わったし帰るわ」

 

「君達が、無事に合格することを祈っているよ」

 

 クロノと別れて、家路に着く。さてと、どこまで上手くやれますかね?

 

 

 

 

 

「はー。つまり、春ごろに可笑しかったのは、魔法関係でってことだったわけね」

 

「うん。ごめんね、教えられなく」

 

「いや、そりゃしょーがないでしょうが……このバカチン!」

 

「にゃぁっ!?」

 

 アリサたちにも説明をしなければいけないのをメールで思い出し、色々とやる前にうちに呼んで説明している。

 

「い、痛い……」

 

「そりゃ、私にそっち関係では役にたたないでしょうが、それでもたとえ話で相談してくれたら、何か言えたかもしれないでしょうが!」

 

 アリサに思いっきり拳骨を食らい、天辺を押さえながら説教を受けるなのは。

 

「紅莉だと、昔のことで色々とあったから、あ、納得できるわーで終わるけど、あんただと話は別よ!」

 

「これは、信頼の現われなのだろうか?」

 

「どうなんだろ?」

 

 アリサの評価に微妙な顔をしながらすずかに尋ねたのだが、すずかも微妙な顔をして答えが出ないようだ。まぁ、銃相手に立ち回ったからなぁあの時。

 

「なんか、紅莉君に対して酷くない?」

 

「シャラップ!今はあんたの話よ!」

 

 その後もかなりの時間、なのはは一人アリサの説教を受け続ける羽目となった。

 

「てか、すずかが知っていたのは別の意味でショックだったわ」

 

「あ、私もそれ気になっていたんだよね」

 

「え、えっと……」

 

「前にちょっとなぁ。それが何かは俺からは言わんが、そのときはそれを使わなければいけない状況だったとだけ言っておく」

 

 すずかが言いにくそうだったので真実は語らずに、知っている経緯だけを教える。

 

「まさか、あんたの魔法を知ったから秘密保持で婚約者にしたわけ?外道と思っていたけど、そこまでとは思わなかったわ」

 

「そうなの!?」

 

「なわけあるか!忍さんから言われたんじゃボケ!」

 

 てか、外道だと思っていたってなんだよ!?俺って、どう思われているんだよ!?あと、なのはは何本気で信じているんだよ!?

 

「えっと、その、ね?詳しくは言えないんだけど、うちの一族もわりと旧家で色々と変な掟があって、紅莉君はそれに巻き込まれて……結果的にラッキー?」

 

 おい、すずか。お前はお前で何を口走ってるんだ?

 

「え、紅莉……すずかが婚約者、なの?」

 

「まぁ、色々とややこしい事情で?」

 

「ぐす……」

 

 フェイトが俺とすずかが婚約者とは知らなかったのか、かなり驚いていたのだが、俺が肯定すると、泣き出してしまった。色々と言い訳したいのだが、すずかがかなり勝ち誇った顔をしているし、俺がこれ以上何かを言うと、さらにややこしくなりそうだ。どうしよ?

 

「ふぇ、フェイトちゃん大丈夫だよ!……って、ことだから、ね?」

 

「ほ、本当に?」

 

「うん。すずかちゃんがそう言っていたし、紅莉君も肯定していたし、忍さんにも確認取ったから」

 

「わ、分かった」

 

 なのはがフェイトの耳元で事情を話してくれたおかげで泣き止んでくれた。

 

「こういうのをなんていうんだっけ?もげろだっけ?爆発しろだっけ?」

 

「どっちもあっているなぁ……けど、それは兄さんに言ったほうが……いや、決めたのか兄さんは?」

 

 牽制しだした、3人をほっておいて、アリサとたわいない話をする。しっかしなぁ……

 

「そんで、どうするつもりよ」

 

「さてな」

 

 アリサの問いかけにとぼけながら、明後日の方向を見つめる。今の歳でそんなことを言うのはマセすぎだろ。現実逃避で当分は逃げ切ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 約束の日がやって来た。とある廃ビルの中、結界を張り、見届け人として美由希と水樹さん、美沙斗さんがやってきている。桃かーさんなどは、なのはや俺達を信じているといって、家で待っている。まぁ、桃かーさんが来たら来たで問題だし、美沙斗さんや水樹さんにそれとなく、お願いしていたしな。

