魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第62話

「緋凰紅莉、戻りました」

 

 出向期間が終わり、部隊へと戻ってきたために、ボスへと挨拶する。

 

「御苦労。大変だったな」

 

「いえ」

 

 言葉は少ないが、ボスが俺に気を使ってくれているのはわかる。

 

「戻ってきたところ悪いが、続けざまに任務となりそうだが大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ」

 

 直接言葉にして訪ねてくるボスに対してうなずく俺。しばし、ボスが俺の顔を見ていたが、一度うなずく。

 

「わかった。これから、会議だ、会議室で待機していてくれ」

 

「了解です」

 

敬礼し、部隊長室を出ていくとそこには、クイントさんとメガーヌさんが俺を待つように立っていた。

 

「紅莉君、本当に大丈夫?無理しちゃだめよ?」

 

 クイントさんの言葉に思わず苦笑いしてしまう。どうやら、俺は思った以上に回りに気を使われているようだ。

 

 会議室に入ると、同じ隊のメンバーの人たちにもいろいろと声をかけられた。

 

「今度、いいところ連れて行ってやるよ!」

 

「おまっ、この子にはまだ早すぎだろ!?」

 

「そっちじゃねぇよ!それは、あと3年くらいしたらだ!」

 

「あんたたち、何を馬鹿なことを言っているのよ!」

 

「紅莉君をどこにつれていくつもりよ!」

 

「この子は私が目をつけてるのよ!」

 

「黙れショタコンが!歳を考えろ!」

 

 うわぁ……何か知らんけど、突如男女に分かれて一触即発の雰囲気になってしまった。みんな、俺を心配してくれたらしいし嬉しいんだが、だんだんと俺と関係ないことで言い争いをしだしている。

 

「なんだ、この騒ぎは?」

 

「いつものことです」

 

「そうか」

 

 そう、この部隊はなぜかこんな場面が多い。まぁ、普段は俺が結構ひっかき回すんだけど、今回は俺が原因でもあるので静観しているしかない。

 

「お前ら、そろそろ終わりにしろ」

 

『はい!』

 

 ボスの一言で、さっきまでの喧騒は何処へやら。見事に声をそろえて止まるメンバー。

 

 てか、ボスを怒らせると怖いと皆が知っているので、言われたら聞くようにせざる得ないってのもあるけど。

 

 てか、漫画だけだと思っていたが、普段怒らない人が怒るってのは本当に怖いなぁ。

 

「さて、緋凰も戻り他の出向していた者も戻った。また、タイミングを見計らったように、我々が追っていた山の手がかりが見つかった」

 

 ボスの一言により、周りがざわめきだす。それと同時に、緊張感も増していく。

 

 特に、クイントさんの表情がかなり強張っている。

 

「さて、今回の任務にあたり、役割を言い渡す」

 

「役割?いつもみたいに、突貫、制圧、状況終了じゃないの?」

 

「今回は、そうもいかん」

 

 珍しいな。ボスにしてはかなり慎重な態度だ。

 

「どういうわけかは分らんが、レジアスが今回の任務についてストップをかけてきた」

 

「それは……」

 

 前々から、この調査をやめるようにと遠回し気味に告げてきていたが、ついに直接言ってきたのか。

 

「それ故に、なにかあると俺は踏んでいる。別にレジアスが関わっているとは思ってないが、なにかあるのだろう」

 

 確かに、正義馬鹿であるレジアスのおっさんが何か悪事に関わっているとは思いにくい。ただ、正義は行きつめれば悪になるという言葉があるように、何かあるのかもしれない。

 

「さて、作戦だが、まずは研究室、またはそれに準ずる場所の制圧をクイントと緋凰に頼みたい」

 

「俺たちに?」

 

 俺もクイントさんも不思議な顔をしてしまう。正直、俺とクイントさんでは向いていない仕事だ。

 

