「凄い人の数ですねぇ」
「毎年、参加者が増えているみたいなのよね」
クイントさんと共にやってきた、DSAAの会場は人人人とかなりの数が揃っていた。
周りを見渡すと、やる気に満ちた顔をし、闘争心があふれ出している。
俺から言わせて貰うなら、始まる前から張り切りすぎじゃなかろうか?って感じだけど、人それぞれだし口には出さないけど。
それと、兄さんにこういった大会に参加すると伝えたら、むしろ積極的に勧められた。
『お前は剣士であろうと拘りすぎだ。魔法という力も持っているならば、それを有効活用せずにしてどうする?
もし、補助の力が不当と感じるのならば、それは持つ者の嫌味にしかならない。
何より、拘りすぎれば、見えてくるものも見えてこなくなる。やってくるといいだろう』
目からウロコである。確かに、俺は剣士であろうと拘りすぎていたのかもしれない。他流派からはいいとこを取り入れたりしているのに、魔法はダメとはなんとも自分勝手だ。
勿論、地球では積極的に使おうとはしないが、必要ならばいいのかもしれない。
ただ、今回の大会では自分自身で制約を持たせた。
一つ、身体強化は関節保護のみ。
二つ、魔法攻撃、特殊攻撃は使わない。
三つ、緋凰流は極力使わない。
この三つの制約の中で、どれだけ出来るのかを試してみよと思っている。
兄さんにああ言われたが、今回だけはこれでやっていこうと考えている。
「緊張してない?」
「なにそれ?おいしいの?」
「だよねー」
色々と考え込んでいたら、顔を覗き込むようにしながらクイントさんが尋ねてきたのでとぼけて返したのだが、何故か納得された……解せぬ。
「紅莉君って鋼の心をもっているもんねー」
「なんですかそれは……」
ガラスじゃないだけましか?いや、あれはあれでカッコいいけど。
「だって、初任務の時だって緊張なんてなかったじゃない」
「ただのテロ犯の制圧じゃないですか」
あれより恐ろしい相手というのを相手にしたことがある身としては、あの程度ではビビッていられない。なにより、制圧戦っていったって、ゼスト隊だけでなくほかの隊も合流しての一斉検挙だったから危険もなかったし。
『Dリング、ゼッケン357、ゼッケン402、ステージへ!』
「呼ばれたんで、行って来ます」
「頑張るのよ」
クイントさんの応援を背にリングに上がると、大剣を持った筋肉マッチョがこっちをニヤニヤしながら見ていた。それを気にせず一礼をする。試合ならば、礼は必要だからな。
『ファイッ!』
「おおおおりゃぁっ!」
開始の合図と共に対戦相手が一気に近づいてきて、大剣を横薙ぎに振るう。クロードよりもデカイ剣を使っているにも関わらず、その振りの速さはかなりのものだ。
「ぬあっ!?どこいきやがった!?」
対戦相手は振りぬいた格好のまま俺の姿が消えたと思ったのかあちらこちらを見回している。
『お、おい、あれって……』
『あんなことできるのか?』
周りがすげーざわついており、その視線の先を追った対戦者がようやく俺を捉えた。
確かに振りが速く、一撃でも貰えば終わりだろうけど、当たらなければどうってことはない。
ついでに、昔から夢だった相手の攻撃を避けつつ、相手の武器の上に乗るということをやり遂げた。
「相手を嘗めているからそうなるんですよ」
剣から飛び降り、そのまま相手の胸へと一撃。
「ふっとべ、寸掌」
「ぐはっ!」
対戦者はそのまま場外まで吹き飛び決着と相成った。
「おつかれさま」
「疲れるようなことは無かったですけどねぇ」
相手が俺を嘗めてなければもう少し苦戦したかもだが、あろうことか、俺の攻撃を受ける瞬間ですら余裕を浮かべていたからなぁ。
「んじゃ、今日は終わりですし、戻って仕事しますか」
「えー」
「仕事しろよ」
冗談なんだろうけど、貴方が嫌がらないでください。まぁ、俺自身が基本的に事務仕事はエアにまかせっきりだから仕事という言葉を使うのもどうかと思わなくはないけど。
「紅莉君、結果が届いたよー」
「はい」
「なんと、スーパーノービスクラスからだって!」
「??」
「ああ、もう……」
いや、そんなにがっかりした顔をされても、俺には何のことだかさっぱりなんですが。
