魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第81話

「おっ、いたいた」

 

「あ、紅莉君。どうしたの?」

 

 なのはを探して訓練場を歩いていたら、漸く見つけた。新人達は合同訓練から漸く個別訓練に変わってきたようだ。

 

「ほれ、今度の任務あるだろ?俺は先行すっから、挨拶しておこうと思ってな。挨拶しなきゃ、拗ねんだろお前」

 

「別に拗ねませんー」

 

 俺の言葉に頬を膨らませて拗ねるなのは。これが、素なんだよなぁ、こいつの場合。

 

 ちなみに、なのはの担当しているティアナは先ほど、なのはが作った誘導弾を撃ち落としていたのだが、失敗してもろに額に食らって悶絶していた。

 

「それならそれで構わないんだけどな。つーわけで、先にいくからな」

 

「はーい」

 

 なのはに告げたので次はフェイトだ。なのはが拗ねるならば、フェイトはいじけるからなぁ。

 

 フェイトを探しに行こうとしたら、なのはに待ったをかけられた。

 

「どうした?」

 

「さっきの見ていたよね?何か、アドバイスとかある?」

 

「バリバリ近接型の俺にアドバイスとか何を言っている」

 

「でも、紅莉君だって飛針使うよね?」

 

「あれは、医療針だ」

 

 まぁ、実際には飛針のように投げつけて、相手に刺して動きを文字通り止めるけど。

 

 ちらりとティアナ嬢を見れば、何やら若干期待していた。美由希に多少教えられて技術を学んだからか、俺からも吸収できるかもと考えているのか。

 

「そうさなぁ。とりあえず、お前とティアナ嬢は違うということか」

 

「どういうこと?」

 

「ティアナ嬢はお前と違って防御が硬いってわけじゃない。魔力量も違えば、必殺の一撃を持っているわけじゃない。と、いうことは、脚を止めての攻撃はそれ相応のリスクがあるってことだな」

 

 俺の指摘になのはもティアナ嬢も何やら複雑な顔をする。ティアナ嬢はどちらかというと、苦い顔か。

 

「まぁ、新人共全員の指揮をするって考えるならば、動かないのも手だが、防御力が無いなら、やはり止まるのはアウトだ。お前やヴィータのような防御が硬い奴や高機動型のフェイトが突破してきたらきついからな」

 

「そっか、そういう考え方もあるね」

 

「まぁ、さっきの訓練も役に立つし、一概にどうのこうのと言えんな。ティアナ嬢がどういったスタイルにするのかにもよるしな。まぁ、しいて言うならば、重心が安定してないから、疲れてくると狙いがぶれるようになる。そこらへんも考えておけ」

 

 それだけ言うと、今度はフェイトを探して歩きだす。気配察知をしてもいいんだが、急ぎでもないし、ついでだから、他の連中の姿を見てから行くのも悪くないか。

 

「つーかんじで、歩いていたらついたのはここだ」

 

「何言ってんだ?」

 

 フェイトを探していたはずなのに、たどり着いたのは、ヴィータスバルコンビの場所であった。あっるぇ?

 

「まー、何が言いたいかしらねーけど、ちょうどいいや。アドバイス頼む」

 

「お前もか」

 

 まぁ、俺が来たのが丁度スバルちゃんがヴィータに盛大に吹っ飛ばされた場面だったしなぁ。

 

「足腰が弱すぎ。SA使いだって、最終的に下半身が必要なんだからな」

 

「わりと、そこは鍛えられていると思ったんだがな」

 

「ローラーブレードを履いてるぶん、拳に威力が乗ってないぞ」

 

「あーたしかに」

 

「そこらへんをどうするかは、任せる」

 

 それじゃあ、フェイトを探しに行くとしますかね。

 

「あ、そういや、なのはから聞いているかもしんねーけど、今度の任務が終わったら、お前に相手をしてもらうからな」

 

「そういや、言っていたな。ある程度のレベルじゃなければ、お前らにお仕置きだからな」

 

「スバル!今すぐに強くなれ!紅莉が納得する程度に!」

 

「えぇっ!?」

 

 顔を青くして、無茶苦茶なことを言いだしたヴィータを放置してフェイトを探しに戻った。

 

「いたいた」

 

「どうしたの?」

 

 そんで、歩き回ること数十分ののちにようやく目的の人物を探し当てた。って、よくみれば、なのはの反対側じゃん。めっちゃ、遠回りしちまった。

 

「任務で離れるからな、その連絡」

 

「そっか。うん、がんばってね」

 

 フェイトに用件を告げた後、訓練しているエリキャロを見る。どうせ、聞かれるなら、このまま待っていたほうがいいだろう。

 

