魔法少女リリカルなのは~刃の行き着く先~   作:レティウス

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第88話

 一種独特な緊張感で開始された陳述会。

 

 そんな中、その場に参加しているカリムやリンディは眉根を寄せていた。

 

 事前情報で手に入れた内容と異なっていたのである。

 

「アインヘリヤルを使うとなれば、大量のエネルギーを使用する。そんなバカスカと使えるものではない。よって、これは犯罪者集団に対する威嚇にすぎん」

 

 レジアス・ゲイズによる説明は的を射てはいた。だがしかし、開発を推し進めているはずの彼が、何故今さらそんなことを言っているのかが分からなかったのである。

 

「よって、これを見せながらに、今まで水面下で進めていた物を発表しようと考えている」

 

「それは一体……」

 

「それはだな……」

 

 あまりの内容の違いに、思わずと言った感じで質問をしてしまう局員に説明をしよとしたレジアスだったが、徐に壇上から離れ始め、後ろで控えていた一人である、紅莉に近づいていく。

 

 そして、近づいて行ってためらいも無く拳を振りおろした。

 

 しかし、振り下ろした拳は、首を傾けることによって簡単に回避されてしまった。

 

「何をする」

 

「寝るな!」

 

「知るか。興味の無い話に、無理やりつられてこられた人間の気持ちを考えろ」

 

「それこそ知らん!貴様は、ワシの部下なのだからいて当たり前だろうが!」

 

 ギャアギャアと小学生かと思われる程度のレベルの低い口喧嘩が勃発し、周りの者はポカンとした表情で取り残される。唯一、はやてだけは腹を抱えて笑っていたが。

 

 そんな低レベルの口喧嘩をしていた紅莉とレジアスだったが、突如として紅莉が言葉を遮るように手を前に出す。

 

「どうした?」

 

「敵だ。おっさん、非難を開始しろ」

 

「何?分かった。貴様はどうするのだ?」

 

「決まっている……敵は倒すだけだ」

 

 紅莉は立ちあがると、虚空に手を差し出した。

 

「来い、我が刃、エアナガン」

 

《イエス、マスター。御前に》

 

 紅莉の掌に魔法陣が現れたかと思うと、そこに粒子が立ち上りやがて形となっていく。

 

 現れたエアを首にかけなおすと、腰に刀と刀を固定するベルトが装着される。

 

「数は……ちっ、割と多いな」

 

 レジアスが未だに状況を掴めない局員たちを動かそうとしている間に、紅莉は目をつむり、やってきている敵の数を把握し始める。

 

《マスター。AMFで建物全体を囲まれました。また、何者かによって通信システムも障害が発生しています》

 

「分かった。おっさん、俺は外に出て強そうなのを潰してくる」

 

「頼むぞ」

 

 レジアスの言葉に頷いた紅莉は外に出ていくと、途中でヴィータと出くわす。

 

「紅莉!」

 

「分かっている。お前は、フォワードの奴らと共に、中の奴らを頼む。中に入ってきている連中はあまり戦闘力が高くないっぽいから、お前らで十分だろう」

 

「……突っ込まないぞ」

 

「何が?」

 

 ヴィータの言葉に首を傾げたくなる紅莉だが、流石にそんなに時間的余裕があるわけでなかったので、聞き流して外へと駆けていく。

 

「さてと、敵は……遠くで二人か」

 

 地上で暴れていたガジェットをさくっと片づけた紅莉は、空へ上がり敵の位置を確認する。

 

「って、こっちに向かっているのが一人いるな……この懐かしい気配は……」

 

 本部へと向かってくる気配に覚えがあった紅莉は、向かってくる気配の場所へと向かった。

 

「む……貴様は」

 

「どうしたんだよ旦那……って、お前は!」

 

 数十秒後、現れた人影が、紅莉がいたことによって脚を止めたのだが、その顔は困惑と怒りの表情であった。

 

「懐かしい気配がするなぁって思ったら……生きていたんだね、ボス」

 

 ボスと呼ばれた男は、そこにいた紅莉を見て目を見開く。

 

