魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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詰めたい内容つめていたら長くなりました


第7話

「むぅ…」

 

 病院から帰り、家についてから三角巾を外して肩を回してみる。

 

 未だにつっぱった感じは直らないが、動かしただけで痛いと言う感じはなくなったかな。

 

 けど、医者が言うには日常生活には支障はでないが、やはりボールを投げたりするような激しい動きをすれば直ぐにぶり返すとのことだ。

 

「左での抜刀の形も出来るようになったから別にいいか」

 

 今では元の右利き時代の動きも全て左でできるようになった…

 

「半年か。長かったな」

 

 3ヶ月くらいで三角巾はいらないと思ったのだが、桃かーさんや姉がわりのフィアッセさんがやたらと心配してとりあえずつけていたのだ。

 

「とりあえず、やってみるか」

 

 平日の午前中と言うことで家には俺以外はいない。病院後に学校に行こうと思ったがやめた。とりあえず、思いっきり刀を振ってみたかったからである。

 

「ふぅ…」

 

 着替えてから、部屋に飾ってあった半年というもの間使ってやることが出来なかった相棒を手に取る。

 

「今まで使ってやれなくて悪かったな」

 

 意思があるものに対して語りかけるように刀を右手にもつ。今までは左でもっていたので実際持ち替えると違和感が拭えない。

 

「しっ!」

 

 シャランという音ともに抜き放たれる刀身。使ってやることさえ出来なかったが手入れはきちんとしていたので曇りなど一切見当たらない。

 

「はっ!」

 

 確かめるように袈裟懸けに振るう。

 

「はあっ!」

 

 今度は逆薙ぎに刀を通す。

 

「であっ!」

 

 最後に体を軽くそらしてから一気に前へと突き出す刺突を繰り出し、最後に刀を鞘に納めて息を吐いた。

 

「うん、何とかなるな。右手も大きく動かさなければ張らないし」

 

 うちの流派は片手で扱うことが多い技が多いのでこういう部分では助かる。抜刀の時だけはちょっと違和感あったけど。

 

 そんな風に色々と考察していると後ろから手を叩く音が聞こえてきたので振り向けばそこにはとーさんが立っており拍手をしていた。

 

「とーさん、店は?」

 

「そういう紅莉こそ学校は?」

 

 まぁ、まだランチタイムじゃないからそこまで忙しくないのかな?あと、最近はフィアッセさんが手伝ってくれるそうで大分楽になったと桃かーさんも言っていたっけ?

 

「どうやら、問題なく振れるようだね」

 

「ああ、うん。まだ抜刀とかが違和感を拭えないけどそれ以外はね」

 

「そうか」

 

 父さんはそういうと道場に入ってきて俺用の木刀を投げ渡して、兄さん達が使う小太刀型の木刀を手に取った。

 

「とーさん!?」

 

 とーさんが木刀を構えて俺の前に立ち塞がる。俺はとーさんの行動が良く分からずについ叫んでしまった。

 

「なに、戦えないといってもそれは長時間のことだからな。それに、恭也や美由希にはまだ教えることはある…

 だから、ランチ前の忙しくなる前の時間なんかに少し鍛えていたんだ」

 

 そこからとーさんに詳しい話を聞くと全力で動けるのはせいぜい5分程度でそれ以上は体が悲鳴を上げてしまうようだ。

 

 スポーツの試合だとかで5分ならば余裕だろうけど、裏の仕事で5分しか動けませんじゃダメだろうな。

 

「今回は体の調子を確かめるためだから、かかってきなさい。やりすぎるようなら止めるから」

 

「わかった。いくよ!」

 

 そういって、父さんに向かっていきボロ負けした…

 

 さ、さすが御神の剣士…強さが伊達じゃなかった…

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。…どうしたのこのチョコ?」

 

「あ、お帰りー。ほら明日って」

 

「…ああ、バレンタインか」

 

 家に帰ってくるとリビングのテーブルの上に所狭しとチョコが乗っており、それを怪訝に思っていた俺に一人でいた美由希が説明する。

 

「あれ?それなら、翠屋のあれでいいんじゃいの?」

 

「それも考えたんだけど、たまにはって思って」

 

「まぁ、いいんじゃない?」

 

「どう?味見する?」

 

「明日渡してくれんじゃないの?」

 

「まぁ、まだ出来上がってないし」

 

 とりあえず、嫌いじゃないから一つ手にとって口に含む。

 

「ぐふっ!?」

 

「こ、紅莉!?」

 

