魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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やろうかどうか迷ったけど、やっちった。


第74話

「剣戟音?はぁ、またですか……」

 

 朝、いつもの時間に目を覚ますと庭から剣戟音が聞こえてきた。近くのベッドを見れば、もぬけの殻。

 

「本当に困った主です」

 

 自分のベッドから起き上がり、体を伸ばす。

 

「くぅ、くぅ」

 

 近くから寝息が聞こえてくるので見てみれば、久遠が幸せそうに仰向けになりながら、寝息を立てていました。

 

「本当に、この子は」

 

 幸せそうに眠る久遠を見ると、確かに周りの人間が甘やかすのも仕方ないかと思えるくらいに可愛らしい姿ですね……絶対に口に出しませんが。

 

「ん?剣戟音?」

 

 紅莉が寝ずに鍛錬しているなんて珍しくもありませんが、――やめてほしいですが――剣戟音がなっているなんてことはなかったはずです。

 

 クロードさんがまれにこの家にやってくることはあっても、まかり間違ってもこんな日の出るか出ないかの時間にはやってきませんし。

 

「っと」

 

 人型となり、着替えてから庭にある鍛錬場所までやってくると、そこにはいつもの恰好で刀を持つ主である紅莉の姿がありました。

 

 ただ、いつもと違うのは紅莉の前には真黒い陣羽織を羽織った人物が紅莉と同じ獲物――刀を手にして対峙していました。

 

 と、いうよりも着ている服こそ着流しと陣羽織ですが、動きがまるで紅莉と鏡合わせで戦っているみたいです。

 

 って、そんなことよりも!

 

「紅莉!」

 

「おう!おはよう!ちょっと、待っていてくれ!」

 

「……余所見は許さない」

 

「ぬわっ!?この!」

 

 鈴がなる様な可愛らしいような、綺麗な声から発せられるのは何やら嫉妬を含んだような、独占欲からくるような、そんな感じの声色でした。

 

 本来の主従の関係ならば、加勢をと考えるんでしょうが、紅莉の戦いに割って入れば、それは邪魔にしかなりません。なので、紅莉が言ったように信じて待つしかありませんね。

 

 その後も、紅莉と彼女?との攻防は続き、それは綺麗な殺陣を見ているかのようにお互いの動きに無駄がありません。

 

 未だに剣術については、拙い知識しかありませんが、これでも紅莉に付き合って何年も見続けた故に、多少の事はわかるつもりです。

 

 ゆえに、彼女?の動きは魔導師や騎士の動きではなく、剣士の動きであることには間違いありません。

 

 ただ、解せないのは、この世界において純粋な剣士という存在がいるはずはありません。

 

「えっ!?」

 

 色々と観察していると、紅莉が振るった剣が彼女めがけて向かうまでは良かったのですが、その剣が陽炎を斬るが如く素通りしました。

 

「今のはまさか……幻武?」

 

 いやそんなはずは……しかし、考えられるのはそれしかありえない。

 

 紅莉が使う緋凰流において、最も現実味を帯びないその技を何故彼女?が……

 

 考えられる可能性としては、彼女が緋凰の剣士であるということ。紅莉や水樹さんの話では、御神と違って、未だに緋凰の里はあるとのことですので、彼女がその里からやってきたというもの。

 

 しかし、緋凰の者と紅莉の接点は水樹さんだけだったはず。私と出会う前に出会っていれば話は違いますが、紅莉が初めて彼の母親以外の緋凰の者と出会ったのは、水樹さんだったはず。

 

 その時には既に私と出会っていましたので、その後の彼が私の知らないうちに出会うというのはありえません。というよりも、出会っているなら話に出ているはずです。

 

 一体彼女?は何者なのでしょうか……

 

「ええいっ!いい加減にしつこい!」

 

「ダメ、もっと」

 

 それにしても、先ほどから紅莉が彼女?に対する口調が荒いですね。基本的に女性には紳士な態度を取る紅莉にしては珍しい。

 

 とすると、彼女?は彼女ではなく彼?

