魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第79話

「あ、そうそう。はやて、これ」

 

 ペンションに戻り、ゆっくりとしている時にさっき回収したロストロギアだったものを思い出して、エアから取り出しはやてに渡す。

 

「なんやこれ?」

 

 渡されたほうのはやてといえば、それが何かが分からずに首を傾げる。まぁ、危険性も魔力容量も小さかったものだし、それが壊れてしまえば何かは分からんか。

 

「今回の依頼物だったもの」

 

「壊れてるやんか!」

 

 スッパーンと何処からともなく取りだしたハリセンで叩かれる。どっから出した?

 

「久遠とリニスを襲おうとしていたからな。反省はしている。後悔はしてない」

 

「まぁ、物が物やから最終的にはありっちゃありやけど、カリムになんて説明しよう」

 

「そのまんま伝えれば?」

 

 カリムならあらあらとか言いながら、ほほ笑んで終わりだと思うけど。

 

「つか、終わってしもうたやん。新人達に経験を積ませる名目やったのに」

 

「かまわんだろ。それに、これがどういった性能かは知らんが、あの程度じゃ経験にもならんよ」

 

「さよか。ほな、残りは観光は難しいけど、ゆっくりしよか」

 

「そうだな」

 

 流石にここから観光地に行くにも時間が足りんし、名目は仕事だから下手に動くのもあれだしなぁ。

 

「はぁい、紅莉」

 

 これからどうしようと考えていたら後ろから声をかけられたので振り向けば、そこには懐かしい顔があった。

 

「久しぶりだな、アリサ」

 

「そうね。何だかんだでこっちに帰ってきてるらしいけど、中々会えないし」

 

 そうなのだ。こっちに戻ってくるのは基本的に兄さんと合宿をするためであって、そのついでに実家に顔を出してから帰るから、基本的にアリサに会えない。まぁ、すずかには流石に顔は出していくけど。

 

「ところで、あのオブジェはなんだ?」

 

「たすけてぇぇぇっ!」

 

 指を差すのはどこぞの女たらしの顔を持つ奴が、キ○ストを思わせるような感じで磔にされていた。

 

「気にしなくてもいいわよ?何故か知んないけど、私にまで粉をかけてきたし」

 

「理解したわ」

 

 あいつは何をやっているんだ。八神家のクロードラブを知らなかったとは言わせんぞ?そのせいで、毎年苦労しているんだから学習くらいはしているはずだ。

 

「ふむ……アリサ、ここに針があるんだが、ダーツをやらないか?」

 

「洒落にならないって、おい!」

 

「いいわね」

 

「助けてぇぇぇぇっ!」

 

 アリサも流石俺らの幼馴染だな。こう言う所でノリがいい。

 

「ところで、なのは達は?」

 

「バトりだしたから置いてきた」

 

「あんたも大概だと思うわよ?」

 

 んなこと言われてもなぁ。ああいった状況で、男が口を出しても碌な事にはならんだろうし。

 

 そのあとは、美由希がレンちゃんや晶と一緒に来て、久しぶりの和食やレンちゃんの中華を堪能したり、銭湯に行って、エリオを女湯に投げ込んだり、逆に男湯にきた久遠を汚されないために、クロードと命からがら逃げてきたエリオの目を潰したりと中々に愉快な時間を過ごせた。

 

「どうしたお前ら。今日は朝練はなしと伝えられていただろ?」

 

「えっと、その……習慣で起きちゃいまして」

 

 代表して言ってきたスバルちゃんはタハハと力の無い笑みで俺の質問に答えた。

 

 ため息をつきたい気持ちなのだが、まぁ、仕方ないか。彼女たちからしてみたら、今の状況は一番の伸び盛りだろうし、仕事という面でも慣れが出てきたのだろう。つっても、休めるときに休まんと体が壊れそうだがな。

 

「つっても、なのは達はまだ寝ているしなぁ」

 

 昨日の夜もあの三人はバトり出して、ボロボロで倒れていたのを発見した俺がベッドに放り投げたし。

 

「紅莉さんは何をしていたんですか?」

 

「日課の鍛錬だよ。スバルちゃん達と違って、もう俺のこれはラジオ体操みたいなもんだ」

 

 朝にある程度動かないと今一調子が上がらないんだよなぁ。まぁ、夜の鍛錬で集中していたら気が付いたら朝とかやらかす時もあるが。

 

 ついでに言えば、リニスが作った複製薬を使ってあいつを召喚すれば、俺が求める相手も用意できるのはありがたい。

 

 まぁ、六課に来てからは、騒ぎになるのも面倒だからやってはないが。

 

「まぁ、各々怪我をしない程度で運動の気持ちでやりなさい」

 