 一通り、終わったのか、エリキャロがそろってこっちに来ると、俺がいることに驚いていた。

 

「それにしても、便利な時代になったもんだよなぁ」

 

「何がですか?」

 

 エリキャロの訓練を見て、しみじみと思ってしまったことが独り言として口から出たのだが、聞こえたのだろう、エリオが訪ねてきた。

 

「今でこそ、こんな装置でやっているが、俺がお前らぐらいの頃はこんなの無かったからなぁ」

 

 まぁ、地球にいたというのもあるんだろうけど。

 

「それじゃあ、お兄ちゃんはどんな風にやっていたの?」

 

「俺か?俺は、ファランクスで無理やりやっていたなぁ」

 

「えぇっ!?」

 

 キャロからどうやっていたのか尋ねられたので答えてやったら、隣から驚きの声が上がる。

 

「ファランクスって、私のあれだよね?」

 

「そうだな。リニスが使えていたからな、周りに展開してもらったり、正面から撃って貰ったりと色々だったがな」

 

 教えてやったら、何やら沈んでしまった。まぁ、決め技を練習相手にされていたら、ショックもうけるかもな。

 

「えっと、ファランクスってどんな魔法ですか?」

 

「どうって、俺に聞くのは間違っているぞ。魔法の知識なんてあってないようなもんだぞ」

 

 そもそもが、どうやって魔法を使っているのかすら理解できてないんだから。せいぜいが、身体強化が魔力を体に循環させるようにして使うってことくらいか。

 

「時間はまだあるな……見本を見せてやろうか?」

 

「「ぜひっ!」」

 

 俺の提案に驚くくらい元気に答えるエリキャロ。ふむ、ここまで期待されちゃ答えてやるのもやぶさかじゃないな。

 

「つーわけで、フェイト……おい、フェイト」

 

「ふぇっ!?な、なに、紅莉」

 

 未だに帰ってきてなかったフェイトを呼び起こして、事情を説明すると、何やらため息を吐かれた。

 

「もう、危険だよ」

 

「なのはに撃った奴が言うセリフじゃなかろうに」

 

「はうっ」

 

 突っ込んだら、何やらガタガタと震えだした。ぶつぶつと何か言っているから、耳を近づいてみると、聞こえてきた。

 

「砲撃怖い砲撃怖い砲撃怖いブレイカー怖いブレイカー怖いブレイカー怖い」

 

 あちゃあ、トラウマを刺激しちまったか。流石に、この姿をエリキャロに見せるのもあれだから、とっとと帰ってきてもらった。

 

「それじゃ、いくよ」

 

「あいよー」

 

 フェイトが用意したファランクスを前にゆったりと構える。

 

「プラズマランサー・ファランクスシフト、撃ち砕け、ファイア!」

 

 あれ?フォトンランサーじゃなかったっけ?そんなことを思うが、既に打ち出された弾丸は目前まで迫ってきていたので、乱舞で迎撃していく。

 

 基本は斬りはらうのだが、時には弾いたりして、直撃しそうなのだけ迎撃し、その他はすべて紙一重で避けていく。

 

 千発以上にも及ぶプラズマランサーの全てを防ぎきった俺は、エリキャロに向き直る。

 

「ドヤっ!」

 

「ドヤ顔するのはいいんだけど、流石に私はショックだよ。あれから、色々と強くなったつもりだったんだけどな」

 

「いやいや、強くなっているさ。ただ、俺には弾丸は効かんだけさ」

 

「出鱈目すぎるよ」

 

 幻武の練度が上がったためか、基本的に遠距離が効かなくなってきたのだ。最近じゃ、なのはのディバインバスターもかわせるくらいになってきた。

 

 まぁ、もともとが発動に溜めがあるから当たらんけど。前に兄さんに余裕でかわされた時は凹んでいたな。

 

「えっと、兄さんに当たっているように見えたんだけど、実際はすり抜けていたよね?あれ、なんなの?」

 

「うんうん。地球に行ったときに刺されたように見えて無事だった時と同じなの?」

 

「そうだ。あれが、俺の武術の根幹を担う歩法だな」

 

 キラキラした目で教えてと訴えてくるが、流石に教えない。なのフェイにも昔に言われた時も教えんかったし、これからのこの子たちに教える必要もない。

 

「まぁ、あれだ。回避といっても色々あるだろ?俺みたいに最小限の動きだけで回避を行い相手を打倒するスタイルもあれば、エリオやフェイトのような高機動からの一撃とヒット&アウェイを主軸にするのとか、な。今はまだまだ色々なことを試してみればいいさ」