 

「違う、私は女」

 

「心を読まないでください!」

 

 彼女からツッコミを入れられ、つい叫んでしまいました。

 

 しかし、先ほどからぽつりぽつりとしか喋りませんね彼女は。

 

 戦況は一進一退を繰り返しているように見えますが、次第に紅莉が押しているように見えなくもありません。

 

「一つ!二つ!三つ!」

 

「くぅっ!」

 

 業を煮やしたのか紅莉の攻撃に鋭さと激しさが増していきます。

 

 彼女は、そんな紅莉の攻撃に対して、苦悶の表情を浮かべながらも必死に食らいつきつつ、隙を窺っているように見えます。

 

「四つ!五つ!終わりだ!」

 

「貴方が!」

 

 五つ目の攻撃で彼女の刀を弾き飛ばし、開いた体に袈裟掛けを仕掛けた紅莉ですが、彼女はその瞬間を狙っていたのか、紅莉の攻撃を弾かれた刀の方向へと逆らわずにそのまま回転する形で避け、カウンターを仕掛けました。

 

「え?」

 

 彼女の呆けた声が響き渡ります。私も声にこそ出しませんでしたが、彼女と同じ心境です。刀を振りきったところによるカウンターでしたので、確実に決まったと思ったのですが、気がつけば紅莉はおらず、後ろから彼女の首筋に刀を添えていました。

 

「俺の勝ちだ」

 

「負けた」

 

 ずーんと沈み込む彼女を放置して紅莉がこちらに納刀しながらやってきます。

 

「おはようさん」

 

「え、あ、はい。おはやようございます?」

 

 未だに呆けてしまっていたので、返事が変な風になってしまいました。

 

「あの、彼女は一体?」

 

「ああ、奴は」

 

「リニス、分からない?」

 

 彼女も刀を納めながらこちらに歩いてきますが、残念ながら刀を持った知り合いなんて、この世界ではいません。

 

「おはよー!」

 

 と、彼女を警戒していると私の後ろから久遠が元気に飛び出して紅莉に飛びつきました。

 

「おう、久遠もおはよう」

 

「おはよう」

 

 久遠を優しく受け止めて、紅莉が久遠を撫でると、彼女もはにかんだ笑顔になりながら、久遠を撫でようとしますが紅莉がそれをさせません。

 

 なにやら、またショックを受けてショボンとしています。表情はあまり変わりませんが、なんとなく雰囲気がそういう風にかんじますね。

 

 てか、警戒しているのが馬鹿らしくなってきましたね。紅莉も、彼女に対してはぞんざいな対応をとっていますが、それ以外では警戒しているという感じでもありませんし。

 

「あれ?なんで、紅莉が二人もいるの?分身の魔法でも覚えたの?」

 

「はい?」

 

 今、久遠はなんて言いました?紅莉が二人?

 

「久遠、それは本当ですか?」

 

「?? リニスは分からないの?」

 

 分かるわけないでしょうが!

 

「だって、気配が一緒だよ?そっちの紅莉のほうがちょっと禍々しいけど」

 

 そういって、彼女を指差す久遠。差された彼女はというと、何やらぼーっとしていますが。

 

「流石だなぁ久遠」

 

「??」

 

 紅莉が褒めますが、久遠は分からないのか首を傾げています。ただ、紅莉に褒められて嬉しいのでしょう。尻尾はご機嫌に振り振りしてますが。

 

「とりあえず、飯にしよう。腹減った」

 

「あっ!まだ、用意していません」

 

「かまわんさ。その間にひとっ風呂浴びてくる」

 

「一緒に入る?」

 

「入るか、たわけ」

 

 それにしても、ペースが崩れます……

 

 

 

 

 

「それで、この方はどちらさまなんですか?」

 

「あー、なんというかだな?」

 

 とりあえず、彼女の分もついでに作り上げ、食事が終了した後のお茶の間に、紅莉に疑問をぶつけます。

 

「私は彼で、彼は私。だから、彼は私のもの」

 

「紅莉!」

 

「落ち着け!てめぇも適当なこと言うな!」

 

「助けてあげたのに」

 

 まさか、フェイトやなのはさん、すずかさんを放っておいてこんな女と!

 

「紅莉、私は貴方がド外道だというのは存じていました」

 

「おいこら」

 

「けど!フェイト達だけは裏切らないと信じていたのに!」

 

「お前の中で俺は一体どういう存在だ!しかも、久遠も言っただろうが!こいつは俺だって!」

 

「信じられますか!さしずめピーッ!して、魂でも繋いだからそう感じられるだけかもしれませんし!」

 

「おい、やめろ!」

 

 プレシアにフェイトをと託された私の気持ちを、まさか紅莉が踏みにじるなんて!