 久しく会ってなかった、かつての部下。その部下が、こうして自身の目の前に現れたのことが、驚き以外の感情が浮いてこなかったのである。

 

「てめぇ!あの時はよくも!」

 

「ん?ルーテシア嬢ちゃんと一緒にいた融合騎か。よくもも何も、何もせんかったろうが」

 

 もう一方の小柄の少女は、この前の地下通路の時、彼女的にいいようにあしらわれたと感じていたのか、怒りの表情を隠そうとせずに食ってかかる。

 

「まぁ、積もる話もあるんだけどさ、ボスはここに一体何しに来たのかな?」

 

「立ちふさがるか?緋凰」

 

「内容によるよ」

 

 腕を組んで、目の前の男……かつての紅莉の上司である、ゼストを見つめる紅莉。その瞳には、ただただ、相手を見極めようとすることだけが秘められていた。

 

「俺は……レジアスに、あの時のことを聞きに来た」

 

「こんな、襲撃されている時にかい?」

 

「でなければ、奴にあうこともままならん」

 

「いや、生きていたって教えてくれれば……いや、ボスはおっさんを疑っているのか?」

 

 ゼストの心の内を看破する紅莉だが、看破されたゼストに動揺はない。幼かった、紅莉ですら今ほどではなかったが、確かに出来ていたので、数年たち、青年となった今の紅莉があの当時のままとは、そこそこに付き合いが長かったゼストは当然だと考える。

 

「残念ながらな」

 

「そうか。おっさんは、ボスが死んだと告げられた時に静かに泣いたそうだ。オーリスが教えてくれたよ」

 

「そう、か……」

 

「ああ、おっさんと話か。今は、色々と立て込んでいるからなぁ……悪いが、日を改めてくれ。おっさんには話を通しておくから」

 

「……分かった」

 

 紅莉の提案を受け、あっさりと引きさがろうとするゼストだったが、それに異を唱えたものがいた。

 

「旦那どうしたんだよ!?アタシと旦那なら、こんな奴なんてケチョンケチョンにできるだろ!?」

 

 ゼストにつき従っていた融合騎である、アギトがゼストに攻める勢いで問いかかる。

 

「融合騎の嬢ちゃんか。ボスの判断は正しいと思うぞ?全盛期ならともかく、その体で俺と戦うなんて、万に一つの可能性もないとすぐに判断したんだからな」

 

「ふざけるな!アタシとロードのコンビがてめーみたいな、へらへらしているやつに負けるもんか!」

 

「ずいぶんと嫌われているなぁ」

 

 アギトの物言いに苦笑いが漏れる紅莉。人に嫌われるような態度をとることもままある身としては、仕方ないと割り切って入るが、女の子に嫌われるのはそれなりに、ショックはでかいのである。

 

「ボス」

 

「なんだ?」

 

「俺は、あれから強くなった。それこそ、管理局の誰にも負けないと思える程度には」

 

「そう、か」

 

「けど、強いこと=救えることでもないことは分かっているつもりだ。もし、戦うのであれば、俺は加減は考えない」

 

「分かっているさ。ルーテシアからガリューを圧倒した奴がいるという話を聞いた時に、もっと詳しく聞いておけばよかったと思っている。お前がいると分かれば、接触も考えたのだがな」

 

「旦那!?」

 

 今まで展開していたデバイスをリリースし、本音を吐露するゼストに絶叫に近い形でアギトが声を上げる。

 

「まぁね。そうそう、この前、スカリエッティと会ったよ。色々と面白い奴だったけど、目がねぇ……」

 

「やれやれ、その性格は変わってなかったようだな」

 

「変わらないさ」

 

 紅莉の暴露に苦笑いを浮かべるゼスト。それに、返すように紅莉も苦笑いを浮かべた。

 

「ここは引かせて貰う」

 

「ん。おれも、恩があるボスとは戦いたくないし、助かるよ」

 

「ついでに教えておく。メガーヌは生きている。今は、スカリエッティのアジトで、目覚めぬ状態だがな」

 

「マジか。つーことは、あのルーテシアの嬢ちゃんが協力しているのは」

 

「そうだ。目覚めさせるために、必要らしい」

 