 

「はい」

 

「お兄ちゃん、私は」

 

「ごめ、アドバイスできない」

 

 射撃ならば、敵として嫌な相手を想像すれば、ある程度はアドバイスできるが、召喚魔導師とか補助型とかどうアドバイスしていいかわからん。

 

 ゲームもやらなくはないから、そこからと考えても見たが、流石にゲームと実戦じゃ違うし、キャロみたいなタイプもいないからなぁ。

 

 そこらへんは、何とかしてもらうしかない。

 

 つか、キャロが涙目になってしまって罪悪感がやばい。

 

「そ、それじゃ、俺はこれで。待っているから!」

 

 俺は、そそくさとその場を後にすることしかできなかった。

 

 

 

 

 現場へ先行ということで、ヴァイスにわざわざヘリを出してもらうのも何だし、せっかく持ってきたフェンリルを死蔵させるのも勿体ないので、フェンリルで目的地である、ホテル・アグスタまで爆走している。

 

 こっちに来てからすぐにバイクと車の免許を取ったけど、普段は車で通勤していたから、バイクを乗るのは久々だ。

 

 てか、家族がいるとどうしても移動が車になってしまうのは仕方ないだろう?

 

 休日はリニスに買い物頼まれることも多いから、余程じゃない限りは、バイクの出番は少ないんだよなぁ。

 

 久遠を連れていくときも、バイクだと、何故か知らんけど、久遠もリニスも頭に乗りたがるから、流石に危険すぎて乗れんし。

 

 そんなわけで、久々の風を切る感覚がとても気持ちいい。

 

「ん?」

 

 フェンリルを走らせていると、後ろから二台のバイクが追いあげてくるのが分かる。

 

 今日は珍しく、他の車などがいないから、思う存分にスピードが出せているのだが、このフェンリルに追いつけるバイクってのも凄いな。

 

 自慢じゃないが、そんじょそこらにあるバイクの数倍のパワーとスピードを誇るモンスターマシンなんだが。値段は数十倍くらいいくけど。

 

 バックミラーで確認すると、二台とも同じような形で、乗っているのも、銀髪の刈り上げとロン毛だった。似ているし兄弟か?

 

 そんなことを考えていたら、突如ロン毛のほうが、どこか剣を思わせるような銃を構えてきたのを見て、慌ててハンドルを切って車線を無理やり変えると、先ほどの位置に魔力弾が通過していった。

 

 あっぶね、ちょっとでも反応が遅れていたら直撃くらっていたじゃん。

 

 狙いも正確だが、弾速もシャレにならないくらいの速度が出ていたな。

 

「おい、お前ら。市街地での魔法使用は禁じられているぞ」

 

 これでも公務員だし、注意せんと。てか、明らかに危なすぎる行為だから現行犯だが。

 

 こちらの呼びかけに対して、反応はなしか。

 

「ふんっ!」

 

 刈り上げマッチョが近づいてきて、拳を振るってくるが、流石にこれは簡単に避ける。

 

 勧告を無視したために、実力行使させてもらいますかね。

 

「エア」

 

《イエス。アイハブ、コントロール》

 

 コントロールをエアに託し、腰に現れた刀に手をかけた瞬間に、二台のバイクはとっとと、俺を抜き去って行ってしまった。

 

「なんだ、これは。この憤りはどうすればいい?」

 

 まるで張り切ってデートの準備をしていたのに、直前でおじゃんになったみたいじゃないか。いや、デートはしたことあるし、すっぽかされたこともないけど。

 

「つか、何だったんだ一体?」

 

《一応、顔は撮って交通課と六課に送っておきましたが》

 

「なんか、キナ臭いことになってきたなぁ」

 

 そう言って、再びフェンリルにまたがりスロットルを回し走り始める。

 

 それに、あの二人の気配……どこかで感じたことがあるんだよなぁ。

 

 

 

 

 

「紅莉君、お待たせ」

 

「やっと来たか」

 

 先行して数日後、漸くなのは達がやってきた。後ろから聞こえてきた声に振り向くと、そこには綺麗に化粧をしたなのフェイが立っていた。

 

「どう、かな?」

 

「似合う?」

 

 ほんのりと頬を染めて尋ねてくる二人。

 

「ああ、綺麗だよ。普段の二人も綺麗だが、やっぱりそうやって着飾ってみると、一際際立つな」

 

 もともとが、美人な二人が、こういった場所のためにおしゃれをすれば、改めて実感できるというものだ。それに、普段は薄化粧の二人が、この場に適した化粧をしているってのもあるな。

