魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第73話

 休日のとある日、俺は久方ぶりにテスタロッサ家へとお邪魔しに来た。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「兄さん!」

 

 玄関から入ると、テスタロッサ家の新たな家族のチビ二人が笑顔で出迎えてくれる。

 

「おう、エリキャロ久々だな」

 

「もう!纏めて呼ばないでください!」

 

 ぷくっと口を膨らませて文句を言うキャロの頭を撫でてから玄関から上がる。

 

「ちゃんと、フェイトやアリシアの言うことは聞いているか?」

 

「兄さん、僕たちはそこまで子供じゃありません!」

 

「はっはっは!そう言っているうちはまだまだ子供だよ」

 

「お兄ちゃん、おじさん臭いです」

 

「ぐはっ」

 

 いい子にしているかと聞いたら、エリオが拗ねだしたので笑って流したのだが、キャロからのツッコミが思いのほかダメージが大きく、胸に手を当てて、崩れ落ちる。

 

「キュルクー!」

 

「おう、フリードも久々だな」

 

 一通り立ち直ると、キャロの影に隠れていたチビ竜のフリードも存在を主張してきたので撫でてやろうと手を伸ばすと

 

「カプッ」

 

「あだだだだだっ!?」

 

 俺の手を掻い潜り、竜ならではその大きな口と幼竜とはいえ、確りと牙が生えそろっているその口で俺の手に噛みつく。

 

「こら、フリード!いつも言っているでしょ!お兄ちゃんの手を噛んじゃダメだって!ぺっ、しなさい!お腹壊しちゃうよ!」

 

 キャロさん?それはあれか?俺がばっちいってことか?

 

 キャロの使い魔的な存在のために大手を振るって噛みつきから逃れる訳にもいかずに割と本気なフリードの噛みつきをなんとか耐えつつ、拘束から逃れる。

 

「なんで、俺はフリードに嫌われているんだろうな?」

 

「いつもの事じゃないですか」

 

 同行してきたリニスが呆れるように言い放つ。知っているよ!いっつも動物には嫌われるってな!

 

「玄関で元気だねぇ。こっちに来たらどうだ?」

 

「おお、アルフ!」

 

 リビングのドアからこっちを覗き見るような感じで言ってくるアルフ(子供モード)を見た俺はエリキャロを残しアルフの元へと駆けよる。

 

「ううむ、相変わらずかわゆいのぉ」

 

「くぉらっ、抱っこするな!もふもふするな!頬ずりするな!」

 

「俺に死ねと!?」

 

「死活問題だったのかい!?」

 

 当然である。俺にとって、数少ない動物の癒しなのだ。それをやめろと言われたらストレスがマッハである。

 

「なぁなぁ、子犬モードになってくれよ。流石にこの姿でやり続けるのは背徳的すぎる」

 

「すな!」

 

「だから死ねと!?」

 

「生きろ!」

 

「生きるから、お願い!」

 

 背中からビーフジャーキーを取り出して渡しながらお願いすると渋々と言った感じで子犬モードになってくれるアルフ。

 

 ふふふ、しかし抱っこしているから気づかない訳がない。口では仕方ないとかいいつつも尻尾が振り振りと振られていたのだ。このツンデレさんめ!

 

「紅莉」

 

「紅莉」

 

 アルフを抱っこしながら居間へと入ろうとしたら、両肩をガシッと掴まれる。振り向いてみると、そこには修羅が。

 

「お、おう。どうした?」

 

「いい加減にしましょう」

 

「紅莉、浮気はダメ」

 

 あまりの恐ろしさに多少ドモリながら尋ねると、何やら勘違いしている二人。

 

「お、落ち着け!」

 

「「お仕置きです♪」」

 

「ぎゃぁぁぁぁっ!?」

 

 両肩を掴まれずるずると引きずられ、お仕置き部屋へと連れて行かれ子供には見せられないよ的なお仕置きを受け、大ダメージを負ってしまった。

 

 

 

 

 

「うぅ……酷い目にあった」

 

「分かっていたことだろうに。てか、お仕置き受けるなら一人で受けろ!なんで、あたしを放さないんだよ!」

 

「もふっていたいからに決まっているだろ!」

 

「はぁ、あんたの執念には恐れ入るよ。てか、久遠なりリニスなりをもふっていればいいだろ?」

 

「分かってないなぁ、久遠やリニスに飽きるなんてことはあり得ないが、それでも、別の何かを求めたいんだよ」

 

「分かりたくもない」

 

 つれないアルフを抱きかかえながら、今度こそ居間へ向かう。

 

「てか、私はまだあんたへの恨みは解消しちゃいないんだよ」

 

「なんだ、恨みって」

 

 アルフに対して恨みを抱かれるなんて心当たりがなさすぎる。これが、レジアスのおっさんあたりなら心当たりがありすぎるんだが。

 