「分かった。クイントさんには俺から伝えておくよ」

 

「ああ、ではな」

 

 別れを告げたゼストは、紅莉に背を向けてそのまま飛びだっていってしまった。去り際にアギトがあっかんべーをしていたが、微笑ましい表情をしていただけである。

 

 そして、その直後、緩んでいた顔が一気に引き締まった。

 

「騎士ゼストは戦わずして戻られてしまったか」

 

 紅莉の目の前に単発の長身の女性が両手両足に光のブレードを生やして佇む。

 

 それどころか、桃色の髪とブーメランを持つ女性に、先日アジトを出るときにからまれた銀髪の少女が紅莉を取り囲むように現れたのである。

 

「お前は……」

 

「覚えているようだな」

 

「なんとなくだがな」

 

 首に手をまわしてゴキゴキとならす紅莉。ずれた関節を戻しているのであるが、目の前の戦闘機人達は戦う準備をしていると思い、臨戦態勢をとる。

 

「なんだ、俺を囲ってハーレムかい?やめてくれよ、なのはやフェイトに殺されてしまう」

 

 鬼気迫る状況の中でも、紅莉の軽口はよく回り、それが相手の闘争心に火を付けるなど露にも思ってはいなかった。

 

 

 

 

 関節の矯正はが終了して改めて目の前の戦闘機人を見る。

 

 さっき、彼女が覚えていたのかというセリフになんとなくと返したが、本当になんとなく覚えているだけなんだよな。

 

 どこかで見たことあるとは思うんだが……

 

「ISライドインパルス!」

 

「ISスローターアームズ!」

 

「ISバレッテーゼフレア!」

 

 俺を囲っている美女・美少女達が一斉に動き出したので、こちらも対応をするために、即座に今いた場所を離れる。

 

 先ほどまで俺がいた位置にはバインドを思わせるようなものが現れ数瞬ののちに爆発をした。

 

 そして、俺が飛びのく位置を計算したのではなく、目視で見極め一瞬で距離を詰めてくる、美女。

 

 右のストレートを放ってくるので、反身をずらしてかわしたいところなのだが、彼女の腕から生えているのが気にかかる。

 

 あれが、このスピードを産むためのものならば、いいのだが、ブレードなんかであったら、斬られてしまう。

 

 とりあえず、完全に飛びのく時間もないので、彼女の腕を左手で捌き、腕をとって投げようとしたら、反対側から、ブーメランを持った少女が切りにかかってきた。

 

 投げるのを諦めて、目の前の美女と衝突出来たらいいなという思いで上へと飛びのくと、先ほどの銀髪っ子のバインドみたいなものがまた現れたので、即座に横に飛びのく。

 

「奴に剣を抜かせるな!」

 

 長身の美女が指示を出し、次々と攻撃を繰り出してくる。

 

 連携もよく取れており、前衛・中衛・後衛とバランスがよく取れているな。

 

「中々、俺の対策が分かっているじゃないか」

 

「数年前、貴様にやられて身にしみたからなぁ!」

 

 そう言われて、目の前の美女が誰か漸く思いだした。

 

 こいつ、ゼスト隊が崩壊した時に現れた奴じゃないか。

 

 ボスを直接やったのはチンクらしいが、その時に一緒にいたな、こいつも。

 

「確かに、剣士に取って剣を抜けないというのは、中々に対策が出来ている」

 

「当然だ。私たちは、貴様を倒すために、何通りもシミュレーションを繰り返したのだからな!」

 

 へぇ~ほぉ~、俺を倒すためにねぇ……ご苦労なこって。

 

「だが、俺に限って言えば、二つほど勘違いをしているぞ」

 

「何!?」

 

 先ほどから、フェイトのソニックムーブと同程度の早さで攻撃を繰り出す美女に対して、初撃と同じように攻撃を捌いた後、無防備な体へ蹴りを叩き込む。

 

「がはぁっ!?」

 

「トーレ姉さま!」

 

「一つは、俺は刀を抜かなくてもそれなりに強い」

 

 無手での力は、その道の人たちの1~2割程度能力が落ちるが、魔導師相手ならば、十二分に対応は出来る。

 

「おのれぇっ!」

 

 トーレと呼ばれた奴が、苦しむ中、憤怒の表情を隠さずに銀髪っ子が俺に向かって、バインドと思わしき環を大量に召喚する。

 

 そして、一定時間たつと、それが爆発するんだが、なんだこの能力は?

