魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第54話

「いい汗掻いた」

 

「そうだな」

 

 俺と兄さんは掻いた汗を拭いながら、水分を補給する。後ろからはなにやら呻き声が聞こえてくるが、いつものことだ。

 

「てか、なんで美由希がそっち側なんだよ」

 

「だって、恭ちゃん容赦ないんだもん」

 

「当たり前だ。お前はこいつ等よりも長くやっているだろうが。精進しろ馬鹿弟子」

 

 文句を言う美由希を一刀両断。兄さんの化け物具合も酷くなってきたもんだ。この人数相手に強弱を付けられるまでなったとか。

 

「てか、なんで紅莉もそんなに余裕なの?」

 

「余裕は無いよ。まぁ、ここ最近は調子がよくてねぇ」

 

「動きにムラがなくなってきたな。体力などはまだその年齢だから仕方ないが、それ以外の部分でペース配分がかなり上手いからだろう」

 

 よく見ているなぁ。闇の書に捕らわれた時に夢とはいえ、母さんの指導が生きている。そのおかげか、ここ2ヶ月程度でかなり巧くなったと自負できるほどにはなってきている。

 

「流石に生身でまだ美由希には勝てないのがなぁ」

 

「あれでも、俺の弟子だ。そう簡単に負けたら今以上の扱きをしなくてはいけなくなる。それに、これ以上扱いて壊すのも、な」

 

「なるほど」

 

「二人とも本当に人間!?言っていることが酷すぎる!」

 

 失礼な。俺は兄さんと違ってまだまだただの人間だよ。

 

「さてと、分かったか?これが、魔法やなんだというものがなく、人が徹底的に鍛えてきたからこそ手に入れた力だよ」

 

 倒れている連中に向かって問いかけるもまだまだ潰れていたいらしく答えは返ってこなかった。

 

 倒れているのはなのは、フェイト、クロード、シグナム、ヴィータ、ザッフィーである。なぜ、こうなったのかを改めて思い出す。

 

 それは突然のことだった。

 

「ねえ、紅莉君やお兄ちゃんって魔法を使わなくても強いんだよね?」

 

 日曜の午後。俺も兄さんも珍しく予定が入っていなく、縁側でノンビリと茶を啜っていたら、なのはとフェイトが神妙な面持ちで尋ねてきたのだ。

 

「なのは、兄は魔法など使えないぞ」

 

「いや、そうじゃなくてですね」

 

「兄さん、意地悪が過ぎるぞ」

 

「楽しくてな」

 

 なのはが何を言いたいかを分かった上でからかうなんて、なんて意地悪な人だ。楽しいのは分かるが。

 

「もう!だから」

 

「なのは、落ち着いて」

 

「諦めろフェイト。高町家でのなのはの立ち位置は弄られキャラだ」

 

「そんなのはクロード君に譲るの!」

 

「アイツは八神家だろうに」

 

 アイツの場合は一家関係ないけど。

 

「そうだなぁ……地上戦限定ならシグナムなんてちょろいだろ。更に言うならたとえバリアジャケットやシールド系の魔法を使ってもね。因みに俺もやろうと思えば出来なくもないが、恐らく先に体力が切れる」

 

 ぷりぷりと怒るなのはをみつつ、尋ねてきた答えを返す。

 

「紅莉。俺は魔導師とは戦ったこと無いが、そうなのか?」

 

「あれ?お兄ちゃんって紅莉君と戦ったことあるよね、一杯」

 

「こいつのそれは、能力が上がるだけで他と違うといわれたのだが、そうなのか?」

 

「いや、それであってる。俺のジャケットの性能の大半は関節補強と衝撃緩和が殆どだしね」

 

 俺のジャケットはフェイトに近いがちょっと違う。俺の動きに体がついてこないのは知っていたので、それを補うための構成にしたのだ。なので、俺のジャケットは防御力はあまりない。避ければ問題ないし。

 

「それに普段の俺は生身でしか兄さんとやってないよ」

 

 シグナムやクロードとは前提が違うしなぁ。あっちは、魔法に剣技を合わせているが、俺の場合は剣技に魔法を合わせている。

 

「行き成りどうしたのだ。なのはが今までそういうことを聞いてくることはなかったろう?」

 

「だなぁ。前からちょいちょいそんなことは聞いてきたが、俺だけでなく兄さんにもっていうのは初めてだな」

 

「あのね、ここ最近、紅莉君に色々と教えてもらっているけど、紅莉君より強いお兄ちゃんもどうなのかなって気になって」

 

「そうなのか?」

 