 そう言って、再び鍛錬を開始する。右手の指のみで逆立ちをし、腕立てを開始する。基本的に腕力と言うよりも握力とバランスを鍛えるための鍛錬だ。

 

 腕立てをしながら、周りを見てみれば、俺の言われた通りに、いつもより軽めの運動と言える程度で動き回る新人達。

 

 俺自身があーだこーだと教えるのに慣れてないのに加え、まだまだ俺が言うには、新人達には悪いが、レベルが足りない。

 

 右手から左手に変え、再び腕立てを開始。

 

 エリキャロなんかはまだまだ小さいからあまり効率的ではないなぁ。

 

 なのはの教育方針を軽く聞いたけど、今のあいつらにはベストだと思うし口出しするのも問題が出るだろうから口には出さんけど。

 

 ただ、俺から言わせれば一度や二度程度は限界を超えさせた訓練ってのもさせたほうがいいと思う。

 

 アスリートなんかでも、肉体改造で内容的に体を壊し、その後の回復後は前よりアップするという方法もあるからなぁ。もちろん、きちんとトレーナーが監視して行うというのが条件だけど。

 

 つか、さっきからあいつらが俺をちらちら見てくる。見てくるのはいいんだけど、その期待した眼差しはなんだ?まさか、俺がやってくれるとでも思ったのか。

 

「おい、お前ら」

 

『はい!』

 

 わーお。続きを言う前に返事をされちまった。

 

 ただ、そこでふと思いつく。別に鍛錬として鍛えなくてもいいよね?ちょっとした遊びなら、なのはの教育に悪影響を及ぼさないだろうし。

 

 腕立てを終え、きちんとたった後に新人達に改めて向き直る。

 

「これからちょっとした遊びを行う」

 

「遊び、ですか」

 

 ティアナ嬢が不服そうに俺を見てくる。嫌だったら、自分で鍛錬していていいよ。ありゃ、スバルちゃんも似た感じだ。

 

「兄さん、何をするんですか?」

 

「楽しみ」

 

 逆に年少組はわくわくとした表情をしている。うんうん、子供らしくてよろし。

 

「何、鬼ごっこだ。ただし、鬼はお前らで、逃げるのは俺だ」

 

 普通の鬼ごっことは逆のパターン。逃げるのが一人で追うのが複数。

 

「俺を捕まえられたら、翠屋のデザートを奢ってやろう」

 

 まぁ、昨日も食ったろうが、それを言った瞬間に皆の目が鈍く光った。

 

 この状況で考えることじゃないかもしれんが、桃かーさんの作る菓子が認めらと考えるならば、嬉しいことはない。

 

「おうおう、やるきは十分だな。魔法はなしだぞ。それじゃ、スタート」

 

 そう言って、俺は林のほうへと跳び込んだ。

 

『ぜぃ…ぜぃ…』

 

「だらしないなぁ」

 

 30分位の間、追いかけっこを楽しんでいたのだが、既に新人達は息も絶え絶えな状況で地面に膝をついた状態だ。

 

 まぁ、林の中というのは、色々と入り組んでいるし、普段の訓練場みたいに、足場が安定していないから、余計に体力を使ったんだろう。

 

 まぁ、途中から逃げるのがだるくなって、林から出てひたすら回避しているだけだが。

 

「お前らは単純すぎるぞ。もうちょっと、先を読め」

 

 多かれ少なかれ、なのはに鍛えられているということは、基礎は出来ているはずなのだが、まだまだだ。

 

「本気で逃げられたら追いつけませんよぅ」

 

 ある程度回復したスバルちゃんが、口を尖らせて不満を言う。その姿はなんだか、拗ねているようだ。

 

「お前なぁ……確かにある程度は本気で逃げるが、そういうゲームだろうが。力の意味で本気というならば、ギリギリでお前らが考えられれば捕まえるくらいしか力を出してないよ」

 

 元の運動神経が素晴らしいフェイトなんかじゃ一瞬だな。なのはですら、簡単に捕まえられるくらいだ。

 

 あいつらとスバルちゃん達の間にある差は当然まだまだでかいものだが、今の俺の動きは、あくまでスバルちゃん達に合わせたものだ。

 

「どーん!」

 

「おっと」

 

 後ろから近づいてきた久遠がそのまま背中に体当たりのような感じで抱きついてきたので、思わずバランスが崩れそうになってしまった。

 

「お前らなぁ、今の一瞬を見逃すとか、もったいないにもほどがあるぞ」

 

 せっかくバランスを崩したというのに、こいつらときたら、ただ黙って見ていただけであった。

 

「んしょ、んしょ」

 

 にじりにじりとよじ登る久遠は、普段の狐の姿ではなく、珍しく少女の姿をしているために、頭の付近までやってきたら、そのまま肩車してもらいたいらしく、足を首に回してきた。

 

「でも、それって卑怯じゃ……」

 

「実力に明確な差がある時は気にする必要はない。というか、遊びの段階に卑怯も糞もあるか」

 

 そもそもが相手の都合にこちらが付き合う道理はないんだ。相手が勝手にバランスを崩したから捕まえたでいいじゃないか。

 

 まぁ、局員として考えたらアウトだろうけど……アウトになるよね?