 か、辛い!?いや、苦い!?すっぱい!?痺れる!?甘い!?痛い!?口に広がる色々な感覚に襲われながら俺はその場で意識を手放してしまった…

 

 

 

 

「はっ!?こ、ここは!?」

 

「あ、起きたの」

 

 何故か横になって寝ており、なのはがこちらを心配そうに窺っていた。

 

 とりあえず、なのはに何故俺が寝ていたのかを尋ねてみる。

 

「えっとね、おねーちゃんのチョコを食べた紅莉君が気絶しちゃったらしくて、それでとりあえず来てみたら丁度起きたの」

 

 思い出してきた。確か美由希がバレンタインのチョコを試しに作ったから味見しないかといわれて食べたんだ…

 

「うぅ、思い出したら鳥肌がたってきた」

 

 あれは断じて食べ物じゃない。ロシアンシューとかが一時期流行していたけど、あれの中身はまだからしやわさびといった一つの味だが美由希のはどういったわけか兎に角人体に害意があるような味だった…やめよう忘れよう。あれは覚えておくと酷いめにあう。

 

「そ、そんなに酷かったの?」

 

「忘れさせてくれ…」

 

「うん」

 

 なのはも俺の態度を見て聞くべきじゃないと悟ったらしく深くは聞いてこなかった。

 

「痛い痛い痛い!?」

 

「この程度で終わると思うなよ?」

 

 後日、このままじゃ腹の虫が収まらなかった俺は天命流の針の実験台に美由希を使うことで多少はすっきりした

 

「痛かったけど、体が軽くなったよ!」

 

 ちっ、流石だ緋凰…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ。見つからない」

 

 無事進級して2年のある日に事件が起こった。

 

「アリサとすずかが誘拐された!?」

 

 夕方の鍛錬に出かけようとしたときに、家に電話がかかってきたのでとったらそんなことを伝えてきた。

 

 なんでも、夕方に塾に送るために鮫島さんが別れた後に車に忘れ物があったために直ぐに戻って渡そうとしたところその付近にも塾にもいなかったようである。

 

 なのはは先に用を済ませたかったらしく先に塾内に入って無事だったようだが、それでも友人が攫われたかもしれないということでかなりパニックを起こしていた。

 

 近くにいた鮫島さんになのはのことを頼み、丁度帰ってきた兄さんと美由希に事情を伝えて直ぐに家をでた。

 

 海鳴自体は色々な場所が存在する。郊外に行けば化け物屋敷といわれているような場所や廃ビルやさらには倉庫街など…色々な場所があるためにどこにいるかの検討をつけるのが大変だ。

 

「だけど、必ず見つけてやる」

 

 あちこちを走り回りながら、遂には見つけた!

 

「1、2、3…全部で5人か」

 

 となるとかなり計画的な犯行か?アリサの家のバニングス家は資産家で有名ですずかも何だかんだでお嬢様だ。

 

 それを狙うということは身代金目的か、それとも…

 

「何はともあれ、緋凰と御神がいる町でテロまがいな奴等を野放しにできない」

 

 そう、かつて母さんはそれを壊滅させたり狙われている人を守っている。御神もまた士郎さんはテロリストから大切な人を守るために傷ついてでも守ったのだ。

 

 兄さんに連絡が取れたので此方に向かってもらう。流石の俺も大人5人の相手を一気にできるとまでは言えない…

 

 何より未熟な俺が出来ることなんて限られているんだから…

 

 

 

 

 

 

「ふむ、存外簡単な仕事だったな」

 

「ですねー」

 

 倉庫街の一角にてアリサを攫った誘拐犯は今回の仕事に対して話していた。

 

「まさか、バニングスグループの令嬢がここにいるとは思わなかった」

 

「しっかし、いいんですかい?関係ない子まで連れてきちゃって」

 

「アホか。あそこでこいつだけ置いていけば直ぐに通報されるだろう。後に通報されるが俺達がここに隠れる前と後じゃ話は変わる」

 

「確かに」

 

 どうやら、リーダー格の男はかなりの切れ者のようで冷静に状況を分析していた。

 

「ぼ、ボス!」

 

 そこに小太りした一人の男がリーダーに話しかける。

 

「どうした?」

 

「ちょ、ちょっと味見していいですか?」

 

 味見とは?猿轡されているアリサとすずかは何のことか良く分かっていなかったがリーダーだけはまたかという表情をしていた。

 