「簡単に言えば、一般参加者の中では最上位の資格で大会に参加できるってことだよ」
「なるほど」
「紅莉君は明後日ね~。クイントは仕事だから私が付き添いよ」
「よろしくお願いします」
なにやら悔しそうなクイントさんを置いておいて、メガーヌさんが今度の日は付き添ってくれるそうだ。
「緋凰、調子はどうだ?」
「常に絶好調だよボス」
三人で話していたら、ボスがやってきて尋ねてきた。
「まぁ、頑張るといい」
「ありがとうございます」
ボスの励ましも貰い、仕事に勤しむことにしたのだった。
『緋凰選手、リングへとお願いします』
仕事の関係上、遅れ気味だったせいか、会場についたのが本当にぎりぎりだった。
「ま、間に合ったわね」
「ですね」
息は乱れてないが、汗を拭う仕草をするメガーヌさん。
『緋凰選手、いませんか?』
「いますよー」
せかすようなアナウンスに返事をしながらリングへと上がる。
『緋凰選手。セットアップをお願いします』
「いけね」
言われるまで気づかなかった。いくら急いでいたとは言え、仕事着で流石に戦えんか。
「おい、あれって局員の制服だよな?」
「ああ。って、ことはあいつ局員なのか?」
周りが、俺の格好を見てざわついている。まぁ、こんな子供が局員だというのも珍しいだろうしな、仕方ない。
『レディー、ファイッ!』
開始の合図と共に俺も対戦者も一気に近づいていく。きちんと、表情を確認してなかったが、流石に選考会の時のような嘗めた表情はしていなかった。
相手の獲物は無く、クイントさんと同じようなグローブをつけた相手だ。
「はっ!」
抜刀一閃。刀を綺麗に振りぬき、俺は刀を鞘に納めつつ相手に背を見せて下がる。
「どうしたのかね」
端まで戻ると審判が声をかけてきた。
「気絶してますよ」
指を差して伝えると、慌てて審判が対戦者のほうへと駆け寄っていく。体が温まっていたのがよかったのか今までの中でも結構上位に入るくらいに綺麗に振れた。
そのおかげか、相手の体にもろにダメージが入った感じだ。
「8……9……」
「はっ!?」
カウントが進んでいたが、あと少しというところで気がついたようだ。
不意打ち気味に放ったし、極まったと思ったけど、やっぱり力が足りなかったかなぁ?それとも、アゴ狙いで弾き飛ばしたほうがよかったかな?
「ファイッ!」
再び審判が開始の合図をしたのを契機に再び近づいていく。相手はまだダメージが抜け切れてないのか、それとも警戒してるからか仕掛けてこない。
悠長に待つ必要もないので、刀を抜きながら更に距離をつめると、相手は俺が刀を抜いたのを見ると、再び距離をつめてきた。なるほど、抜刀を警戒したわけか。
そうすると、俺の抜刀を捉えきれなかったということになる。幻武を使おうが使わまいが、俺の攻撃は兄さんや美由希などに聞くと出所が見づらいとのこと。
再び刀を振るうと、相手はワンテンポ遅れて対応する。隙だらけだ。これを逃す手はないと、軌道修正し先ほど打ち付けた胸辺りを再び強打すると、短い息を吐き、再び倒れた。
その後も、何度か立ち上がったが、結局俺が押し続けて相手をワンラウンドKOで勝利したのであった。
「お疲れ様。まさか、無傷で勝つとは思わなかったわ」
「俺もですよ。初撃が思いのほか効いたのか後はどんどんと削られていきましたからね」
「紅莉君の攻撃って初見は本当に厄介なのよね」
隊の模擬戦で相手をしたことあるメガーヌさんも苦笑いだ。俺としては普通のつもりなのだが、周りからは違うとは……早く時代が俺に追いつかないかな。
「まず、紅莉君の時代は来ないわよ」
「なん……だと……」
「皆、紅莉君みたいな剣士になったら嫌になるわ」
「確かに」
「そこは、納得しちゃうのね」
いやだってなぁ?俺みたいなのが何人もいたら嫌だろ。俺だって嫌だし。
その後の2回戦もあまり相手にならなく難なく勝利を収めて、次の3回戦。
「相手は、シード選手よ。頑張って」
「らじゃー」
ここいらあたりからはシード選手と当たりだすのがちらほらと現れているらしい。残念ながら、仕事の片手まで参加している身なので情報収集などは一切行っていない。
なので、今回の相手がシード選手といわれても、どういった選手かは全く分からなかった。なので、リングに上がったときは驚いたもんだ。
