魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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フェンリルの人気にびっくり。


第77話

「うっひゃー、すげぇパワーっすね」

 

「まぁ、普段はただの大型のバイクだからな」

 

 格納庫脇のスペースにて、紅莉とヴァイスがフェンリルのエンジンを入れながら、談笑している。

 

 ヴァイスは、フェンリルが納車されてからというもの、取りつかれたように毎日、紅莉にエンジンを入れてもらうようにせがみ、現在はエンジンが入ったフェンリルにまたがっている。

 

「俺も持ってはいますし、将来はこれぐらいの大型のをと考えてましたけど、これは見た目以上のパワーで持てあましそうですわ」

 

「エンジンに小型のリアクター積んでいるからな」

 

「まさかの核エンジン!?」

 

「最初はそう考えたんだが、流石に許可が下りなかった。だからこれは、プラズマエンジンだな」

 

「どっちにしてもあぶねぇ!?」

 

 さらりと告げられた事実に戦々恐々とするヴァイスだが、そこは男の子。青い顔から一転、今度は挑戦的な笑みを浮かべる。

 

「女もバイクも多少じゃじゃ馬じゃなければ楽しくはないっすね」

 

「何を偉そうに」

 

 ヴァイスの台詞に呆れながらも、紅莉も否定はしない。従順な子よりも、自己を確りと告げてくれる子のほうが付き合う方としては楽しいのだ。

 

「にしても、確かにエンジンは多少特殊ですけど、なんでこれがデバイスなんですかい?」

 

 エンジンを吹かしながら、感じる感触的に疑問に思ったヴァイスがいまさらながらに紅莉に質問をする。

 

「それな、普段乗りも出来るように作ってはいるんだが、事件時や緊急時にデバイスと接続することにより、自分で操縦しなくても済むようにしてあるんだ」

 

「つーことは……」

 

 紅莉の説明を聞き、冷や汗を流すヴァイス。ここまで、説明されれば大よその予測はつくというものである。

 

「お前の考えている通り、これに乗りながら戦うことを想定してだな」

 

「なんでまた」

 

「まぁ、色々と理由はあるんだが、たまに車でもそうだが、戦闘に巻き込まれたり、戦闘に突っ込んだりすると、基本的に乗り潰しになるからなぁ」

 

 そう言いながら遠い目をする紅莉。別段、紅莉としては乗り潰すのは少々もったいない気もするが、仕方ないという部分はある。

 

 しかし、乗り潰したら乗り潰したで、報告書や始末書、場合によっては全額の負担を強いられることが多々あるからだ。

 

 空戦魔導師でもあるにも関わらず、紅莉は基本的に飛ばない。跳ぶことはあるが、基本的に地に足をつけていることが多いのだ。

 

 その場合、敵が逃亡時に車なりバイクなりで走り去るのを追う時に足が必要となる。そして、その足を、その度に壊していたら世話がないということだ。

 

 しかも、そういう場合に限ってエアが作る報告書が通らず、なおかつ目の前でやらされるためもある。

 

 まぁ、何よりの理由としては、ノリノリでぶっ壊すために、流石に提出させるだけでは反省しないだろと言うしょうもない理由もあったりするのだが。

 

 そして、もうひとつの理由としては、飛行許可が下りないケースがある時もある。

 

 特務隊員として働く紅莉の場合、現場判断許可を貰っているために、無許可での飛行も可能なのだが、縄張り意識が強い奴の地区だと後々面倒が必ず発生するので、辟易しているという事実もあったりする。

 

「んじゃ、俺のストームレイダーみたいな車やバイクが今後増えるってことっすか?」

 

 ヴァイスのデバイスであるストームレイダーは、ヘリと同期しており、隊員の足として現場へ赴く時、ヴァイスのサポートをしている。

 

「どうだろうなぁ。今まで、ヘリは許可下りていた理由としては、隊員の足がない場合や、それを取得する人物っていうのが少ないからという理由もあるが、地までそうなると話は変わるんじゃないか?」

 

「そうっすねぇ。それに、それが普及しちまうと結局はイタチごっこということですかね」

 

 そうだなと紅莉が頷き、フェンリルのエンジンを切ると、ヴァイスがなにやら残念そうな顔をする。

 