「貴様の趣味にはいつも呆れるが少し待て…いや、味見ならいい。ただし写真はしっかり撮れよ。ただし、味見だけだ。それ以上は分かっているな?」

 

「了解です!」

 

 歓喜の表情をしながら小太りした男はアリサ達に近づいていった

 

「ぐふふ、大丈夫だよ?痛くないよぉ~」

 

「むー!むー!」

 

「!?」

 

 小太りした男の態度で大体何をされるかを察したのか、それとも不穏な空気を敏感に感じ取ったのかアリサは体を動かして逃げようとし、すずかは恐怖で動けなくなっていた。

 

「で、では、ごかいちょ~」

 

 持っていたナイフでアリサの制服を切り裂こうとしたが…

 

「ぐがっ!」

 

 小太りした男はうめき声を上げて倒れてしまった。

 

「なんだ!?」

 

「あ~もう。兄さんが来るまで隠れてようとしたのに…なんでロリコンがいるんだよ」

 

 表れたのは先ほどから隠れていた紅莉であった。

 

「でもまぁ、友達が危ないのに黙っていられないか」

 

 そういうと紅莉は持っていた刀を抜き放つ。

 

「(部屋に三人。もう一人はさっき出て行ったけど戻ってくるのも時間の問題)…速攻は苦手なんだけどな」

 

「なんだお前は!」

 

「ガキが何持ってやがる!」

 

 突如表れた小さな少年に男達は驚き、また手にもつものにも驚きを示していた。

 

「緋凰の名をその身に刻め!」

 

 紅莉はそれだけ言い放つと男達に向かって走り出す。一番近い奴の元へと一気に近づくと剣を一閃。

 

「ぐぎゃっ!?」

 

 峰打ちで首筋を打たれた男は短い悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。

 

「くっ!ガキがぁっ!」

 

 仲間がやられたことに逆上したもう一人の男が紅莉へと向かって走っていくが…

 

――緋凰流【天輪】

 

 紅莉はその場で1回転をして向かってくる男に対して遠心力を用いた攻撃を叩き込んだ。

 

「がぁっ!?」

 

 叫び声を上げてから男はその場で蹲る。たとえ峰で打ったとしても紅莉が持っているのは鋼の刀でナイフやなんやらとは桁違いのものだ。

 

 特に今の攻撃では相手のアバラに直撃し、鈍い音が聞こえてきた。折れてはいないだろうが、それでも相当なものだろう。

 

 天輪とは主に回りにいる敵を纏めて倒すための技なのだが、今回は威力を出すためにこうして使ったのである。

 

 残りはともう一人のそちらを向こうとしたらズドンとした低く鈍い音が響き渡った。

 

「調子に乗るなよガキが」

 

 リーダーが持っているのは紛れもなく拳銃である。

 

「むー!むー!」

 

「っ!?」

 

 アリサとすずかがそれを見て驚きに固まる中、紅莉はそっと剣を鞘に収める。

 

「ほう、これをみて諦めたか。それをこっちに渡せ。そうしたら許してやる」

 

 紅莉の行動を諦めと見たのか、怒りをすっと落としたリーダーだったが、紅莉はそのままリーダーに向かって歩いていく。

 

「緋凰に阻むものなし」

 

「なにを言っていやがる。とっととそれを渡せ」

 

 紅莉が突如喋りだした言葉に怪訝な顔をしながらもしっかりと銃を紅莉に向けているリーダー。

 

「緋凰を捕らえられるものなし」

 

 しかし、紅莉はそれすらも気に留めずに近づいていく。

 

「我等行く道、後に続く者のためなり。

 緋凰は切り開くものなり」

 

 そして、一気に構えて近づく紅莉だったが…

 

「馬鹿が!」

 

「「!?」」

 

 リーダーは容赦なく、非常にも紅莉に向かってその引き金を引いた。部屋に鈍い音が鳴り響き、誰もが紅莉が撃たれたと思ったが…

 

「なっ!?」

 

 リーダーの驚きの声が上がる。銃弾は確かに紅莉を貫通したはずなのに紅莉は血を出すどころか何事も無かったように武器を構えたのである。

 

――緋凰流・奥義【葬刃】

 

 紅莉の左手がぶれる。その後にはリーダーはそのままその場に崩れ落ちてしまった。

 

「ふぅ、もう大丈夫だ…!?」

 

 気を抜いて、アリサたちの元へと戻ろうとしたがその場所には先ほど移動した男が立っておりアリサに対してナイフを突きつけていたのである。

 

「しまったっ!?」

 