 

「えぇい!いい加減にしろ!」

 

「ふにゃっ!?」

 

 突如の痛みで私の意識は暗転しました……DV主が……

 

 

 

「はっ!?」

 

「起きたか?」

 

「私は一体……」

 

 まさか、リニスがあそこまで暴走するとは思わなく、わりと容赦なく頭を叩いたらまさか気絶するとは思わんかった。

 

「大丈夫?」

 

「そうだった!紅莉ぃぃぃっ!」

 

 そんな心配していたら、あいつが声をかけて先ほどのやりとりが再び……てか、なんで親の仇のごとくに睨まれなきゃならん。

 

「だから、おちつけ!」

 

「ふにゃっ!?」

 

 どうやら今度は気絶はしなかったようだ。さっきまでは、精神的に余裕がなかったから気絶したのかな?いや、今もないだろうけど。

 

「とにかく俺の話を聞け」

 

「分かりました」

 

 不承不承という感じで頷いたリニスに息を吐き、俺自身も落ち着くために一旦コーヒーをすする。

 

「あれは、昨夜のことだ。久遠やお前が寝た後に目が覚めちまって、そのあとどうにも眠れんから少し鍛錬してから寝ようとしたんだ」

 

「いつものことですね」

 

「うっさい」

 

 なんで、こう一言多いかね?

 

「まぁ、動き回るとまた朝までやらかしそうだったから、精神統一をしていたんだが、そこで何やら俺の内に何かあるなぁと思ってそれを表面に浮かしたら」

 

「私だったのだー」

 

 抑揚がない声で、もう一人の俺がドヤ顔をする。

 

「まぁ、ぶっちゃけ俺の内にあるものなんてある程度知れているから、それが何かは分かったんだが、それをこうなんつーか、また元に戻そうとして、なんやかんやしていたら、勝手に切り離れてこいつが勝手に出てきて実体を持ったんだよ」

 

 説明し終えると、何やらリニスが頭を抱えていた。

 

「どうした?」

 

「どうしたの?」

 

「紅莉、貴方は私たちが人外だ人外だと言うと、違う人間だといつも反論していますよね?」

 

「当たり前だろ?」

 

 人間をやめた記憶なんてない。さしもの俺だって、銃で撃たれれば怪我するし、当たり所が悪けりゃ死ぬし。

 

「だったら、どうやったら己の感情を切り離して実体を持たせるんですか!?」

 

 ガーと吠えるリニス。この時ばかりは猫というよりも、虎かライオンに見えるな。

 

「知らん!」

 

「知らんで済まさないでください!てか、今後はどうするつもりですか!?」

 

「……お前、もう戻れ」

 

「これ、食べ終えてから」

 

 とりあえず、出来るかどうか分からんかったが、とりあえず言ってみたら出来るらしい。そのためか、現在はリニスの焼いたクッキーをハムスターの如く口いっぱいに頬張っている。

 

 普通ならば、これが久遠なりなのは達でもいいが、こんな姿を見ればほっこりする場面なのに、全くしない。

 

 まぁ、こいつは姿かたちが違っても俺自身だから、それにほっこりするのもどうかと思うしまぁいいか。

 

「ねえねえ、紅莉」

 

「どうした?」

 

 一通りのやりとりを終えると、膝の上に座っていた久遠が俺を見上げながら尋ねてくる。

 

「さっきの戦いって、どうやって勝ったの?紅莉が負けると思ったんだけど」

 

「そうだ、忘れてた」

 

 久遠の質問にさっきまで大人しかったもう一人の俺の目がギラリとする……こいつも戦闘狂か。いやまぁ、俺のあれが具現化した存在ならば当たり前っちゃ当たり前なんだが。

 

 リニスのほうを見ても、彼女も同じ感想を持っていたのか、興味深いそうな目でこちらを見つめていた。まぁ、こいつも心配してくれていたんだろうしなぁ。

 

「簡単だ。ありゃ、六手目でこいつがカウンターを仕掛けるように誘導してから、そっからまた俺がカウンターを入れたって話だ」

 

「でも、紅莉が突然消えて、後ろに現れたよね?魔法使ったの?」

 

「セットアップしてない時点で使えん」

 

「でしょうね」

 

 リニスに物申したくもあるが事実であるために、反論できん。まぁ、俺が魔法を自在に扱えたらその日から槍でも降るかもしれんが。

 

「まぁ、種を明かすならば、あの瞬間に神速を使って一気に背後に回ったんだよ」

 

「ずるい」

 

 ネタを明かすともう一人の俺が不貞腐れたかのうように非難してきた。

 

「戦いにずるも卑怯もあるかよ」

 

 呆れながら言うと、更に不貞腐れる。これで、俺じゃなきゃ萌えるんだが、流石に自分にゃ萌えられん。

 

「いつの間に、使えるように?」

 

 ネタが分ったのはいいだろうけど、リニスとしては俺が神速を使えることのほうが驚きのようだ。

 