 それを見た紅莉は苦笑いするが、走るわけでもないのにいつまでもエンジンをつけていても意味はないと割り切り、移動しようとしたら、警戒アラートが鳴り響いた。

 

『紅莉君!』

 

「あいよ、状況は?」

 

 通信ウインドウが開き、ウインドウの中からはやての顔が映る。その顔は、普段のおちゃらけた表情ではなく、真面目な司令官の顔である。

 

 そんなはやてに対して、紅莉もまた、真面目な表情をしながら返事をする。言動はやや軽いが、それを咎める者はいない。

 

『山岳旧領地区のリニアに探しもん発見や』

 

「了解。各員、状況は把握しているな?」

 

『はい!』

 

 はやてからの報告を受け、紅莉は通信を個人から、各所へと全てに繋げ尋ねると、元気のよい返事を返される。

 

 それに頷くと、まず近くにいるヴァイスのほうへと振り向く。

 

「お前はヘリの準備を先にいってしていろ」

 

「ウィッス!」

 

 紅莉の指示を受け、敬礼を返すとすぐさま持ち場へと走っていくヴァイスの姿を横目に紅莉は再びウインドウに視線を戻す。

 

「場所が場所だけに航空戦力も欲しいな。なのはは確定として、フェイトはどうする?お前、確か今日は本部に一度行っているよな?」

 

『今は、戻っている途中だよ』

 

「どうする?ヴィータかシグナムあたりを出しても構わんが」

 

『う~ん、紅莉と久々の一緒の任務だし、私も行きたいかな』

 

「あいよ。ヴィータ、シグナム聞いたな?お前らは今日は待機だ。何かあった時の後詰を頼むぞ」

 

『おう!』

 

「心得た」

 

 人員を適度に保ちつつ、的確な指示を出していく紅莉に、新人達はポカンとした表情を作る。

 

 良くも悪くも紅莉の性格をある程度知っているせいで、目の前の現実を受け止めきれていないのだ。

 

『んじゃ、現場の指揮権は任せるで?』

 

「アイハブってね。俺もすぐに行く」

 

 それだけ言うと、紅莉は通信を切り、己もヘリの位置へと向かって行った。

 

 

 

 

「揃っているな?って、なんだなんだそのアホみたいな表情は」

 

「にゃはは、紅莉君がてきぱきと指示を出していることに驚いたみたい」

 

「なんだそりゃ」

 

 ヘリポートである屋上にたどり着いた紅莉を待っていたのは、未だに現実に戻ってきていない新人達がおり、それを訪ねた紅莉が、なのはから返ってきた答えに呆れていた。

 

「おら、とっとと戻ってこい。初任務だからって、遅刻していいわけじゃないからな」

 

「は、はい!ほら、あんた達行くわよ!」

 

 いち早く現実に戻ってきたティアナが他のメンバーに発破をかけると、それぞれがやっと正気に戻り、慌ててヘリの中へと入っていく。

 

「うっし、いくぞ」

 

 なのはもすぐに後を追い、最後に紅莉が入り指示を出すと、ヘリは浮き上がり、現場へと急行していった。

 

「さて、お前ら。初任務だな」

 

 現場へと向かっていく中、紅莉が新人達を見ながら口を開く。その言葉を噛みしめるようにそれぞれが重々しく頷く。

 

「うむ、これはあれだな……派手に失敗しろ」

 

 今まで緊張していた新人たちが全員ずっこけた。流石に、今の空気の中、そんなことを言われればこけもするだろう。

 

「何を言っているんですか!」

 

「んな、緊張しているような面されていたらなぁ……言いたくもなるだろ」

 

「なりません!」

 

 顔を真っ赤にして怒るティアナにまぁまぁと手で制す紅莉。

 

「別に意味がないわけでもないぞ?あと後に失敗して取り返し付かないよりも、最初に失敗してくれたほうがフォローも出来る。てか、お前らもいきなり連携も難しいだろ?ようやく、慣れてきたところだろうしな」

 

 紅莉の言葉にうぐっと詰まるティアナ。紅莉の言葉が的を射ていたために、言い返せないのだ。

 

 今朝のなのはとのシュートイベントの時もそうだが、今日はなんとか連携してなのはを撃破できたが、それでもまだまだ及第点には遠く、また、合格の内容としても、なのはが甘かった故の合格だ。