 

「あうっ」

 

「ずるい」

 

 染めていた頬を更に赤くする二人に思わず笑みが出てしまう。当然、これも思いでの一ページとして撮っておこう。

 

「なんか、なのはさん達が乙女だ」

 

 スバルちゃん、滅茶苦茶失礼だな。こいつらは、きちんと乙女だぞ。

 

「紅莉君、私は?」

 

 二人を褒めていると、隣からはやてが訪ねてくる。

 

「クロードに聞け。知らん」

 

「酷いな!?」

 

「なんで、他人の女まで褒めなきゃいかん。てか、褒めてもいいが、流石に命に関わるから勘弁してくれ」

 

 ひっそりと、セットアップしようとしているなのフェイを見て、ため息。惚れてくれて大変に嬉しいのだが、こういう嫉妬は勘弁だ。

 

「てか、ええ加減に答え出したらどない?」

 

「この場で言うセリフかよ」

 

 あと、余計なことを言うな。見ろ、仕事そっちのけで、期待させてしまったではないか。

 

「ほれ、仕事してこい。余裕があったら、付き合ってやるから」

 

「絶対だよ!」

 

「約束だからね!」

 

 そういうと、とっとと中に入って行ってしまったなのフェイ。

 

「相変わらず、コントロール上手いなぁ。それに、本当に何もなければ、得するのは紅莉君という」

 

「まぁな」

 

 あれだけ綺麗に着飾っているんだ、少し散歩するだけでも、もうけもんだ。

 

「送ったデータを見たか?」

 

「見たよ。正直この時期に関わってくるとなると、レリック絡みなのは間違いないなぁ。違っても、関係者には間違いないわ」

 

「だよなぁ」

 

 真剣な表情で自分の考えを告げてくるはやて。俺も大体が同意見だ。協力者という線もあるが、似たり寄ったりだ。敵として立ちふさがるなら、障害だから斬り伏せるだけだが。

 

「危険な目をしとるで」

 

「おっと」

 

「あんま、なのはちゃんやフェイトちゃんを心配させたらあかんで」

 

「おかんか、お前は」

 

「伊達に八神家の母やないで」

 

「……すまん、つっこめん」

 

「そこは突っ込まんかい!おかんという歳やないって!」

 

「やっていることが、おかんじゃねぇか」

 

「………あ、あかん。否定できん」

 

「だろ?」

 

 項垂れるはやてをクロードに任せて、新人達に向き直る。

 

「さて、来る前に配置場所などの指示は届いているな?」

 

『はい!』

 

「よろしい。この前の任務と違い、防衛戦となる。敵を倒すのが主じゃない。守るが主だというのを忘れるな」

 

『はい!』

 

「俺も基本的に屋上から見ているから、何かあれば指示する。敵が来れば、副隊長共も前線に出るから問題ないな」

 

 伝えることは現状ではこんなものか?何かあれば、その時でいいか。

 

「それじゃ、行け」

 

『はい!』

 

 元気に返事をしたのち、それぞれ担当場所に向かっていった。

 

 

 

 

 

「あー、戦闘指揮官とかめんどくせぇ」

 

「私に愚痴られても困るんだが」

 

「他に誰もいねぇじゃん」

 

「シャマルがいるだろう」

 

「……いたのか」

 

「酷い!」

 

 ザッフィーをもふりながら、敵が来るのを待つ。

 

 一通り、今回の出品物のリストを見せてもらったが、明らかにそれ以上の物が搬入されている。

 

 ただ、だからって検挙できないのだが。仕事でついでと言われればそれまでだし。何より、俺らにそれを開示させる権限はないし。

 

 まぁ、その分、流れてくる品が怪しくて襲われるという心配があるから、俺らを呼んだんだろうな。

 

「しかし、先ほどの指示などを聞けば、指揮官が似合わんとは思えないが」

 

「あれは、地球で兄さんと一緒に依頼をこなしたおかげだな」

 

 敵を倒すのは二の次で、あくまでクライアントを守るというのが護衛の最大の仕事だ。

 

 建物は壊れれば直せるし、物は盗まれても損失で済むが、命だけはどうにもできない。

 

「まぁ、ぶっちゃけると、新人達の経験という名目が無ければ、俺が出張ったほうが早いし、確実だがな」

 

「……否定できぬな」

 

「確かに」

 

 ザッフィーもシャマルも同意する。こう言った依頼はぶっちゃけ、新米にはきついんだよなぁ。ベテランでも神経をすり減らす勢いなんだから。しかも、物が物だけに。

 

「あいつら、暇だからって念話でくっちゃべってるな?」

 