 

《解析完了。どうやら、空間の座標に爆発を起こす能力のようですね》

 

 ふ~ん。なんとなく、科学からずれたような、行き過ぎたような能力だな。

 

「まだ、まだぁっ!」

 

 先ほど沈めたと思ったトーレだったが、根性なのか、再び襲いかかってくる。

 

 桃色の少女も動揺していたようだが、再び俺へと攻撃を再開してきた。

 

「んで、二つ目だが……はっ!」

 

 飛んできたブーメランを抜刀術で両断してから、一足で桃色の少女へと迫り、もう片方のブーメランを斬り刻んでから、彼女を斬り伏せる。

 

「んなっ!?」

 

「剣士が、自分の相棒を抜かせないようとする相手がいないと思っているのか?そんなもん、想定内だ」

 

 剣士に限らず、武人ってのは多かれ少なかれ、そういった弱点を持っていることがある。あるが、それを放置したままにするわけがなかろうに。

 

「俺は抜刀術を得意としていてな……この技ならば、銃弾程度ならばある程度の距離までならば、斬れる」

 

 流石に目の前で撃たれたら斬れはしないが、有効範囲内での発砲ならば間に合うまでには錬度を磨きに磨き抜いてきた。

 

 ゆえに、目で追える相手ならばいつでも抜刀は可能だ。

 

「さぁ、大人しく投降しな。今ならば、それなりに軽い罪で終わる」

 

「ふざけるな!」

 

 やれやれ、人の好意を素直に受け取らない奴だ。

 

 こちらに殺気をぶつけてくるのはいいのだが、こいつらは自分が殺される可能性を考えているのだろうか?

 

 今のところは押さえているが、俺は殺気を向けてくる相手には容赦はしない。それがたとえ、美人だろうが、子供だろうが、老人だろうがなんであれだ。

 

 命を狙われているのに、相手の命を奪わないと言うほど、俺はお人よしではない。

 

 好き好んで、人を殺めたいとも思わないし、普段は出来るだけ殺さないように心掛けてはいるが。

 

「やれやれ、言って聞かないのならば……後悔するなよ」

 

 今まで一切出さなかった殺気を解放する。修業の成果か、殺気のコントロールは完璧となった。もともとが幻武を多用する身なので、必須条件なのだが。

 

 俺が解き放った殺気を受けて、三人がその身を竦ませている。

 

「撃っていいのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ……それをよく覚えておきな」

 

 どこぞのアニメの台詞だったが、真理とも思えるそれを口にしてから目の前のトーレと呼ばれた奴に近づこうとしたが、

 

「ふっ!」

 

 遠距離から、俺を狙った砲撃が来たので、斬って迎撃をしている間に逃げられてしまった。

 

「気配が消えたということは、転移か」

 

《イエス。追跡していたのですが、巻かれました。あの科学者結構やりますね》

 

 スカリエッティの仕業かどうかは分からんが、まぁ、なるようになるか。

 

《マスター、メールが届いています》

 

 とりあえず、脅威は去ったからこれからどうするかなぁと思っていたら、エアからメールが来たと報告が来たので開いてみた。

 

『ギンガさんが連れさられてしまった。/(^o^)\ナンテコッタイ』

 

「軽いな!?」

 

 ティアナ嬢からのメールだったのだが、内容が内容なのに、非常に軽くなってしまっていた。彼女も変わったな。

 

「てか、この襲撃って本部を狙ったと言うよりも、俺らを狙ったということか?」

 

《可能性はありますね》

 

「つーことは、六課も危ないか?」

 

《映像を出しますか?》

 

「頼む」

 

 予想通りになってほしくないなぁと思いながら、エアがディスプレイを展開したので、覗きこんだのだが、そこに映し出された映像は……

 

「oh……」

 