「君が、噂のルーキーか。よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
一回戦、二回戦とこちらが礼をしても返されなかったのだが、ここにきて初めて挨拶された。そこで、ふと目に飛び込んできた相手の獲物に目を見開いた。
「これかい?君と同じ刀だよ」
まさか、こっちの世界にも刀があるとは思わなかったよ。
「両者、話はそれくらいに」
「おっと、怒られてしまったね。では、いい試合をしよう」
「はい」
互いに背を向けて、開始位置まで下がる。さて、相手の獲物がわかったが、どうするかね。相手の流派がどういうものかはさっぱりだ。
大剣などならどういう攻撃がくるか想像できるが、刀は流派によって何に重きを置いているかは千差万別だからなぁ。
それに、シード選手ということは刀の扱いかたというのも心得ているだろうし。
「レディー、ファイッ!」
開始の合図がされ、考えていても始まらないとの思い、一気に近づいていこうとしたが、とてつもなく嫌な予感がし、急停止しその場に思いっきり屈みこむ。
すると、後頭部ぎりぎりを何かが数本の髪を飛ばしながら通過していった。いや、何かなんて分かりきっている。
視界の端には相手の足が見えることから一瞬で間合いを詰め、攻撃してきたのだろう。
この速度と威力を考えれば抜刀術か?
「避けた!?だが!水月・二連!」
そこから更に踏み込んできたのを横に飛ぶように避ける。
「逃げられてしまったか」
「あぶなっ」
冷や汗が流れるかと思ったわ。相手を見てみれば、既に納刀している。つまりは……
「抜刀術か」
「ご名答」
特に隠すことなく正解を教えてくれる対戦者。
「さて、君は一回戦、二回戦、さらには選考会の試合も見せてもらったけど、ばらばらな動きをしていたね。さて、正解はあるのかな?」
「それは、これからの攻防で感じてもらいましょう……かっ!」
そこそこの会話で再び近づいていくと、先ほどは直感に任せてよけたが、今度は相手の初動を捉えることができた。
ソニックムーブと瞬動術の間ともいえる移動で俺との間合いを一気につめてくる相手だが、残念、今度は動きは正確に捉えられているんだ。
相手の刃と交差する形で刀を思いっきり振るったが、相手の力が勝り、力負けし押し飛ばされてしまった。
「見切った?」
「目は良いと自負しているもので」
「やれやれ」
肩をすくめる対戦者だったが、気を取り直したのか、今度は自分から攻めてきた。
抜刀以外にも唐竹、袈裟など様々な攻撃を全て紙一重で避け、お返しとばかりに攻撃を仕掛ける。しかし、相手もさる者、こちらの攻撃を見切られお返しとばかりに同じように避けられる。
ワンラウンドは結局両者ダメージを負うことなく終わりを迎えた。
「びっくりね。毎年、凄い子達がいるって噂には聞いていたけど」
戻ってきた俺にいの一番に感想を伝えてくるメガーヌさん。確かに、ここまでの使い手がいるとは思わなかった。
さて、相手の考察をするかな。
技量で言えば、兄さんに及ばない。美由希レベルだろう。ただ、それに加えて魔法の力を使うことで実力を兄さんランクまで跳ね上げている。
『セコンドアウト!』
っと、色々と考察していたら、時間がきたようだ。
「がんばってね」
「ええ。負けるのは嫌いですから」
メガーヌさんの励ましに手を上げながら答えつつ、体を解しながらリング中央へと向かう。まさか、こういうことになるとは思わなかったけど……燃えてきた。
「目がギラついているね」
「お互い様でしょう?」
そう、お互い様だ。あいても、最初の穏やかな感じは鳴りを潜め、今じゃ闘争心バリバリである。っと、そこで一つ忘れていたことがあった。
「名前、窺ってもいいですか?」
「対戦者の名前も知らずに戦っていたのかい?」
「忙しいもので」
きょとんとした顔の後にふと笑みを零す。
「オルト・スタッドフェルト。天童流抜刀居合術を納めている」
「緋凰紅莉。緋凰月陰流継承者」
「「参る!」」
中央で鳴り響く、金属音。俺達の獲物が奏でる音色に酔いしれたい気持ちもあるが、それよりも先に成すべきことを成そう。相手を打倒するということを!