「よくわかるな」

 

「注意がおろそかだ。一定のルーチンを行っていればいいってわけじゃなんだよ」

 

「なるほど」

 

 まぁ、館全体には即席だが、簡易結界で守れるようにもしてあるからいいんだが。

 

「っと、喋っていたら来たようだな」

 

「こちらでも、確認したわ」

 

 名残惜しいが、もふもふタイムは終了だ。

 

「ヴィータ、シグナム」

 

『ああ』

 

『おう!』

 

 通信ウインドウを開くと、既にセットアップして空へと上がっていた。

 

「遠くのほうに、大型の反応がある。お前らはそれだけ落としていろ」

 

『ああっ!?』

 

「こういう場面で経験を積ませんでどうする。過保護もいいが、ちっとは信用してやれ。それとも、お前の教えはその程度か?」

 

『ちっ、わーったよ!』

 

 俺の指示に意見あり!といった表情になるが、諭したら、渋々だがしたがってくれた。なのはの一件以来、気にいった奴に対して過保護が過ぎるなあいつは。俺にはやってくれんのに。

 

「つーわけで、手が滑ったとかもなしだからな」

 

『うっ』

 

『完全に見透かされているな』

 

『うっせー!』

 

 更に釘をさしたら案の定だった。ったく、あいつは。

 

「ザッフィーは後ろを頼む。楯の守護獣の名を思い出させてくれ」

 

「ふっ、いいだろう」

 

「シャマルは、ここで全体の把握を頼む。一応、俺のほうでもこの森全体は把握できているが、場合によっちゃ、狭まる可能性がある」

 

「むしろ、普通に出来ているほうが可笑しいのよ」

 

「リイン、お前はティアナ嬢のサポートに迎え。こう言った時に経験を積んでおけ」

 

『リインは皆さんより先輩ですよ!これでも空曹なんですよ!?』

 

「俺からしたら、変わらん。アインスのようになりたければ、やってこい」

 

『うぅ、お母さん見たくなんて言われたら、やるしかないですよ』

 

 アインスにあこがれているリインにはこれが一番効果があるな。まぁ、私生活だと、未だにアインスはボケボケだが。

 

「んで、新人共。もう一度言うぞ。守るのは、ロストロギアでも建物でもない。ここにきている、人だ。俺らの出来次第で、安心を与えるか、不安を与えるかになる。気を引き締めろよ?」

 

『はい!』

 

「よろしい。ならば、突撃(アヘッド)粉砕(アヘッド)勝利(ゴーアヘッド)!」

 

『了解!』

 

 こうして、戦闘が開始された。さぁ、出てくるのはいつになるかな?

 

 それにしても、なんだか知っているような気配があるんだが。確認に行きたいが、流石に持ち場を離れる訳にはいかんな。

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が開始され、それぞれがきちんと役割を果たし、問題なく処理している時に、それは訪れた。

 

「スバル、バック!」

 

「わん!」

 

 ティアナの指示にすぐさま、近くに戻ってくるスバル。犬っぽいのは、ティアナの教育の賜物である。

 

 ティアナの近くに現れたのは、銀髪長髪の男であった。ライダースーツのような格好をし、その目は危険をはらんでいた。

 

「ここは危険です。すぐさま、避難をしてください」

 

 局員として、模範的な言葉を選んで謎の男に告げるティアナ。だがしかし、警戒は怠ってない。

 

 突如として、男の手には剣にも見えるような銃が現れ、ティアナに向けられる。

 

 ティアナは慌てて回避行動を取り、スバルは防御の姿勢を取る。

 

 男は戸惑いなく引き金を引く。

 

 高速の弾丸は、スバルの反応速度を超えて迫ったが、そこに割り込むように紅莉が現れ、弾丸を手に持つ刀で斬りはらう。

 

「セーフ」

 

「紅莉さん!」

 

「危なかったな、スバルちゃん」

 

「助かりました」

 

 魔法の発動は感じたが、魔導弾の軌跡が一切見えなかったティアナが、それがどれだけ危険かを察し、紅莉にお礼を述べる。

 

「いや、こいつが現れた時に来れなかった俺のミスだ」

 

 顎で目の前の男を差して告げる紅莉に、何も言えなくなるスバティア。

 

「さてと、ここに来る前と、ここでの行いで完全に言い逃れ出来ないからな?」

 

 目の前の男を見て、ここに来る前に襲ってきた人物の片割れと同じと断定した紅莉が告げるが、何の反応もない。

 

「やれやれ、犯罪者だろうがなんだろうが、もっと言葉のキャッチボールを楽しもうぜ?」

 