 

 フェイトなども来たがっていたが、今回は家族の問題だといって遠慮してもらった。

 

 同時に別の場所でやるかと思ったのだが、順番にやるようだ。最初はなのはで次に俺のようだ。

 

 正面に相対するなのはと兄さん。兄さんの気配は高町家の兄ではなく、一人の剣士だ。

 

 なのはもセットアップして杖を握り正面に立っているが、兄さんの気配に飲まれており、足が震えているのが分かる。

 

 今まで、優しく少し意地悪な兄が、今は一介の剣士だ。なのはも色々な戦いを潜り抜けては来ただろうが、兄さんのような殺意は感じたことはないだろう。

 

 ヴィータと戦ってはいても、敵意はあっても殺意はなかった。初めて感じるそれに押さえが効かないんだろう。

 

「どうした。始まる前からその様子では到底、俺を納得させられんぞ」

 

 珍しいな。兄さんが戦いの前に必要もないことを喋るなんて……いや、違うか。

 

 これは、戦いではないな。あくまで確認でしかない。

 

 兄さんの殺意が徐々に濃くなる。まぁ、本気の殺意に比べればまだまだ温いけど。

 

「恭也も意地悪だな」

 

 俺の隣にいるとーさんが小さく呟くのに俺達は頷く。

 

「まっ、丁度いいんじゃないかな。とーさん、美由希じゃなのはに大してできないだろうし」

 

「紅莉はどう?」

 

 とーさんの反対側にいる美由希が尋ねてきた。

 

「無理」

 

 訓練などで刃は向けるかもしれないけど、本気の意味でなのはに刃は向けられない。それは、フェイトでもそうだし、すずかだってそうだ。

 

 一言だけいって、なのは達を見る。なのはは未だに震えるその足に確りと力を込めて立っているが、既に息が荒くなっている。

 

 目に見えないプレッシャーにより、体力が削れているんだろうな。

 

「どうした。お前が進みたいといった世界はこんな殺意は無い世界なのか?」

 

 静かに尋ねる兄さんだが、殺気がさらに濃くなる。それにより、息を荒げ返事ができないなのは。

 

「それでも私は!」

 

 荒げる呼吸の中でも、それでも声を張り上げて兄さんに叫ぼうとするなのはだが、兄さんが抜いた刀にぎりぎりで悲鳴を洩らさなかったものの、完全に怯える。

 

「言ったはずだ、覚悟を示せとな。それは、口だけで済むようなものではないぞ」

 

 まっ、なのはも口で説明して納得してくれるなんて思ってないだろう。それで済むならあのときに賛成していたはずだ。

 

「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術師範代、不破恭也……推して参る」

 

「っ!?」

 

 なのはの目では兄さんが消えたように見えただろうな。魔導師と戦ってみて分かったのは俺達と魔導師では初動に違いがありすぎる。

 

 正統派の魔導師であるなのはにとって、俺達は天敵過ぎる。

 

 とはいっても、なのはもフェイトもクロノも空を飛べるというアドバンテージでどうとでも覆せるけど。ただし、それは空がある場合であって、この閉鎖空間ではなのはにアドバンテージなど一切存在しない。

 

 兄さんが真っ直ぐ進み、射程距離までつめ、刀を振り上げる。

 

 この場で、他の人がいたら、何かしら叫ぶだろうが、美由希ですら必死にこらえ、それを見届ける。

 

「なぜ、何もしなかった」

 

「私の言葉を嘘にしたくなかったから」

 

 後、1cmでも前に進んでいたらそのまま斬られていただろうという地点で刀を止めてなのはに尋ねる兄さん。

 

 その兄さんを真っ直ぐ見つめて、答えるなのはの瞳は力強い。

 

「私はただ、魔法を乱暴な力にしたくないの。だからこそ、お兄ちゃんと対峙するって決めたときから私はこうしようと思っていたの」

 