 

 その後も、やっきになった新人共が俺を捕まえようとあちらこちらから、襲いかかってくるが、それでも俺を捕まえるには至らない。

 

 その後も時間が過ぎていく中、

 

「おっと」

 

 林の中から飛んできたものを素早くキャッチする。

 

「久遠、ちょっと降りておいて」

 

「はーい」

 

 俺の言葉に素直に従った久遠はピョンとジャンプするかの如く、飛び降りる。なんとなく、首が寂しいな。

 

「お前ら、遊びはいったん中止。そこで見ていなさい」

 

 林のほうを見ながら、新人達に告げた俺は、再び林から飛来してくる物を指と指の間でキャッチする。

 

「あの、紅莉さんそれは?」

 

「飛針と呼ばれるものでな、投擲用の針だ」

 

 都合5本ほどキャッチすると、もう飛んでくることはなかった。

 

 ただし、飛針に変わり、それよりもでかいものが飛び出してきた。

 

 飛び出してきたのは人だ。すずかと似たような紫がかった黒髪のエリキャロよりも年下と思われる少女である。

 

 少女の腰には歳には不釣り合いの小太刀が携えられている。

 

 飛び出してきた少女の腕が振りあがると同時に、こちらに向かって何かが飛来してくるのを、先ほど回収した飛針で弾く。

 

「1番鋼糸とか……まだ危ないから、3番や4番くらいのにしておきなさい」

 

 俺の注意を聞いても、何も答えず、何度も腕を振っては鋼糸を飛ばしてくる少女。

 

 やがて、間合いがある程度詰まると、鋼糸攻撃が止み、先ほどとは打って変わり、地を這う形で一気に俺まで近づいてくる。

 

 その途中で、小太刀の柄に手をかけ、抜刀の体勢を作る。

 

 そして、俺との距離が数センチとなったその瞬間に鞘から抜き放たれた刃が俺めがけて振るわれる。

 

 俺との身長差からその状態では脚に対する攻撃しかできないから、そのまま半歩ずれようとしたら、突如飛びあがる様な形で俺の胴をめがけてきた。

 

「見事」

 

 飛んできた少女の刃を飛針で捌き、無防備なその体を無造作に投げ飛ばした。

 

 投げ飛ばした少女を見ると、体勢を何とか整え、無事に着地したようだ。

 

「腕を上げたなぁ、雫」

 

「あぅ、また勝てなかった」

 

 がっくりと肩を落とす雫。正式名称月村雫。兄さんこと月村恭也と月村忍の子供だ。

 

 たしか今年で7歳だったか?7歳にしては、異常とも言えるような身体能力を有しているのは恐らくは、夜の一族の影響だろうな。

 

「えっと、紅莉さんこの子は?」

 

 今まで黙って見ていた、スバルちゃんが訪ねてくる。久遠は?と思ったら、落ち込んでいる雫を慰めていた。

 

「それはまぁ、もうちょい待て」

 

 そういってから、先ほどから手に持っていた飛針の一本を林に向かって投げつける。

 

 先ほどから、こちらからは見えないような場所に上手く体を隠してながら窺っている視線があった。ただ、邪魔にならないように隠れて見ているような感じであって戦いが終わった今は隠れる気がないようだ。

 

 飛んで行った飛針は林に入る前に、林から出てきた飛針と空中でぶつかり合い、弾かれてしまう。

 

 てか、弾かれる音がガキンとかでかい音が鳴っていた。

 

「おい、徹を込めるとかどんな嫌がらせだ」

 

「お前だって、同じだろう」

 

 林の中から呆れた顔と共に現れたのは、この雫の父にして、俺となのはの兄である、月村恭也、旧姓高町恭也、更に古くだと不破恭也。

 

 ハーレムを築きかけてなんとか一人の女性を決めた傑物であり、剣士として共に頂きを目指す同士だ。

 

「何を考えている」

 

「さあね」

 

 相変わらず勘が冴えわたってらっしゃるようで。

 

「ほら雫、挨拶しろ」

 

「は~い。月村雫です!目下の目標は紅莉さんに剣を抜かせることです!」

 

「はい抜いた」

 

「ムキー!」

 