 呆れたような紅莉の態度に、男の返事は攻撃であった。

 

 何事もなかったように攻撃されたが、これまた何事もなかったように防ぐ紅莉。

 

「やれやれ。しょうがねぇ、制圧させてもらう」

 

 再度肩をすくめた紅莉が、次の瞬間に男に肉薄し刀を振るった。しかし、それは、銃によって防がれる。

 

「っと、ツーハンドか」

 

 いつの間にもう一方の手にも同じ銃が握られており、至近距離から撃たれるが、それを難なく回避する紅莉。

 

 回避動作中に体を蹴られ、距離を離されると、そこからは怒涛の連続攻撃を放たれる。

 

 されど、紅莉にはなんの効果なく、その悉くを撃ち落としていく。

 

「ティアナ嬢、よく見ておくといい。銃使いの一つの完成系が目の前にあるからな」

 

 紅莉の言葉に、生唾を飲み込むティアナ。同じ銃を使うものとして、ティアナも目の前の敵の凄さが分かっていた。

 

 なのはのような大きな攻撃はないが、その分、一発一発がありえないほどの速度を持っていた。

 

 常に防御をし続けるならまだしも、相手の攻撃に合わせて防御をするのが普通の戦闘で、速度という点で明らかになのはを圧倒しているのだ。

 

 相手を近づけさせないようにと、攻撃の手が休まってない。しかも、一切の無駄もない。

 

「まぁ、速度という点と、威力を一定に保っての攻撃というのは評価に値するが、いささか危険すぎるから、ここは真似しないように」

 

 戦っているにも関わらず、講義するような紅莉に、心配していいやら、どうしていいやら、分からなくなるティアナであった。

 

「さて、ティアナ嬢への講義も終了したし、反撃に移らせて貰う」

 

 どうやら、講義であったようで、そういうと、紅莉は相手の攻撃を全て弾きながら、近づいていく。

 

 男も近づけさせまいと、移動しながら攻撃を繰り出すが、突如紅莉が目の前に現れたのである。

 

 一瞬前には、まだまだ前にいた紅莉がいたはずなのに、気がつけば目の前である。流石の男も、これには驚いたのか、体が強張る。

 

 それを見逃さずに紅莉は回し蹴りで、男を林のほうへと吹き飛ばした。

 

「俺はあいつを追うから、後は任せた」

 

「あ、はい」

 

 紅莉はそういうと、すぐに男を追って、林の中へと入って行ってしまった。

 

 逆に残されたスバティアはどうしたらいいか、分からずに混乱しかけていた。返事はしたが、状況についていけずに、咄嗟に言葉が出ただけである。

 

『追う必要も、援護を頼む必要もないぞ』

 

 そんな二人に、シグナムから念話が届いた。その声は、若干の呆れが混じっている気がするのは気のせいだろうか。

 

『それに、あいつの場合は、一対一のほうがやりやすいからな』

 

『普段の奴ならば、不要な物は避けるが、お前らがいたから全部防いでいたのだろうしな』

 

『後はまぁ、林の中ってのもあいつのフィールドだからな。さぁ、お前ら!残りは少しだ、気合を入れろよ!』

 

 シグナム、ヴィータ両名の言葉を聞いて、この場のことを漸く思い出した二人は、自分の仕事を完遂しようと、動き出したのであった。

 

 

 

 

 

「お、いたいた」

 

 とりあえず、あの場にいると、いつ流れ弾がスバティアに行くか分からんかったら、林の中に移動を願ったのだが、あまり強く蹴飛ばしたつもりはなかったんだが、中々見つからなかったのがようやく見つかった。

 

 しっかし、弾速はえなぁ。普通の銃弾ぐらいあるんじゃね?シェルも硬いし。

 

「Cの因子はどこだ」

 

「はぁ?」

 

 俺を待っていたようで、林の中のちょっと開けたところで普通にいたんだが、漸く喋ったと思ったら、なんか意味が分からんことを言いだした。

 

 俺が分からんかったのが気に入らんかったのか、再び攻撃を再開してきた。

 

 しかも、先ほどよりも連射速度は上がり、威力も上がりやがった。

 

 まぁ、先ほどと違って、周りに障害がないから、幻武を使い、無駄な行為は避ける。

 

 弾丸が素通りするが、それで攻撃が中断することはなく、むしろ更に密度が上がりだした。

 

 まぁ、それでも狙いを絞らせないように移動しながら近づいていっているが。

 

 残り一足となり、足に力を入れて一気に近づいたら、突如横から圧力を感じて、防御すると、銃男の片割れが殴りかかってきていた。

 