 あまりの内容に思わず、変な感じに声が漏れてしまった。

 

 

 

 

 

 紅莉が敵の襲来を察知したころ、六課にもまた、敵の手が迫っていた。

 

「ん。リニス、敵が来る」

 

「本当ですか?」

 

「うん」

 

 開発室で怪しいものを作っていたリニスとアリシアに、ソファーで寝息を立てていた久遠が、突如起き上がり、リニスに用件を伝える。

 

「分かりました。バックヤード」

 

『どうしました?』

 

「敵が来たようです。非常警報を鳴らして、非戦闘員を急いで退避させてください」

 

『えぇっ!?』

 

 はやてとクロードの変わりに六課の指揮権を預かっていたグリフィスに通信をいれたリニスだったが、突如のリニスの言葉に動揺を隠せないグリフィス。

 

「遅くなってからでは遅いですよ」

 

『わ、分かりました!』

 

 リニスの真剣な表情で事態の深刻さを理解したのか、すぐさま警報を鳴らしたグリフィスに通信を切ったリニスは久遠に向き直る。

 

「それで、どれほどのものですか?」

 

「えっとね、沢山?」

 

「曖昧ですね」

 

「ごめんね」

 

「いえ、貴女の勘は信じるに値するほどのものですからね」

 

 そう、久遠が敵が来ると言ったのは、あくまで勘である。だがしかし、久遠と付き合いが長いものならば、久遠の勘がどれほどの当たるか分かっている。そのために、一度は確認を取ったものの、そのあとはすぐに行動に移したのである。

 

 そして、開発室からレーダーを見ていると、赤いマーカーが六課を囲むように次々と現れているのが分かった。

 

『リニスさん!』

 

「わかっています。私も迎撃に出ます」

 

 通信ウインドウが開き、そこからシャマルの焦った顔で名前を呼ばれるリニスだが、こちらは比較的落ち着いていた。

 

「それから、一度深呼吸を。焦っても、いいことはありませんよ」

 

『あ、はい』

 

 毒気を抜かれたように一瞬呆けたような顔をしたシャマルだったが、すぐに表情を引き締める。そこには、焦りなどは心の底に押し殺し、真剣な表情をした顔をしていた。

 

 紅莉と関わりが深いリニスにとって、この襲撃は予想外だが、対処ができないというわけでもない。

 

「久遠、貴女はアリシアの護衛を。私は、戦闘力が高そうなのを始末してきます」

 

「うん、分かった」

 

「ちょ~っと待った!」

 

 リニスの指示のもと、素早く動こうとしたリニスと久遠だったが、そこにアリシアが待ったをかける。

 

「どうしました?」

 

「リニスが強敵を倒すのはいいと思うんだけどさ、この数って割とシャレにならなくない?」

 

 そういって、アリシアが指を差したのは、六課を中心としたレーダーである。そこには、夥しいほどのかずの赤いマーカーが記されていた。

 

「これは、確かに……」

 

 流石のリニスもこの数を相手にするのは骨だと思った。紅莉と違い、一対多の魔法は使えるが、流石に全域をカバーできるほどではない。

 

 また、現在の六課の戦力も充実していると言う訳でもなかった。

 

『話は分かった。私も出る。南側は一手に引きうけよう』

 

 そこに通信で割り込んできたのはアインスであった。

 

「いいのですか?」

 

『構わんさ。それに、主の城を守るのも私の務めだ。細かいことは後で考えることにしよう』

 

「ふふ、分かりました」

 

 アインスの物言いを好ましく思ったリニスが思わず口から笑いが漏れる。それを見た、アインスもまた笑みを浮かべる。

 

「ええ、そうですね。紅莉も何だかんだでこの環境は気に行っているようなので、ここを守りましょう。ザフィーラ、敵が中に入ってきた時は頼みますよ?」

 

『心得た』

 

「シャマル。私は東側を殲滅したら正面に向かいます。それまで、持ちこたえられますか?」

 

『頑張ります』

 

「ちょいまち。東と西は私がやるよ。シャマルとリニスは北側をお願い」

 

「アリシア?」

 