 

「まぁ、初任務だろ?だから、お前らにいい言葉を送ってやろう」

 

 そう言って、今まで座っていた紅莉が立ち上がる。ヘリの中のために、完全に立ち上がれはしないが、それでも誰よりも高い視点になる。

 

「失敗を恐れるな。否、失敗しても構わない。お前らの後ろには俺らがいる。いくらでも、ケツを拭ってやろう。故に、お前らは自分が出来る精一杯のことを成せ」

 

 ニカッと笑いながら告げる紅莉に対面にいた、ティアナ達は一瞬呆けた顔になる。

 

 しかし、心の中では初任務というプレッシャーにさいなまれていたのに、気がつけば心が軽くなっていたのだ。

 

『司令官なんて出来ないとか言っていたのに、しっかりできるじゃん』

 

 念話でなのはがツッコミを入れてきたのに対し、紅莉は表面上はとりつくろいながら、心では苦笑いを起こす。

 

『昔に所属していた部隊ところのボスが毎回言っていたんだよ。それを真似させて貰った』

 

 紅莉の答えになのははなるほどと頷いた。

 

「お父さん、お父さん。リインは何をすればいいですか?」

 

 そして、今まで黙っていたリインが、話が一区切りついたのを確認した後、紅莉に尋ねる。

 

「なんだ、いたのか」

 

「最初からいたですよ!」

 

「すまん。キャロが昔から好きな人形遊びが遂に、人形遣いまで昇華したのだと思っていた」

 

「お兄ちゃん!」

 

「酷いです!リインは一人しかいないですよ!」

 

 真っ赤になって怒るキャロと、ぷくっとふくれっ面で拗ねるリインの両名の頭を撫でてやりながら、紅莉はどうしようかなぁと考える。

 

「そうさなぁ……車両の頭からをスバティアのコンビにリインがサポートに入ってくれ」

 

「「はいっ!」」

 

「了解です」

 

「制御も奪われているようだから、ティアナ嬢かリインが制御を取り戻して止めてくれ……ああ、スバルちゃんは触らないように」

 

「何でですか!?」

 

「どうせ出来んだろ?それに、癇癪起こして『殴れば止まる!』とか言って、壊されたら目も当てられん」

 

「そんなことしませんよ!」

 

「あーなるほど」

 

「ティアナさん!?」

 

 紅莉のあまりにもあまりな内容に怒るスバルだったが、この中では誰も味方はいなかった。いかんせん、口には出してないが、全員が頷いていたのだから。

 

「紅莉さんだって出来ないでしょう!」

 

 このままではいられないと思ったのか、紅莉の普段の態度や、今までの経験をもとにそう切り替えすスバルだったが、紅莉はそれに対しニィッと笑う。

 

「甘いな、スバルちゃん。エアなら問題ない。てか、ここからでも出来るんじゃね?」

 

《YE━━━━d(゚∀゚)b━━━━S!!》

 

 無駄にウインドウまで出して顔文字で応えるエア。

 

 だが、逆にそれならば自分たちの出番はないのでは?と不安というか、不満に思ったティアナの表情が歪むのを紅莉は苦笑いしながら見ていた。

 

「まぁ、何事も経験だ。言っただろう?やれるだけやってみろ。それで、出来なければ俺らがフォローするって。最初から誰かに頼るんじゃない。

 それに、こう言っちゃお前らも不満に思うかも知れんが、経験不足は否めないんだ。だからこそ、こういう機会に経験してほしいってのもあるんだよ」

 

「ぶっちゃけすぎだよ紅莉君」

 

 紅莉の言葉になのはががっくりと項垂れながらツッコミを入れる。ツッコミに力が無いのはなのはも思う所があるためだ。

 

「頼らない強さも、頼りすぎる強さも中途半端だぞ?」

 

「紅莉君にも言えないよね?」

 

「お前に突っ込まれる筋合いだけはねぇ!」

 

「いふぁいふぁいふぁい!」

 

 紅莉の諭すような言葉に再びなのはが寂しそうにツッコミを入れるが、今度は先ほどとは違い、やや怒ったようになのはのツッコミにキレた。そのまま、なのはの頬を引っ張りだした。

 