「天月・霞!」
一瞬の間合いの間に納刀したオルトが唐竹を仕掛けようとした俺に抜刀術を繰り出す。やべぇ、これは避けきれない!
「ぐぁっ」
「浅いか!」
何とか軌道を修正し、直撃は免れたが、かなりいいのを貰ってしまった。
「げほっ」
腕が重い。どうやら、先ほどの一撃で逝ってしまったらしい。
「ふぅ……」
ゆっくりと息を吐きながら立ち上がる。自分で設けた制約だが、この相手ならば良いだろう。
「エア、セットアップ」
《ゲット、レディ》
俺の言葉を理解したエア。その次の瞬間、俺の体に力がめぐり渡っていく。腕は逝ってしまっているが、この程度ならばまだまだ戦える。
「き、君は今まで力を抑えていたというのか!?」
「ちょっと、違いますね。自分の素の状態でどこまでいけるかを見極めたくてやっていただけです。たとえ、そこで負けても悔いはありません」
これで、相手が剣士でなければ、試合の結果負けてもよかったが、獲物まで似たような刀を使う相手に実力を出さずに負けるのは一介の剣士として恥だ。なので、ここからは全力でやらせてもらおう。
「それじゃあ、僕は認められたということかな?」
「ええ。ですが、腕も逝ってますし次で決着です」
刀を納め、どっしりと構える。左手が逝ってしまったから右手での抜刀だ。
「まさか、君の流派も?」
「いえ。ただ、奥義の一つにあり……そして、俺が自信を持って放てるうちの一つでもあります」
葬刃と断空。この二つは俺が常に使い続けている緋凰の奥義だ。相手が抜刀術ならば、抜刀の葬刃で対応し、これを打倒して勝手こそだ。
「いいだろう!」
相手も俺の気持ちが伝わったのだろう、あらゆる力を刀の一点に集める。
「「オオッ!」」
一瞬で交差した俺達だが、背後から倒れる音が聞こえてきた。
「KO!」
審判が駆け寄ったが、腕を交差し、俺の勝利を告げると周りからはあふれんばかりの歓声が鳴り響いた。
「渋い顔しているわね」
「煩いだけですよ」
リングから降りるとメガーヌさん言ってくるが、別に本気を出したことも奥義を使ったことも後悔は無い。ただ、この歓声が本当に煩かっただけである。
「さ、行きましょう」
「そうね。腕は平気なの?」
「ほっときゃ、治りますし、別段医者が必要なほどって訳でもないです」
彼、オルトが今後はどういった道に進むかは知らないけど、いつかまた会えたらいいと思う。
†――――†
『緋凰選手ですが、管理局の仕事の都合上、どうしても抜けられないため、四回戦は棄権すると連絡がありました!』
4回戦。そこに紅莉の姿は無かった。理由は述べたとおり、管理局の仕事でどこぞの誰かがテロ行為を起こしたためにそれの対処に借り出されたのである。
「よかったの?」
「何がです?」
事後処理を行っていると、クイントから話しかけられた紅莉は何のことを言っているのか分からず、首を傾げる。
「DSAAよ」
「ああ」
何のことか思い至った紅莉はなるほどと頷く。
「いいんですよ。3回戦で十分満足できましたからね」
「それならいいんだけど」
「それにやっぱり、ああいった舞台での戦いは性には合いませんからね」
「それは、分かるけどね」
クイントも紅莉が尾を引いてないのを感じてそれ以上は突っ込むのをやめて、仕事に戻ったのであった。
†久遠放送局†
久遠「皆さん、2週間ぶりです」
リニス「先週は作者が家に不在だったために投稿できませんでした」
久遠「それでさ、恭也クラスがいたって言うんだけど?」
リニス「魔法込みで総合的な実力が恭也さんクラスです」
久遠「どう違うの?」
リニス「恭也さんは素の状態で、セットアップした紅莉と同格ですよ。技量も勝っています。つまりは、基本的に紅莉に勝ち目はありません」
久遠「じゃあ、あの対戦者は……」
リニス「残念ながら、恭也さんと戦っても負けますね。なので、奥義解禁した紅莉も勝てたわけです」
久遠「どんだけー」
リニス「幻武を使えば、まず魔導師たちに勝ち目はないとのことです」
久遠「では、次回もお楽しみに」