「つっても、基本的なことだけだよ?生粋の剣士の俺が魔導師に教えられることなんて少ないし」

 

 ぶっちゃけて言えば剣を振り回すしか能が無い俺が魔導師に指導なぞちゃんちゃら可笑しい話だ。それでも、武器を振り回す人にアドバイス程度は出来る。

 

「それでね、その……お兄ちゃんたちの訓練に興味が出て、参加してみたいなぁって」

 

「ほう……」

 

 うっわぁ、兄さんが面白そうなものを見つけた目になっているよ。普段は感情を殺している部分があるのに。

 

 それに、恐らくは嬉しいんだろうなぁ。前に言っていたけど、兄さんは御神流をやるかと前に尋ねたそうだ。なのはは才能がないと諦めていたらしいけど。

 

 やる前から諦めていた子が、改めて知りたいと言ってきたのだからな。とーさんはどうなんだろ?進んでやれとはあの人のことだから言わないだろうけど。今度聞いてみるかな。

 

「あの、なのはがねぇ。っと」

 

 夜の鍛錬のときに美由希に昼間にあったことを教えてあげると、美由希もなにやら感慨深い感じの感想を洩らした。まぁ、今までうちの中で大人しかったなのはが、言ってきたのだから美由希もそういう感想を持つか。

 

「はっ!まぁ、散々俺が兄さんのが強いって言っていたのが原因かねぇ」

 

「どうなんだろ?それだけで、なのはが言ってくるとは考えにくいけどね。隙あり!」

 

「ぬるいわ!或いは、シグナムがしつこかったのかね?」

 

「お前等、喋りながらやれるほど余裕があるということだな?」

 

「「そんなことありません!」」

 

 試合中に喋るのは流石に厳禁だったか。けどさ、それぐらいしか喋る暇なかったんだもん。それに、後半になれば喋る余裕なくなるし。

 

 その後、きっちり美由希に一本とられ、休憩中に久遠と戯れ、家に帰り、とーさんに相談して土日を利用して合宿することに決まった。

 

 

 

 

 

 

 

「流石に、生身だとシグナム相手でも余裕あるね」

 

「馬鹿を言うな。鋭い剣筋に、一撃一撃に必殺の意思がある攻撃があるものだぞ」

 

 まぁ、確かにそうなんだけど、逆に言うと、俺は兄さんのような高速型のほうが相手をしたくない。

 

 一撃必殺型なんて、動作の初動さえ見極めれば避けるのは容易だし。

 

 それになんたって、兄さんは奥義を一切なにも使ってない。まぁ、技を見せびらかす必要も、不用意に使う必要もないから、仕方ないかもしれないけど。

 

 全てが、攻撃を避け、捌き、隙に付け込んで攻撃を加えていたからなぁ。

 

「馬鹿な……」

 

 地に伏しながら、シグナムが悔しそうに呟く。まぁ、シグナム、ザッフィー、美由希と相手にしながらこの余裕だからなぁ。

 

「てか、飛針も鋼糸も使ってなくてよくいけたね?」

 

「お前のがいやらしい分、素直な動きに多少は手間取ったがな」

 

 ああ、なるほど。最初の頃のシグナムの動きに反応が微妙だったのはそういった理由か。だが、逆に素直な分、鋼糸や飛針無しでやれたというわけか。

 

 俺だとどうだろ?幻武を使えば確実だけど、使わないとすると、きついかな。ここ最近の兄さんは奥義を使わず、純粋な剣技を使って質を伸ばすやりかたをしているし、俺も美由希もそれに賛同している。だからこそ、今の兄さんのように出来るかと聞かれても微妙としか答えられないな。

 

「なのはは、体力あるけど、無駄が多いから疲れるな。フェイトの場合は動き回りすぎて体力を自然と減らしているかな?クロードはその体で大剣は合わないな」

 

 俺が相手してやったら連中に指導して息を改めて整える。流石に3対1は緊張感がありすぎて疲れた。

 

「紅莉」

 

「んあ?」

 

 これからどうしようと悩んでいたら兄さんに話しかけられ、変な返事をしてしまった。

 

「皆地に伏せていて、俺等二人が残っている。やるなら、最後までやったほうがいいと思わないか?」

 

「つまりは、立っているのは一人で十分と?」

 

 俺の問いかけに答える代わりに木刀が振るわれるのをバックステップで避ける。が、着地の瞬間を狙い、兄さんが距離をつめてくる。それを姿勢を制御しながら兄さんの来る位置に木刀を振り下ろすと兄さんが止まる。

 

「やれやれ」

 