 おそらく、俺がなのはの立場でも同じ手段を選ぶ。力を正しく使ってもらいたいというならば、それを力で示すのは間違っている。この答えは一つ、なにもしないが正解だ。なのはは恐らくずっと考え、悩み、そして答えを出したんだろう。

 

「しかし、今は止めたが、今後出会う奴は止めることは無いぞ」

 

「うん。その時は戦うよ。でも、それは今、この状況じゃない」

 

 少しの間、見つめあう二人だが、兄さんがため息ともつかない息を吐き出し、刀を引くと、なのははその場に崩れ落ちるように座り込む。

 

「大丈夫か?」

 

「にゃはは……腰が抜けちゃった」

 

 なのはの傍に寄っていき尋ねると、どうやら腰が抜けてしまったようだ。まぁ、あんな状況で兄さんの殺気に押されることも無く、自分の意見を貫き通した後なんだ、気も抜けるか。

 

「ご苦労さん」

 

「うにゃー、やめてよー」

 

 少し乱暴だが、頭を撫でてやると、嬉しそうに文句を言ってくる。

 

「なのは」

 

「はい」

 

「頑張れよ」

 

「うん!」

 

 兄さんの言葉に力強く頷くなのはに兄さんも満足したのかそのまま美由希たちの下へと戻っていった。

 

「立てるか?」

 

「うん、なんとか」

 

 よろよろと立ち上がるなのはに手を貸して、兄さんの下へと寄っていく。珍しく、兄さんに甘えるなのはに兄さんも仕方ないといいつつも嬉しそうになのはのしたいがままにさせる。

 

「次は、俺達の番だ」

 

 なごやかな雰囲気になりだしたころ、唐突にとーさんが口を開いた。

 

「言っておくが、俺にはさっきの答えは通じんからな」

 

「安心しろって、母さんの下に送ってやるから。そして、切り刻まれろ」

 

「物騒だな!?」

 

 とーさんに軽口を返しながら、舞台の場所へと向かっていく。対峙するはかつての最強の一角の剣士。とーさんは至れなかったといっていたが、母さんとタメ張っていた時点でそんなことはない。

 

 怪我で前線から退いてしまったが、その気迫はいまだ健在で俺は軽口を返すことでそれを悟られないようにする。

 

 兄さんの全力の殺気とも違う。兄さんでもまだもてない経験による気迫だ。

 

 前線を退きながらも、未だに体をひそかに動かし、ここ数日は水樹さんが苦手としている天命流の針を無理やりでも打ってもらって、体を万全に戻そうとしていたのは知っている。

 

 そんな歴代の剣士が俺の前にいるのだ。

 

「紅莉。俺が何故、覚悟を見たいといったかは分かるか?」

 

「いくつかは思い浮かぶ。が、恐らくはとーさんは俺の覚悟とは別の部分を見ようとしているんだろう?」

 

 そもそもだ。俺に覚悟云々の話は遅すぎる。尋ねるならばとっくに尋ねてなければ可笑しいのだ。

 

 真剣を持ち、毎日遅くまで鍛錬を重ね、命のやり取りの仕方を学んでいる俺に今更覚悟などを尋ねても分かりきっている。そもそも、そんな覚悟はアリサたちを助けるときには既に持っていた。水樹さんと戦うときもそうだ。相応の覚悟を持たなければ剣など振れない。

 

「そうだ。君は言ったね、戦闘経験が積めるのは願ったりだと。正直に言おう。その考えは危険だ」

 

「やっぱりね」

 

 とーさんが引っかかっていたのはその部分だろうとは思った。水樹さんや美沙斗さんも必要ないのにここまで来たのは俺のそれが引っかかっていたからだと思う。

 

「確かに、経験が積めるのはとてもいいことだと思う。が、その歳からその考えは危険すぎる」

 

 とーさんの言葉を静かに聞きうける。正直に言えば、それは口が滑ったことだ。本音の部分はなのはとフェイトが心配だから、管理局に入っていればいざというときに動けるというものだ。