 吹き飛ばされるが、威力は全部流したからダメージはない。

 

 それにしても、結構強いな。今のままじゃ駄目だな。

 

「いい、いいぜ、お前ら」

 

 久々だ。敵としてここまで高揚させてくれる敵というのも。

 

 俺の中の狂気が狂喜しているのが分かる。

 

 飲まれるつもりはさらさらないが、ここ最近、飢えていたからか、強く感じるな。

 

「纏めて斬ってやる。覚悟しな」

 

 首や関節を回すと、ゴキゴキとありえないほど関節が鳴る音が続く。

 

「ふぅ、すっきりした」

 

 一通り、鳴り終えると改めて刀を抜く。ここまでの奇行に驚いたのか、警戒したのか知らんけど、攻撃してこなかったのはありがたいことだ。

 

「いくぜ?」

 

 宣言と同時に、一気に刈り上げ男に近づく。さっきやられたお返しだ。

 

「なぁっ!?」

 

 驚きの声が聞こえるが関係なく、刀を振りきる。咄嗟にガードできたのだろう。右腕につけていたパルバンカーのようなもの阻まれる。

 

 だが、それで完全に体が固まったのは分かるので、空いている部分を斬りつける。

 

 とりあえず、ガラ空きだった胴を斬ってから、銃男に近づいていく。

 

 我に帰り、両手で連射しているが、そんなに動揺していれば、幻武を使わなくても避けるのはたやすい。

 

 逃げようとするが、もう遅い。俺の一足は大よそ10m。その距離まで詰められたら、そこはもう俺の距離だ。

 

 大地に踏み込み、一気に近づくと、それでもなお反撃してこようとしたのか、足を使ってきたが、その足を切り裂く。

 

 足を斬られたことにより、バランスを崩したのか、その場に崩れ落ちる。

 

 追撃をかけようとしたが、刈り上げ男が攻撃してきたので、一旦距離を取る。

 

「いきなり動きが」

 

「よくなったって?」

 

 呟いたつもりだろうが、戦闘モードに入った俺は聴覚もよくなっているからな。その程度の声はよく聞こえる。

 

「教えてやろうか?」

 

「なに?」

 

 俺の言葉に警戒を増す二人に俺は追撃する前にからくりを教えてやる。

 

「普段の俺は鍛錬バカでな、どうすればより己を磨けるかと考えているんだ」

 

 一番いいのは、実力が近い人とひたすら実戦形式での鍛錬がベストだ。

 

 しかし、ここ近年じゃまともに相手になるやつもいなくなってきた。せいぜいが兄さんくらいだ。後は、フルドライブのクロードか。

 

 だが、こっちに移ってしまった俺は、そう簡単に兄さんを相手にして鍛錬を積むことができなくなってしまった。

 

 クロードのフルドライブも早々使えるものでもないからな。

 

 ないものねだりをしても意味がないならば、自分で環境を何とかするものだ。

 

 やみくもに鍛えても技術は上がらない。ならば、どうする?

 

「俺は、普段は関節を微妙にずらしてはめていてな、最大稼働域を狭めているんだよ。最大稼働域が狭めれば、当然攻撃の威力は乗らんし、鋭さも鈍る。そもそもが、最大時の要領で振るったら関節が外れるな」

 

 だからこそ、最小の効果で最大の結果を得る方法を試行錯誤する必要があった。

 

 かつて、肩を壊し、問題なく使えるようにするために鍛えていたことを改めて思い出して、実行したが、これがまぁ、効果があることあること。

 

 関節をずらした状態から元の状態に戻したら戦闘力が跳ね上がるのはもちろんのこと、ずらした状態で鍛錬した結果、技のキレも効果も以前の何倍もなったからな。

 

 それに、体が思うように動かないから、必然的に技術も目に見えて上がるのが分る。

 

 俺も兄さんもまだまだ上にあがっている最中だ。ここが終わりでない。

 

「さぁ、粘れよ?ここまで、やる奴なんて本当に久方ぶりなんだからな」

 

 期待して、一気に近づこうとしたが、また横から圧力を感じたのでその場を飛びのくと、目の前に牛みたいな化けものが通り過ぎて行った。

 

「こいつは……?」

 

 目の前を通り過ぎて行った牛モドキに目を奪われた瞬間、先ほどの二人の気配が突如として消えた。

 

「逃げられただと!?」

 

 またかよ!

