魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第69話

「久々だね、皆でこうやって歩くのって」

 

「はやてはいないけどね」

 

「わかってるよ」

 

 学校帰りの時間帯、公園を歩く4つの影。

 

 なのは、フェイト、すずか、アリサの4人が珍しく仲良く帰宅している場面である。

 

 幼馴染として仲がいいのは当たり前だが、なのはやフェイトは魔法関係がここ最近、忙しくなってきている影響もあり、中々一緒に帰ったり、遊びに行ったりができない状況が続いていた。

 

 そんな日が続く中、たまたま休みがかちあったなのはやフェイトと少しでも一緒に過ごそうと、普段は車での送り迎えをしてもらっているすずかとアリサは徒歩での帰宅を選び、なのはたちと一緒に公園へとやってきていた。

 

 ちなみに、紅莉は昨日の晩から仕事に出ているために、学校にすら来ていなかった。

 

 はやてに至っては、今度のゴールデンウィークに予定を空けるためにこれまた奮闘中であった。

 

 それぞれの手にクレープやらアイスやら、タイヤキやらを持ち、座れる場所を目指していた。

 

 

「つーか、あんた達は今から仕事漬けでどうするのよ?」

 

「にゃはは……」

 

「えーっと、その……」

 

 座れる場所を見つけ、手にもつアイスを舐めながら、呆れた表情で言うアリサに苦笑いしか出来ない、なのはとフェイト。

 

 アリサとしても、やりたいことを一生懸命やっている二人の応援はしているが、まだまだ若い中学生である彼女たちが色気やなにやらをすっとばして、仕事に一生懸命だという姿ははたから見ても色々と将来が心配になってしまう。

 

「そこは、ほら……紅莉君もだし」

 

「あいつと一緒って、別の意味で心配なんだけど?」

 

 子供のころから色々とやっている紅莉を知っている身としては、それと同列になるというのは、心配である。

 

 男女差別など時代錯誤な考えなど持っていないアリサだが、あれと一緒な女の子なんて勘弁願いたい。

 

「ほら、アリサちゃん。心配なのは分かるけど、意地悪しちゃだめだよ」

 

 さすがにツッコミすぎているアリサを窘めるために、今までにこにこと笑顔で傍観者でいたすずかが助け船を出す。

 

「分かってるわよ。でも、こいつらときたら学業どころか、友人すら優先してない感じがしない?私としては、結構寂しいんだけどなー」

 

 ジト目で睨んでくるアリサに結局苦笑いしか返せないなのはとフェイト。その光景に笑いだす、すずかにつられて笑うアリサといったほのぼのな空気が流れていた。

 

「それにしても……」

 

「なに?」

 

 クレープを食べ終わり、買っていた紅茶を飲んでいるフェイトがアリサの視線を受けて首をかしげる。

 

「あんた、成長しすぎでしょ」

 

「ふぇっ!?」

 

 アリサの視線はフェイトの一部に集中していた。どこかと言えば胸部。詳しく言えばおっぱいである。

 

 言われたフェイトは突如のことでかわいらしい声を上げて驚くしかなかった。

 

「あー確かに。前にフェイトちゃんが体操服忘れたって聞いた時に貸したら、伸びちゃったんだよね」

 

「な、なのは!」

 

 アリサの発言にしみじみと頷きながら、前にあったことを思い出すなのは。

 

 そんな、なのはに顔を真っ赤にしながら叫ぶフェイト。

 

「そういえば、この前も告白されてなかったっけ?」

 

「な、なんで知っているの!?」

 

「なんでって…結構有名だよ?フェイトちゃん可愛いし、人気あって告白も後を絶えないって」

 

 すずかからの爆弾に驚いて声を上げるフェイトにそんな変なことを言ったかなぁという表情で事実を教えるすずか。

 

「はやてじゃないけど、男子達もその胸に視線がいっているしねぇ」

 

 はやてのことを思い出しながら、おっぱいを指差すアリサに必死に胸を隠そうとするフェイト。

 

「ねー。男子は隠せているって思っているっぽいけど、分かっちゃうからね」

 

 男のちら見は女子にとってはガン見と同じという格言があるように、ばればれであるらしい。

 