「普段ならば、別の者か制圧後だが、今回の任務ではどうなるのかが分らん。よって、緋凰の持つデバイスのエアナガンの能力を使わせてもらいたい」

 

「了解です。ただ、それだけなら俺一人だけのほうがいいのでは?戦力を分散させるのはあまり好ましくないでしょ?」

 

「言ったはずだ、不測の事態が起こる可能性があると。故に、お前がいくら戦闘力に優れていようとも、ここはクイントと共にツーマンセルで組んでもらう。これは、命令だ」

 

「OKボス。別に俺もそこまでして突っ張ろうとまでは考えてないよ」

 

 俺の返事に満足そうに頷いたボスは、視線を俺から隊の皆へと移す。

 

「皆を危険にさらすことになるなんて、俺は隊長失格かもしれん。だが、地上の平和のために、ここで暮らす人たちの笑顔を守るために、どうか力を貸してくれ」

 

 そういって、ボスは頭を下げる。

 

「頭をあげてください隊長!」

 

「そうだぜ!俺らは、そんな隊長だからこそついていけるんだ!」

 

「そうですよ!隊長が、いつも私たちを好きに動かそうと頑張ってくれてるんですもの、その恩に報いないと!」

 

 あちこちから上がる、声にボスは顔を上げると再び満足そうに頷いた。

 

「俺は、よい部下をもったな」

 

 恥ずかしげもなく、そんな言葉を口にするボス。俺も、そんな人だからこそ、やってあげたくもなる。

 

「では、明日0600に出発する。各自、準備を怠るな!」

 

『はい!』

 

 全員立ち上がり、敬礼すると同時に動き出す。俺も、家族に今日は帰れない旨を伝えた後、隊舎にて、翌日を迎える準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 隊舎内で準備を終えた俺は、リラクゼーションルームのソファーに深く腰を沈める。そこに、すかさずにいい匂いを立ち上らせるココアが目の前に置かれた。

 

「ん?ガリューか、助かるよ」

 

 黒い鎧鱗と呼べる甲冑に赤いマフラーという見た目でどことなくライダーを思わせる風貌の人型虫だ。

 

 メガーヌさんの召喚獣なのだが、隊舎でたまに執事のまねごとをしてくれる、とっても紳士な奴なのだ。

 

 主であるメガーヌさんが俺に気を使ってくれているためか、ガリューもことさら俺に気を使ってくれる。

 

「しかし、ココアも嫌いじゃないが、コーヒーのが好きだって言ったよな?」

 

「……」

 

「まぁ、確かに休む前にカフェインが強い奴なんて飲むものじゃないのは分っているんだがなぁ」

 

「……」

 

「ん、楽しみにしているよ」

 

 ここに働き出したと同時に、事務仕事もせざる得なく、そこで最初は支給されていたコーヒーを飲んでいたのだが、実家が喫茶店ということで変な感じで舌が肥えてしまっていたらしく、インスタントコーヒーだと我慢ができなくなってしまった。

 

 そこで、給料の大半を使い業務用のミル付きサーバーをついつい買ってしまった。

 

 ただ、買ったのはいいのだけれども、入れる暇なんてものはほとんどなく、無用な置物とかしていたのを、ガリューが気を使って覚えてくれたのだ。

 

 ずっとやってきたとーさんには及ばないが、ガリューが入れるコーヒーも美味い。それに、とーさんとガリューとではブレンドも違うために、一概にどちらがとは言えないのだ。

 

 ガリューが入れてくれるようになると、他の隊の皆もお願いする始末である。

 

 メガーヌさん優先とはなっているのだが、この紳士は人(?)がいいために、できる範囲のことはすべて請け負ってしまう。それゆえに、メガーヌさんも苦笑いである。

 

 それに、ガリューはかなり異質の強さを持っているために、よく俺が一人で鍛錬しているときに相手をしてもらっている。

 