 肩をすくめたくなるのを自制して、構える。左手に木刀を持ちだらんと下げる。兄さんもゆっくりと構える。

 

「はぁっ!」

 

「しぁっ!」

 

 木刀同士がぶつかり合い、派手な音が鳴り響く。開いてるもう一方の木刀で俺を狙ってくるが、見えているから問題はない。腋下に攻撃してきたそれを身をつめて効果をなくすも、馬鹿力の兄さんの攻撃のために、肋骨から軋むような感じがするが、この程度なら問題はない。

 

「はぁっ!」

 

 距離をつめ、右手で兄さんの顎を狙うが頭を直前でずらされた。

 

「ちぃっ」

 

 舌打ち一つ、その後に兄さんの腹に蹴りを入れようとしたが、相手も同じ考えだったのか足の裏どうしがぶつかり合い、力負けしてそのまま飛ばされる。

 

 さて、どうするかな。力や練度で兄さんに勝てない。セットアップすれば同程度まではあがるだろうが、意味なくセットアップする気もないし。

 

「まぁ、たまには考えなしでもいいか」

 

 色々と考えて動くのも重要だが、たまには本能任せも違った面が見えてくるかもしれないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果は当然負けた。2~3発はいいの入れられたと思うけど、いかんせんまだまだ俺の攻撃は軽いのか、後に続かなく結局押し切られて地に伏せてしまった。

 

「いつも、こんなことをしているのかお前達は?」

 

 なにやら、ショックを受けたようなシグナムが尋ねてきた。こちらとしては、いつもどおりで何を驚くのかよくわかんないけど。周りをみれば、シグナム以外も思ったのか、シグナムと同じ目をしていた。

 

「さてと、1時間くらいの休憩後はお楽しみにしていた奴だよ」

 

 そういって、俺らは休憩所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「お、お帰りー」

 

「主はやて、ただいま戻りました」

 

 休憩所でははやてやリインフォースが食事の準備をしてくれていた。シグナムやクロードはすぐさま、はやての元へと向かっていく。

 

「しかし、人数が多いと、密度がどうしても薄くなるね。多種多様の戦闘を経験できるのはいいけど」

 

「まあな。しかし、そこは己の工夫次第だな」

 

「う~ん。なんで、紅莉はここまで恭ちゃんに似ちゃったの?」

 

 美由希がなにやら失礼なことをほざいた瞬間、兄さんに頭を掴まれる。

 

「ごめんなさ……痛い痛い痛い!」

 

「まるで、俺が悪いような言い方だな、愚妹よ」

 

「だ、だって、紅莉も何だかんだで剣術馬鹿……イタタタタタタッ!」

 

 美由希余裕あるなぁ。この前、なんだか握力が100kg近くなったといっていた兄さんのアイアンクローを食らってあんなこと言えるし。

 

「それで、どうやったん?魔法無しで恭也さんとのバトルは」

 

「はっ。5分程度でやられてしまいました」

 

「将が5分?本当なのか?」

 

「なっさけねーなぁ」

 

「ヴィータちゃん、ダメよそんなこと言っちゃ」

 

 どうやら、八神家はシグナムが兄さんにいい感じであしらわれたことが不思議のようだ。

 

「リニス、飲み物配ってくれ」

 

「はい」

 

 リニスにお願いして、皆にドリンクを配る。流石にこの練度での鍛錬だ、なじみの無いやつらは普通に脱水症状に陥る。

 

「お前等もしっかりストレッチやっとけよー」

 

 体をほぐしながら、リニスから飲み物を受け取った連中にそう告げるとのろのろとやり始めた。

 

「けど、紅莉もよく無人島なんていい場所もっていたね」

 

「母さんが生前に買っていたようだよ。まぁ、そのままじゃ何も出来ないから平日の夕方にこっちに来て、リニスと一緒に片付けを行ったけど」

 

 しかも南に位置する場所だから冬でも暖かい。夏は暑いだろうけど。

 

「ふむ、長期休みの鍛錬はこっちに来るか?」

 

「それもいいけど、ただ移動にまる一日かかるけど」

 

 兄さんが顎に手を添えて考え込む。あの山はあの山で利点がある。近場ということでぎりぎりまであそこにいて鍛錬できるから、移動に時間はかからない。

 

「まぁ、今はそんなこといいだろ。期待しているよ」

 

「やれやれ。あまり期待されるのは好きではないのだけどな」

 

 肩を竦める兄さんはそのままその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ、これから御神流剣士高町恭也VS古代ベルカ騎士シグナムの試合を開始する」

 

 今回のメインイベント。結局兄さんの実力は口頭では説明しづらいものがあったので、こういう形となった。

 