 刀を取り出して抜いてやると面白いようにムキになり、地団駄を踏む雫。こう言う所は兄さんに似なくてよかったな。子供らしく可愛らしい。

 

「月村恭也だ。妹が世話になっているな」

 

「なのはの兄で、俺の義兄でもある」

 

『はじめまして!』

 

 それぞれの紹介が済んだ後、ペンションに戻ると、なのは達も起き出していたようで、朝食の準備を始めていた。

 

「あれ?お兄ちゃん、なんでいるの?」

 

 そんな中、兄さんがいることに疑問を思ったのか、なのはが首を傾げながら尋ねると、兄さんはそれは大げさに目元を手で覆うと芝居がかった口調で喋り始めた。

 

「ふっ、どうせ兄とはこのような存在なのだな。久しぶりにあった愛しの妹にこういう態度を取られるとは」

 

「まぁ、兄さんの場合、兄と父を兼ねているから余計じゃないか?親離れみたいな感じで」

 

「いずれは、と思っていたが、現実に直面するとここまで悲しいことだったとはな」

 

「ちがうの!そうじゃなくて!?」

 

 おうおう、いい感じでテンパってくれちゃって。ごちそうさまです。

 

「そういや兄さん、やけに遅かったけど、どうしたんだ?」

 

「ああ、それはな」

 

 聞いた話だと昨日の内に帰ってきているはずの兄さんが今朝になって帰ってきた理由を尋ね、兄さんが口を開こうとしたら

 

「紅莉!久しぶりだね」

 

「フィアッセさん?」

 

 ふわりと包み込むように抱きつかれた、その美しい声色は、世界の歌姫として確固たる地位を築いたフィアッセさんであった。

 

「え、どうして?」

 

「ふふふ、成功ね恭也」

 

「ああ」

 

 未だに混乱している俺とは裏腹に、楽しそうに笑っているフィアッセさんと、むかつく感じで笑っている兄さん。

 

「実はね、今オフ中で、紅莉達が帰ってくるからって恭也に誘われたんだ」

 

「俺が護衛として付けば、オフ中は守りぬけるからな。エリスも安心して送り出してくれたよ」

 

「なるほどな。これは、してやられたよ」

 

 手を上げて降参って示すと、フィアッセさんと兄さんはハイタッチを交わす。

 

「えっと、なのはさんのお兄さんって最初、寡黙な人なのかなって思ったんですけど、こう……」

 

 スバルちゃんが兄さんについて評しているけど、続きを言っていいかどうか言い淀んでいるな。

 

「愉快な人って言いたいんだろ?」

 

「まぁ、スバルの思ったのも間違いじゃないんだよ。普段のお兄ちゃんはあまり自分から喋らないし。ただ、私をからかったりしてくるときはその限りじゃないんだ」

 

「楽しいからな」

 

「同感」

 

「酷いよ二人して!」

 

「なのは、まだ可愛がられているだけいいじゃん。私なんて……」

 

 ぷりぷりと怒るなのはの肩に手を添えるのは美由希であった。

 

「美由希は姉だろ?妹と一緒でいいとか、バカをぬかすな」

 

「私も恭ちゃんの妹なんですが!?」

 

「その前に剣士だろうに」

 

「なのはも魔導師だよね!?」

 

 剣士と魔導師をいっしょくたにするな!ぜんぜん別物じゃ。

 

「それにしても、フィアッセさん。相変わらずお綺麗ですね」

 

「ふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」

 

 いやいや、本当に姿が変わっていませんからね?そういや、フィリス先生も去年あった時に変わってなかったなぁ……上にも横にも。もしかして、HGS感染者って歳とらない?でも、リスティさんは成長したとか言っていたけど。

 

「そういえば、紅莉。なんで、俺を呼んだんだ?会うだけならば、別に今回でなくても問題はないだろう?」

 

「ああ、そうだったそうだった。時間があるか微妙だったけど、こいつらや、その他諸々を含めた今後のために……兄さん、見取り稽古やらね?」

 

 俺は今後の懸念を解消するために、兄さんにそう提案した。




†久遠放送局†

久遠「相変わらず刀を抜かない紅莉」

リニス「実力差があるから抜かないのでは?」

久遠「紅莉が言っていたけど、剣士だから手加減するにしても刀は抜くらしいよ」

リニス「では、なぜ……」

久遠「雫の場合は、子供の戯れだと思っていたら、いつの間にかムキになってしまったので、そのままだそうだよ」

リニス「なるほど」

久遠「そろそろきちんと戦わせたかったから、恭也の登場。次回はバトるよ」

リニス「敵ではなく、兄が最初にまともに戦う相手とは」

久遠「言いこなしだよ。では、次回もお楽しみに」
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