 ガリューのステルス機能は俺の気配察知を掻い潜る時もあるので、いい鍛錬相手なのだ。

 

 ガリューもガリューで、似たような能力を持つ俺との戦いはわりと有意義のようで、彼も積極的に相手をしてくれている。

 

「前から思っていたんだけど、紅莉君ってなんでガリューの言葉が分るの?」

 

 俺とガリューの会話を隣で聞いていたメガーヌさんが不思議そうな顔で問いかけてくる。

 

「なんでって、言われても……なぁ?」

 

 俺の言葉に頷くガリュー。それを見る、メガーヌさんはさらに不思議そうな顔をする。

 

「あ、でも……久遠の言葉を知らずに分るようになっていたなぁ」

 

「久遠ちゃんって、紅莉君がたまに連れてくるあのキツネの使い魔のことよね?」

 

「ええ。魔力資質がほとんどないのか、念話が少しできる程度ですがね」

 

 魔力保持量も多いわけではないので、長時間の会話もできないし、長距離も無理だ。ただ、霊力や妖力を有しているために戦闘力がないわけではないが。

 

「まぁ、便利だからいいじゃないですか」

 

「そうなんだけど、なんか私以上に会話がはずんでいるのと、会話が成立しているのがねー」

 

 そういって、口をとがらせるメガーヌさん。相変わらず、歳に見合わずにかわいい人だ。

 

「さて、せっかく気を使ってくれたのに夜更かししてもしょうがない。これを飲んだら休ませてもらうよ」

 

 そういって、ガリューが入れてくれたココアを堪能した後、仮眠室で睡眠をとったのであった。

 

 

 

 

 

「なんか、やけに静かですね」

 

「不気味なくらいに、ね」

 

 クイントさんと研究施設へと侵入したはいいのだが、今までに人の気配はおろか、生物の気配も感じず静かなのが、不気味だ。

 

「これは……やられたか?」

 

「偽の情報を掴まされたってこと?」

 

 クイントさんの言葉に、声を出さずに頷いて答える。

 

 気配を読める俺だからこそ、無用な騒ぎを起こさずにデータの回収ができるというボスの采配だったのだが、空かされた気分だ。

 

 クイントさんとともに、慎重に進みながら大きなデータルームへとたどり着く。

 

「ここね」

 

「ええ。少し離れていてください」

 

 小声でクイントさんに指示をした後、気配を殺し扉の隣へと移動し中の気配を探る。中からの気配は感じられず、もぬけの殻だ。

 

 クイントさんに頷いた後、刀を引き抜き開いているもう片方の手で扉を開け中に突撃するように入り込むが、やはり誰もいなかった。

 

「どうなっているのかしら?やっぱり、誘い込むための罠ってこと?」

 

「分りません。とりあえず、データを吸い出してみましょう。エア」

 

《イエス》

 

 俺の呼びかけに返事をデータを吸い出し始めるエア。

 

《やはり、戦闘機人に関するログは残っていませんね》

 

「ダミーなどは?」

 

《可笑しいことに、それすらも……おや?》

 

「どうした?」

 

《いえ、ダミーは無かったのですが、アクセスしてきたものに対するカウンタープログラムは組まれていたようで、私に攻撃を仕掛けてきました》

 

「仕掛けてきましたって大丈夫なの!?」

 

 俺よりもそばで控えているクイントさんのほうが驚いているや。

 

《甘い、甘いです!炭酸の抜けたメロンソーダにガムシロやら蜂蜜やら、アイスクリームやらその他もろもろを混ぜ込んだものよりも甘い!私に何かをしたければ、複数世界の電子機器を一斉に壊せる程度の代物を用意してきなさい!》

 

 なんだ、その聞いただけで気持ち悪くなりそうな代物は。

 

「黙って待っているだけではつまらんな、画像に映してくれ」

 

《少々お待ちくださいね》

 