 クロードとシグナムのどっちにしようか考えたけど、シグナムが私が!という声にクロードが譲ったのだ。この戦闘狂が。

 

「シグナムは、飛行は無しな。兄さんは、殺すなよ?それ以外は好きにせよ。危なくなったら俺が割って入るから」

 

「緋凰、本当にいいのか?」

 

「いいもなにも、さっき、生身でいいようにあしらわれた奴が言えた台詞か?」

 

 俺の言葉にうっとつまるシグナム。シグナムの場合は飛行は出来ないが、それ以外の魔法は使っていい。つまるところ、高速移動もシールドも蛇腹剣もカートリッジも何でもありだ。

 

 これは、兄さんも同様で鋼糸も飛針も使いたい放題。兄さんには手加減すると怪我では済まないと伝えているので問題ない。

 

「それでは、はじめ!」

 

 手を下げて、俺も下がり観戦席の元へと行く。後は、緊急時以外は大丈夫だから、そっちでも問題ない。

 

「ねえ、紅莉君」

 

 下がると同時になのはが声をかけてきた。

 

「なんで、二人とも動かないの?」

 

「クロード」

 

 俺が答えてもいいけど、ここは理解しているかを試すためにクロードに話を振る。

 

 なのは以外に理解していない人間は……リインフォース、シャマル、はやてか。後方系のやつ等は流石にわからんか。

 

「多分だけど、今の二人は読みあいをしているんだ」

 

「読みあい?」

 

「ああ、考えもなしに動いちゃ予期せぬ事態に対応できないからね」

 

 そういって、こっちを再び見てくるクロード。

 

「50点」

 

「えぇっ!?」

 

「違うのか?」

 

 ここで、声を上げたのはフェイトか。ヴィータも驚いたような目をして尋ねてくる。

 

「恭ちゃんはそうだけど、シグナムさんはもう一つの理由で動けないんだよ」

 

 すかさず、美由希がフォローして答えを言ってくれる。

 

「もう一つ?」

 

「ほれ、見てみな」

 

 首を傾げるフェイトに指で視線を誘導してやる。未だに最初の位置から動いていない二人へと視線を戻す一同。

 

 

 

 

「どうした、仕掛けてこないのですか?」

 

「くっ」

 

 恭也の問いかけに苦悶の表情を浮かべるシグナム。

 

「いいか?シグナムは目の前に相対した兄さんに気おされているんだ。そんな状態で行き成り仕掛けたら、一瞬でやられる。って、シグナムの脳裏に浮かんだんだろうな」

 

 紅莉の言葉に納得する一同。シグナムの表情を見れば、今の説明に納得がいくからである。

 

「いい加減、見詰め合うのもあれだからな、こちらから行かせて貰う」

 

「っ!」

 

 恭也が体を屈め、地をける。その光景を目の当たりにしたシグナムは息を呑むと同時に動く。ただ、そこに棒立ちなど的以外になりえないために、迎撃するためだ。

 

「はあっ!」

 

 大振りな一撃だが、繰り出される速度は馬鹿にならない。それを証明するように、フェイトが息を飲むのを隣にいる紅莉は感じていたが、目の前の試合を見逃さないために視線は前を向いたままだ。

 

「なっ」

 

 シグナムの驚きの声が、その場に木霊する。いくら速かろうが、視認できる速度だった。それゆえに、間に合うはずの斬撃だったが、振り下ろしてみれば、恭也はシグナムが振り下ろした剣の横で刀を振ろうとしていた。

 

「くっ」

 

「はぁっ!」

 

 苦悶の声を上げたのは、意外にも恭也であった。通ったはずの攻撃が服を切り裂くどころか、服に阻まれたのだ。しかも、感触はまるで鋼を殴ったようなじーんとする痺れるものであった。

 

(あれが、紅莉の言っていたバリアジャケットというものか)

 

(危なかった。恭也殿の攻撃がもう少し鋭ければ確実に斬られていた)

 

 お互いに無言でジリジリと間合いを計る。その顔に油断は無い。

 

 恭也は再び地を蹴り、移動を開始する。しかし、今度は真っ直ぐとシグナムに向かわずに斜め前に移動した。一瞬とはいえ、恭也を見失いかけたシグナムもまた、恭也に詰め寄ろうとしたが、突如視界に何かが映り慌てて回避行動を取る。しかし、体勢が体勢だったために、仕方無しにシールドを使い飛来したものを弾いた。

 

 それは、鉛筆大くらいの針であった。恭也は一瞬視界が外すことによりこれを投げるための時間を稼いでいたのである。

 

(あの一瞬で、か。末恐ろしい)

 

 つーと汗が流れるのを感じるシグナム。正直、シールドがなければ今の一撃は自分の生身の部分に刺さっていたはずだ。動き回りながらでその命中精度に肝が冷える思いだ。

 

(だが、このままでは終われん!主はやてが見て、クロードがいる限り!)