 うかつにも程があると悪態をつくまもなく紅莉は苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「けっ、けけけ。て、てめえがどんな化け物でもこうされちゃ動けねぇだろ」

 

 化け物という言葉に一瞬すずかが反応を示すが、紅莉は最後の一人に集中していたためにそれは見逃してしまっていた。

 

「オラ!とっとと武器を捨てろ!妙なまねをしたらこのガキの命はねえぞ!」

 

 金よりも命と保身。それゆえに既に手段を選ばなくなっている男に流石に分が悪いとおもったのか紅莉はそのまま刀を男のほうへと放ったのである。

 

「へっ、最初からそうしていればよかったんだよ」

 

 どうしたものかと必死に思考を巡らせているとなにやら見つけた紅莉はふと肩の力を抜いた。

 

「後はよろしく…兄さん」

 

「よくやった」

 

「なっ!?ぎゃぁっ!」

 

 突如表れた陰に男はなす術もなく攻撃されて叫び声を上げて吹き飛ばされた。

 

 表れたのは恭也であり、タイミングよくやってきて紅莉のピンチを救ったのである。

 

 アリサたちの開放より先に恭也は男達を鋼糸で縛り付けて動けないようにした。

 

 紅莉はと言うと、縛られているアリサたちを解放していた。

 

「もう、大丈夫だ」

 

「あ、あんた!一体!?」

 

「あの…その…」

 

 助けられた二人は目の前で起こったことが信じられずに言葉にならずに紅莉に詰め寄っていた。

 

「落ち着けって。ほら、もう大丈夫だから」

 

 そういって、二人の肩に手を回して自分の胸へと抱き寄せる。

 

「「あ…」」

 

 紅莉に抱き寄せられた二人は今までの緊張感からか目に涙が浮かびやがて泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

「ズズ…」

 

「グス…」

 

 一通りなき終えて落ち着いたのか、二人は俺から離れて顔を赤くしている。

 

 まぁ、恥ずかしいだろうな。

 

「あんたは一体…」

 

「しがない小学生というのは?」

 

「無理があるよ」

 

 ううむ、助けるためとはいえ無茶をしすぎたか…あまり教えたくはないんだけど…

 

「とりあえず、一旦撤退するわ。警察にコレのこととか知られたくないし」

 

 そういって刀を掲げる。

 

「そうよ、それってまさか!?」

 

 アリサがありえないといった表情をするが。

 

「おもちゃだよおもちゃ」

 

「そ、そうよね。流石に本物なんて…」

 

「ちょっと、引けば服どころか肌まで裂けるけどおもちゃだよ」

 

「本物じゃない!」

 

 ウガーと吠えるアリサを見て安心する。どうやらいつもの調子に戻ったようだ。

 

「なんか、かわいそうだよ」

 

「いいんだよ。いつもの調子が確認できればね」

 

 そういって、アリサたちのことは心配だがマジで俺達のことが公になるとまずいのでその場を後にする。

 

「うっ…ぐぅ…」

 

 ある程度離れてから俺はその場で蹲る。

 

「大丈夫か?」

 

 どうやら兄さんも警察に事情を話して直ぐに退散してきたようで俺を見つけてよってきた。

 

「体が出来上がってもいないのに奥義使っちゃったから、ね」

 

 俺の体はまだ奥義を打つには幼すぎるために使った後の反動が酷い。

 

「色々と説教をしたいところだが、今日だけだ」

 

 そういうと、兄さんは俺のことをおぶり歩き出す。

 

「ゴメン、後はよろしく」

 

 そのまま俺は緊張感と疲れにより眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

「紅莉、君は今回のことを分かっているのか?」

 

 目を覚ました俺に待っていたのはとーさん達の大説教だった。

 

「うん。だけど、やったことに対しては後悔はない」

 

 たとえ、無謀と怒られようともやったことに関しては後悔は一切無い。反省はしっかりとするけどね。

 

「そうか…血ではないな。この場合は魂は争えないといった感じかな?」

 

「どういうこと?」

 

「なに、橙璃もまたやったことに後悔がないように歩んできたからね」

 

「そっか、母さんも…」

 

 そういわれると何か嬉しいな…はっ!?俺はマザコンじゃないはずだ!

 

「まぁ、後は…ガンバレ」

 

 そういうと、とーさん達はそそくさとその場を後にしたので俺も立ち上がろうとしたんだけど…

 

「紅莉、話はこれからよ?」

 

 最後の大魔神が残っていました!