 しばしの時間、伸ばしていたが、そろそろ現場に到着しそうな場所となったために、頬から手を離す。

 

「うぅ、もう貰ってもらうしかない!」

 

「傷がつかないようにした、問題ない」

 

 頬を摩りながら、涙目のなのはが頓珍漢なことを言うも、それを軽く流した紅莉はしっしとするようになのはに対して行う。

 

「ほれ、とっとと行って、制空権を確保してこい」

 

「うぅ、扱いが酷すぎる」

 

「だったら、もう少し淑やかにしろ」

 

「なにごとも全力全開だよ!」

 

 はぁ、とため息を吐く紅莉とは裏腹に、本当に時間が無いためにヘリの後部を開いた後、なのはは一度だけ振りむいた。

 

「皆、紅莉君も言ったけど、失敗を恐れちゃだめだよ?何かあったら、私たちがフォローするからね」

 

 そう言って、なのはは空へと躍り出ると、セットアップし前方からやってきたガジェットの飛行型へと向かっていった。

 

「さて、さっきの話の途中だが、後部からはエリキャロと俺が担当する」

 

 紅莉の言葉を聞き、エリキャロは確りと返事をし力強く頷いた。

 

「スターズ3、スバル・ナカジマ」

 

「スターズ4、ティアナ・ランスター」

 

「「行きます!」」

 

 制空権が確保したことを確認したのち、スバルとティアナは二人そろって降りて行った。

 

「それじゃ、お父さん。リインも行ってきます」

 

「おう、頼んだぞ」

 

「はいですー」

 

 紅莉に頼られたのが嬉しかったからなのか、リインは満面の笑みを浮かべて二人を追うように飛び降りて行った。

 

「ひぅっ」

 

 そして、今度はライトニングの番となったのだが、いざ飛び降りようとしたら、その高さと速さも相まって、キャロが短い悲鳴を上げてしまった。

 

「怖いのか?」

 

「ななななななにをいいいいいいててててててるんんんんですすすすか、おににににににちゃん」

 

「ああ、うん」

 

 精一杯強がりを言おうとして全く言えていないキャロに笑いをこらえる紅莉。子供らしくないなぁと前々からフェイト達とともに頭を抱えていたのだが、なんだまだまだ子供じゃないかとこんな場面で感じ取りほっこりする紅莉。

 

「それじゃ、いっしょに」

 

 流石のエリオも見かねたのか一緒に行こうと誘おうとしたのだが、その時、突如として彼を襲う。否、エリオだけでなくキャロも同様であった。

 

「それじゃ、時間もないし、ちょっと強引だがスパルタで行くか。おう、ヴァイス、落とされたらお前の妹にお前のコレクションを送ってやって、お前の兄ちゃんはこんな趣味ですよとチクるからな」

 

「鬼ですか!?」

 

 エリオは紅莉の軽口とは裏腹に、自分に何が起こったのか勤めて冷静に分析していた。

 

 自分の腹になにか力強い感触がある。それが人間の手だというのを知るのに対して時間はかからなかった。では、誰の?今、ヘリの中にいる人間は自分を除いて3人。キャロの細腕じゃ自分を抱えることはできない。ヴァイスはヘリを操縦中。答えは一人だ。そもそもが、自分を突如抱えるような人物なんて、今空で戦っているフェイトか、六課に残っているアリシアか、地球のハラオウン家に手伝いに行っているアルフか、先ほどまで一緒に喋っていた紅莉しかいない。というか、もう答えは出ている。

 

「あの、兄さん?」

 

「お兄ちゃん?」

 

 キャロはただきょとんとしているだけだったが、エリオはこれから何が起こるのかを正確に把握していた。この、兄ならばやる。しかも言った『スパルタ』と。ならば、導き出される答えは……

 

「いっきまーす」

 

「うわぁぁぁっ!」

 

「きゃぁぁぁっ!」

 

 二人の悲鳴をBGMに紅莉は二人を抱えながらヘリを飛び降りたのであった。

 

「まぁ、あの人が一緒という時点で予想はできました」

 

 そんなヴァイスの呟きは誰に聞かれるでもなかった。

 

「ははははっ!」

 

「きゃぁぁっ!」

 