 

「しかも、牛モドキは完全に俺を敵とみなしているし」

 

 しょうがねぇ、このイライラはこいつで晴らさせて貰うか。

 

「少しは期待していいんだろうな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「論外だった」

 

 関節をはめ治しながら、アグスタに戻りながらごちる。あの二人の二分の一もなかったとか、論外すぎる。

 

「緋凰、戻ったか」

 

「すまなかったな、現場を離れちまって」

 

「構わんさ。それで、どうした?」

 

「逃げられた。転送かどうかは分からん。後で、エアのデータで確認してくれ」

 

「ああ」

 

「そんで、ティアナ嬢が若干沈んでいるんだが?」

 

「ああ。敵にステルス機能を使う奴がいて、接近に気がつかなかったようだ。ギリギリで、ナカジマが気がついて割って入ったんだが、怪我をしてしまってな」

 

「大惨事じゃん」

 

「いや、怪我といっても戦闘で付きもの程度の傷だ」

 

「なるほどな」

 

 まぁ、責任感が強いティアナ嬢のことだ。必要以上に責任を感じているんだろうな。

 

「紅莉!」

 

 横合いから、声を振り向けば、メガネをかけた草食系男子がなのはを連れ添ってやってきた。

 

「スクライア先生。ご無事でしたか」

 

「他人行儀!?」

 

「?? 私と先生は初めましてですよね?」

 

「幼馴染だよね、僕たち!?」

 

「有名な、先生とですか」

 

「酷いよ!?」

 

 完全に涙目になってしまった、スクライア先生。はて、俺は何か変なことをいったのだろうか?先行して、一度会っただけなんだが。

 

「にゃはは、紅莉君いじめたら可哀そうだよ……私も忘れかけてたけど」

 

「なのは!?」

 

 なのはもひでぇな。からかうのも、これくらいにしておくか。流石に、泣かれるとうざいし。

 

「すまんすまん。だがな、お前と会うのも何年振りだ?」

 

「えっと……」

 

「つまり、それだけ会ってないってことだろ?だから、ネタにしたのに本気にするなよ」

 

「酷いよ。それに、クロノも本編に出てこないじゃないか」

 

「メタいこと言うな。それに、あいつとはちょくちょく会っているしなぁ」

 

「何それ!?聞いてないんだけど!?」

 

「友人と会ったからって、別に報告する義務はないだろ?」

 

「僕は!?誘われてないんだけど!」

 

「お前は、アリシアと乳くりあってろ。リア充が……淫獣が!」

 

「なんで言いなおしたの!?しかも、違う!」

 

 こちとら、ここ近年はアリシアと会う機会が増えてきて、その度にノロケられるんだぞ。こっちの身にもなれってもんだ。

 

「まぁいいや。とりあえず、俺は先に帰るぞ。流石に、デートって雰囲気でもなくなっちまったからな」

 

「うぅ……」

 

 帰るという言葉になのはが涙目になる。そして、いつの間にか現れたのか、フェイトまでが服の裾を握って涙目になっていた。

 

「仕方ないだろ。そのうち、埋め合わせしてやるよ」

 

「「絶対だよ!」」

 

 ハモってまで言うな。約束は基本的に違わんよ。

 

「どの道、フェンリルで来ているから先に帰るのは決まっていたんだがな」

 

「そういえば、そうだったね。クロード君に渡して、紅莉君は一緒に帰るってのは?」

 

「それでも構わんか。確認取ってくる」

 

 流石に、出来るとは思ってなかったが、ここまで残念がっていると罪悪感がわくからな。

 

 クロードに確認取ったら、物凄く呆れた顔をしやがった。今度絞めてやるか。

 

 あー、ティアナ嬢のこともあるし、敵のこともあるし、面倒が増えるなぁ。

 

 いや、敵はいいんだ敵は。立ちふさがるならば、悉くを斬ればいいんだから。

 

 とにかく、やることが一杯だ。




†久遠放送局†

久遠「紅莉がキモイ」

リニス「キモイですね」

久遠「鍛錬のためとはいえ、関節ずらすとか意味が分からない。しかも、ずらしても強いとか」

リニス「分かりやすい説明か不明ですか、関節が完璧の状態が無敵超人で、ずらした状態で梁山泊の師匠達くらいですかね」

久遠「ずらした状態でそれって」

リニス「ちなみに、敵は師匠達と同等かワンランク下です。流石に二対一できついと悟って戻したようです」

久遠「酷い。しかも、これでまだ魔法とチート能力あるんでしょ?」

リニス「作者の認識だと『チート能力……そういや、転生者だっけ?』な認識ですからねぇ」

久遠「まぁ、使う機会なんてないからね」

リニス「ここ近年は魔法も使ってませんがね」

久遠「ヒドス。では、次回もお楽しみに」
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