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これはお礼よ!」

 

 次の日に屋上に呼び出されて何かと思ったら突如近づいてきたアリサに頬に暖かい感触が…

 

 俺が呆けている間にアリサはそのままその場をあとにして俺は次の時間一杯固まっていたようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで…私の役目は終わった…」

 

 これで、よかったのか分からない。だけど、私の役目はもう終わりプレシアにも負担をかけないためにも消えなければいけない…

 

「本当にそれでいいのか?」

 

「え?」

 

 突如私の目の前に現れる一人の男性。思わず顔を上げるが、既に事切れる前の私にはその顔がよく分からない。

 

「君は本当にそれでいいのか?気になるんだろう?見届けたくないのか?」

 

「確かに…これからフェイトは…プレシアは…」

 

 でも、それは叶わぬ願い。

 

「そうやって全てを諦めて希望的観測に任せるのか?」

 

 でも、私にはそれしか…

 

「そう、今のお前はそれを見届けるにも何とかしようにも力が無い」

 

 男性の言葉が心に深くのしかかる。

 

「だから、君に選択肢をやろう」

 

「選択肢?」

 

「ああ、ある男の下へとあるものを届けて貰いたい。それだけだ」

 

「それと、私が生き残ることとどんな関係が…」

 

「ん?ああ、そいつの使い魔になればいいだろう。なに、そいつの魔力は無尽蔵に沸きあがるからな。それに使い魔契約はきれているんだろ?だったら、別の手段から助けたっていいじゃないか。一つのことに囚われるから迷うんだ。時には外から見て考えればいいだろう?」

 

 なにを言っているんだろうこの人は…私が、別の人の使い魔になれと?

 

「見くびらないでください、私は彼女達の…」

 

「でも、こうして消えるしかないと思っているお前と残された彼女達はどうなるんだ?」

 

「そ、それは…」

 

 確かに、それは…

 

「あと、一つ言っとくが時間は戻せん。なら、明日に向けていくしかないだろう?」

 

「明日へ…」

 

「そうだ」

 

 あの子達の未来を私は…そして、プレシアにもどうか…

 

「いいでしょう。貴方の願いを聞きます」

 

「そうか。これを届けてくれ」

 

「これは…デバイス?」

 

 渡されたのは翡翠色の宝玉であった。

 

「渡す奴の名前は確か…緋凰紅莉」

 

「ヒオウ・コウリ…」

 

「頼んだぞ」

 

 そういうと、男性は手を前にかざす。それと同時に私の意識は闇へと飲まれていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《きて…》

 

「ん?」

 

 夜の鍛錬にて兄さん達より先に上がり森を降りているとなにやら呼ばれたようなきがした。

 

《私の元へ…》

 

「なんか、この感じは覚えがあるな…」

 

 どこだったかは忘れたが…なんというか…そう、転生前にやったゲームだ。

 

《どうか、早く》

 

 声の元がどこからか分からないのに、何処から呼ばれているのかが分かり俺はそちらに向かうとそこには一匹の倒れている猫がいた。

 

「大丈夫か?」

 

 近づいてみても反応が無い。正直、息も絶え絶えでかなり危うい状態だ。

 

「槙原動物医院はもうやっていないよな」

 

 こんな深夜にいってもいないだろうし、どうするかなぁ?見つけちまって放置も可哀想だし…

 

《ヒオウ・コウリ…私を》

 

「ん?俺の名前を?」

 

 頭に響く声が俺の名前を告げる。

 

「にゃ…」

 

「お、大丈夫か?」

 

 どうやら、まだ大丈夫のようでネコがこちらを向く。

 

「どうしたんだ?こんなところで…お前が俺をよんだのか?」

 

 ネコは俺をじっと見つめていると…

 

「ん?何を咥えているんだ?」

 

 ゆっくりと持ち直して咥えているものを取る。かまれるかなと思ったが大丈夫で安心した。

 

「宝石?いや、球体だからただの色つき水晶か?」

 

《ようやく、会えましたねマスター》

 

「ぬおっ!?」

 

 ほ、宝石が喋っただと!?

 

《おや、マスターは魔法のことに関しては知らなかったですか?》

 

 魔法だと!?…あっ!

 

「そういや、そうだったな」

 

《…忘れていたんですか》

 

 いやだってなぁ?転生者ということすら忘れかけているのにそんなもんがあるとは思っていないだろう?