「大きくたって、いいことなんてないんだよ!?重いし、疲れるし、可愛い、その……下着だって見つけづらいし……」

 

「いいですねー、持っている人は」

 

「そうですねー」

 

 アリサとなのはがフェイトの言葉に対してひそひそと話す様を装いながらジト目で見つめる。

 

 ちなみに男子としては、容姿もさることながら、こういった初心な反応も可愛いと感じるのだが、今は関係なし。

 

「ほらほら、二人ともあんまりいじめちゃ可哀そうだよ」

 

「「はーい」」

 

「もうっ」

 

 すずかに窘められ、素直に返事をする二人に、フェイトも頬を膨らませながらため息を吐く。

 

「んで、三人は紅莉とどうなったのかなぁ?」

 

「アリサちゃん、滅茶苦茶悪い顔をしているよ?」

 

 話す話題が尽きない四人だが、先ほどひと段落ついたことにより、今度はアリサが話題を振ってきた。

 

 その内容とは、紅莉との関係である。

 

 中学生ともなれば、誰と誰が付き合いだしただの、そういった恋愛方面の話もちらほらと聞こえてくる。

 

 更に言えば、自分たちももう中学3年生である。そういった話は興味津津である。

 

「って、どうしたのよ」

 

 話題を振ったアリサだったのだが、振られた三人はというと、なにやらどんよりとしていた。

 

「もう、ね?紅莉君は私たちのこと見てないのかなーって」

 

「だよね。紅莉って仕事なんてーって言いながら、何だかんだでやっているし」

 

「二人はまだいいじゃん。あっちで会おうとすれば、会えるんだし。私なんて……」

 

 三人の話を聞いてアリサは少しの間考え込み出した結論は……

 

「相手にされていないと?」

 

 その言葉に三人とも頷いたのであった。

 

「別に女の子に興味がないってわけじゃないんでしょ?」

 

「だと思うよ?フィアッセさんとかに撫でられている紅莉君、かなりだらしない顔しているし」

 

「年上好きとか?」

 

「どうだろ?お姉ちゃんや美由希さん相手にかなりぞんざいな扱いしているし」

 

「もっと年下がいいとか?」

 

「それは、犯罪者だよ。それも、違うと思うけど」

 

「不能とか?」

 

「どうなの、なのはちゃん?」

 

 色々と可能性を浮かべては口に出すアリサにそれぞれが否定的な意見を出す。そして、最後に出した可能性を否定するには、確証がなく、それを確認できそうななのはに尋ねるすずか。

 

「にゃっ!?な、なんで私に!?」

 

「だって、同じ家に暮らしているし、夜這いの一回や二回……羨ましい!」

 

「そうなのなのは!?」

 

「ちょっ!?かってな想像をしてかってに嫉妬しないでよ!?」

 

 ギリギリとハンカチを噛みしめんばかりの表情のすずかに真っ赤な顔をして睨みつけるフェイトに焦るなのは。

 

 それを横目に見るアリサはというと、どっかにいい男いないかなーと言った感じである。

 

「そりゃあ、ね、私だって夜這いまではいかないでも、隣に寝て朝起きた時に既成事実を作ってやろうと考えたことはあるよ?」

 

「あるんだ」

 

 真黒な意見である。しかし、先がありそうなので、止めるのもあれなので続きを施す二人。

 

「でも、ね。紅莉君の部屋の前まで行くと……」

 

「おじけついちゃった?」

 

「そんな!?なんでも全力な、あのなのはが!?なんでも全開でやる、あのなのはが!?」

 

 大事なことなので二回言いましたと言わんばかりに驚くフェイトを軽く一睨みするなのは。すると、子犬のように震えるフェイトが完成である。

 

「もうっ。それでね、いざ扉を開けようとすると、紅莉君が起きていて、むしろあっちから開けてきて『どうした?眠れんのか?』と言って出てくるんだよ」

 

「うわぁ」

 

「しかも、うんって答えても、ホットミルクとか用意してくれたりとか、なんだか紅莉君に気を遣わせてばかりで……」

 

「なんとなく、想像ができるかも…」

 

 どんよりとしたなのはから報告に、なんとなく想像できる二人は同情的な視線を送ることしかできなかった。

 