「ふっふっふ、私がいつまでも守られるだけの存在と思わないことね!」

 

 フェイトより小さな胸を張りながら、何故か自信満々のアリシアにシャマルとザフィーラが困惑の表情を浮かべる。

 

 彼女たちとしては、アリシアは優秀な科学者であるが、戦闘力は皆無だと聞いていたためだ。

 

 その認識はあながち間違いではない彼女自身(・・・・)に戦闘力はないのだから。

 

「分かりました、無理はしないでくださいね?」

 

「もちろん!私の花嫁衣装を先に見せて、フェイトの悔しがる顔を見るまではね」

 

 悪戯っぽく笑うアリシアにほほ笑みを浮かべるリニスは、アリシアに任せることにして、正面玄関へと向かって行った。

 

 そして、アリシアは六課全体を見渡せる屋上までやってくると、その手に持つ、かつてプレシアが使っていたデバイスを掲げる。

 

 そのデバイスは、当時プレシアが使っていたままではなく、杖の先端の中央には三つの宝珠とも呼べるようなものが組み込まれていた。

 

「さぁ、行こう」

 

 アリシアが杖を天に向かって掲げると、杖の先端部が浮き上がりすぐに下ろされる。

 

 かつて、プレシアが使っていた杖は、カートリッジシステムを搭載された魔改造品へとパワーアップしていたのである。これは、魔力資質を持たないアリシアが使うための苦肉の策でもあった。

 

 そして、カートリッジが使われたと同時に杖の先端にはめ込まれていた宝珠の内、一つが光り輝き、空に向かって伸びていくと、次第に形を持ち始めた。

 

 やがて、形となった光は質量を持っていき、それは雄大な姿へと変わって行った。

 

 黒き鱗に一対の羽、何よりも他の生物より圧倒的な威圧感を持つ生物。

 

「ムーちゃん!とりあえず、東側からうようよしているのを片付けちゃって!」

 

 アリシアの指示を受け、一際高い嘶きを上げた後、ムーちゃんこと、バハムートは東側より近づいてくるガジェットに向かって、その巨大な腕を、足を、尻尾を、翼の羽ばたきによって、瞬く間の間に殲滅したのであった。

 

 このバハムートは実は、クロードから譲り受けたものである。

 

 もともと、クロードが持っていたが、あまりに巨大でなおかつ、強大過ぎたために、使うことが無く、また彼の戦闘スタイルには合わなかったために死蔵していたのである。

 

 そして、時が進み、アリシア監修の元、マテリアの汎用化及び量産化を計画した時に、各種の魔法マテリアと共に渡されたのである。

 

 そこに、リニスが戦闘力を持たないアリシアに万一の事があってはと思い、エアの協力の下、使えるようにしたのであった。

 

 量産化されれたマテリアは強奪されてしまったが、オリジナルとなったマテリアは無事であり、何よりこのバハムートは流石に危険すぎるために常にアリシアは身に着けていたのである。

 

 魔力資質を持たない上に、マテリアの適性がなかったはずのアリシアだったが、何故かこのバハムートのマテリアだけは普通に使えたのである。しかも、バハムートが従順だから達が悪い。

 

「そんじゃ、お次は西側にどぎついの一発いってみよう!」

 

 アリシアの指示に再び嘶いたバハムートの口に夥しいほどの魔力が蓄積されていく。

 

「ムーちゃん、メガフレア!」

 

 アリシアの指示のもと、口内にたまった魔力を一気に解放するバハムート。

 

 バハムートから放たれた、攻撃はそこに何も残すことなく全てを消し去ったのであった。

 

 

 

 

 

「あの子は全く」

 

 やれやれと首を振るリニスの足元には、二人の戦闘機人が倒れていた。

 

 やってきた正面玄関には、二人の戦闘機人が現れ、攻撃を仕掛けてきたのだが、そこは、普段紅莉に付き合い、なおかつ未だになのは達の仮想敵として相手をしているリニスである。戦闘力が段違いであった。

 

 もちろん、能力的には油断できないものなのだが、それでもなお、リニスが圧倒したのは、ひとえに紅莉のせいであろう。

 