「この前のバレンタイン」

 

「何かあったか?」

 

 口にチョコをねじ込まれたが、それはあくまでフェイト達であって、アルフは関係ないよな?いなかったし。

 

「フェイトのチョコの試食に付き合わされて、挙句の果てには鼻血だして倒れて放置されたんだよ。あの時ほど、紅莉を恨んだ記憶はない。てか、毎年だけど」

 

「おおう、すまん」

 

 直接的な原因ではないにしろ、これは謝らんと。てか、毎年かよ。 

 

 アルフの愚痴を聞きながら居間へと入ると、そこにはちょっとビクビクしているエリキャロと、この家の住人であるアリシアとフェイトが苦笑いしながら座っていた。

 

「紅ちゃん、また?」

 

「ええ、紅莉には困ったものです」

 

「ねー」

 

 呆れ顔をするリニスと久遠。てか、やったのはお前らだからな?放っておけば、別に問題ないだろうに。

 

「こ、紅莉?アルフは私のだから、私とその……付き合ってくれれば、アルフも紅莉のものだよ?」

 

「フェイト何を言ってるんだ!?」

 

「ぐっ」

 

「そこで、お前もぐらつくな!」

 

 いやまぁ、とても魅力的な提案だけど、流石にそれで選ぶってのも違うし、流石に動機が不純すぎる。てか、フェイトがそこまで手段を選ばんというのも珍しいな。

 

「そ、それに、ほら、私もアルフとは違った抱き心地が……」

 

「ストップフェイト!流石に子供たちの前で言っていい内容じゃないよ!」

 

 恥ずかしいのか最後のほうは子供たちには聞こえないくらい小声になっていったフェイトだが、内容がマズすぎるために普段のボケ役であるアリシアがツッコミに走る。

 

「はぅ!」

 

 フェイトも事の重要性を理解したらしく漫画見たくボフンと瞬間沸騰もかくやな感じで真っ赤になった。

 

「さてと、久遠はエリキャロと遊んでいな」

 

「うん。エリオ、キャロいこ」

 

「うん」

 

「お兄ちゃん、またあとで」

 

 そう言って、久遠はエリキャロを伴って子供部屋へと向かっていった。

 

「プレシアは……部屋か?」

 

 久遠たちが完全に部屋へと入ったのを気配で確認し、二人に問いかける。もともと、今日来た理由がプレシアに呼ばれたからだ。

 

「うん。ママもここでお迎えするって言っていたんだけど、調子がよくないしベッドに縛り付けておいた」

 

「アリシアが物理的に縛りつけようとしていた時はびっくりしたよ」

 

 変なところでアグレッシブな感じになったなアリシアは。

 

 二人に断りを入れてから、席を立ち、リニスを連れ添ってプレシアの部屋の前までやってきてノックをする。

 

「どうぞ」

 

「邪魔するよ」

 

 ノックをしてすぐに中からか細い声が聞こえてきたので断りを入れて扉を開けてから部屋へと入る。

 

 部屋の中にはベッドの背を起こしたプレシアが出会った当時には想像もつかないような穏やかな笑みを浮かべて、俺の来訪を心より向かい入れてくれた。

 

「調子は……聞くだけ野暮ってものだな」

 

「ええ、そうね」

 

 プレシアの顔色は悪い。それは、もう病人がどうとかの次元を超えている感じだ。

 

「針治療も結局は役に立たなかったな。力不足ですまん」

 

「何を言っているんだか。医者の告げた余命より何年も生き延びたじゃない」

 

「完治には至らなかっただろ?」

 

「もともとが末期だったのよ。それが、ここまで生きれたんですもの、十分だわ」

 

 そうは言うが、俺としては不十分である。

 

「貴方には感謝してもしたりないわ。貴女のおかげで私は家族を取り戻す……違うわね、家族を得ることができたんですもの」

 

「やめてくれ、俺は……」

 

「自分がやりたいからやったでしょ?」

 

 俺の台詞を遮り、俺の台詞を取られる。それが面白くなく、多少顔が歪んでしまう。

 

「ふふ、出会った当初から子供らしくないと思っていたけど、こういうところはまだまだね」

 

「やれやれ、敵わんね」

 

 プレシアに対して肩を竦めて答える。

 

「でもね、やっぱりお礼は言いたいわ、ありがとう」

 

「ん、素直に受け取るよ」

 

 お礼を言われることは別段嫌いという訳じゃない、ただ、なんとなくくすぐったいだけなのだ。

 

「今日呼んだのはね、貴方にお願いがあったの」

 

「なんだい?」

 

「これからも、あの子たちを守ってくれないかしら?」

 

「それは、受けれないな」

 

「どうして?」

 