「前から思っていたけど、紅莉ってなんでああも、女性の扱いが上手いの?あしらい方も上手でしょ?」

 

「前にお姉ちゃんが聞いてくれたんだけど、なんでも家庭環境がどうのとか言っていたよ?」

 

「はぁ?」

 

「士郎さんもそうらしいんだけど、恭也さんが女心を全く理解できなくて、家の女性陣たちが不機嫌になるのを見て育ったせいか、そういった部分に敏感らしいって」

 

「なるほどねぇ」

 

 すずかからの報告になのはの家の環境を思い浮かべ、思わず納得するアリサ。剣術馬鹿だとは自他共に認めている紅莉だが、同じ剣術馬鹿の恭也と比べてもその性格は真逆である。

 

 反面教師という言葉があるように、紅莉は恭也を見て育ってきたためにそういった部分では確かに恭也とは違っていた。まぁ、こうやって三人の少女の乙女心をもてあそぶまではいかないが、もやもやさせている時点で変わらないのだが。

 

「まぁ、最終的にはお姉ちゃんがやったように実力行使かなぁ?紅莉君ならやっておしまいって訳にはならないだろうし、きちんと責任は取ってくれるだろうし……なに?なのはちゃん、フェイトちゃん?」

 

 忍がどうやって恭也を勝ち取ったかをポロっと暴露するすずかが、それに習えと言っていると、突如として彼女の肩が掴まれる。

 

 掴んだ人なんて誰だかわかっているので、そちらを見ずに尋ねるすずか。心なしか、気温が下がった感じがする。

 

「やらせないよ?」

 

「渡さない」

 

 意思の強い目でそれを阻もうとする二人に、挑戦的な目をし不敵に笑うすずか。

 

「さてと、あんまり遅くなってもあれだし、帰りましょう」

 

 このままでは、どうなるかなんて分かったものではないので、帰ることを促すと、わりとあっさりと三人が頷いたので先に立ち上がる。

 

「あれ?そういえば、この時間帯なのに誰もいないって可笑しくない?」

 

 立ち上がり周りを見てみれば、誰もいないのである。幾ら広い公園でも、人の気配がしないほど静かというのもおかしいと感じ、他の三人に尋ねると、アリサに言われ感ずいたのか頷いていた。

 

「確かに。それに、なんだか結界に似たような気配がする」

 

「魔法、じゃないね。魔法だったら、どんなに弱くても感じられるだろうし、レイジングハートが報告してくれるだろうし」

 

「もしかして?」

 

 現役魔法少女の二人の考察を聞いて、一番あり得なさそうな可能性が浮かび口にだしてしまうすずか。

 

 すずかの呟きに三人の視線が移った時、それは訪れた。

 

「天は私に味方してくれるようだ」

 

 そこに現れたのは一人の男であった。顔立ちは整い、町を歩けば女性から声をかけられるくらいに整った容姿を持つ男性であった。

 

「氷村さん……」

 

 苦々しく男性の名を口に出すすずか。言われた氷村という男はそれを喜ぶように笑みを浮かべた。

 

「君の姉は下賤な輩に誑かされてしまったが、君はまだ無事だ。前例がある以上、早めに迎えに来た次第だよ」

 

 嫌な笑みを浮かべている。そう感じ、すずかを含めその場にいる四人の顔が渋いものとなる。

 

「ああ、友達に関しては安心してほしい。下等な者に私は興味ないが、部下たちの中には好きものもいるからね、安心してほしい」

 

 先ほどから下賤下賤と繰り返す男になのはやフェイト、アリサは顔を顰め、やや睨みつけるような表情になってしまう。

 

「おや、気に障ったかね。まぁ、だといって君たちが下賤な者に変わりはないがね」

 

 なのは達の表情を察したが、氷村と呼ばれた男は態度を改めることはなかった。

 

「さて、すずか。迎えに来たよ。私と一緒に来てもらおうか」

 

「お断りします」

 

 考えるまでもなく、即座に断るすずかに初めて氷村の表情が変わる。

 

「私はもう紅莉君のもの……って、なに?なのはちゃん、フェイトちゃん」

 

「だ・れ・が、すずかちゃんのものなのかな?かな?」

 