 そう言って、モニターに画面が映し出され始める。この研究所の地図やらなんやらが、次々と流れていっているとき、俺の目にある日誌が飛び込んできた。

 

「まて!」

 

《いかが、されました?》

 

「さっきの、日誌の部分を映してくれ」

 

《先ほどのというと……これですか?》

 

 そういって、エアが大画面に映してくれる日誌を端から読んでいく。

 

「【ソルジャー計画】、戦闘機人計画の予備をなすように計画されたこの計画は、戦闘機人の生体理論を参考に人体に別の細胞を移植し、身体能力を飛躍的に向上させるものである。

 この理論は、聖王教会の騎士であるクロード・ストライフの体組織にて発見された別細胞が存在すると判明したために可能であるとされている。

 しかし、いろいろな細胞を試してみるが、そのこと如くが、失敗に終わってしまった。

 あるものは、拒絶反応により絶命。あるものは、化け物に変容してしまい暴れだしたりする。

 このままこの計画は失敗かと思われたが、とある経路から渡された細胞を移植すると見事に適応した。

 そのものは、子供とは思えない力を用い、さらには力が馴染んだのか瞳の色も変容しだした。

 ただ、現状では言うことを聞いているが、成長した段階で裏切りが起こる可能性があるために、慎重に調整することが必要である」

 

「なに、これ……」

 

 俺が口にして読んだ内容を聞いていたクイントさんが、絶句したように言葉を発する。

 

 だが、気持ちは俺も一緒である。ソルジャー計画だと?そして、そのサンプルにクロードが使われているのも気になる。

 

《マスター、データの収集が完了しました。残念ながら戦闘機人に関するものはありませんでした……ただ、それ以上のものを見つけてしまいましたね》

 

「ああ。つっても、細かいことまでは書いてないってのと、信憑性がなぁ」

 

「これだけじゃ、だめなの?」

 

《正直にいえば、適合率なんて数パーセント程度でしょうから、やり続ける意味合いは薄いかと……警戒したことにこしたことはないですが》

 

 とりあえず、このことは帰ってから考えることにするとして、ボスたちに合流しよう。

 

「クイントさん」

 

「ええ!」

 

 データルームから出ようとしたら、なんとなく体が重くなったように感じる。

 

「重力偏向?」

 

「違う!これは……!」

 

《AMF発動確認。マスター、魔法を使いづらくさせるフィールドに覆われました》

 

 エアがどういうものかを簡潔に伝えてくる。こういう場面で、長々と説明されるほうが厄介なため、こいつも心得ているな。

 

「範囲は?」

 

《おそらくは、この研究施設全域と思われます》

 

 それはまた、広範囲に張ってきたな。

 

『緋凰!ナカジマ!』

 

 動こうとした時、メンバーから通信が入る。

 

「どうした!」

 

『隊長が!俺たちをかばって』

 

 映し出された映像はボスが何者かと、戦闘を繰り広げている映像だ。ただ、ボスの動きが悪い。おそらくは、魔法を使いづらくさせるというフィールドの影響か。

 

「了解した。これから、援護に向かう。それと、残っているメンバーは脱出を!ボスは俺がなんとかするから」

 

『しかし、隊長を残してなんて……』

 

「ボスの意思を無駄にするな!」

 

 こんな場面で敬語を使っている暇なんてない。

 

「クイントさんも脱出を」

 

「そんな、無茶よ!」

 

「安心してください。幸いにも、俺は魔法なんて使わなくても戦闘力はかわりませんし、エアのサポートのおかげで魔法の使用も多少の支障をきたすだけですから」

 

「でも……!わかったわ、気をつけてね」

 

「道を作ります。エア、収束モードで!」

 

《チャージ完了。いつでも、どうぞ》

 

 納刀し、入ってきた場所の方角を向く。

 

「アキシオン・ブレイカー、デッド・エンド・シュート!」

 