 最初は驚いたものの、こういう部分ではすぐに慣れたのかエリオは早急に笑いだしたのだが、キャロは涙を風で流されながら、未だに叫んでいた。

 

「ほれ、お前らとっととセットアップしないと、降りてすぐに動けんぞ」

 

 未だに楽しんでいたエリオと泣き叫んでいたキャロは紅莉に言われて漸く思いだしたのか、慌ててセットアップをし準備を整えた。

 

「うっし、着地を~っと」

 

 二人がセットアップしたことを確認した紅莉はそのまま列車後部へと着地しようとしたのだが、何がどうしてこうなったのか、あろうことか、紅莉が着地した場所にはなんとバナナの皮がおかれていた。

 

 幾ら魔法で落下速度を落としたからと言って、紅莉はこれと言って魔法を発動してなく、二人の慣性魔法の効果のみで着地をしようとしていたのだ、これは不意打ちになってしまった。

 

 着地して踏ん張ろうとした瞬間、それはものの見事に失敗し盛大に滑った。

 

 だがしかし、剣士であり武人である紅莉が、このようなことで簡単にずっこけることはない。

 

 すぐさまに体勢を整えたのだが、まるで世界が邪魔するように突如の突風が吹き荒れた。

 

「あ、落ちる」

 

 それを見ていたスバルがぽつりと零したように、紅莉達は突風に背中を押されるような形でそのまま列車の外側へと落ちて行った。

 

「えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 驚きの声は誰のものか?まさか、全員が見ている前で、列車から落ちるなんて誰が予想できるか。いや、出来ない。

 

「紅莉!キャロ!エリオォォォォォッ!」

 

 エリキャロの保護者でもあるフェイトがすぐさま救援に向かおうとしたのだが、その前にガジェット達が進路を塞ぐ。

 

「邪魔を、するなぁっ!」

 

 ハーケンで切り裂くも後から後から湧いてくるガジェットに流石のフェイトも無視して突っ込めず、またなのはも同様だった。

 

 その頃、絶賛下降中の紅莉は慌ててキャロに呼びかける。

 

「キャロ、キャロ、召喚!はよ!」

 

「あ、そ、そうだった!え、えと、ビッ○ライトは……」

 

「ここは、ボケる場面じゃないよキャロ!」

 

 この場面で腹のあたりをまさぐろうとしたキャロにエリオが慌てて突っ込みを入れる。

 

「天地貫く業火の咆哮……」

 

「違う違う!そっちでも構わんが、まだそっちは早い!」

 

「あっ、そうだった。えとえと……フリード!ビッグモード!」

 

「いや、あかんだろ」

 

 完全にテンパったキャロが詠唱その他を吹き飛ばし、適当な感じでフリードに指示したが、流石にないだろとツッコミを紅莉が入れる。

 

「キュルクー!」

 

「いけんのかよ!」

 

 ボケのはずの紅莉が終始ツッコミにならざる得なくなる感じで、紅莉達が光に包まれ、光が晴れると、そこには成竜状態になったフリードが空を飛んでいたのであった。

 

「何とかなったのはいい。だがしかし。おいコラ、これはどういうことだ?」

 

 成竜となったフリードはその場で対空し、背中にキャロとエリオを乗せた状態でその場でとどまっていた。

 

 では、紅莉はどこかというと。

 

「コラ、フリード!何度も言ってるでしょ!お兄ちゃんは食べ物じゃありません!ペッしなさい!お腹壊しちゃうよ!」

 

「妹分の扱いに涙が出そうだ」

 

「あ、あはは……」

 

 あろうことか、紅莉はフリードに咥えられる形で難を逃れたのであった。

 

 そして、妹分であるキャロのあまりな言いようにくぅっと涙を堪えるように空を仰ごうとして、

 

「カプっ」

 

「いだだだだだっ!?」

 

 噛まれた。しかも、普段の幼竜とは違い成竜の状態で。

 

『もう!驚かさないで!』

 

 通信ウインドウで涙目のフェイトが怒るが、流石の紅莉もこれには言い訳をしたい気持ちになる。誰が、あんなところにバナナの皮があるなんて予想できるだろうか?しかも、突風が吹いて、バランスを何とか取ったところの不意打ちなんて防ぎようがない。

 

『いま、ふと思いだしたんだけど……紅莉君、飛べるよね?』

 