「そうだよ。紅莉は私のものだよ」

 

「いや、あんたら、そこで言い争いしないでよ」

 

 三人の様子に呆れてため息を吐くアリサ。間違いなく、この場で常識人なのはアリサなのだが、その分気苦労が増えてしまう。

 

「貴様ら、私が下手に出ているのをいいことに?」

 

「え!?あれで?」

 

「ダメだよ、本当のこと言っちゃ。本人にそれとなく気づかせてあげなきゃ」

 

「フェイトも結構言うわよね」

 

「えへへ」

 

「照れるところじゃないよ、フェイトちゃん」

 

 何処までも小馬鹿にするような態度にプルプルと震える氷村。それに気がついたのか、はたまた最初から分かってやっていたのか、すずかが向き直る。

 

「とにかく、帰ってください」

 

「ふん。下等種と一緒にいることで考え方も似たよってしまったようだ。これは、早々に連れ去って、元の考え方に戻してやらねば」

 

 すずかの言葉を聞いてないのか、ぶつぶつと何かを呟く氷村。

 

「さっきから、下賤だの下等種だのと、言いたい放題だけど、あんたは何さまよ!」

 

 我慢に我慢を重ねていたアリサが遂に爆発した。まぁ、その我慢の大半はなのは達の面倒で多少たまった鬱憤も含まれているのだが、丁度いい感じにぶつける相手もいたので、ついでとばかりにぶつけた次第である。

 

「ふん。本来ならば、教える必要もないが、特別に教えてやろう」

 

 手を広げ、仰々しく声高らかに説明しだす氷村。

 

「どうだ、分かったか。下等な餌どもが」

 

 説明を終え、ドヤ顔でアリサ達を見つめる氷村。しかし、それとは打って変わり、アリサ達は氷村のことなど見ずにすずかのほうを向いていた。

 

「ごめんね、今まで黙っていて」

 

「それはいいんだけど、すずかちゃん……」

 

「一つ聞いていい?」

 

「なに、かな?」

 

「紅莉とどっちが人外なの?」

 

「えーっと……紅莉君?お姉ちゃんが、恭也さんのことを私たち以上の化け物とか言っていたし」

 

「「「なーんだ」」」

 

 やや暗い顔をしていたすずかだったのだが、アリサ達からの質問に答えると、なんだか苦笑いしか出てこなくなる。

 

 ぶっちゃけ、四人にとっては化け物がどうのこうのとは関係なく、月村すずかという少女と友達なだけだ。それがちょっと変わっていることにいまさら何も言うまい。

 

 というよりも、なのはもフェイトもそれを言ったらかなり一般人とはかけ離れたものである。

 

 なによりも、彼女たちが大好きな人物なんてそれに輪をかけて酷い存在故に、別にショックを受けることもない。

 

「ふん、余裕ぶっているのも今のうちだ」

 

 無視され、額に青筋を浮かべる氷村に勝ち誇ったような表情を浮かべるアリサ。このあたり、こういった場面でこういう表情が出来る彼女は将来大物になりえる逸材であろう。

 

「やだやだ、ちょっと無視されたぐらいで余裕がなくなる男なんて」

 

「そうだよねー。紅莉君はおろかお兄ちゃんやお父さんだって、ねぇ?」

 

「クロノは怪しいかな?でも、クロノも何だかんだで最近落ち着いてきて結構ドキドキさせられるってエイミィが言っていたっけ?」

 

「と、言う訳なのでお帰りください」

 

 最後にすずかがお辞儀をして閉めるが、氷村はというと顔を真っ赤にして激情しているのが見てわかった。

 

「黙っていれば、いい気になりやがって!お前ら!」

 

 我慢の限界が超えたのだろうか?氷村は大声を上げて声を張り上げると、いつの間に現れたのか、数名の屈強な男たちが現れた。

 

「すずかを回収しろ!他の奴らはどうなっても構わん!」

 

 氷村が指示を出すと、男たちはぞろぞろとすずか達の元へと向かっていく。

 

 すずか達はというと、向かってくる男たちに対して、逃げることも構えることもしていなかった。

 

「ようやく諦めたようだが、もう貴様らは許さん!」

 