 抜刀し、切っ先をまっすぐ前に向けると、先から太い閃光が放たれ人が通れる広さの穴があいた。

 

「クイントさんは、出てきた皆の救助を。ものすごく嫌な予感がします」

 

「分ったわ」

 

 クイントさんと別れ、ボスのいるエリアへと駆け始める。

 

「エア、最短距離のナビを」

 

《いえ、まっすぐに行きましょう。幸いにもマスターの魔力のストックはまだまだありますので》

 

「あん?」

 

《レイジングハートからぱくった力を使います。A.C.S.アクティブ!》

 

 A.C.S.ってあれだよな?なのはの突撃システムの。

 

《マスター。そこから、45度右を向いたところから突っ込んでください。フィールドの制御もろもろは私が》

 

「分った」

 

 鞘を引き抜き構える。突撃の技なんてこれしか思いうかばいないしな。

 

「緋凰を阻むものは存在せず。咬牙」

 

 鞘の背を走らせて一気に前に突っ込んでいくと、壁は面白いぐらいに穿たれていった。

 

 

 

 

 

 

「ボス!」

 

 現場へと到着すると、そこには傷だらけで血を流しているボスが倒れていた。

 

「援軍か」

 

 そして、ボス以外には長身の切れ長の目を持つ女に、三つ編みの女、右目がつぶれている少女がいた。

 

「お前らは」

 

「子供に手をかけたくはないが、目撃者は消さないとな」

 

 長身の女がやれやれと首を振りながら近づいてくる。

 

「あ~ら、トーレお姉さまはお優しいのね」

 

 三つ編みの女が愉悦そうに笑いながら、長身の女を茶化す。

 

「そういうことでは、ないだろう」

 

 銀髪の少女が呆れたように声を漏らす。

 

 そんな、三者三様な声を聞きながら、俺はゆっくりと息を吐いていた。別に緊張感はない。ただ、思った以上に怒りがわかないことに内心ショックだっただけだ。

 

 今まで、面倒を見てくれたボスが倒れているのを見て、激怒しない、か。どうやら俺はあまり優しくはないようだ。非情にもなりきれんが。

 

「痛みを感じさせずに終わらせてやる」

 

「まて、トーレ!油断するな!」

 

「遅い!」

 

 相手が嘗めてかかってきたのが運のつきで、俺の一閃はきれいに長身の女に決まった。

 

「ぐぁ……」

 

 斬られた部分を押さえながらこちらを睨んでくるが、それがどうした?戦場で油断しているほうが悪い。

 

「お前ら、逃げられると思うなよ?悪いが、俺は普通の局員とは違うんでな」

 

「くっ、ISラインドインパルス」

 

 一気に踏み込み、攻撃しようとしたその前に、長身の女が何かを発動したようで高速で移動を開始した。

 

「だが、それがどうした」

 

 再び近づいてきたのを察知し、攻撃を受け止める。相手は、攻撃を受け止められたのが余程、驚愕の表情を浮かべている。

 

「はっ!」

 

 足で蹴り飛ばしたのだが、後ろへと飛んでダメージを回避しやがった。思った以上に戦闘慣れしているようだ。

 

 早いには早いが、それでもフェイトのソニックより若干速い程度だ。

 

 御神の神速と比べるのもおこがましいが、あの抜きの性能よりも劣るならば、反応なんてたやすい。

 

「お姉さま引きますわよ!こいつは、異常ですわ!」

 

「しかたないか」

 

 三つ編み女が大声で叫ぶと、長身の女は悔しそうに引きさがる。

 

「逃がさん!」

 

「ISシルバーカーテン!」

 

 少女を回収しながら後ろへと下がるのを黙って見逃すほど優しくはなく、一気に近づいたのだが、三つ編みの女が何かを叫ぶと姿が消える。

 

「逃がさんと言ったはずだ!エア、非殺傷解除」

 

《イエス》

 