 

 ただ、それだけでなく、経験も積めるという一石二鳥というのが魅力的なのだ。

 

 恐らくは、この前の戦いで現れた狂喜の部分が残っていたんだと思う。

 

 これから、歴代の剣士を相手にするというのは心躍るが、この前のような感覚は無い。とーさんが相手だからとか、ではなく、これが兄さんだろうが誰だろうとかわらない。

 

 これから、上手く付き合わなければいけないのだろうか?それは分からない。

 

「紅莉のそれは俺も経験はある。恐らく恭也もだろう。あの子も武者修行などと馬鹿なことをやったのはそれだろうしね。この中で唯一ないとしたら美沙斗と美由希くらいか」

 

 とーさんが見届け人たちがいるほうを見たので俺も見ると兄さんや水樹さんは、ばつが悪そうな顔をして、美沙斗さんは呆れ顔だ。なのはと美由希は何を言っているかは分からないようだけど。

 

「悪いが、叩きのめしてでも封印させてもらう」

 

「安心しなって、もうなりを潜めたよ。ただ、叩きのめしたら余計にでないか?」

 

「俺が当分の目標となればいいだろう」

 

 なるほどな、考えたなとーさん。

 

「だけど、今言ったよな?なりを潜めたって。この感覚とは上手く付き合っていくさ」

 

「悪いけど、そういわれて、はいそうですか、って信じられるものでもないのもわかるだろう?」

 

 まっ、そうだろうけどね。あくまで感覚の話しだし。

 

「いくぞ」

 

「来い」

 

 掛け声と共に俺に向かってくるとーさん。その速度は兄さんよりも遅い。タイミングを取り、一気に抜刀しようとしたが。

 

「ちっ」

 

 バックステップで間一髪でとーさんの斬撃を避ける。

 

「緩急か、緋凰の十八番を取りやがって」

 

「勢いだけでいけるのは、恭也の歳ぐらいまでだ。いくら、俺達が戦闘において肉体を活性化しているからと言って、体の衰えは存在する。それを無視して勢いでやっても自滅するのが自明の理だ」

 

 言っていることは納得できる。確かに、見た目が若いからと言って、昔のままでい続けられることは出来ない。

 

「だからこそ、俺達は技術を磨き、戦術を考え、敵を倒す。そして、生きてきた年月はそのまま経験となる」

 

 さっきは迫ってくるとーさんに向けて葬刃を叩き込もうとしたら、距離が半分くらいになったら一気に加速しやがった。そのせいでタイミングを失い回避するしかなかった。

 

「恭也も大分経験を積んだが、やはりまだまだ俺や美沙斗には遠く及ばない。あまり嘗めるなよ小僧?」

 

 とーさんの気迫が膨らむ。その気迫に呼応するかの如く狂気が出てこようとするが、それを静かに落ち着かせる。

 

「なるほどね。謝ろうとーさん。なめていた訳ではないのだが、心のどこかでそう思っていたのかもしれない。けど、それはいまの一撃で終わりだ。

 緋凰月陰流継承者、緋凰紅莉。全霊を持って、示そう」

 

 力を抜いて、刀に手を添える。それを見たとーさんも再び構える。

 

「ふっ!」

 

 お返しとばかりに一気に刀を振り上げるもとーさんはきちんと見切り避けるが、その顔は驚愕している。

 

「なんだ、今の速度は」

 

「ガキのころから薙ぎ払いばかり磨き続けてきた。上まで持っていけない俺が苦肉の策と考え、やれることをやっていた結果だ」

 

 とーさんから見ても俺の葬刃はかなり早いようだな。

 

「なるほどな。お前の刀の長さだと小さい頃は重すぎる部分があるか」

 

「別に全く振れなかったわけじゃない。けど、どんなに体を上手く使っても限界は直ぐにくる。ならば、できることを徹底的にやるしかなかった」

 

 今でも、刀は重い。が、ある程度成長した現在では体の使い方でしっかりと振れるようになった。

 