 

《話は後にしましょう。出来ればそちらのネコを使い魔にして欲しいのですが》

 

「どうして?」

 

《約束ですので》

 

「まぁ、別に構わんが」

 

 なんか、俺の知らないところで話が決められているが使い魔くらいはいても困らないだろ?それに、ネコ好きだし。

 

「それはいいんだが、どうやって?」

 

《キスしてください》

 

「は?」

 

《手っ取り早い方法がキスです。細かい方法を知っているならやっていただいてもいいんですが、そちらのネコの時間もありませんし》

 

「まぁ、いいが?お前は俺でいいのか?」

 

「はい」

 

 ネコが喋った!?

 

《マスター色々と驚きがあるのは分かりますが、時間がありません》

 

「ええい!男は度胸!」

 

 そういって、俺はネコを顔まで上げてキスをすると辺りを光が包み込んだ。

 

 あまりの眩しさに思わず目を瞑ってしまい。目を開けるとそこには

 

「ん…はぁ…」

 

「んむっ!?」

 

 何故かネコにキスしたはずなのにフィアッセさんくらいの女性が俺の口をふさいでいた。

 

《どうやら、無事にできたようですね》

 

「まて、色々と待ってくれ。とりあえず、状況整理させてくれ」

 

 とりあえず、何か宝石が喋ったと思ったら魔法とか言い出して、ついでに言えばネコを使い魔にしろと…

 

 これはいい。確かにそんな世界に行くとか了承したから。

 

 しかしだ、何故ネコと契約したのに大人の女性になる?あれか?型月のレンみたいな感じか?

 

 でも、アレは幼女だったよな?

 

「オーケーなんとか落ち着いた」

 

《それは、よかったです》

 

「とりあえずだ、誰だお前達は」

 

 とりあえず、現状確認をしっかりとしよう。

 

「私の名前はリニスといいます」

 

 元ネコの女性はリニスと。あ、ネコの名残なのかネコ耳とシッポがある。

 

《私の名前はエアナガンと名づけられました》

 

 宝石がエアナガンね。

 

「俺の名前を呼んだことから知っていると思うが俺は…緋凰紅莉だ」

 

 そういってからお辞儀する。とりあえず、礼は大事だからな。

 

「まずは、行き成り契約してもらってありがとうございます」

 

 リニスさんがそう言ってからお辞儀する。

 

「いや、決めたのは俺だから気にしないでいいですよ」

 

「私はあなたの使い魔ですから、丁寧に喋らなくてもいいですよ」

 

「そう?それじゃ改めて、俺も別にそこまで丁寧じゃなくていいけど?」

 

 正直、アリサとかのお嬢様なら別だが俺は一般人だ。

 

「元々の口調がこれなので、あまり直らないと思います」

 

「元がそれならしょうがないな。それで、なんでここに倒れていたんだ?」

 

「それは…うっ」

 

「おい!」

 

 リニスが喋ろうとしたが突如倒れかける。

 

「す、すいません。どうやら、無理が祟ったようで…」

 

「う~む、この時間に女性を連れて行ったら何を言われるか…」

 

 兄さんならまだしも子供の俺だぞ?しかも、半コスプレした感じの女性だし。

 

「で、でしたら…」

 

 そういうと、彼女は先ほどのネコの姿になる。

 

「それなら、別に大丈夫か。今はゆっくりと休んで、んで元気になったら理由を教えてくれ」

 

「すいません…」

 

 そういうと彼女はそのまま寝息を立てだしたので良しとしよう。

 

《マスター。私のこと忘れてません?》

 

「スマンスマン。それで、お前は?」

 

《私はインテリジェント・デバイスと呼ばれるものです》

 

「なんだそれ?」

 

《おや?マスターは知識無かったですか?》

 

 そういや、そんなのあったっけ?詳しくは知らないなぁ。

 

《では、説明をと言いたいですが時間も時間なので後日にしましょう。ただし、彼女がいないときになりますが》

 

「どうしてだ?」

 

《彼女にマスターが転生者とお伝えしても?あと、マスターのチート能力の説明をしなければいけませんし》

 

「それは、確かに」

 

 漸く分かるのか…長かったような気がする。

 

 とりあえず、リニスを抱きながら家へと帰り、何とか桃かーさん達に事情を説明してリニスを俺の部屋に連れ込むことを許可できたのであった。




今回のおさらい

士郎→まだまだ息子には負けない

美由希→二度と料理するな

アリサ→つり橋効果

リニス→心残りから存命

でした

しかし、紅莉はやりすぎた…正直9歳児があそこまで出来るわけねーじゃんと思っていますがまぁ、そこはほら、チート主人公ということで許してください
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