 何もないと思われる空間に一閃。伝わる感触は空ぶったものではなく、何かを斬る感触であった。ただ、それが思った以上に固かったが。

 

「ぎゃぁぁぁぁっ!」

 

 消えていた姿が再び現れると、そこには三つ編みの女が腕を押さえながら転がっている。ただし、肘から先は無くなっているが。女としての慎みがないな、そんなぎゃあなんて。

 

「くっ!……なにっ!」

 

 長身の女が逃げるのは不利と悟ったためか、再び近づいてきて攻撃してきたが、その攻撃は幻武によってすかる。開いた胴を切り捨てようとしたのだが、右側から何かが飛来してきたので、その場から離れた。

 

「トーレ!クワットロを連れて先に行け、こいつは私が相手をする!」

 

「無茶を言うな!お前は、先ほどの騎士と戦ってボロボロだろうが!」

 

「しかし、誰かが残らなければ全滅だ!」

 

「それなら、私が」

 

「無理だ!先ほどからの戦闘を見ているが、お前とでは相性が悪い!」

 

「どうでもいいけど、逃げられると思っているのか?さっきは引いたが、ナイフなんて投げても俺にはあたらんぞ?」

 

「こうするのだよ!ISランブルデトネイター!」

 

 投げられたナイフを幻武で避けて詰め寄ろうとしたら、背後からいきなり爆発が起こり、前へつんのめりそうになる。

 

「なんだぁ?」

 

 背後を振り返ると、そこには先ほど投げたナイフなどなく、もうもうと煙が立ちあがっていた。

 

「爆弾か?」

 

「厳密には違うがな!貴様、個人を狙うのでなく範囲ごと吹き飛ばせばよい!」

 

「よく考えたなぁ。正解だよ。ただ、それだけで勝てるとはおもわんことだ」

 

 俺とは相性が悪い範囲型だとは思わんかった。ただ、それでも足りないがとおもったのだが……

 

「おいおいおい。それじゃ、お前もアウトだろ」

 

 目の前にはこれでもかというぐらいにナイフが展開されている。

 

「ふん、この数でようやくか。化け物が」

 

「人外とは言われ続けているが、化け物とは言われ慣れてないんだがなぁ」

 

 何度かは言われたことあるが、それでも少ないんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

「してやられたな」

 

 刀を納めてあたりを見回すと、そこには瓦礫ばかりで他の奴らの姿はなかった。そして、ボスの姿もなかった。

 

「やれやれ。油断したつもりはなかったんだが」

 

 後頭部を掻きながら、目の前で倒れている少女を見る。

 

「お前の勝ちだな」

 

 見事に負けた。試合に勝って勝負に負けるとはまさにこのことだな。非常に徹すればまた違ったのかもしれんが、こいつの在り方が嫌いじゃなかったために殺すことはできなかった。

 

「しかし、ボスまで連れていく意味はあったんかね?」

 

 あの計画の実験材料として?いや、それはなさそうだ。ボス程度までいくと、適合できても縛ることはできなさそうだし。

 

《マスター。残念なお知らせが》

 

「あん?」

 

《この施設は間もなく自爆します》

 

「軽く言うな」

 

 目の前で倒れている少女を背負い、来た道を全力で駆け抜けると、ギリギリで爆発に巻き込まれる前に脱出することができたのであった。




†久遠放送局†

久遠「今回はゼスト隊崩壊の話でしたね。どうなったかは、次回でお話だよ」

リニス「作者なんて、『次が終われば、のほほんが書ける』とかいって、この話自体の思いいれはあまりないようですね」

久遠「困った作者だ。困ったと言えば、久遠の出番がないこともだけど」

リニス「そこは、まぁ私もですね」

久遠「こうなったら、ストでも起こして、作者を困らせてやる!」

リニス「馬鹿なこと言うのはやめなさい」

久遠「は~い。では、次回もお楽しみに」
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