「諦めた?何を言っているのかな?」

 

 氷村の言葉を否定するように、しかし何を言っているんだろうと首を傾げるすずか。

 

「この状況がどうにかなると思っているのか!」

 

「なるよ。だって、この状況で来ないわけないもん」

 

「うん」

 

「そうだね」

 

「本人は否定するだろうけど、こういう場面で現れるとヒーローって思うわよね」

 

「何をいって……」

 

 すずか達の言葉が理解できず、怪訝な顔をする氷村だったが、突如それは起こった。

 

 戦闘に立つ男がついにすずかに手が届きそうなその瞬間、手を伸ばした男が崩れ落ちたのであった。

 

「よぉーっす、帰ってきたら誰もいないし、遅くなってきたから探しに来てみれば、何をやっているんだ、お前たちは?」

 

 横合いから声をかけられ、そちらを向けば、白いコートをきた一人の少年が手に太刀を持ち訪ねてきていた。

 

 ただし、その雰囲気は声とは裏腹にとても鋭いものであった。

 

「だ、誰だ貴様!?」

 

「そっちこそ誰よ。女の子を誘拐しようとかしている時点で、碌なやつではなそうだけど」

 

 すずか達の前に出て守るように立つ紅莉に、氷村が声を張り上げ鋭いめで睨みつける。

 

「ここには、人払いの結界が張ってあったはずだ!」

 

「むしろ違和感が強くてすぐにわかったなぁ、それに」

 

「あれが結界?お粗末すぎるよ」

 

 氷村のセリフに事実のみを告げる紅莉と、更に紅莉の後ろから巫女装束に似た服をきた子が、氷室の言葉を否定した。

 

「久遠ちゃん!?」

 

「しょうがないから、久遠が張りなおしておいたよ」

 

「えらいぞー久遠」

 

「えへへ~」

 

 紅莉に頭をなでられ上機嫌に笑う久遠。現れた久遠に驚く四人だったが、ことこういったことに関しては久遠の右に出るものは存在しない。伊達に何百年前から存在していたわけではないということである。

 

「それにしても、ったく、とことん狙われるなぁ……アリサ」

 

「なんで、私指定なのよ!」

 

「いやだってなぁ?ガキの頃に誘拐されたじゃん?」

 

「すずかだってされたじゃない!」

 

「だって、あれ完全にとばっちりだったし」

 

「うぐっ……」

 

 暢気な会話を繰り広げる、紅莉とアリサ。一瞬、呆気にとられていた氷村だったが、我に返り指示を繰り出した。

 

「やれ!男はどうなっても構わん!当初の目的を達しろ!」

 

 氷村の言葉を受け、男たちが紅莉に襲いかかるが……

 

「やれやれ」

 

 首を軽く振ったあと、抜刀し瞬く間に男たちを沈めたのであった。

 

「殺しちゃったの?」

 

「お前らが見ている前でやるか」

 

 恐る恐る訪ねてきたアリサにさもありなんといった感じで刀を納めながら答える紅莉。

 

「んで、少女誘拐犯の実行犯さんはどうするのかね?二度とこいつらに近づかないって誓えば……許してやるけど?」

 

 そういって、後ろを振り返り尋ねる紅莉。それに、どう答えていいのやらわからずに苦笑いを浮かべる一同。

 

 とりあえず、今回の件はすずかが発端のため、すずかに判断を委ねようと三人の視線はすずかに向かう。三人の視線を受けたすずかはちょっと考えた後に口を開いた。

 

「今後、私たち家族や友人に関わらなければいいです」

 

「だとさ」

 

 すずかの答えを聞いて、改めて氷村に向き直る紅莉。

 

「ふざけるな!」

 

 そういって、懐に手を忍ばせ次に出てきたときにはその手には拳銃が握られていた。

 

 それを見てもなお、誰も取り乱さない。それどころか、なのはとフェイトはいつでもセットアップができるようにとデバイスを手にもっていた。

 

「久遠、なのは達を守ってやってくれ」

 

「うん」

 

 紅莉のお願いに頷いた久遠に紅莉も頷き、氷村へと距離を詰めていく。

 

「貴様!これが、見えないのか!」

 

