魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第63話

「む、ここは……私は確か……」

 

 目を覚ませば見知らぬ天井であった。痛む体に鞭を打ち起きてみるがやはり知らない場所だ。

 

「お、起きたか」

 

 声が聞こえたほうを向いてみると、そこには今時珍しい電子媒体ではない本を読んでいる、未だ少年と言って差し支えのない少年の姿が。

 

「貴様は!……ぐっ」

 

 そこで漸く彼が私たちの計画をほとんど潰しかねた人物だと思いだし動こうとしたのだが、体に痛みが走ってしまい、蹲ってしまう。

 

「ああ、無茶すんなよ。非殺傷は戻していたとは言っても、加減はしなかったんだからな」

 

 呻いている私に対し、そんな暢気ともとれないようなことを言って、立ち上がる。

 

「ほれ、まだ寝てろ。別にどうこうするつもりもないし、お前自体は戦闘機人の施設で実験体にされていた奴だって報告しているしな」

 

 そう言いながら、私を再び寝かせる彼。しかし、今彼はなんといった?

 

「どういうつもりだ?」

 

「ん?」

 

「私に情けをかけたとでもいうのか?」

 

「情けねぇ……」

 

 私の言葉を聞いて、何やら考え出した。

 

 

 

 

 

 この前の事件の折に、やりすぎてしまった彼女の面倒を見るという名目のもとのサボりをしていたら、4日目で目を覚ましてしまった。

 

 一応、殺すつもりはなかったのだが、思った以上に力が入っていたようですごくボロボロにしてしまった。

 

 そのまま、重要参考人として渡してもよかったのだが、なんとなく話が通じそうだったし、書類をごまかしてみた。

 

「別に情けをかけるつもりは毛頭ないよ。こちらは、隊をほぼ全滅にされたんだぞ?」

 

 結局、あの後にクイントさんと合流したが、無事に脱出できたメンバーはいなかった。

 

 皆、どうやら途中でこの前の機械兵器に足止めを食らってしまったようで、施設の自爆に巻き込まれたようだ。

 

「では、何故だ」

 

「まぁ、お前と話をしようと思ってな。あの陰険そうなメガネや長身の奴なんかは、話が通じなさそうだったし」

 

「私が素直に喋ると思っているのか?」

 

「どうだろうな。それに、それならそれで処理すれば問題ないだろ?」

 

 俺の言葉を聞いて、身を竦ませる。どうやら、話の中で俺が本気だと悟ったんだろう。

 

「さてと、いつまでもお前とかもあれだしな、ここは自己紹介といこうか。俺は、緋凰紅莉。管理局の一員さ」

 

「……チンクだ」

 

 チンクねぇ……そういや、ほかの奴らはトーレにクワットロだったか?どこかで、聞いた記憶があると思ったら、イタリア語の数字じゃないか。

 

「それは、名前なのか?」

 

「そうだが、それがどうしたというのだ」

 

「いや、数字だからな。まぁ、響き自体は悪くないかもしれんが」

 

「ドクターがつけた名だからな。私としては、それが当たり前だが、変なのか?」

 

 どうやら、語源を知らなかったようで、不思議そうな顔をする。

 

「まぁ、お前が気に入っているんならいいんじゃないか?」

 

「うむ」

 

 何故か、胸を張って答えるチンクに苦笑いしていると、体の調子以外にも違和感があることに気がついたようだ。

 

「ああ、目な。そこも治そうと思ったんだけど、生体部分で無理と言われてしまったらしくてな」

 

 今一、戦闘機人に関して分らないのだが、完全なロボットではなく、体の一部部分を機械化することで、人間以上の力を持たせるような技術らしい。

 

 そもそもが、医療系に関した研究だったはずだというのはプレシアの話だが、どこまで真実味があるかは分らんな。

 

「しかたないな、これは」

 

「そんで、お前はどうするよ?」

 

「どうとは?」

 

「そのドクターのところに帰るか?」

 

 俺の言葉に、片方しか開いていない目を見開くチンク。

 

「お前は、何を言っているんだ」

 

「何をと言ってもな、お前はさっきもいったが、あの施設で研究されていた一人としか報告してないから、帰そうと思えば帰せるが?」

 

 俺の言葉にかなり呆れた表情をするチンク。まぁ、一般局員ならあり得ないことなんだが、俺を普通というくくりには縛ってほしくはないな。

 

「帰還命令は出てないない」

 

「そうか」

 

 そこで話はいったん止まってしまう。

 

「お前自身の意思は?」

 

「そうだな……仮にだが、もしこのまま私を帰し、再び対面したらどうする?」

 

「それは、敵としてか?」

 

「ああ」

 

「その時は、容赦なく斬る。今回は、お前の意思が尊いと感じたからこその対応だが、二度目はない」

 