「兄さんとの戦いのときに至って、自在に扱えるようになったのはここ最近だな。

 ただ、兄さん曰く、俺の神速はまだまだ抜きが荒いから仕掛けてくるのがまる分かりだとか」

 

 まぁ、それは兄さんの幻武にも言えることだから問題はないな。そんなことよりも、切れる札が増えたことのほうが俺としては大きい。

 

 今までは高速移動術は縮地や瞬動しか使えんかったし、あれはあれで便利なのだが、条件がわりと決まっているから使いづらい部分もあった。

 

 しかし、神速にいたっては、その条件もないから使い勝手はいい。まぁ、その使い勝手がいい分、デメリットも多いが、何分、体の負担自体はそれほど問題ではない。脳のほうももともと幻武も脳への負担が大きいところがあったから慣れれば問題はなくなる。

 

 まぁ、兄さんも幻武を使い始めてからというもの、神速の練度がウナギ登りになったとか言っていたからたまったものではないが。

 

「まぁ、そんな感じで勝ったわけだ」

 

「六手目を誘導したと言ってましたが?」

 

「んなもん、武術をやっているやつからすれば、相手の動きや癖なんかを読めるからな、それを使えば出来なくはない。格上だろうが、格下だろうが、同等だろうが、な。

 ただまぁ、相手にそれを悟らせないようにしておかないと、やり返されたり、それを逆手に取られることもあるから、物は使いようってところだな」

 

 昨日の夜から朝っぱらまで付き合わされた分、相手の癖がわかったというのもあってできたのと、何だかんだで型は俺と一緒だったから、出来た。

 

 ただ、危なかったのは、恐らくだがこいつも狙っていたからそれにつられないように注意し続けたのが疲れた。

 

「つか、なんでレヴを持ち出せてんだよ?」

 

「はぁ?」

 

「いやな、普段全くと言っていいほど使わん存在だから別にいいんだが、ぽっかりと何かが無くなった感覚があるんだよね」

 

 リニスの呆ける理由も分かる。てか、俺も戦いが終わり、今になってようやく分かったことだし。

 

「凄いでしょ?」

 

「ドヤ顔やめろ」

 

 何故かドヤ顔をするこいつに思わずため息。

 

「もともと、あの時も持っていたけど、今回はなかったから貰った」

 

「あの時……あぁ」

 

「心当たりがあるんですか?」

 

「心当たりっつーか、ほれ、昔に闇の書の残滓が作った事件があったろ?」

 

「あぁ、あれですか。なんでも、フェイトやなのはさんのマテリアルは他と違ったあれですね」

 

 解説キャラが定着してきたなこいつ。そのうち、なぜなにリニスとか始めんよな?

 

「アホなこと考えてないで、続きを」

 

「分かっているだろうに。そんときに出てきたんだよ、こいつも」

 

 つか、あの時も持っているなんて知らんかったんだが?まぁ、俺のデータのコピーと言うならば、確かに持っていても可笑しくないわな。

 

 更に言えば、ディスナガンがディス・レヴを持っているならば、ディーヴァ・レヴは誰がと思ったが、こいつが持っていたとは。

 

「ねえねえ、もう一人の紅莉って名前あるの?」

 

「いや、流石にないだろ」

 

「光莉」

 

「あるんかい!」

 

 思わずツッコミを入れてしまった。

 

「てか、俺の狂気なのに、なんで名前が光莉なんだよ」

 

「洒落が効いているでしょ?」

 

「それだけか?」

 

「うん」

 

 しょうもねえな!なんで、どす黒い感情の狂気の名前も光なんていうものがついてんだよ。まぁ、それを言うならば、ディーヴァ・レヴを持っている時点で問題っちゃ問題だが。

 

「それじゃ、戻る」

 

「もう出てくるなよ」

 

「それは、出来ない約束」

 

 そういって、もう一人の俺……光莉は粒子となって消えていった。不穏な言葉を残しながら。

 

「疲れた」

 

「私の台詞ですよ」

 

「久遠は楽しかったよ?」

 

 あいつも何故か知らんが久遠にだけは殺気なり狂気なりをぶつけなかったからなぁ。

 

 それにしても、あいつもま~だ諦めていなかったとは。ここ数年は感情の制御も容易になったし、己を殺すことも生かすこともできるようになったと思っていた矢先だったから驚きも大きかった。

 

 まぁ、とんだ一日の始まりだったが、実の入る鍛錬だったということで納得しておこう。

 

 

 

 

 

 

 後日、何やら用があるとリニスに呼ばれた俺は、リニスの勤める開発室へと足を運んだ。

 

「一体どうしたんだ?」

 

「紅莉、ちょっとこれを飲んでみてください」

 

 そう言って取り出すは何やら変な丸薬。

 

「いや、飲めとか言っても、薬嫌いなんだが」

 

「男は度胸です。さぁ、どうぞ」

 

 いや、どうぞとかじゃくてだな、せめて説明くらいはしてもいいんじゃないか?