 俺の答えに対し、彼女はこれといって怒るわけでもなく、不思議がることもなく、ただ純粋に尋ねてくる。そんな彼女に俺の胸の内を晒すのもこっ恥ずかしいが、まぁ、いいだろう。

 

「あいつを守る。それはねプレシア、もう他のだれからでもなく、俺が決めたことなんだよ。俺の名に、刃に誓ったことだ。だからね、それは受けれない」

 

「それは、フェイトよね?アリシアはどうなのかしら?」

 

「そいつは、ユーノがやってくれるさ。あいつも男だ、惚れた女一人守るのに誰かの手は借りないさ」

 

 いつの間にそんな?と思っていたら、そこはアリシアがあっさりと教えてくれた。

 

 なんでも、闇の書事件の時に手伝っている時に色々と教えてくれたり、そのあとも、研究やなんやで色々と手助けしているうちに自然とらしい。

 

 いやはや、俺の周りにはませた奴らしかおらんのかね?

 

「そう、そうだったわね。あの子たちが幸せに笑ってくれているなら思い残すことはもうないわ」

 

「プレシア」

 

「リニス、貴方にも迷惑をかけてしまったわね」

 

「何を言っているんですか、使い魔は主のために動いてこそですよ?」

 

 泣きそうな、それでも決して涙を見せないように、リニスはほほ笑みながらプレシアに語りかける。

 

「ふふ、当時の私ならきっとそれが当たり前……違うわね、そんなことすら些事にして、ひたすらにアリシアのことしか考えてなかったわね」

 

「振り返れるならば、貴方はもう、かつての貴方とは別人ですよ」

 

「そう、ね。娘たちの綺麗な姿も見れたわ。まぁ、花嫁姿が見れなかったのは少し残念だけど」

 

「プレシア……」

 

 もう、本人も分かっているんだろうな、長くないと。

 

 今までは針治療により、体を活性化させて元気を保ってきていたけど、ここ1年くらいその効力は無くなり始めている。

 

 そもそもが、クロードの治療のマテリアを使ってもどうにもならなかったことから、プレシアは長く生きることを心のどこかで諦めていたんだろう。

 

 それでも、娘二人をただ残すのは心配だという親心でここまで頑張れたのだろう。

 

「リニスこっちに来てくれるかしら?」

 

「はい」

 

 プレシアの呼びかけにリニスが応じ、プレシアのそばまで近寄り、その横側に立つと同時にプレシアがリニスを抱きしめる。

 

「プレシア?」

 

「思えば、貴方を抱きしめたことは無かったわね、ごめんなさいね、貴方には心配ばかりかけてしまって」

 

「ふふ、困った主でしたよ」

 

 リニスの瞳から涙が零れ落ちる。それが、どういったものかは俺には計り知れない。

 

「リニスを可愛がりなさい?粗末に扱ったら、祟ってやるわよ」

 

「おお、怖い怖い。だが、安心しろ。俺にはもったいないくらいに優秀で、逆にリニスがいないと俺が立ち回れないからな」

 

「紅莉も、私が注意しなければ、食事も疎かにして鍛錬をし続けてしまう困ったさんですからね。本当に二人は私がいなければダメなんですから」

 

「あら、いやだわ」

 

「ホント、敵わんね」

 

 俺とプレシア、揃ってリニスに頭が上がらないときたもんだ。

 

 そのあと、プレシアとリニスを二人っきりにして、部屋を出ると、そこにはアリシア達が心配そうに部屋の前に立っていた。

 

 聞かれてないよな?

 

「紅ちゃん、ママなんだって?」

 

「ん?ただの世間話だよ。ここ最近は、会ってなかったからね。フェイトを嫁にどう?って聞かれたが」

 

「か、母さん!」

 

 どうやら会話は聞かれてないようだったので、フェイトを軽くからかい、リビングへと向かった。

 

 その日は、フェイトとアリシア、リニスの料理に舌鼓を打ち、帰宅となった。

 

 その一週間後、プレシアは静かに息を引き取り、その顔は穏やかなものだった。

 

「プレシア、安らかに眠れ。この誓いは決して崩さない。だから、安心して見守っていろ」

 

 俺は、もう目を覚ますことのないプレシアに再び誓いを決意した。




†久遠放送局†

久遠「序盤のあれはなんだったんだって言うくらい、最後はシリアスだった」

リニス「ええ」

久遠「ダメだ、ダメージが抜けていない」

リニス「ええ」

久遠「リニスが使い物にならないので、久遠一人でやっちゃうよ?」

リニス「ええ」

久遠「本当にダメだ。とりあえず、プレシアなんだけど、このまま残しておいても出番もないし、何も起きないから、ならば、綺麗な形で退場をと考えてのことだよ。イノセントみたいなプレシアもありかな?って思ったらしいけど、こっちにしたみたい」

リニス「ええ」

久遠「では、次回もお楽しみに」
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