「っ!」

 

 チンクが息を呑んだのが分かる。俺も甘いことは自覚しているが、流石に二度も手心を加えるつもりは一切ない。

 

「これは正直、拘束されたり、尋問されるよりもきついな」

 

「そうか?考えすぎだろ」

 

 別に俺はこいつから、何かを聞き出すつもりは一切ないし、喋れとも言うつもりはない。

 

「逆に尋ねたいんだが、もし保護を受けるとしたらどうすればいい?」

 

「それも考えがある。クイントさんいいですよー」

 

「はーい」

 

 俺の呼びかけに答えてクイントさんが中に入ってくる。唯一の生き残りであるクイントさんなのだが、この人もチンクにどうこうしようとは考えてないみたいだ。

 

 ただ、やはり自分の隊を全滅されたという事実もあるから、俺のように綺麗さっぱり無いとは言えないだろうけど。

 

「初めまして、私、クイント・ナカジマ。貴女のことでお話をね」

 

 クイントさんを見て、驚きの表情を浮かべるチンク。どうやら、知っているらしい。

 

 命からがら帰還した翌日、クイントさんとゲンヤさんから、ギンガちゃんとスバルちゃんの秘密について教えてもらった。

 

 どうやらあの子たちは、クイントさんの遺伝子を使った戦闘機人のようで、俺が隊に入る前に保護していたそうだ。

 

 見た目も似ているし、普通の親子だと思っていたのだが違ったようだ。それで、クイントさんが戦闘機人の事件を追っているときは特に力が入っていたのが分った。

 

「それでね、言外してほしくはないのだけど、うちにもね貴女と同じような娘がいるの」

 

「もしや、タイプ・ゼロか!?」

 

「もう、五月蠅くしちゃダメよ」

 

 大声をあげて驚くチンクにクイントさんが苦笑いしながら注意する。

 

「そこではね、貴女と同じだけど普通の人間と変わらない生活をしているわ。よかったら、貴女も、ね?」

 

「しかし、私は……」

 

「うん、最初はどうしようか悩んだんだけど、紅莉君との会話と今の会話で、貴女が不必要に力を使わないだろうなって感じたから大丈夫よ。それに、私の勘が言っているわ、貴女は信用しても大丈夫って」

 

 チンクの顔が微妙な顔になる。この場面で勘と言われても説得力はないもんなぁ。ただ、クイントさんってこういう場面での勘は優れているから、付き合いがそれなりになってきた俺としては納得してしまうし、俺も大丈夫だと思う。

 

「すぐに返事は聞かないわ。今は、ゆっくりと体を治してね。そして、退院できる日までに決めていて欲しいかな?」

 

「もし、戻るというのであれば、その時に教えてくれ。なんとかしてやる」

 

 それだけを言い残し、俺とクイントさんは病室を出て行った。

 

 逃げることも考えたには考えたが、その場合は先ほども言ったが、再び会ったときに斬れば問題ない。俺の信用なぞ、別に必要でもないしね。

 

 後日、体も治り退院すると決まった日に見舞いついでに行ってみたら……

 

「よろしく頼む」

 

「ええ。これからは、お母さんと呼んでもいいのよ?」

 

 と、チンクはクイントさんにお世話になることが決まったのだが、さすがにそれは早い気がしてならない。

 

 

 

 

 

 隊が全滅し、心身ともに疲れ果て二日間の休養を取った次の日の朝、俺はレジアスのおっさんの元に呼び出された。

 

「なんで、俺だけ呼び出されたんだ?クイントさんは?」

 

「ナカジマはこの後だ」

 

「ん」

 

 なんか、おっさんの顔がすっごく微妙な顔をしているな。

 

「そんで、どしたの?ああ、俺の進退問題?凱旋なければ、伝手を使って適当な部署に所属してくるけど」

 

 何だかんだで知り合いが多いってのと、その知り合いのうち数人がかなり偉いことも合わさり、俺がどこかしらに所属できないってのはないだろ。いざとなれば、クロノの下につくか、クロード経由で聖王教会に世話になればいいし……後者はできればしたくないが。

 

「そのことでだ」

 

「どゆこと?」

 

「いい加減に口調を正せ!この場は、正式な場だ!」

 

 突如大声を上げるおっさん。つっても、正式もなにもないだろ?基本的に俺の態度は変わらんのだから。

 

 つーよりも、なんだ?おっさんに余裕がないな。いつも、切羽詰まっている感じがしているが、今のおっさんはそれ以上だ。流石に、ここは言うことに従っておこう。

 

「失礼しました。それで、俺はどのようになるのでしょうか?」

 

「ふぅ……オーリス」

 

「はい」

 

 おっさんの娘のオーリスが書類を手渡してくる。ただ、正式な場だというなら、おっさんも呼び捨てはまずいだろ。

 

 オーリスから渡されたデータを開くと辞令が乗っていた。

 

『次のものを現部隊から移すこととす。

 

 首都防衛部隊→機動特務隊員』

 

 本当に簡素な辞令だった。てか、特務隊?