 

「ええい!とっとと飲みなさい!」

 

「うぐっ!?」

 

 渋っていると、業を煮やしたリニスが無理やり口に入れてきやがった。慌てて吐き出そうとしたが…

 

「ふんっ!」

 

「ぐふっ!?……って、ああっ!」

 

 いきなり腹パンしてきやがって、その時の衝撃で飲みこんでしまった。

 

「うぐっ……な、なんだ一体……」

 

「お、どうやら紅莉にも効いてきましたね」

 

 リニスが何やら言っているのだが、薬の影響なのか体が熱く感じ、それどころではない。

 

「ぬおっ」

 

 突如、体から力が抜けるような感覚が生まれると同時に先ほどの熱は無くなった。

 

「大丈夫?」

 

「なんでいる」

 

 膝から崩れ落ちはしなかったが、それでもふらついていた俺を支えたのはつい最近見た顔であった。

 

「ううむ、紅莉の場合はやっぱり彼女が出てきましたか」

 

 とりあえず、リニスにデコピンをお見舞いして体の調子を確かめる。

 

 ふむ、とりあえずは、こいつが出てくる前に感じた不快な感じはないな。そのほかの部分でも、これといって不調は見受けられない。

 

「んで、なんだこの薬は」

 

「うぅ、ちょっとした茶目っ気じゃないですか」

 

「腹パンで無理やり飲ませようとするな、たわけ」

 

 額を真っ赤にして押さえる涙目のリニスに説明を要求したのだが、思った以上にダメージが入ったみたいだ。

 

「ええっとですね、つい最近に分裂の種という植物が、この開発室に運ばれてきまして」

 

「……ロストロギアにならんか、それ?」

 

「ええ、それの調査というのが実情ですね。まぁ、とりあえず、その種の成分を分析して、人間に使っても副作用がない程度に効力を押さえ、色々とパーティー用に使えないかなぁと作ってみました」

 

「みましたって、お前なぁ」

 

「ちなみに私が飲んだら、あんな感じになりました」

 

 リニスが指差したほうを見ると、ヌボーとした表情のリニスが椅子に座っていた。

 

「他の人にも試してみたんですが、大体が似た感じで、感情はつきませんでしたね」

 

「俺の場合は……言わんでいいわ」

 

「私が乗っ取った」

 

「言わんでいいと言ったろうに」

 

 まさか、こんなものを作るとはねぇ。リニスのマッドもいろんな意味で変な方向へと行っていやがる。

 

「ちなみに、力が抜ける感覚があったのは、構成するのが魔力だからですね。大体、半分くらいは抜けますし、戦闘に耐えられるほどの耐久力もありませんがね」

 

「私は別」

 

「ああ、だからか」

 

 なんか、体の中から抜ける感覚があったんだが、すぐに戻ったから気にしなかったが。

 

 てか、大量に魔力を失う感覚というのは始めてかも?ブレイカーもストックから繰り出すし、普段のチャージはそこまで早くもなく緩やかにやっているからなぁ。

 

「まぁ、私達でも念じればその通りに動いてはくれますから便利といえば便利ですが、やはり、パーティー用ですね」

 

「だろうな。つか、戦闘に耐えられる程度の作ったら、それはそれでやばいしな」

 

「ですね」

 

 後日、研究成果を提出したリニスだったが、ロストロギア判定を貰った。つまりは、『危ないだろバカ』だそうだ。

 

「解せぬ」

 

「当然だ」




†久遠放送局†

久遠「今回の話は、どこからツッコミを入れていいかわからないよ」

リニス「紅莉が名実ともに人外になったでいいんじゃないですか?」

久遠「それもあるけど、問題はリニスもあると思うんだ。薬で分裂可能ってやばくない?」

リニス「分裂というよりも、魔力で作る実体の持った分身……影分身ですかね?」

久遠「チャクラねーよ。魔力だよ。って、そんなツッコミはもういいよ」

リニス「まぁ、似たようなものです」

久遠「似ているかなぁ?それはともかく、次回からようやくStsに入れるよ」

リニス「閑話というか、間の話が今まで一番長かったですからね」

久遠「そーだね。では、次回もお楽しみに」
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