「お前にはもう、納刀している時間はやらん!」

 

「どうかな!」

 

 とーさんの刺突を交わしながら、返しの刃を放つも、弾かれる。刃を交差させていたら、突如嫌な気配が背中を駆け上ってきた。

 

「つっ!」

 

「よく避けれたな。勘はかなりいいようだ」

 

 今まで一刀しか使ってなかったとーさんの手が二刀になっている。左手が死角に入ったのを見計らって抜刀したのだろう。

 

「ちっ、時間制限があるっていうのはここまできついか」

 

 既に、俺ととーさんが戦い始めてから4分は経過した。とーさんの体のタイムリミットが迫ってきたのか、息が荒い。それが忌々しいのかとーさんの眉間には皺がよっている。

 

「これで終わりにさせてもらう」

 

 とーさんが刀をしまう。どうやら、抜刀系の奥義でとどめをさそうとしたのだろう。

 

 俺も抜刀で相対しようと考えたが、やめてある意味でとーさんと因縁がある技の構えを取る。

 

「その構えは……何故お前がそれを?」

 

「ちょっと、この前の戦いでいい夢を見せてもらってね。その時に、ね」

 

 俺の独特の構えからとーさんは俺が何をしようとしているのか悟ったのだろう。一瞬笑ったかと思ったらとーさんの姿が掻き消えた。

 

 神速に入ったのだろう。時間にして一瞬だが、それを理解した俺は彼方を思いっきり振りぬいた。

 

 

 

 

 

 

「だーーーっ!負けたーーーーっ!」

 

 大の字で倒れて、文句を言い放つ俺。正直、なんの強化もなしに瞬華終刀なぞ使えるはずも無く、見事に防がれ薙旋をもろに食らい地面に倒れていた。

 

「いや、焦った。もし、完璧に撃てるなら俺の首なかったんじゃないか?」

 

 とーさんもどうなるかまでは予測できてなかったようで、俺の瞬華終刀が拙すぎると分かって一気に勝負を決めたようだ。

 

「私もびっくりしたよ。紅莉からあの秘伝書を見せてもらったけど、あれは乗ってなかったのにね。いや、本当に魔法って何でもありなんだね」

 

「兄さんの葬儀をしなくて助かったよ」

 

 大人組みが色々と好き勝手言っているが、子供組みは何がなにやらといった表情だ。

 

「紅莉は何をしようとしたんだ?あの構えは初めて見たが」

 

「んー……しいて言えば、姉さんが作った技かな?」

 

 詳細は教えずに、どんなものだけかは教える水樹さん。まっ、身内だからと言ってすべてを語ることもないだろうからね。

 

「ちなみに、あれを避けるために神速の二段掛けを覚えたからなぁ」

 

 しみじみと語るとーさん。確かに、御神の閃に通じるものがあるし、避けるとなるとそれしかなさそうだ。

 

「因みに、姉さんがそれを作ったの14のころね」

 

「化け物が!」

 

 思わず叫んでしまった。なんで、そんなぽんぽんとできるわけ!?

 

「まっ、一瞬危ない場面もあったが、これなら合格かな?」

 

「ありがとうございます」

 

 立ち上がり、とーさんに頭を下げると、乱暴に撫でられる。

 

「頼むぞ紅莉」

 

「分かっている」

 

 約束は違えないさ。こうして、俺となのはは二人ともども、管理局入りを許可された。




†久遠放送局†

久遠「よし!次こそ、久遠のターンだ!」

アリサ「行き成りそれ?」

久遠「だって、優に10話以上出番なかったんだよ?」

アリサ「でも、次はなんかIF・NG集をするって話じゃなかったっけ?」

久遠「なん…だと…」

アリサ「もしも、あの場面で~とか、そういった話を書く気まんまんよ作者は」

久遠「どうすればいいんだ!?」

アリサ「さぁ?」

久遠「くそ!ひよった、ツンデレじゃ相手にならない!作者をよべい!」

アリサ「なによそれ!?」

久遠「冗談だよ。では、次回もお楽しみに」
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