「……あっ」

 

 なのはの問いかけに、紅莉はあっという表情を取る。

 

「ここ数年、まともに飛んでなかったから忘れていた」

 

 紅莉の回答に近くにいるエリキャロだけでなく、スバティア、果てはロングアーチからもジト目で睨まれる。

 

「よっと、まぁ、無事だったんだからよしとしよう!」

 

 フリードの噛みつきから逃れ、背中に乗った紅莉は、流石に白けた空気が痛かったのか、元気よく告げた。

 

『紅莉君、後でお話しようか?』

 

「逃げ切って見せる!」

 

 死刑宣告に近しいなのはの恐ろしい言葉を無視してキャロに話しかける。

 

「さてと、当初と予定は狂ったが、ある程度速度は落ちてきているから追いつけるな?」

 

「うん。フリード!」

 

 紅莉の問いに元気に答えたキャロはフリードに指示すると、先ほどまでの可愛らしい鳴き声とはうって変わった、頼もしい咆哮を上げたフリードが列車へと追いつく。

 

 追いついたと同時に、列車後部の屋根が壊され、そこから大型のガジェットが現れた。

 

 ガジェットは敵がいると思って不意打ち気味に出て来たっぽいのだが、そこに敵はおらず、体を左右に動かして、敵を探ると空中に敵はいた。

 

 何とも痛ましい空気が流れる。

 

「えーっと……よっ」

 

「……」

 

 その空気の中、紅莉が場違いな感じで片手を上げて、気軽に挨拶する風にガジェットに対してやると、何故かガジェットもそれに応じたのだった。

 

「まぁ、敵の新型っぽいな。エリオいけるか?」

 

「この空気の中戦うんですか?」

 

「ごめん」

 

 エリオのツッコミに今度こそ、申し訳なさそうにする紅莉。戦いは神聖な物とまでは言わないが、戦いに身を置いてきたからこそ、流石にこれはないと思ってしまう。それも、半分……1/4は自分のせいだと思っているからこそだ。

 

「とりあえずだ。列車の付近はどうなっているか分かるか?はい、キャロ」

 

「えっと、AMF濃度が濃い?」

 

「当たり」

 

 だが、いつまでもふざけている場合でもないために、授業っぽい感じでどうすればいいか問題を出す紅莉。

 

「それじゃ、どうすればいいか分かるか?はい、エリオ」

 

「範囲外から一気に近づき、一気に倒すことです」

 

「またまた当たり」

 

 そうして、紅莉のヒントを元に、二人は何をすればいいのかを即座に理解し、キャロのブーストの力を借りて一気に近づき、新型を見事撃退して見せた。

 

「エリオ君!」

 

「え?」

 

 新型を倒したという油断からか、エリオが気を抜いた瞬間に、新型が開けた穴から、従来のガジェットが飛び出してきてエリオを襲おうとしたのだった。

 

「ったく、油断するのは実力に明確な差がある時か、終わってからにしろ」

 

 いつの間にか現れた紅莉が、間に飛び込み、出てきたガジェット達を拳と脚で粉砕したのだった。

 

「す、すいません」

 

「言ったろ?失敗してもかまわんって。次はないよな?」

 

「はい!」

 

 紅莉の質問に元気に答えるエリオを見て、満足した紅莉は乱暴に頭を撫でた後、残りの機体もエリオとキャロに出来るだけ倒させたのだった。

 

 こうして、初任務は無事(?)に終了したのだった。




†久遠放送局†

久遠「何?あの酷いのは」

リニス「作者曰く『終盤はどうやってもシリアスになるから、出来るだけギャグでいけるところはギャグでいこう』とかわけの分からない理由でああなったそうですよ?」

久遠「つまり、今後もありえると?」

リニス「ええ。今まで、戦いだけはまじめだった紅莉なのに……」

久遠「だよね。作者はどうしたいんだろう」

リニス「というよりも、刀をあまり抜いているイメージがないですね」

久遠「そういえば、今回も前回もガジェット相手に抜いてないね」

リニス「まぁ、抜かなくても十分に強いというところを見せたい配慮でしょう」

久遠「剣士なんだから、そこは抜こうよ」

リニス「私に言わないでください」

久遠「だよねぇ。では、次回もお楽しみに」
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