「見えるけど?それを脅威かどうか感じるのは別の話だしな」

 

 一歩一歩と確実に詰め寄ってくる紅莉。それを見て何故か内心で焦りだす氷村。

 

「く、来るな!」

 

 ついに、その引き金が引かれ発砲されたが、それは紅莉が半身ずらしただけで簡単に避けられてしまう。

 

「うわぁ。避けるのは分かっていたけど、ああやってとは思わなかったわ」

 

「同じく」

 

「どんどん人外になっていくの」

 

「だよね」

 

 後ろのほうで好き勝手言っている四人は後でお仕置きだなと思いながらも紅莉は近づいて行くのをやめない。

 

 氷村はそんな紅莉に恐怖を感じ、連続で引き金を引くがその悉くが紅莉に避けられてしまう。

 

「まっすぐしか飛んでこないとわかるからなぁ。後はタイミングさえ分かれば避けるのはたやすいよ」

 

「無理でしょ」

 

 紅莉の説明に律義にツッコミを入れるアリサ。他の三人もうんうんと頷いている。

 

「くっ!下等な者に触れることとなるとは!」

 

 そういうと、氷村は近寄ってきた紅莉に人間以上の速度で近づき、腕を振るうが……

 

「あらよっと」

 

「がはっ」

 

 それを簡単に避けられ懐に潜り込まれ鳩尾を強打され悶えた。

 

「見下すのは構わないけど、相手の力量を見切れない時点で終わりだよ」

 

「くっ」

 

「逃がさんよ」

 

 一歩引く氷村に先ほどの氷村以上の速度で近づいた紅莉は足払いをしてこかせる。

 

「お前ら、目を瞑っていろ。流石に見せるわけにはいかん」

 

 紅莉の言葉にすぐに目を閉じる四人。本当なら最後まで見届けるのが筋というものだが、紅莉の気遣いを無駄にするわけにはいかない。

 

「くっ、私に手を出してみろ!貴様ら一族がどうなるか!」

 

「黙れ」

 

「っ!?」

 

 底冷えのするほどに冷たく言われ放たれた一言。それに、言葉を失ってしまった。

 

「あいつらだけでなく、家族にまで手を出すといったのか?」

 

「っ!?」

 

「ただでさえ、大事なものに手を出され腹が立っているのに、それ以上をお前は望むのか?」

 

 大事なものという言葉に三人の頬が緩む。

 

「嬉しいのはわかるけど、目を開けちゃだめだよー」

 

 久遠に言われ、必死に目を閉じる三人。

 

 紅莉はというと、ゆっくりと刀を引き抜き氷村の首筋に刀を添える。

 

「いま、ここで終わるか?」

 

「っっっっっっ!?」

 

 声にならない悲鳴をあげながら、氷村は方々の体で逃げて行ったのであった。

 

「大丈夫か?」

 

「うん」

 

「ありがとう」

 

「助かったわ」

 

「本当に」

 

 紅莉が尋ねれば四人がそれぞれの言葉を口にする。それを聞いた紅莉はどこかほっとした表情を浮かべた。

 

「それで、ね。紅莉君、さっき大事なものって」

 

「さーって、帰るぞ久遠」

 

「くぅん♪」

 

 すずかが先ほどのことを訪ねようとしたが、紅莉はさっさと踵を返し、久遠が頭の上にのったのを確認するやいなや、とっとと歩きだしていってしまった。

 

「こらー!ちゃんと説明してほしいの!」

 

「そうだよ紅莉!」

 

「紅莉君まって!」

 

「青春ねー」

 

 そんな四人の姿を楽しそうに見ながらアリサも後を追っていった。




†久遠放送局†

久遠「今回のお話は、今後すずかが出てきにくくなるために、最後のおまけとしてのお話でした」

リニス「それに加え作者が『やべ、女の子が沢山でてくる原作なのに、最近女の子の出番が悉くねーや』と気付いて、そのためでもあります」

久遠「確かに、この小説って剣術馬鹿が好き勝手やっているだけだよね?バトル多め(?)な感じだけど」

リニス「ですね。ですので、この話です」

久遠「久遠の出番があってよかったという話ですね?」

リニス「違います」

久遠「残念。では、次回もお楽しみに」
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