「シャマル、こちらの二人は頼みます。内部に侵入されているかもしれませんので、そちらを見てきます」

 

「あ、はい」

 

 凄まじい戦闘力を発揮したリニスにビビり、思わず直立で敬礼を取ってしまうシャマルであった。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ、なんだよあれぇ……」

 

 アリシアがはっちゃけ、リニスが戦闘機人二人を子供扱いしていたころ、戦闘機人の一人、セインはそれを見てかなりビビっていた。

 

 ぶっちゃけ、その二人が目立っているだけで、南側のアインスも似たり寄ったりなのだが。

 

 とにかくとして、無事に潜入したセインは何とか任務を遂行しようと目的の人物を探して歩いていた。

 

「うぅ、聖王の器ってどこにいるんだよ?」

 

「ここにいない」

 

「っ!?」

 

 心細かったせいか、目的を口に出しながら歩いているセインに突如後ろから声がかけられた。

 

 慌ててセインは飛びのき、後ろを振り返れば、そこには黒い陣羽織を羽織った白い着物を着た美少女が立っていたのである。

 

「見つかった!?」

 

「??」

 

 セインの言葉を聞いて、少女が首を傾げる。なにやら、セインの言葉の意味が分かってないようである。

 

「くぅ、見つかったのは仕方ない。悪いけど、ちょっとの間、寝ててもらうよ!」

 

「見つかった?最初から、いるのは知ってた」

 

 少女としては、セインが侵入してくる前から、彼女を張りついていたために、みつかったという言葉に語弊があるといいたかったのだ。言葉が足りずにセインには伝わってないが。

 

「だったら、なんで今まで黙ってたんだよ!」

 

「目的を知るため?」

 

「いや、アタシに聞かれても……」

 

 今一要領を得ない回答に、なにやら疲れた気持ちになるセインだったが、流石に時間との勝負と思い、少女に近づこうとしたが……

 

「遅い」

 

「え、あれ?」

 

 セインが力が入らなくなり、その場に崩れ落ちる。倒れる前に、少女を見てみれば、少女の手には反りが入った剣を持つのが見えた。

 

「物足りない。だまされた」

 

「光莉?何故、貴女がここに」

 

「紅莉が万が一のためにって」

 

「なるほど」

 

 セインを倒し、不満顔をしていたところにリニスが現れ、少女改め、紅莉の狂気から生まれた存在の光莉がいることに疑問に思ったリニスが尋ねると、簡潔な答えが返ってきたのである。

 

「全く、こうなることを予見していたのですかね?」

 

「さぁ?光莉には関係ない」

 

「でしょうね」

 

「早く帰ってこないかな。死合ってくれるって約束したから」

 

「高い、護衛料ですねぇ」

 

 光莉の言った内容にしみじみと呆れた顔をするリニスであった。

 

 

 

 

 

 

「なんつーことを。アリシアは帰ったら説教だな」

 

 流石にバハムートはオーバーキルすぎる。幾らなんでも、やりすぎだ。

 

《マスター。また、メールです》

 

「今度は誰だ?」

 

《これは、リニスですね》

 

「開けてくれ」

 

『ヴィヴィオとチンクが浚われました。(。ノω<。)ァチャ-』

 

「だから、軽いな!?」

 

 てか、六課自体は無傷なんだが、一体だれが?しかも、チンクを浚って行くなんて、今さら何を?

 

 とりあえず、はやて達を合流してから、情報を明確化しないとダメだな。

 

 とにかく、俺ははやて達と合流するために、地上へと降りて行った。




†久遠放送局†

久遠「リニスの実力が可笑しいと思う」

リニス「可笑しくありませんよ?世間ではAAAランク程度ですから」

久遠「使い魔がそのレベルってありえなくない?てか、それで、なのは達の相手をしているの?」

リニス「勝率は6割といったところですかね。結局は戦術なり戦略なりで戦いは決まりますからね。それを言ったら、紅莉や貴方だって十分に可笑しいでしょ」

久遠「……紅莉と関わったら、こうなるよね!」

リニス「ええ、そうですね」

久遠「では、次回もお楽しみに」
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