「レヴァンティン!カートリッジロード!」

 

 シグナムのレヴァンティンから薬莢が飛び出ると、刀身に炎が纏われる。

 

「なるほど、ああしてみれば、魔法というのは可笑しなものだ」

 

 漫画やゲームではないぞと口の中で呟く恭也。刀身に炎が纏われているのに、剣を持つ本人は気にしたそぶりなど見せない。しかも、勘が告げているのだ。あれは、やばいと。それを、認めると同時に恭也は刀を鞘に納め、抜刀の構えを取る。

 

「陣風!」

 

 剣を振るうと、巨大な斬撃が恭也に襲い掛かる。それと同時にシグナムは納刀し再びカートリッジロードを行う。あれで、倒せるならば、もうけものだが、そんな簡単に倒せるならば紅莉が自分より強いといわないはずだと確信していた。そのための、布石である。

 

「飛竜一閃!」

 

 そして、抜刀から一気にシュランゲフォルムの鞭状連結刃による攻撃を行う。これならば、斬撃を例え避けようとも、落とせると思い。しかし、その思いは打ち砕かれる。

 

 技を放った一瞬の硬直中にそれは見えた。どこか、ゆっくりと流れる映像の中、黒衣の剣士が自分に肉薄し、腰に挿したその刃が抜かれる瞬間を。

 

――御神流・奥技之六

 

 抜刀し、一撃目にシグナムの腕を弾き、更にそのまま間髪いれずに背後から斬りつけ、三回、四回と攻撃が続いた。

 

――【薙旋】

 

 あたりに砂埃が舞い上がっていたが、それが収まり、立っていたのは恭也一人であった。

 

 恭也は紅莉に視線をやると、紅莉も分かっているとばかりに頷き手を上げ宣言した。

 

「勝者、高町恭也!」

 

 宣言されると同時に、八神家は倒れているシグナムのもとへと駆けつけたのであった。

 

 

 

 

 

 

 やれやれ、シグナムが飛竜使ったときにとめようかと思ったけど、兄さんの視線で止められてやめたけど、いいものを見せてもらえたな。

 

「しかし、薙旋はともかく、神速は使う必要あったの?」

 

「無理を言うな」

 

 最後の攻防のとき、兄さんが神速を使い、シグナムに肉薄したのは分かった。そこから、再び神速に入ったのも分かったが、何で決めたかはシグナムについていた刀傷で判断した。

 

「しかし、あの硬さは何だ。最初に斬ったとき、まるで鋼を殴ったような気がしたぞ」

 

「そこまで、硬かったのか」

 

 兄さんが右手を振りながら、呆れるように愚痴を洩らす。さすが、魔法。一般人と基礎防御が違いすぎるな。

 

「しかたないから、後の攻撃は生身の部分か、徹を込めるしかなかった。だから、早期決着をつけるべくに使ったまでだ」

 

「なるほどねぇ」

 

 兄さんとともにシグナムに視線を移すと、彼女も意識が戻ったのか起き上がっていた。

 

「恭也殿、ありがとうございました。私もまだまだと知りえました」

 

「いや、こちらこそ、ありがとうございます」

 

 お互いに相手の健闘をたたえ、握手する。

 

「さてと、時間はまだまだあるしな、兄さん達は休んでいていいよ。俺らは俺らで鍛錬続けるから」

 

 こうして、合宿は順調に充実した内容で終わった。




†久遠放送局†

久遠「ついに人外がベールを脱いだ!恭也が強すぎる」

美由希「因みに私じゃ無理だからね」

久遠「恭也が強い理由は近くに似たような向上心を持つ紅莉がいるからだよ」

美由希「なんで、二人ともああも人外なんだろうね」

久遠「正直、恭也と紅莉は人外でいいと思う」

美由希「そうだね」

紅莉・恭也「ほう、それで?」

久遠「はっ!?」

美由希「で、出たーーーーっ!」

※しばらくお待ちください※

久遠「美由希ー?生きてる?」

美由希「生きる、生きろ、生きていたーーーっ!」

久遠「あちゃー、精神を殺されちゃった。では、次回もお楽しみに」






美由希「なんで、久遠は無事なの!?」

久遠「何もされなかったよ?」

美由希「贔屓だぁっ!」
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