 

「特務隊とは一体?」

 

「簡単にいえば、お前はこれから地上部隊それぞれに対して要請ないし、こちらが必要だと感じた場合、部隊の枠を越えそこに属し任務を遂行するものとなる」

 

「ようは、使いっ走りというわけですね?」

 

「……そうだ」

 

 おっさんが、すげぇ苦々しい顔をして頷く。上からの命令かな?ただ、おっさんに命令を下せる人物って早々いないと思うんだが。

 

 だとしたら、議題かなんかで俺が問題児だとあがったか?いや、そこら辺はボスが隠してくれていたと思うんだが……

 

「本来ならば、防衛部隊を再編し貴様を隊長、又はそれに近い役職につけたかったのだがな、許せ」

 

 そういって、頭を下げるおっさん。どうやら、おっさん的にも俺のこの辞令は反対のようだな。

 

「いや、隊長とかガラじゃないし、めんどくさいからパスだけど」

 

「緋凰二尉こちらを」

 

「二尉?」

 

 オーリスが持つ台の上には、階級を示す階級章が乗っている。たしかに、二尉の紋章だ。

 

「え?もしかして、今回のことは昇進させてやるから口外するなって感じ?流石に、ことがことだけに無闇に言わんけど」

 

「ふざけるな!」

 

 おおぅ、おっさんが吠えた。目の前にいるオーリスも流石に、ここ一番の大声にビクリと体を震わせている。

 

「今回の事件では、防衛部隊全ての方が昇進します。それは、ナカジマさんも同様です」

 

 立ち直ったオーリスがきちんとした説明をしてくれる。俺、別に殉職してないんだけどねぇ。

 

「それと、お前の昇進はこれから特務隊員として動いてもらうにあたって、何かと不便にならぬようにとの意味合いも強い」

 

 ああ、そういや、地上部隊全てに世話になる可能性があるとか言っていたな。その時に、階級が低くて不当な扱いをされたらたまったものじゃないとか言った感じかな?

 

「それは、クイントさんも?いや、ここにいないということは、違うのか?」

 

「そうだ。ナカジマは旦那の元に送る」

 

 ゲンヤさんの部隊にかー。確かに、それはそれでありだね。てか、俺もそっちのほうがよかった。

 

「後は……俺って、普段の待機場所は何処に?」

 

「ここだ。今日付けでわしがお前の直属の上司となる……やりたくはないがな」

 

 そう言って、げんなりとした表情になる。隣を見るとオーリスも何やら複雑な表情をしている。

 

「ゼストはどうやって、こんな奴の手綱を握っていたというのだ。胃潰瘍になるかもしれん」

 

「父さん、私も似たような意見です」

 

 失礼な奴らだ。あれ?俺の周りって失礼な奴ら多くね?

 

「ボスで思い出したんだけど、おっさんってもしかして今度の事件の全容をしっていた?」

 

 俺の一言に、今までげんなりしていたおっさんがくわっと目を見開いた。

 

「ふざけるな!」

 

 今日一番の大声だな。隣にいたオーリス共々しっかりと耳を塞いでなければ、やられていたかもしれない。

 

「何故わしが親友のゼストを殺さねばならんのだ!侮辱するのもいい加減にしろ!」

 

「申し訳ない。ただ、おっさんが今度の事件に対してストップをかけてきたってボスが言っていたからね、気になったんだよ。それに、俺としちゃ、別に疑っているわけじゃない」

 

「どういうことだ?」

 

「簡単さ。おっさんとボスがいつも語っている地上の平和ってやつに不純なものがなく純粋なものしか感じられなかったからね。俺としては、そこらへんは実にどうでもいいんだけど」

 

 そう言うと、おっさんは何やらきょとんとした顔になる。それに対して、笑いをこらえながら立ち上がる。

 

「それじゃ、行くよ」

 

 それだけを言い残し、俺は出て行った。

 

 

 

「わしは……」

 

「父さん」

 

 部屋に残された二人は、紅莉が出て行ったドアを唖然と眺めていた。




†久遠放送局†

久遠「チンクゲットだぜ!」

リニス「戦闘機人の中でも特に人気が高いようですからね。作者も好きなようですし」

久遠「ロリコンですね、分かります」

リニス「やめなさい。さて、ようやく重い話は終わりです」

久遠「次回は、ほのぼのを書きたいと言っていたから、そんな感じかな?」

リニス「シリアス嫌いな作者がよくここまで我慢できましたね」

久遠「では、次回もお楽しみに」
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